上 下
136 / 657
帝都防衛編

魔力操作

しおりを挟む
――吸魔石に魔力を封じ込める作業を開始してから1時間後、ルノの目の前には長机に並べられた水晶製のケースに大量の吸魔石が並べられていた。その数は100個は降らず、流石のルノも額に汗を流す。


「ふうっ……ちょっと疲れたな。休憩するか」


吸魔石に魔力を注ぎ込む感覚は完璧に掴み、最初の内は失敗して吸魔石を破裂させてしまうが、現在では両手で二つの吸魔石を掴んだ状態で魔力を注ぎ込む事も出来るようになった。


「それにしてもいっぱいあるな……どんだけ作ったんだよ」


部屋の隅には大量の吸魔石が箱詰めされた状態の木箱が並んでおり、流石に今日中に全ての吸魔石に魔力を注ぐのは不可能だと考えられた。ルノは机の端に置かれているリーリスが用意してくれた魔力回復薬を引用するが、それでも完全には回復しない。


「う~ん……この薬、あんまり好きじゃないんだよな。あ、そうだ。SPを消費して新しいスキルを覚えようかな?」


レベルが90を超えてるいるにも関わらず、ルノが所有しているスキルの数は非常に少なく、理由としては彼の初級魔法が万能過ぎてスキルを覚えて能力を強化する必要性がなかったからである。スキルを覚えるのに消費するSPは有り余っており、ルノはステータス画面を開いて久しぶりに新しいスキルを覚える事にした。


「あれ、レベルが97になってる。もう少しで99に行きそうだな……この世界のレベルの上限は99なのかな?まあ、別にいいや」


旅の道中でも色々な敵と戦っているため、いつの間にかレベルが上昇していた。この世界に訪れてから半年足らずでここまでのレベルに上昇できたのは「成長」の異能の恩恵が大きいが、ルノが初級魔法を極めた事も大きな要因だろう。


「久しぶりにステータス画面開いたからちょっと不安だけど……こうでいいのかな?」


SPの項目に指を触れると、視界に別の画面が表示され、ルノが習得していないスキルの一覧が表示される。色々とあるが、今回の彼の目当ては魔法関連のスキルであり、固有スキルの項目にこの状況に相応しい3つのスキルを発見した。


「お、これなんか良さそう」
『魔力回復速度上昇――魔力の回復速度を上昇させる』
『魔力容量拡張――魔力容量を増大化させる』
『魔法威力上昇――魔法威力を上昇させる』


最後の魔法威力上昇に関しては必要性はあまり感じられないが、念のために覚えておくことを決め、ルノはSPを消費して習得する。


「これでいいのかな……あ、この3つも自由に発動が切り替えられるのか」


強化スキルと同様に新しく覚えた3つのスキルもルノの意思で発動出来るらしく、強化スキルと違って特に発動した状態でも問題はないと判断し、吸魔石を1つ握りしめて魔力を注ぎ込む作業を再開した。


「どれどれ」


固有スキルの効果を確認するため、ルノは吸魔石を片手で握りしめた状態で魔力を注ぎ込む。すると今までの倍近くの速度で吸魔石が変色を果たし、表面に亀裂が走ってしまう。


「うわっ!?不味い!!」


咄嗟にルノは吸魔石を両手で抑え込み、冷気を抑え込もうとする。自分の魔法で生み出した攻撃は自分自身の肉体に通じないならば魔力も彼の身体を傷つける事はなく、吸魔石が掌の中で砕け散り、冷気が掌の隙間から放出された。


「ああっ……勿体ない。しかも椅子が凍っちゃったよ」


掌から放出された冷気が傍にルノの傍に存在した椅子を氷結化させてしまい、しっかりと「魔法威力上昇」の固有スキルの効果が現れているのか、椅子が氷像のように変化してしまう。もしもドリアがこの場に残っていた彼を凍り付かせていた可能性もあり、ルノは溜息を吐き出す。


「魔法威力上昇って魔力も強化するのか?これだと指先で魔力を送り込むしかないか……ん?指先?」


ルノは掌越しでは魔力を注ぎ込みすぎるため、指先で魔力を注ぎ込む方法に切り替える事を決めると、木箱に箱詰めされている吸魔石に視線を向け、ある方法を思いつく。上手くいけば今のペースから10倍の速度で吸魔石に魔力を注ぎ込める可能性もある。


「試してみるか」


5つの吸魔石を取り上げると、ルノは氷像と化した椅子の上に乗せ、掌を広げた状態で5本指に吸魔石を1つずつ押し当てる。この状態で全ての吸魔石に魔力を注ぎ込めるかを試す。


「せぇ……のっ!!」


掌の表面が青色に光り輝き、指先に存在する全ての吸魔石が変色し、やがて青色に光り輝く。しかもこちらの方法ならば魔力が分散されるので吸魔石を破裂させない程度にまで注ぎ込んだ後に指も離せる。


「おおっ!!上手くいった!!」


この方法ならば無駄に吸魔石を破壊する事もなく、更には両手を使えば一度の動作で合計で10庫の吸魔石に魔力を満たすことが出来る。良案を思いついたルノは次の吸魔石を取り出し、次々と水晶製のケースに吸魔石を箱詰めした――
しおりを挟む
感想 1,841

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。