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冒険者編
解毒薬の製作
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「こんな感じ?」
「それくらいで十分ですよ」
「な、なんですかこれは!?」
「あ、安心してください。用事が済めば伐採しますから」
「するの?」
庭に誕生した青色の葉の樹木に女将と従業員は驚愕するが、リーリスは何事もないようにルノの背中に乗り込み、肩車の状態から枝に実った青色の果実を取り出す。
「これは青樹の実ですよ。あらゆる毒を打ち消す貴重な果実なんですが、生の状態で食べるとお腹を壊すので気を付けてくださいね」
「食べないよ」
「そ、それがあれば夫は助かるのですか!?」
「あわわっ!?ちょ、話しかけないで下さいよ!!危うくルノさんに三角締めを行った状態で倒れる所じゃないですか!!」
「も、申し訳ありません……」
肩車から降りるとリーリスは木の実を握りしめながら「鑑定」と呼ばれるスキルを発動し、状態を確認して頷く。
「うん、これなら大丈夫です。今から調合しますから、ルノさんはその青樹の処理をお願いします」
「え?どうすればいいの?」
「青樹は本来は特殊な環境下でしか生きられませんから、放っておけば自然に朽ちてしまいます。それぐらいならここで燃やしてあげましょう」
「分かった。それなら根っこごと掘り起こすね」
『えっ?』
ルノの言葉にその場の全員が呆気に取られ、彼は樹木を掴むと全身の力を籠め、力尽くで引き抜く。
「ふんぬっ!!」
「嘘っ!?」
「きゃああっ!?」
「ひ、引き抜いた!?」
先の土竜戦でルノのレベルは「90」を迎えており、このレベルに至ると素の状態でも恐ろしいほどの力を発揮し、魔法の力を遣わずにルノは青樹を引き抜き、旅館の建物を傷つけないように投げ飛ばす。
「せいやぁっ!!」
槍投げの要領で青樹が空中に投擲し、空に向けて飛んでいく樹木に向けて掌を伸ばし、狙いを定めて魔法を撃ち抜く。
「ビックバ……じゃなくて、黒炎槍!!」
「今、何を言おうとしたんですかっ!!」
リーリスのツッコミを耳にしながらもルノは掌から3つの属性を組み合わせた黒炎の槍を放ち、空中に放り出された青樹を焼き払う。あまりの火力に樹木は一瞬で塵と化し、風に吹き飛ばされて跡形もなく消え去った。
「これでよし、と……あれ?どうかしました」
「ひ、ひいっ!?」
「こ、こっちを向いたぞ!!」
「お、お客様に失礼ですよ!!黙りなさい!!」
ルノが振り返ると、従業員と女将が怯えた表情を浮かべるが、リーリスは呆れた表情を浮かべながらも木の実を片手にその場で調合を始める。
「全く、相変わらずとんでもない力ですね。私も今度転生するときはあの天使さんにルノさんと同じ力を希望しましょうかね」
「な、何をなさっているのですか?」
「調合ですよ。この青樹の実は採取して1時間以内に調合しないと解毒薬が作れないんですよ」
「あの、すぐに部屋を用意しますが……」
「いえ、それは辞めておいた方が良いですよ。青樹の実はこんな風に殻を割ると……ほら、臭いでしょ」
「うっ……!?」
青樹の実は果物のドリアンのように実を割ると中身から異臭が漏れ、それを嗅いだ人間達は鼻を抑える。自分は事前に鼻に洗濯バサミを取り付けていたリーリスは実の中心部に存在する種をスプーンで取り出し、庭の地面に布を敷き詰めて調合器具を取り出す。
「ここからは私一人でやりますので他の人は戻っていいですよ。あ、それと他のお客さんにも注意しておいてくださいね」
「わ、分かりました……どうか夫を助けてください」
「善処はしますよ」
「へえ……こんな道具があるんだ」
女将と従業員は鼻を抑えながらも室内に戻り、ルノはリーリスの調合に興味を抱いて観察を行う。するとリーリスは自分と違って鼻を塞いでいないにも関わらずに平気そうにしている彼に疑問を抱き、質問を行う。
「あれ?ルノさんは臭いは平気なんですか?物凄く臭いはずですけど……」
「確かに臭いとは思うけど、別に気にするほどじゃないかな。昔からこういう臭いがきつい食べ物とかも平気で食べてたし」
「なるほど、前の世界に居た時から強烈な臭いに耐性があったんですね」
「それよりリーリスは色々な調合器具を持ってるね。俺も調合した事はあるけど、こんな道具なんて使った事ないよ」
「どれも私が独自に作り出した調合器具ですよ。帝国の予算を使って生み出したんです」
青樹の実を中身を磨り潰しがらリーリスは説明を行い、作業の最中に他人と話しながらもその手は止まらず、素早く正確に調合を行う。磨り潰した実をフラスコを想像させる調理器具に流し込み、その中に水を注ぐと、蓋をした状態で熱する。ある程度の温度まで達すると蓋を開き、今度は別の金網を挟んで別の容器に流し込み、液体だけを回収する。
「この液体を更に水で薄めた後、今度は高温で一気に熱します。そうすると色合いが紫色に変わるので、ここで普通の回復薬も流し込みます」
「これで解毒薬が出来るの?」
「いえいえ、まだまだですよ。よく掻き混ぜた後、薄紫色になったら今度は別の解毒草を粉状になるまで磨り潰した物を入れます。ここで量を間違えると終わりですから慎重にしないといけません」
「おお、なんか綺麗な紫色になった」
「後は自然に冷えるまで待ちます。だいたい人肌程度の温度になったところで別の容器に移し替えて冷やせば解毒薬の完成です。意外と簡単でしょ?」
「え、もう終わり!?」
「まあ、これは私が独自で発見した解毒薬の制作方法です。本来はもっと時間が掛かるんですが、長年の研究で見つけた私だけが知っている方法ですよ」
完成した解毒薬を片手にリーリスは自慢気に答え、彼女は調合器具を片付けてルノに作り出した解毒薬を見せつける。
「それくらいで十分ですよ」
「な、なんですかこれは!?」
「あ、安心してください。用事が済めば伐採しますから」
「するの?」
庭に誕生した青色の葉の樹木に女将と従業員は驚愕するが、リーリスは何事もないようにルノの背中に乗り込み、肩車の状態から枝に実った青色の果実を取り出す。
「これは青樹の実ですよ。あらゆる毒を打ち消す貴重な果実なんですが、生の状態で食べるとお腹を壊すので気を付けてくださいね」
「食べないよ」
「そ、それがあれば夫は助かるのですか!?」
「あわわっ!?ちょ、話しかけないで下さいよ!!危うくルノさんに三角締めを行った状態で倒れる所じゃないですか!!」
「も、申し訳ありません……」
肩車から降りるとリーリスは木の実を握りしめながら「鑑定」と呼ばれるスキルを発動し、状態を確認して頷く。
「うん、これなら大丈夫です。今から調合しますから、ルノさんはその青樹の処理をお願いします」
「え?どうすればいいの?」
「青樹は本来は特殊な環境下でしか生きられませんから、放っておけば自然に朽ちてしまいます。それぐらいならここで燃やしてあげましょう」
「分かった。それなら根っこごと掘り起こすね」
『えっ?』
ルノの言葉にその場の全員が呆気に取られ、彼は樹木を掴むと全身の力を籠め、力尽くで引き抜く。
「ふんぬっ!!」
「嘘っ!?」
「きゃああっ!?」
「ひ、引き抜いた!?」
先の土竜戦でルノのレベルは「90」を迎えており、このレベルに至ると素の状態でも恐ろしいほどの力を発揮し、魔法の力を遣わずにルノは青樹を引き抜き、旅館の建物を傷つけないように投げ飛ばす。
「せいやぁっ!!」
槍投げの要領で青樹が空中に投擲し、空に向けて飛んでいく樹木に向けて掌を伸ばし、狙いを定めて魔法を撃ち抜く。
「ビックバ……じゃなくて、黒炎槍!!」
「今、何を言おうとしたんですかっ!!」
リーリスのツッコミを耳にしながらもルノは掌から3つの属性を組み合わせた黒炎の槍を放ち、空中に放り出された青樹を焼き払う。あまりの火力に樹木は一瞬で塵と化し、風に吹き飛ばされて跡形もなく消え去った。
「これでよし、と……あれ?どうかしました」
「ひ、ひいっ!?」
「こ、こっちを向いたぞ!!」
「お、お客様に失礼ですよ!!黙りなさい!!」
ルノが振り返ると、従業員と女将が怯えた表情を浮かべるが、リーリスは呆れた表情を浮かべながらも木の実を片手にその場で調合を始める。
「全く、相変わらずとんでもない力ですね。私も今度転生するときはあの天使さんにルノさんと同じ力を希望しましょうかね」
「な、何をなさっているのですか?」
「調合ですよ。この青樹の実は採取して1時間以内に調合しないと解毒薬が作れないんですよ」
「あの、すぐに部屋を用意しますが……」
「いえ、それは辞めておいた方が良いですよ。青樹の実はこんな風に殻を割ると……ほら、臭いでしょ」
「うっ……!?」
青樹の実は果物のドリアンのように実を割ると中身から異臭が漏れ、それを嗅いだ人間達は鼻を抑える。自分は事前に鼻に洗濯バサミを取り付けていたリーリスは実の中心部に存在する種をスプーンで取り出し、庭の地面に布を敷き詰めて調合器具を取り出す。
「ここからは私一人でやりますので他の人は戻っていいですよ。あ、それと他のお客さんにも注意しておいてくださいね」
「わ、分かりました……どうか夫を助けてください」
「善処はしますよ」
「へえ……こんな道具があるんだ」
女将と従業員は鼻を抑えながらも室内に戻り、ルノはリーリスの調合に興味を抱いて観察を行う。するとリーリスは自分と違って鼻を塞いでいないにも関わらずに平気そうにしている彼に疑問を抱き、質問を行う。
「あれ?ルノさんは臭いは平気なんですか?物凄く臭いはずですけど……」
「確かに臭いとは思うけど、別に気にするほどじゃないかな。昔からこういう臭いがきつい食べ物とかも平気で食べてたし」
「なるほど、前の世界に居た時から強烈な臭いに耐性があったんですね」
「それよりリーリスは色々な調合器具を持ってるね。俺も調合した事はあるけど、こんな道具なんて使った事ないよ」
「どれも私が独自に作り出した調合器具ですよ。帝国の予算を使って生み出したんです」
青樹の実を中身を磨り潰しがらリーリスは説明を行い、作業の最中に他人と話しながらもその手は止まらず、素早く正確に調合を行う。磨り潰した実をフラスコを想像させる調理器具に流し込み、その中に水を注ぐと、蓋をした状態で熱する。ある程度の温度まで達すると蓋を開き、今度は別の金網を挟んで別の容器に流し込み、液体だけを回収する。
「この液体を更に水で薄めた後、今度は高温で一気に熱します。そうすると色合いが紫色に変わるので、ここで普通の回復薬も流し込みます」
「これで解毒薬が出来るの?」
「いえいえ、まだまだですよ。よく掻き混ぜた後、薄紫色になったら今度は別の解毒草を粉状になるまで磨り潰した物を入れます。ここで量を間違えると終わりですから慎重にしないといけません」
「おお、なんか綺麗な紫色になった」
「後は自然に冷えるまで待ちます。だいたい人肌程度の温度になったところで別の容器に移し替えて冷やせば解毒薬の完成です。意外と簡単でしょ?」
「え、もう終わり!?」
「まあ、これは私が独自で発見した解毒薬の制作方法です。本来はもっと時間が掛かるんですが、長年の研究で見つけた私だけが知っている方法ですよ」
完成した解毒薬を片手にリーリスは自慢気に答え、彼女は調合器具を片付けてルノに作り出した解毒薬を見せつける。
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