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大迷宮編 〈後半編〉
密林
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「どうやら行き止まりのようでやんす」
「2998、2999……丁度3000段あったね」
「な、なんで御二人はそれほど元気なのですか……」
一行が階段を登り始めてから1時間以上が経過し、階段の終わりと新しい開閉口の扉に到着する。階段を登るだけだったが、全員が相当に疲労しており、特に巨人族の面々は人間用に造り出された階段は移動するだけもで苦労するらしく、途中で大部分の人間が地上に引き返す。
「むうっ……随分と減ってしまったな。これでは調査部隊の意味がないぞ」
「仕方ありやせん。巨人族の方々にはこの階段はきついようでやんす。わっし等の部隊の皆さんも相当に疲労が蓄積しているようですし」
「す、すいません……」
「や、やっと頂上か……」
森人族の部隊とリノンも階段を座席代わりにして座り込み、扉を開く前に休憩を取る。結局ゴンゾウも途中で引き返し、この場所に辿り着いたのは王国部隊と魔人部隊と森人部隊だけであり、巨人部隊は結局は地上に待機している。
後でレノが転移魔方陣を発動すれば呼び寄せる事も可能だが、戦力となるはずの巨人部隊が1人も着いて来れなかったのは予想外であり、ゴンゾウも途中で頑張っていたが戦闘に入る前に彼を疲労させる訳にもいかず、結局レノが説得して引き返させた。
「少し休んだら進みやしょう。フウカさん達も心配だが、今は先に進むことを優先しやしょう」
「食料とか水は用意してる?」
「大丈夫だ。こんな時のために収納石(異空間に収納する魔石)を大量に用意したからな」
ライオネルが自分の背中に背負っていた袋を取り出し、中身は黄色の魔石であり、この魔石の一つ一つが異空間に繋がっており、大量の食料や水を保管している。使い方は非常に簡単で収納石に魔力を送り込めばボタンのような突起が出現し、突起の部分を押し込めば事前に収納していた物が出現する。
彼は惜しみなく全員に水稲が収納した収納石を手渡し、すぐに魔石を発動させて水筒を取り出す。全員が水分補給を行うのを見届けると、レノは開閉口の扉に視線を向ける。
「……なんだろうこれ?森人族の紋様?」
「いや、こんな形の紋様は見た事あり痩せんね」
扉には何故か森人族の象徴を想像させる「大樹」ではなく、木々が連なるように並んだ紋様が刻まれており、不思議に思いながらもレノは扉を開こうとした時、ハヤテが咄嗟に杖を差し出して止める。
「わっしが開けやしょう。何か罠が張られている可能性もありやす」
「それなら俺の方が……」
「いや、部隊の中では一番の戦力を誇るレノさんに何かあったらこっちが困りやす。ここはわっしに任せてください」
ハヤテはレノを制止して扉を押し開くと、意外にもあっさりと両開きの扉は開かれ、外部の光が通路内に流れ込む。そしてレノ達は扉の向こう側の景色を確認した瞬間、呆気に取られてしまう。
「……密林(ジャングル)?」
「これは……予想外でやんす」
「どうなってるんだ!?外に出たというのか!?」
――レノ達の眼前にはジャングルを想像させる密林が広がっており、最初は外の世界に出てしまったのかと思ったが、すぐに天井を見上げると違和感を抱き、青空を想像させるパネルが展開された天井が広がっていた。
どうやら塔内に密林を想像させる植物や地面が詰められており、天井には無数のパネルで外の世界の景色を映し出しており、擬似的なジャングルのような空間を築いている。レノ達は全員が外に移動すると、すぐに熱気と湿度の高さに顔を顰める。
「あ、暑い!!熱いぞ!!」
「毛皮脱げば?」
「脱げるか!!なんだこの暑さは!?」
「わっし等はそれほど気になり痩せんが、こんな植物は見た事ないでやんす」
全身毛深い体毛で覆われたライオネルは異常なまでの温度に項垂れるが、ハヤテは珍しそうに密林を見渡し、蔓に絡みつかれた大樹に掌を押し付ける。他の者達もライオネルのようにあまりの温度の違いに全身から汗が流れるが、周囲の警戒を怠らない。
「……ここは何処なんだ?外に出た訳じゃないようだが……」
「あ、あそこを見て下さい!!」
「あれは……上の階に通じる塔か」
レノ達が登り詰めた階段の建物は下の階層では漆黒の柱を想像させる構造だったが、この密林が広がる階層に辿り着いた時点で途切れており、その代わりに向い側の方角に同じような「黒柱」が存在し、どうやら更なる上の階層に向かうとしたら現在の階層の黒柱に向かうしかないらしい。
だが、移動するにしても周囲は密林が広がっており、明らかに一階と違って生物の痕跡が存在し、上空を見上げると空を飛行する翼竜のような魔物も存在し、ここから先を移動するとしたら魔物との遭遇は避けられそうにない。
「一階と随分と違う構造のようだが、広さはそれほど変わりはないようだな。まあ、同じ塔内の階層なのだから当然の事だが……」
「しかし、この環境は異常だな……一階とは大違いの温度差だ。こんな場所に長くいたら、こっちの身が持たないぞ……」
「確かにな……暑すぎる」
現在の世界はどんな地域も一定の温度を保っており、四季という概念は存在しない。しかも王国の領土は比較的に人間にとっては過ごしやすい環境であるため、このような本物の密林のような熱帯地域を想像させる高温の環境は人間であるリノンには耐えがたく、何度も水筒の水を飲み干す。ライオネル達も彼等が済んでいる孤島は王国と同じく安定した環境であり、殆どの者が熱気に耐え切れずにへたり込む。
「俺は平気だけど……」
「我等も問題ありませんが……」
「それはお前達なら問題ないだろう。奇怪な植物ではあるが、緑の自然に囲まれた環境である以上はお前達にとっては最高の環境だろう」
森人族である森人部隊、そしてハーフエルフのレノはこんな環境下でも問題なく行動が可能であり、ライオネルの言う通り、周囲が植物に囲まれている以上は彼等は植物から力を得られる。そのため、確かに激しい温度差ではあるが森人族達にとっては緑に囲まれた環境に存在する以上は体調を崩す事はない。
これが仮に周囲に自然物が存在しない環境、つまりは荒野や火山地帯のような植物が生息し難い環境下ならば彼等もライオネル達のように激しい温度差で体調を大きく崩すだろうが、扉を抜けた先が密林だった事が幸いし、自然の力を吸収するように通常時よりも肉体が活発化されている。
「どうやらこの階層ではわっし等だけが自由に動けるようでやんす。レノさん、ここは他の方々のためにもわっし等だけで行動しやしょう」
「皆は後で転移魔方陣で呼び込めばいいわけね」
「すまん……俺達は階段の方に戻っている。あそこの方がまだ涼しい」
「た、頼んだぞレノ……」
結局、森人部隊とレノを除いた部隊も第一階層に繋がる黒柱に帰還する事になり、一先ずレノ達だけが先に進む事になった。
「2998、2999……丁度3000段あったね」
「な、なんで御二人はそれほど元気なのですか……」
一行が階段を登り始めてから1時間以上が経過し、階段の終わりと新しい開閉口の扉に到着する。階段を登るだけだったが、全員が相当に疲労しており、特に巨人族の面々は人間用に造り出された階段は移動するだけもで苦労するらしく、途中で大部分の人間が地上に引き返す。
「むうっ……随分と減ってしまったな。これでは調査部隊の意味がないぞ」
「仕方ありやせん。巨人族の方々にはこの階段はきついようでやんす。わっし等の部隊の皆さんも相当に疲労が蓄積しているようですし」
「す、すいません……」
「や、やっと頂上か……」
森人族の部隊とリノンも階段を座席代わりにして座り込み、扉を開く前に休憩を取る。結局ゴンゾウも途中で引き返し、この場所に辿り着いたのは王国部隊と魔人部隊と森人部隊だけであり、巨人部隊は結局は地上に待機している。
後でレノが転移魔方陣を発動すれば呼び寄せる事も可能だが、戦力となるはずの巨人部隊が1人も着いて来れなかったのは予想外であり、ゴンゾウも途中で頑張っていたが戦闘に入る前に彼を疲労させる訳にもいかず、結局レノが説得して引き返させた。
「少し休んだら進みやしょう。フウカさん達も心配だが、今は先に進むことを優先しやしょう」
「食料とか水は用意してる?」
「大丈夫だ。こんな時のために収納石(異空間に収納する魔石)を大量に用意したからな」
ライオネルが自分の背中に背負っていた袋を取り出し、中身は黄色の魔石であり、この魔石の一つ一つが異空間に繋がっており、大量の食料や水を保管している。使い方は非常に簡単で収納石に魔力を送り込めばボタンのような突起が出現し、突起の部分を押し込めば事前に収納していた物が出現する。
彼は惜しみなく全員に水稲が収納した収納石を手渡し、すぐに魔石を発動させて水筒を取り出す。全員が水分補給を行うのを見届けると、レノは開閉口の扉に視線を向ける。
「……なんだろうこれ?森人族の紋様?」
「いや、こんな形の紋様は見た事あり痩せんね」
扉には何故か森人族の象徴を想像させる「大樹」ではなく、木々が連なるように並んだ紋様が刻まれており、不思議に思いながらもレノは扉を開こうとした時、ハヤテが咄嗟に杖を差し出して止める。
「わっしが開けやしょう。何か罠が張られている可能性もありやす」
「それなら俺の方が……」
「いや、部隊の中では一番の戦力を誇るレノさんに何かあったらこっちが困りやす。ここはわっしに任せてください」
ハヤテはレノを制止して扉を押し開くと、意外にもあっさりと両開きの扉は開かれ、外部の光が通路内に流れ込む。そしてレノ達は扉の向こう側の景色を確認した瞬間、呆気に取られてしまう。
「……密林(ジャングル)?」
「これは……予想外でやんす」
「どうなってるんだ!?外に出たというのか!?」
――レノ達の眼前にはジャングルを想像させる密林が広がっており、最初は外の世界に出てしまったのかと思ったが、すぐに天井を見上げると違和感を抱き、青空を想像させるパネルが展開された天井が広がっていた。
どうやら塔内に密林を想像させる植物や地面が詰められており、天井には無数のパネルで外の世界の景色を映し出しており、擬似的なジャングルのような空間を築いている。レノ達は全員が外に移動すると、すぐに熱気と湿度の高さに顔を顰める。
「あ、暑い!!熱いぞ!!」
「毛皮脱げば?」
「脱げるか!!なんだこの暑さは!?」
「わっし等はそれほど気になり痩せんが、こんな植物は見た事ないでやんす」
全身毛深い体毛で覆われたライオネルは異常なまでの温度に項垂れるが、ハヤテは珍しそうに密林を見渡し、蔓に絡みつかれた大樹に掌を押し付ける。他の者達もライオネルのようにあまりの温度の違いに全身から汗が流れるが、周囲の警戒を怠らない。
「……ここは何処なんだ?外に出た訳じゃないようだが……」
「あ、あそこを見て下さい!!」
「あれは……上の階に通じる塔か」
レノ達が登り詰めた階段の建物は下の階層では漆黒の柱を想像させる構造だったが、この密林が広がる階層に辿り着いた時点で途切れており、その代わりに向い側の方角に同じような「黒柱」が存在し、どうやら更なる上の階層に向かうとしたら現在の階層の黒柱に向かうしかないらしい。
だが、移動するにしても周囲は密林が広がっており、明らかに一階と違って生物の痕跡が存在し、上空を見上げると空を飛行する翼竜のような魔物も存在し、ここから先を移動するとしたら魔物との遭遇は避けられそうにない。
「一階と随分と違う構造のようだが、広さはそれほど変わりはないようだな。まあ、同じ塔内の階層なのだから当然の事だが……」
「しかし、この環境は異常だな……一階とは大違いの温度差だ。こんな場所に長くいたら、こっちの身が持たないぞ……」
「確かにな……暑すぎる」
現在の世界はどんな地域も一定の温度を保っており、四季という概念は存在しない。しかも王国の領土は比較的に人間にとっては過ごしやすい環境であるため、このような本物の密林のような熱帯地域を想像させる高温の環境は人間であるリノンには耐えがたく、何度も水筒の水を飲み干す。ライオネル達も彼等が済んでいる孤島は王国と同じく安定した環境であり、殆どの者が熱気に耐え切れずにへたり込む。
「俺は平気だけど……」
「我等も問題ありませんが……」
「それはお前達なら問題ないだろう。奇怪な植物ではあるが、緑の自然に囲まれた環境である以上はお前達にとっては最高の環境だろう」
森人族である森人部隊、そしてハーフエルフのレノはこんな環境下でも問題なく行動が可能であり、ライオネルの言う通り、周囲が植物に囲まれている以上は彼等は植物から力を得られる。そのため、確かに激しい温度差ではあるが森人族達にとっては緑に囲まれた環境に存在する以上は体調を崩す事はない。
これが仮に周囲に自然物が存在しない環境、つまりは荒野や火山地帯のような植物が生息し難い環境下ならば彼等もライオネル達のように激しい温度差で体調を大きく崩すだろうが、扉を抜けた先が密林だった事が幸いし、自然の力を吸収するように通常時よりも肉体が活発化されている。
「どうやらこの階層ではわっし等だけが自由に動けるようでやんす。レノさん、ここは他の方々のためにもわっし等だけで行動しやしょう」
「皆は後で転移魔方陣で呼び込めばいいわけね」
「すまん……俺達は階段の方に戻っている。あそこの方がまだ涼しい」
「た、頼んだぞレノ……」
結局、森人部隊とレノを除いた部隊も第一階層に繋がる黒柱に帰還する事になり、一先ずレノ達だけが先に進む事になった。
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