種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈前半編〉

ソフィアの実力

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「ブモォオオオッ……‼」
「なんだ、見かけ倒しか」


ソフィアは吹き飛ばしたミノタウロスを確認すると、既に先ほどの彼女の一撃で牙が折れたのか、口元から血反吐と共に吐き出して睨み付けてくる。拳の感触を確かめ、それほど強く殴り込んだわけでもないのにあっさりと倒れたミノタウロスを見て溜息を吐く。


「ミノっちの方がやっぱり手応えあるよ」
「モォオオオオッ‼」


侮辱されたと気づいたのか、ミノタウロスは起き上がり、そのまま肥大化した両腕をソフィアに向けて振り下ろす。



ズゥウウウンッ‼



ソフィアは敢えて正面から振り下ろされた両腕を受け止め、地面に衝撃が走る。それでも彼女は笑みを浮かべてそのままミノタウロスの腕を握りしめると、


「もういいよ……ふんっ‼」
「ブモォッ⁉」
「持ち上げた⁉」


そのまま両腕を引き寄せ、自分の倍近くの体格差が存在するにも関わらず、ソフィアはミノタウロスを背負い込み、壁に向けて投げつける。


ドゴォオオンッ‼


「ブホォッ……⁉」
「せいっ‼」


背負い投げの要領で壁に叩き付け、追撃とばかりに膝を顔面部に叩き付ける。ミノタウロスはそのまま鼻血を吹き出しながら地面に倒れ込み、痙攣する。


「ブフゥウウウッ……⁉」
「へえ……耐久力は流石だね」


終ったかと思われたが、ミノタウロスは身体を振るわせながらも起き上がり、鼻から迸る血液を一気に吹き出して地面に血が舞う。


ゴキゴキィッ……‼


「な、何の音だ?」
「あれは……おいおい冗談だろ」
「へ、変形しているのですか⁉」


ミノタウロスの身体に異変が生じ、肥大化していた腕が縮小し、筋肉が胴体に送り込まれ、巨体の割には寸胴だった両脚部に到達する。短足だったはずの足が巨大化し、レノにも見覚えのあるミノタウロスの姿へと変形する。


「へえ……やっと戦闘態勢に入ったんだ」
「ブモォオオオッ……‼」


本気になったという事なのか、ミノタウロスは笑みを浮かべて両腕を構え、ソフィアも同じように構える。先ほどとは雰囲気が一変し、普通の個体よりも二倍近くの体格に膨れ上がったミノタウロスは右足を放つ。


「ウモォッ‼」
「っ‼」



ズドォンッ‼



その速度は凄まじく、咄嗟にソフィアも左腕で受け止め、その威力に痺れる。思っていたよりも早く、さらに打撃力も増しており、彼女も表情を引き締める。


「ブモォッ‼」
「せいっ‼」



ドォオオオンッ‼



御互いが回し蹴りを放ち、衝突しただけで風圧が生じるほどの轟音が鳴り響く。リノン達はその光景に唖然とし、まさかこのような場所でミノタウロスと人間の肉弾戦が見れるとは思わなかった。


「フンッ‼」
「おっと」


ボクサーのジャブのように連続で左拳を放つミノタウロスに対し、ソフィアは難なく躱す。クロスカウンターで決めたい所だが、腕の大きさに差があり、彼女の攻撃は銅体や顔面には届かない。


「せいやっ‼」
「ブモォッ⁉」


ゴキィッ‼


必然的にこちらに伸ばしてくる左腕を狙うしかなく、タイミングを合わせて両拳を叩き付ける。ミノタウロスは挟み込まれる要領で打ち込まれた左腕を抑え、攻撃方法を変化させる。


「ブフゥウウッ‼」


ビュンッ‼


再び回し蹴りを放ち、今度はソフィアの下腹部に目掛けて放つが、彼女は一瞬早く跳躍し、そのまま下方を通り抜けようとしたミノタウロスの左足を土台にすると、


「甘いっ‼」
「ブハァッ⁉」


バキィイイッ‼


アクロバティックな動きで顎目掛けて膝を叩き込み、ソフィアはさらに空中で旋回し、踵落としを放つ。



「止めっ‼」
「ブホォオオオオオッ……⁉」



ゴキィイイイッ‼



勢いよく振り下ろされた彼女の踵がミノタウロスの頭部に直撃し、そのまま頭蓋骨を陥没させるほどの衝撃が走る。ソフィアが着地した直後、ミノタウロスは眼球から血液を迸らせ、そのまま悲鳴も上げずにゆっくりと地面に倒れ込んだ。



 ズゥウウンッ……‼



 ミノタウロスが倒された光景を目の当たりにし、ミアは口元を抑える。ソフィアの想像以上の戦闘力に対し、彼女は魔法無しでもミノタウロスを圧倒したソフィアに震える。



(これが……大将軍)
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