種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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三国会談編

魔剣の製造

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「こちらが我等が新しく開発を行っている研究室です」
「研究室……というよりは武器倉庫みたいですね」


魔導王は水晶壁の実験場から離れた場所に存在する部屋に案内し、レノ達の目の前には壁一面に並べられたこの世界に存在するあらゆる刀剣を拝見する。長剣、短剣、大剣、太刀などの様々な種類の剣が壁に飾られるように保管されており、これらは世界中に存在する魔剣の資料を基に製作された模造品らしい。


「これらは全て我々が開発しました。ですが、まだまだ魔剣や聖剣の類には遠く及びません……」
「ここに並べられている剣は武器として扱えるのですか?」
「現段階ではまだまだ実践投入は危険と判断されていますが、扱う分には問題はありません」


魔導王は質問に答えるように傍の壁に飾られているナイフを回収すると、彼は皆の目の前で柄の部分に埋め込まれている雷属性の魔石を指差し、


「使用方法はこの魔石を押し込む事だけです」


バチィイイイッ……!!


柄の部分の魔石に触れた途端、ナイフの刃に電流が走り、雷属性の魔力付与が行われた事が分かるが、


「あの……それは何か意味があるのですか?魔力付与ならば私達にも出来ますが……」
「そうですね……魔石の力を利用して魔力付与が行えることは分かりますが、ある程度魔法が扱える人間にとっては必要ないのでは……?」


普段から火炎剣を扱うリノンや、聖属性の魔力を刃に宿せるジャンヌにとっては、わざわざ開発途中の魔剣の力を使用しなくとも、自力で魔力付与を行える人間にとってはあまり必要性は感じられないが、


「いや、これって普通の人間にも扱えるんでしょ?」
「その通りです!!この剣は魔石に触れるだけで発動しますので、魔力付与が行えない一般兵士でも扱う事が出来るのです!!」
「それは……すごいな」


レノの発言に魔導王は大きく頷き、アルトは感心した風に声を上げる。魔力付与を行えない一般人の兵士でも、この開発途中の魔剣を使用すれば擬似的に魔力付与が施された武器を扱えるという訳であり、戦力の大幅な強化が予想される。

通常の武器よりも魔力付与を施した武器の方が様々な点で有利であり、もしも一般人で統一された軍隊だろうと、この人工魔剣を装備した状態ならば魔力付与を行える者達にも劣らないように思えるが、実際にはそれほど甘くはない。


「でも、自分の魔力で発現した訳じゃないから傷つくんじゃない?」
「……ご察しの通り、こちらの研究だけは難航しています」


魔導王はあからさまに肩を落とし、この人工魔剣はあくまでも装着されている魔石の力だけを利用して刃に魔力付与を行っているため、使用者であろうと刃に触れれば無事では済まない。ちなみに自力で魔力付与を行った人間には「自分の魔法で自分は傷付かない」というこの世界の魔法の法則が適用し、例えるならリノンがどれほど火炎剣の火力を上げようと、彼女自身が刃の炎の影響を受けて火傷や怪我を負う事はない。


「こちらの製造魔剣は我々が入手した魔剣を参考に開発したのですが……生憎と我等が回収できたのは魔剣と言っても歴史に名を刻むような代物は存在せず、分析を行って複製を試みても、このような試作品しか開発できません。ですからどうか王国の方々にある協力を……」
「聖剣を貸す事以外ならいいけど」
「同じく」
「流石にそこまでは……」
「我々としても認める事は出来ませんね。聖剣とは本来ならば世界を平和に導く武具、過去に何度も戦争に利用されましたが、本来ならば先の伝説獣のような存在と敵対する時に真価を発揮する代物なのです。そんな聖剣を解析して、人を傷付ける武器の製作に協力するのは教会側も認められませんね」
「うっ……」


事前に魔導王が申し込もうとした「聖剣」の貸出を断り、彼としては王国側の聖剣を解析して人工魔剣の更なる発展を模索しようとしていたのかもしれないが、流石にそんな事を承諾できるはずがない。王国側の立場としては大切な聖剣を譲渡し、さらには解析されて万が一にも聖剣が複製された場合、戦争の道具に利用されれば世界が一変してしまう。

魔導大国はあくまでも独立国であり、バルトロス王国の従属ではなく、彼等がもしも王国側と敵対した場合、これまで見せた実験物の武器が使用されれば途轍もない被害が生まれる。それだけは避けねばならず、レノはカリバーンをしっかりと握りしめる。


「……分かりました。この話はここまでにしましょう。では、最後の実験室に案内しましょう」
「ま、まだあるの?」
「いい加減に飽きて来たな……」
「おおっ……電気が出た」
「ゴンちゃんは意外と気に入ったの?」
「俺は魔法が使えないが、この武器を使っていると、自分も魔法が扱えた気分になる」


意外にもゴンゾウは人工魔剣を気に入ったのか、何度も魔石に触れて刃の部分に電撃を送り込み、よくよく考えれば彼は生まれた時から魔法が扱えないため、当然だが魔力付与も行えない。そう考えるとゴンゾウにとっては人工魔剣は自分が魔術師になった気分にさせる珍しい代物であり、まるで子供が新しい玩具を手に入れたように夢中になっている。

レノとしては普段から魔法は扱い慣れた存在だが、巨人族の宝玉が破壊されたことで魔法が扱えないゴンゾウにとってはこの魔導大国の実験場は夢の国であり、魔導王も微笑ましい笑みを浮かべる。


「あの豪腕大将軍に気に入ってもらえて何よりです。よろしかったら、巨人族用の武器も用意しますか?」
「いや、俺にはこの鉞がある」


ゴンゾウは首を振り、レノがゴールド・ゴーレムから奪取した黄金の鉞を握りしめ、ソフィアの姿でしか持ち上げる事が出来なかった重量の二振りの鉞を彼は軽々と装備しており、ゴンゾウとしてはレノがわざわざ自分のために回収してくれた武器を手放すつもりはなかった。


「では最後の実験室に参りましょう。とは言っても、あまり皆様方の期待には答えられませんが……」
「どういう意味?」
「……厳密に言えば実験室ではなく、保管庫と言えばいいのでしょうが……実は王国の方々にも見てもらいたいものがあるのです」


魔導王の声色が変わり、今度は何を見せられるのかと思いながらも彼の後に続く。魔導王としても自分たちが開発している魔道具がここまで反応が薄い事を気にしているのか、急ぎ足で移動する。

次に案内されたのはまた水晶壁の実験場であり、今度は先ほどの場所とは違い、内部に保存されていた物体を見た瞬間、レノは驚愕する。それは先日にアトラス大森林でも見かけた物であり、どうしてこの場所に同じ物が存在するのか信じられなかった。



「――こちらが我々の国に古くから伝わる魔導機兵です。遥か昔からこの場所に存在した機体で、現在は機能を停止していますが、我々はこの魔導機兵の設計図を入手し、開発を行っています」



水晶壁の内部に存在したのはアトラス大森林の緑葉塔内で銅像のように扱われていた「機人族(魔シンナーズ)」であり、こちらでは完璧に近い状態で保存されており、水晶壁の内部で機能が停止していた。
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