種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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大迷宮編 〈前半編〉

黄金の鍵

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――その後、特に大きな進展もなくレノ達は大広間に一度帰還する。時間的には鐘の音が間もなく鳴り響くはずであり、既にライオネル達も先に帰還して大広間の見張り番を行っていた部隊と合流していた。全員が集まるのを確認すると、それぞれが手短に迷宮探索で発見した情報を報告する。


「なに?お前たちもあの妙な通路を見つけたのか?」
「お前たちもという事は……」
「はい。私達も同じ通路をいくつか発見しました」
「へえ、それは興味深いね」


ライオネル達も同じガラス張りの通路を確認したらしく、どうやらレノ達が発見した場所以外にも複数の通路が存在たらしい。しかし、結局は今回の調査では他の通路を開く「鍵」のような魔道具の発見は見つからなかった。


「ちなみに封鎖されている通路には赤い煉瓦や鍵穴みたいな物は存在するの?」
「ああ、巨人部隊が選んだ迷宮に繋がる通路以外はお前たちが見つけたという色違いの煉瓦は確認されている。但し、刻み込まれている魔方陣に違いはあったがな」
「私が最初に選んだ通路は「五芒星」の魔方陣が刻まれていました。中央部には他の通路と同じく鍵穴が……」
「私達の通路は「星形」の魔方陣でしたよ~鍵穴もありました~」
「俺が発見したのは「三角形」の形をした魔方陣だったな。鍵穴も確かに存在した」


それぞれの通路には赤色の煉瓦には別々の魔方陣が刻まれていたらしく、普通に考えれば4つの鍵が存在するのかもしれない。普通に考えれば鍵穴を射し込むことで通路が解放され、新しい場所へと繋がるのかもしれないが、そもそも何処に通路を開く鍵が存在するのか。


「もう一度探すしかないのか……」
「あの広い迷宮の中から鍵を探すのですか……」
「面倒だな……ピッキングで開けられないかな」
「ぴっきんぐというのはよく分からないが、多分不可能だと思うよ。魔方陣が刻まれているのならば鍵穴自体も何か仕込まれている可能性が高い」
「無理矢理抉じ開けるのは不可能か……なら、またあの迷宮に挑むしか」
「あのさ……ちょっといいか」


話し合いの最中にダイアが声をかけ、彼は頭を搔きながら言いにくそうに自分の荷物の小袋に手を突っ込み、


「もしかして……お前等の言っている鍵ってこれの事か?」



――ダイアは袋から「三角形」のシンボルマークが刻み込まれた金色に輝く鍵を取り出し、全員がそれを確認すると沈黙が訪れる。やがて、ライオネルは目元を抑えながら震える声でダイアに尋ねる。



「一応は聞くが……お前はそれをどこで手に入れた?」
「えっと……最初に潜り込んだとき、通路の途中で扉みたいなのを発見して、中に入ると宝箱があったんだよ。んで、それを開けてみたらこの豪華そうな鍵だけが置かれていて……」
「どうしてそれを先に言わなかったのですか……」
「だ、だってよ‼知らなかったんだよ⁉他の通路に鍵穴があるなんてよぉっ‼てっきり、お宝の類だと思って回収したのを忘れてたんだよ⁉」
「馬鹿者が‼例え本物の宝の鍵であろうが、どうして報告をしなかった⁉大方、ネコババする気だったのだろうがぁっ‼」


ライオネルは激怒しながらダイアを叱りつけ、彼の手元から黄金の鍵を回収する。確認してみたところ、どうやら本物の黄金製の鍵らしく、三角形の形をしている事から恐らく獣人部隊の選んだ通路の罠を解放する鍵だと思われた。


「これをあの煉瓦に差し込めばいいのか?」
「恐らくは……ですが、罠の可能性があります。ここは慎重に……」
「じゃあ、私が差し込んでくるね‼」
「あっ⁉」


今まで傍観していたヨウカがライオネルから鍵を取り上げ、そのまま獣人部隊が選んだ通路に向けて駆け抜ける。その速度は凄まじく、駆け抜けるだけで風圧が周囲に放たれ、土煙が舞い上がる。



ドドドドッ……‼



「ま、待てヨウカ‼ 危険すぎる⁉」
「おい⁉誰かあの女子を止めろ‼」
「み、巫女姫様‼危険すぎます‼」
「ヨウカ‼ハウス‼」
「わぅんっ‼」
「いや、ポチ子が反応してどうするんだ⁉」


全員が慌てて引き留めようとするが、既にヨウカは通路の中へと消え去り、慌ててレノ達が追いかけようとするが異変が生じる。



ガコォオオンッ‼



唐突にヨウカが選んだ通路から轟音が鳴り響き、天井に異変が生じる。ゆっくりと天井が割れ、コンクリートを想像させる石柱が出現し、そのまま通路を塞ぐように下降を始めた。


「いかん‼誰かあの姫を連れ戻せ⁉」
「くそっ‼」


ダァンッ‼


レノが瞬脚を利用して通路に飛び込み、続けて他の者達も駆け出す。


「レノさん‼ 巫女姫様‼」
「ま、待ってくれ‼」
「……助ける」
「全く……‼」
「危険です‼」


脚が早いポチ子が真っ先に後に続き、その後にリノンとコトミ、更にはホノカとミアが入り込み、続けてライオネルも続こうとした時、



ゴゴゴゴッ……‼



「なにっ⁉」


ミアが通り過ぎた瞬間に石柱が一気に加速し、完全に通路を塞ぐ。ライオネルは寸前で後退して回避に成功するが、通路を塞ぐ石柱を確認し、少なくとも数十トン以上は確実に存在するほどの巨大な石柱だった。



「くそがっ‼」



ガキィイインッ‼



ライオネルは爪を立てて石柱の破壊を試みるが、結果としては彼の爪が痺れただけであり、石柱には
掠り傷一つ残らない。相当に頑丈な素材で出来ており、破壊は難しい。


「おい‼ 聞こえるか‼」
「大丈夫かお前等⁉」
「隊長‼無事ですか⁉」


石柱の向こう側に声をかけるが、完全に遮断されているのか返事は聞こえず、内部の情報が掴めない。ライオネル達は何度も石柱を叩き付けるが、とてもではないが破壊できる代物ではない。



――ゴォオオオオンッ……‼



「何っ⁉」
「やべぇっ……この音は⁉」
「か、壁から魔方陣が~」


大広間の周囲に魔方陣が出現し、ライオネルは唇を噛み締める。何時の間にか例の魔獣が出現する時間帯を迎えたらしく、周囲から転移魔方陣が出現し、


「ガァアアアッ‼」
「グルルルッ……‼」
「ウォオオオンッ‼」
「くっ……雑魚共が‼」


瞬時に無数の魔獣達が周囲の壁から姿を現し、大広間に残っていたライオネル達に襲い掛かる。慌てて全員が武器を構え、中には地上に撤退しようとする者もいたが、


「逃げるな‼この転移魔方陣を死守しろ‼ここを守らなければあいつらは帰れん‼」
「く、くそっ‼やってやらぁっ‼」
「てや~‼」


封鎖された通路に隔離されたレノ達が戻る手段があるとすれば、この大広間に展開された転移魔方陣による移動しかなく、ここで魔獣達に魔方陣を乱されたら彼等は帰る手段が無くなってしまう。ライオネル達は魔方陣を取り囲むように円陣を組み、襲い掛かる魔獣達と相対した――
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