種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈前半編〉

緑葉塔

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「な、なんだこいつ等⁉」
「強い……‼」
「弓隊‼ 放て‼」


チュドドドッ‼


建物の上に待機していた兵士たちがマシンガンのように矢継ぎ早に風属性の魔力付与を行った矢を連射するが、レノ達は四散して回避する。


「うざってぇっ‼」


ブォンッ‼


「うわぁっ⁉」
「きゃあっ⁉」


コウシュンが刃を空振りし、次の瞬間に建物の上にいたエルフ達が吹き飛ばされる。彼の見えない斬撃は普通のエルフには有効らしく、何度も彼が空を切ると次々とエルフ達が建物の上からバランスを崩して地上に落ちる。


「こ、コウシュンさん‼どうしてこんな事を‼」
「てめえらが正気に戻りやがれ‼頭を拉致されて、何でこんなゴキブリ共に従っているんだ‼」
「ら、拉致? どういうことですか?」
「耳を貸すな‼そいつは敵だ‼」


彼の言葉に何人かが困惑の表情を浮かべるが、すぐに他のエルフが遮る。どうやら集落のエルフの中には事情を知らされずに従っている者も存在し、もしかしたら彼等はレフィーアが人質に取られている事すら気付いていないのかもしれない。


「どけどけい‼ ここは俺に任せろ‼」
「大隊長‼」


彼の前にまるで巨人族のような筋骨隆々のダークエルフが姿を現し、レノは初めて自分の同族を拝見する。彼等は魔人族の血を受け継いだエルフであり、その能力の高さからハーフエルフでありながら迫害されずにエルフ達に受け入れられている。

大隊長と呼ばれた大男は両手に棍棒を握りしめ、コウシュンに向けて構える。彼は面倒気に大男に視線を向け、溜息を吐く。


「ふうっ……お前かよ」
「へへへっ……あんたとは戦ってみたかったんだ」
「そうかい……だったらかかってこい」



コウシュンは準備運動のように刃を空振りし、大男はその姿を見て笑みを浮かべながら棍棒を構えようとした時、



ズバババッ‼



「ぎゃあぁああああああっ⁉」
「あ、わりぃっ……つい癖でやっちまった」
「だ、大隊長⁉」


唐突に大男の手首に切傷が走り、彼はその場で武器を落として膝を着く。先ほどの準備運動のつもりで刃を空振りさせたとき、コウシュンは見えない斬撃を放っており、そのまま大男の手元を斬り付けたのだ。


「ひ、卑怯な‼ それでも誇り高き戦士なんですか⁉」
「大人数で襲い掛かっているてめえらに卑怯者呼ばわりされる覚えはねえ‼喰らえ‼」
「うわわっ⁉」


ブォオンッ‼


コウシュンは剣を大きく振り抜き、慌てて周囲にいたエルフ達が左右に別れるが、


「ば~かっ‼」


コウシュンはそのまま道を空けたエルフ達の間を潜り抜け、一気に走り去る。すぐにエルフ達が先ほどの空振りがただのハッタリだと気が付き、頬を真っ赤に染めて追跡を行う。


「待てぇっ‼」
「ぶっ殺す‼」
「止まれぇっ‼」


後方から怒声を耳にしながらもコウシュンは全力疾走を行い、不意に上空から気配を感じ取る。



――ヒヒィイイインッ‼



鳴き声を上げながら一匹のユニコーンがコウシュンの前に降り立ち、その背中に乗っている人物を見てコウシュンは眉を顰める。


「……死ぬかと思った」
「しつこいんだよてめえっ‼」


そこには全身が水浸しのフウカが息を荒げながらユニコーンにしがみ付いており、どうやら湖に落ちた後に自力で陸に上がり、自分の愛馬に乗って追いついたらしい。


「おお、フウカ護衛長‼」
「コウシュンの裏切りです‼すぐに始末してください‼」
「くそっ……前門のフウカ、後門のゴキブリとその他大勢ってところか……何言ってんだ俺?(この世界に旧世界の諺はありません)」


完全に囲まれた形になり、コウシュンは剣を構えながら周囲を伺うと、


「落雷‼」



ドォオオオンッ‼



「「ぎゃあぁあああああっ⁉」」」
「おっ?」


後方から接近してきた部隊に頭上から雷が降り注ぎ、全員が感電して倒れこむ。コウシュンが見上げると、そこにはレノが瞬脚を利用してこちら側に親指を立てており、すぐに彼も笑みを浮かべて親指を向ける。


「先に行けレノちゃん‼ こいつは俺が相手する‼」
「平気なの?」
「こんな小娘にやられるほど落ちぶれちゃいねえ‼」
「私の方が、年上‼」


ガキィイインッ‼


ユニコーンから降り立ち、フウカが剣を振るうとコウシュンもすぐに反応して刃を衝突させ、そのまま2人は激しい剣戟を繰り広げる。レノはコウシュンの言葉通り、先に進む事にする。


「結構近づきましたよ。だいたい、あと300メートルくらいです」
「ですが、そう易々と通してはくれなさそうですね……」


上空からベータとミキの声が聞こえ、前方に見える大樹に視線を向ける。あまりに大きすぎて近づいているのかもわかりにくいが、どうやらあと少しの距離にまで迫っていたらしい。だが、流石に中央に近づくほどに兵士たちの数も増えており、街路には無数のエルフ達が待ちかまえ、騎馬隊らしき者達も出現してくる。


「白馬隊‼前に‼」
「「はっ‼」」


ユニコーンに騎乗したエルフ達が槍を構え、地上を移動するレノに向けて突進してくる。そんな彼等にレノは駆け出すと、凄まじい怒声を張り上げる。


「どけぇっ‼」



――ヒヒィイイインッ⁉



雄叫びの如く怒声を張り上げると、ユニコーンたちが即座に硬直し、レノの背後に「白狼」の幻想を抱く。威嚇だけでユニコーンたちを威圧され、騎馬隊は混乱を起こす。


「お、おい⁉ どうした⁉」
「あ、暴れるな‼ 何を怖がって……‼」
「魔法か⁉」
「ちょっと通るよ‼」


ダァンッ‼


騎馬隊が乱れたせいで大きな隙が生じ、レノは建物の壁を蹴り上げてそのまま三角飛びの要領で素通りし、包囲網を破る。


「レノさん‼」
「乗ってください‼」


しばらく走り続けているとミキとベータが手を差し伸べ、そのまま2人の手を掴むと一気に空中へ上昇し、遂に三人は大樹の前に辿り着く。


「入口は……」
「あそこのようですよ」


ベータが指差す方向には大樹の根元に巨大な鋼鉄製の扉が存在し、扉の前には護衛兵隊の姿があり、慌てて彼等は空中に近づいてくるレノ達に弓矢を向けるが、


「ライトニング・ショット‼」
「紫電砲‼」


ズドォオオオンッ‼


「「ぎゃあぁああああああっ⁉」」


レノとミキが同時に雷を放出し、護衛兵たちごと扉を吹き飛ばす。
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