種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈後半編〉

突入開始

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――会議の結果、作戦内容は四つの砦に待機した各種族の部隊の精鋭を選出し、巨大迷宮の四方の門が開かれた瞬間を狙って突入する事が決定する。当然、出現してくる魔物達の邪魔も考えられるが、部隊を半分に分けて大迷宮に侵入する者と、残って出現した魔物達を殲滅する者達に分けられる。

現状、大迷宮に侵入した人間達が戻って来ない事から塔の内部には兇悪な魔物や罠が仕掛けられている可能性が高いため、迂闊に大規模の軍隊を送り込めば逆に被害が大きくなる一方であり、ここは少数精鋭として侵入する部隊には実力者だけで統一させ、地上に残る者達も確実に出現した魔物達を駆逐するために準備を整える必要がある。

巨大迷宮から出現した魔物達は全て大型種であり、普通の軍隊では対抗する事も難しいが、巨人族側も何度も襲撃を受けて対抗策を築いていない訳ではなく、今回の作戦には魔導大砲を事前に門の前に設置し、魔物達が出現した瞬間を狙って火属性の砲弾を発射する準備を整えていた。

無論、地上の魔導大砲だけでは心許ないのでホノカが帰還する前に四つの飛行船から各門から出現してくる魔物達を上空から砲撃し、ある程度の損傷を与えた所で侵入部隊が突入し、残された人間達が魔物を殲滅する手筈は整えていた。

この作戦では門が完全に閉じられる前に迅速に動いて内部に侵入する必要があり、当然だが力は強いが足が襲い巨人族達には不利である。だから彼等は事前に自分たちの巨体をも載せて動き回れる乗り物が必要となる。



王国側はレノがウルを召喚し、ゴンゾウを騎乗させる。流石に彼ほどの巨体を乗せる事にウルも最初は戸惑ったが、放浪島の地上の主である白狼種なだけはあり、問題なく動き回る。レノは瞬脚などの移動術で高速移動できるが、残りのメンバーでミキを憑依させて空を飛べるレミアは地上に残って部隊の指示を行わなければならず、今回はリノンがゴンゾウと供にウルに搭乗する事になる。貴重な医療魔導士であるコトミはレノに同行し、いざという時はレノは彼女を背負ってでも移動しなければならない。



他の部隊はハヤテとフウカが20名の戦士を連れて侵入を行い、コウシュンは残りの守護戦士の指揮があるため地上に出現した魔物達の殲滅を行い、魔人族側は足が早いライオネルとミノタウロスのギュウキが比較的に足の速い魔人族と共に参加し、デュラハンが代わりに部隊を纏めて地上に残る。最後の巨人族達は四柱将のカイリとリキは巨人族でも騎乗できる魔獣(ギガント・ホースと呼ばれる巨大な黒馬)に乗り込み、二人の後に20人の巨人族の部隊が続く手筈だった。




――作戦決行日、時間帯が正午を回り、各部隊が大迷宮の巨大な門の前に待機する。大迷宮のために集められた部隊が包囲網を組み、何時でも動きだせるように準備を整えながら四方の門が開かれるのを待つ。




「レミア様!!魔導大砲の準備は整えました!!」
「ご苦労……各自、私の合図があるまで動いてはなりませんよ」
「随分と用意したんだな……」


地上には既に大迷宮の門から出現してくる魔物達に備えて魔導大砲が設置されており、数は全部で40程存在するが、相手が大型の魔物の場合はこれだけでも心許ない。ホノカ達の最新の技術で生み出された物ではなく、巨人族が古くから扱う初期の魔導大砲のため、威力に関しても期待は出来ない。


「レノ、いざという時はお前の砲撃魔法が頼りだ。魔導大国で覚えた凝縮解放の技術を忘れいないだろうな?」
「大丈夫だって……ゴンちゃん、今回は突入する事が目的なんだから無理して敵を倒そうとはしないでよ」
「むうっ……分かってはいるが」
「ウォンッ!!」


ウルに騎乗したゴンゾウにレノは一応は注意を行い、彼の性格から考えても出現してきた魔物達に頭に血が登って自分の任務を忘れて殲滅しようとする可能性も否定できず、リノンが後方から親指を向ける。


「大丈夫だ。暴走した時のゴンゾウを抑えるのは昔から慣れているからな。いざという時は私に任せてくれ」
「流石は幼馴染……コトミも寝るなよ」
「……大丈夫、だと思う」


若干、不安な台詞を最後に付け足したコトミを引き寄せ、レノは正面の門を確認する。一応は砦内に避難用の転移魔方陣を書き込んでいるが、恐らく他の大迷宮同様に内部に閉じ込められたら外部に転移する事は不可能な仕掛けだろう。


『レノさん、聞こえやすか?』
「聞こえるよ」
『おおっ!!これは便利な魔道具だな!!噂に聞く魔導電話という奴か?』
『あんまり大声で騒がないでくれないかな……耳が痛い』


レノは自分の右耳に装着した「ピアス」の形をした通信機器を耳に押し当て、今回の作戦前にベータが事前に送ってくれた新しい通信機能付きの機械であり、彼女はこれを「テレホンピアス」略して「テレピア」と名付けた。

従来の魔導電話やベータから渡されたイヤホン型の通信機器では色々と不便が多く、ベータに相談した所で短距離ならば会話が出来るという新しい機器を開発してもらい、今回は5つしか用意できなかったのでレノ、ハヤテ、ライオネル、ホノカとコウシュンに渡す。この通信機器が大迷宮に突入した後も通じるのかは不明だが、もしも外部と連絡が取れたとしたら調査も大きく捗る。


『このテレピアというのは僕達の技術では造り出せない代物ようだが……ベータ君に頼んで大量発注できないかな?色々と便利そうだから人気が出ると思うよ』
「こう見えても色々と貴重な金属を使用しているから無理だと思うよ。ベータも終わったら絶対に帰すように言っていたし……」
『にしてもレノちゃんは変な知り合いが本当に多いな……このへんてこな魔道具にしろ、あの好きな場所に転移出来る指輪にしろ、何者なんだよ一体……』
「この世界の創造者的な存在?」
『はははっ……そりゃ凄いな。まるで光の精霊(現在の世界の聖導教会の信仰対象)みたいな存在だな』


コウシュンはレノの言葉を本気にはしなかったようだが、ベータは旧世界の技術を操る存在であり、決して嘘ではない。とは言え、現在の世界の住民が理解できる存在とは言い難く、実際に事情を知っているアルト達も半信半疑である。

だが、今回突入する大迷宮は紛れもなく旧世界の科学で生み出された建物であり、魔法的な力は阻害されて外部に転移や連絡を取る事は出来なくとも、同じ旧世界の科学で生み出された機器ならば通じる可能性も存在し、テレピアを装備しながらレノ達は扉が開かれるのを待っていると、




――ガコォオオオンッ……!!




前方に存在する南の門の扉から轟音が響き渡り、続いて他の門からも開閉音が周囲に鳴り響き、全員が身構える。すぐに旧式の魔導大砲の発射準備を整え、上空を旋回している四つの飛行船も砲門を開くと、巨大な扉の内部から鳴き声が響き渡る。




『グギャアァアアアアアアアア!!』




姿を現したのはレノが初めて見る魔物であり、全身を漆黒の鱗が覆いこみ、背中に二つの巨大な翼を生やし、その大きさは10メートルを軽く超えており、嵐水流が東洋の竜を想像させるならば、レノ達の前に表れたのはRPGゲームでは定番な存在である「ドラゴン」であり、巨大な黒龍が扉の内部から姿を現した。
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