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最終章 ヤマタノオロチ編
エピローグ
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――転移を終えたレノが移動した先は王城ではなく、アマラ砂漠のある施設であり、以前にここに立ち寄った際は旧世界人の成れの果てと思われる生物に遭遇し、彼等を救う事は出来なかった。だが、今の彼ならば彼等の苦しみから解放する事は出来る。
「カリバーン」
―――ズドォオオオオオンッ……!!
聖剣を握りしめ、砂に埋もれている施設を確認すると、レノは勢いよく聖剣を振り下ろす。その直後、凄まじい光の奔流が施設を飲み込み、圧倒的な破壊力で消滅させた。
「……あと三つ」
そして、彼は残された最後の三つの大迷宮に移動を行い、この力が完全に失われる前に破壊する事を試みる。伝説獣を育成する施設はもうこの世界には必要なく、同時に内部に存在する魔物達を解き放つわけには行かない。
この世界はもう管理者の支配から離れた世界であり、レノはこの世界で生まれた力で旧世界の負の遺産を破壊し、本当の意味での自由を掴み取るため、彼は破壊行為を続けた。
――10分後、全てをやり終えたレノは聖痕の力が薄まる感覚に気付き、間もなく力を失う事を予測し、最後に訪れなければならない場所に訪れる。その場所とは彼にとっては思い出深い場所でもあり、同時に大きな力を手に入れた場所でもある。
狭い通路内を移動し、レノが辿り着いたのは放浪島の地下迷宮内に存在する研究施設であり、この場所は完全に閉鎖されていたはずだが、レノが辿り着いた時には出入口の通路が開かれており、彼はそのまま足を進める。
研究施設内は以前に侵入した時よりも錆びれているが、それ以外に特に異変はなく、レノはある場所に辿り着く。そこは彼女と最初に出会った部屋であり、ゆっくりと扉を開くと、予想通りというべきか一人のアンドロイドが待ち構えていた。
『――お帰りなさい、レノさん』
「やっぱり、生きてたか」
この世界の管理者でもあり、そして先ほどまで連絡を取り合っていたベータのオリジナルのアンドロイドであるベータは椅子に座り込んだ状態でレノを迎え入れ、その胸元にはレノが突き刺したUSBメモリが差し込まれたままであり、彼女はあれからずっとこの場所で生きていたのだ。
『あんまり驚かないんですね。なんで生きてるんだ~!!とか聞かないんですか?』
「別に……何となく、そんな予感はしてた」
『すいませんね。騙すような真似をして』
オリジナルのベータは後方のモニターを確認すると、そこには地上の映像が映し出されており、そこにはレノが破壊した施設と大迷宮が映し出されており、この場所から確認していたらしい。
「爆発してなかったんだな」
『そうですね。実際の所、どれほど長く生きようと私が自殺を試みる事は出来ないんですよ。そういう風にプログラムされていますから』
「地上の大迷宮を解放したのはお前か?」
『信じてくれないかもしれませんけど、大迷宮は一定の間隔で復活するように仕向けられているんです。ですが、ヤマタノオロチに関しては本当に申し訳ありません。まさか別個体が地上に放出されるとは予想できませんでした』
ベータは自殺を図ろうとしたのは演技であり、彼女はあれからずっとこの施設で変わらずに管理者として世界の行く末を見守っていたらしい。それでもこの場所からでは地上の管理を行う事は出来ず、あくまでも見守る事しか出来なかった。
レノがベータが生きている事に気付いたのはただの直感であり、終末者の肉体に移したベータが「一部の記憶が欠損している」と言っていた時点で疑問を抱き、もしかしたらオリジナルのベータがまだ生きているのではないかと疑った。
はっきりと言って確証など全くなかったが、実際にベータは目の前に存在し、この研究施設はレノとホムラの故郷でもあり、ここから全てが始まったと言っても過言ではない。
「それで……ヤマタノオロチは死んだのか?」
「こちらから確認する限りでは、ヤマタノオロチの生体反応は存在しません。死体も完全に焼却されましたから悪用される事態は陥りませんよ」
「それなら良かった……なら、お前はどうする?」
レノの質問はこれからも管理者として地上を観察するのかと問い質すが、彼女は首を振ってモニターの映像に向き直る。
「もう、この世界に私達は必要ありませんよ。ヤマタノオロチが消滅した以上、私に心残りはありません。今度の今度こそ、お別れです」
「地上に戻れる好機はいくらでもあったんじゃないのか?」
「戻った所で、今の世界は私なんかじゃ壊せませんよ。怖い人がたくさんいますからね……それに創造者の思惑からこの世界も、案外悪くないと思いましてね」
「……そうか」
管理者であるベータがこの世界を完全に放棄し、ここから先は伝説獣やヤマタノオロチのような生物兵器に世界を滅ぼされる脅威は消えてなくなり、レノは力を失う前に戻る事にする。
「レノさん」
「なに?」
「貴方は私達の最高傑作です」
「……もうちょい誉め言葉を考えてくれ」
「すいませんね、人間の感情というのは我々には理解し難いので」
ベータは子供のように舌を突きだすと、レノは苦笑いを浮かべて部屋を立ち去る。この場所にもう用は無く、二度と訪れる機会はないだろう。
――ドォオンッ!!
後方の部屋から拳銃の発砲音のような音が聞こえ、レノは一度だけ振り返り、部屋に戻ろうかとしたがすぐに考え直し、最後に自分の事を生み出してくれた事に感謝して頭を下げる。
「ありがとう」
一言だけ礼を告げると、完全に力を失う前に皆の元に戻るため、レノは地下迷宮を立ち去った――
※あと1話だけ14時に投稿します。
「カリバーン」
―――ズドォオオオオオンッ……!!
聖剣を握りしめ、砂に埋もれている施設を確認すると、レノは勢いよく聖剣を振り下ろす。その直後、凄まじい光の奔流が施設を飲み込み、圧倒的な破壊力で消滅させた。
「……あと三つ」
そして、彼は残された最後の三つの大迷宮に移動を行い、この力が完全に失われる前に破壊する事を試みる。伝説獣を育成する施設はもうこの世界には必要なく、同時に内部に存在する魔物達を解き放つわけには行かない。
この世界はもう管理者の支配から離れた世界であり、レノはこの世界で生まれた力で旧世界の負の遺産を破壊し、本当の意味での自由を掴み取るため、彼は破壊行為を続けた。
――10分後、全てをやり終えたレノは聖痕の力が薄まる感覚に気付き、間もなく力を失う事を予測し、最後に訪れなければならない場所に訪れる。その場所とは彼にとっては思い出深い場所でもあり、同時に大きな力を手に入れた場所でもある。
狭い通路内を移動し、レノが辿り着いたのは放浪島の地下迷宮内に存在する研究施設であり、この場所は完全に閉鎖されていたはずだが、レノが辿り着いた時には出入口の通路が開かれており、彼はそのまま足を進める。
研究施設内は以前に侵入した時よりも錆びれているが、それ以外に特に異変はなく、レノはある場所に辿り着く。そこは彼女と最初に出会った部屋であり、ゆっくりと扉を開くと、予想通りというべきか一人のアンドロイドが待ち構えていた。
『――お帰りなさい、レノさん』
「やっぱり、生きてたか」
この世界の管理者でもあり、そして先ほどまで連絡を取り合っていたベータのオリジナルのアンドロイドであるベータは椅子に座り込んだ状態でレノを迎え入れ、その胸元にはレノが突き刺したUSBメモリが差し込まれたままであり、彼女はあれからずっとこの場所で生きていたのだ。
『あんまり驚かないんですね。なんで生きてるんだ~!!とか聞かないんですか?』
「別に……何となく、そんな予感はしてた」
『すいませんね。騙すような真似をして』
オリジナルのベータは後方のモニターを確認すると、そこには地上の映像が映し出されており、そこにはレノが破壊した施設と大迷宮が映し出されており、この場所から確認していたらしい。
「爆発してなかったんだな」
『そうですね。実際の所、どれほど長く生きようと私が自殺を試みる事は出来ないんですよ。そういう風にプログラムされていますから』
「地上の大迷宮を解放したのはお前か?」
『信じてくれないかもしれませんけど、大迷宮は一定の間隔で復活するように仕向けられているんです。ですが、ヤマタノオロチに関しては本当に申し訳ありません。まさか別個体が地上に放出されるとは予想できませんでした』
ベータは自殺を図ろうとしたのは演技であり、彼女はあれからずっとこの施設で変わらずに管理者として世界の行く末を見守っていたらしい。それでもこの場所からでは地上の管理を行う事は出来ず、あくまでも見守る事しか出来なかった。
レノがベータが生きている事に気付いたのはただの直感であり、終末者の肉体に移したベータが「一部の記憶が欠損している」と言っていた時点で疑問を抱き、もしかしたらオリジナルのベータがまだ生きているのではないかと疑った。
はっきりと言って確証など全くなかったが、実際にベータは目の前に存在し、この研究施設はレノとホムラの故郷でもあり、ここから全てが始まったと言っても過言ではない。
「それで……ヤマタノオロチは死んだのか?」
「こちらから確認する限りでは、ヤマタノオロチの生体反応は存在しません。死体も完全に焼却されましたから悪用される事態は陥りませんよ」
「それなら良かった……なら、お前はどうする?」
レノの質問はこれからも管理者として地上を観察するのかと問い質すが、彼女は首を振ってモニターの映像に向き直る。
「もう、この世界に私達は必要ありませんよ。ヤマタノオロチが消滅した以上、私に心残りはありません。今度の今度こそ、お別れです」
「地上に戻れる好機はいくらでもあったんじゃないのか?」
「戻った所で、今の世界は私なんかじゃ壊せませんよ。怖い人がたくさんいますからね……それに創造者の思惑からこの世界も、案外悪くないと思いましてね」
「……そうか」
管理者であるベータがこの世界を完全に放棄し、ここから先は伝説獣やヤマタノオロチのような生物兵器に世界を滅ぼされる脅威は消えてなくなり、レノは力を失う前に戻る事にする。
「レノさん」
「なに?」
「貴方は私達の最高傑作です」
「……もうちょい誉め言葉を考えてくれ」
「すいませんね、人間の感情というのは我々には理解し難いので」
ベータは子供のように舌を突きだすと、レノは苦笑いを浮かべて部屋を立ち去る。この場所にもう用は無く、二度と訪れる機会はないだろう。
――ドォオンッ!!
後方の部屋から拳銃の発砲音のような音が聞こえ、レノは一度だけ振り返り、部屋に戻ろうかとしたがすぐに考え直し、最後に自分の事を生み出してくれた事に感謝して頭を下げる。
「ありがとう」
一言だけ礼を告げると、完全に力を失う前に皆の元に戻るため、レノは地下迷宮を立ち去った――
※あと1話だけ14時に投稿します。
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