種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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三国会談編

魔導大国到着

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「ここが魔導大国……」
「思っていたより凄いな」
「大きいです~」


飛行船フライングシャーク号に乗船しながら、レノ達は山岳地帯に存在する魔導大国に辿り着く。想像以上に巨大な城壁が広がり、その規模は城塞都市を上回り、中央部には巨大な塔が存在した。飛行船はそのまま都市の中には着地せず、城壁の傍に着地する。

全員が飛行船を降りると、城門の方角から無数の馬車が訪れ、出迎えの兵士が現れる。兵士と言っても彼らの大半が魔術師のようにローブを着込んでおり、アルトが姿を現すと彼等はその場でひれ伏す。


「ようこそおいで下さいました王国の皆様方、私はこの魔導大国の第一魔導部隊の部隊長を勤めるフィオと申します」
「始めまして、バルトロス王国現国王のアルトです」
「交易都市の盗賊王のホノカだ」
「巫女姫のヨウカだよ~」
「おおっ……御二方もご一緒でしたか」


アルトだけではなく、交易都市と聖導教会の代表の出現にフィオと名乗る女性魔導士は深く頭を下げ、すぐに全員を馬車で出迎える。レノはアルト達と同じ馬車に乗りこい、フィオに頭を下げる。


「テンペスト騎士団副団長のレノです」
「知っていますよ。貴方の勇姿はこの魔導大国でも有名ですから」
「ん?」
「剣乱武闘の時の事を言ってるんじゃないのかい?」


フィオの言葉に頭を傾げるが、ホノカの発言で剣乱武闘の映像が世界中に放映された事を思い出し、どうやら魔導大国でもレノの名前は知られているらしい。


「雷光の英雄、王国の破壊将、生きる伝説という噂は耳にしています」
「そんな仇名まで付けられていたのか……」


レノとしてはあまり目立ちたくはないが、魔導大国では彼の名前を知らないものはいないほどに有名な存在らしく、今回の会談でレノも参加すると聞きつけて既に城下町の方では大勢の人々が殺到しているという。

馬車に全員が乗り込み、魔導大国を収める「魔導王」が住むのは普通の城ではなく、巨大な塔の建築物であり、飛行船で上空から見かけた都市の中央部の塔こそが「知識の塔」と呼ばれる魔帝が待ち構える城らしい。


「魔導王様は既に皆様方を最上階でお待ちです。特にレノ副団長とはじっくりと語り合いたいと申してます」
「何で?」
「大会の決勝戦で見せた両腕の術式について問い質したい事があるそうですが……」


フィオの話によると、魔導王は剣乱武闘の際にレノが発動した「解放術式」に強い興味を抱き、直接対面して術式の詳細を教えて欲しいと願っているらしい。レノとしてはアイリィから教わった魔法なのだが、術式の仕込み方と発動方法だけしか教えられていないので詳しい説明を知ろと言われても困る。


「あの……和国の代表の方々は?」
「和国の皆様は明日に到着する予定です。今宵は皆様方を迎え入れるための宴を用意してますのでお楽しみください」



話し込んでいる間にも馬車は城門を潜り抜け、城下町を通過する。窓から見える光景は大勢の人々が詰め寄り、兵士達に阻まれながらも馬車を見学しようと殺到していた。



「おいどの馬車にあの雷光の英雄が乗ってるんだ!?」
「イケメンの国王様は何処!?」
「剛腕大将軍!!サインくれ!!」
「巫女姫様~!!」



予想以上に大勢の人々が歓迎しており、ヨウカは窓から手を振って笑みを浮かべるが、レノとしてはアルトの護衛役も務めているので迂闊には顔を出せない。何時、長老会の刺客が現れるのかも分からないため、自分が三国会談中はいつも以上に気を引き締めてなければならない。



――何事もなく馬車は街路を通過すると、遂に都市の中央部の巨大な塔の建築物に到着する。この「知識の塔」と呼ばれる建物は巨人族が世界で造り出した建築物の中でも一番を誇る巨大な建築物であり、レノ達は馬車から降りてフィオに内部に案内される。



「うわぁっ……」
「これは……」
「驚いたな……」


建物の内部は一言で表せば超巨大な「図書館」を想像させ、周囲を埋め尽くすほどに大量の蔵書が保管された本棚が並べられており、無数のローブ姿の人間達が行き交っていた。しかも一階だけではなく、二階や三階も同じ間取りであり、水晶壁の巨大な螺旋階段が最上階にまで伸びていた。

建築物の構造は城の中というよりは完全な図書館であり、実際にこの場所は一般人の出入りも禁止されていないという。魔導大国中の人間がこの場所に集まり、魔法や歴史に関する書物を学んでいるという。


「こちらにどうぞ。王国の皆様には専用の転移陣(転移魔方陣)が用意されています」


フィオは全員を案内しながら建物の中心に存在する魔方陣を移動させ、レノが知っている転移魔方陣とは紋様が異なり、何処となく放浪島の地下迷宮に存在した施設の転移装置と構造が似ていた。


「では、最上階まで転移します」


全員が魔方陣の上に移動したのを確認すると、彼女は魔方陣の周囲に立っている係員と思われる魔術師達に指示を出し、即座に魔方陣の四方に埋め込まれていた魔水晶が輝きだす。


「ゲート・オープン」


こちらの国の転移魔法の名前なのか、フィオが告げた途端に一瞬にしてレノ達の視界が切り替わり、城塞都市の王城の玉座の間と酷似した場所に移動する。


「うわっ!?もう移動した!?」
「高速転移……話には聞いていたが」
「凄いな……」


レノも転移魔方陣をよく扱うが、瞬きする間に自分達が移動した事に驚愕し、転移する際の浮遊感すらも感じなかった。


「魔導王様、王国の方々がご到着しました」
「ご苦労様です」


魔方陣の正面には玉座に腰掛けたアルトより2、3歳ほど年上の男性が座り込んでおり、彼がこの国の魔導王らしく、そのまま立ち上がって近づいてくる。容姿は中性的な顔立ちに180センチは超える長身であり、全身を黒色のスーツのような服装を纏っている。


「初めましてバルトロス国王、私が魔導大国の代表を務める魔導王です」
「こ、これはどうも」


まだ紹介をしたわけでも無いのにアルトに向けて掌を差し出し、すぐに彼も握り返す。物静かな性格を思わせるが、一国の王としての威厳が感じられた。二人が手を離すと、今度はレノの方に視線を向けて微笑みかける。


「貴方が噂に聞く雷光の英雄ですね」
「あ、はい……」


掌を差し出され、慌ててレノも握り返した時、


「貴方には個人的に色々とお話を聞きたい事があります」
「はあ……?」
「特に剣乱武闘の決勝の時に見せた魔術式や、そして天属性の魔法を極めるまでの工程を教えて欲しいですね」


レノにだけ聞こえる声量で語り掛けると、彼は掌を強く握りしめてきた。
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