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剣乱武闘 覇者編
予選参加者
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――剣乱武闘に備えての修行も終え、全員が無事に王城に帰還する。予選の前に説明会が行われるらしく、レノは久しぶりに再会したゴンゾウたちと共にアルトの私室へと移動すると、彼は笑みを浮かべながら一段と逞しくなった皆に頷く。
「皆、無事に帰ってきて何よりだ。修業はどうだった?」
「まあ、それなりの成果はあったよ」
「わぅんっ‼」
「俺もだ」
「私も手ごたえはあったぞ」
「私は普段通りですね……王城での政務もありますし、今回はあまり自信はありませんが……」
「私の方も似た感じです。一応は憑依術も復活しましたが、やはり今回の大会は気乗りしませんね……」
「コトミはどんな感じ……はっ⁉た、立ったまま寝てやがる……⁉」
「……すぅっ……すぅっ……」
幼馴染組のレノ達はそれ相応の手ごたえはあったが、職務上は色々と忙しいジャンヌとレミアは大会に備えてくの訓練を行えず、コトミに至っては立ったまま昼寝を行うという特技を習得しただけだった。
若干、色々と不安を覚える大会参加者のメンバーにアルトは内心大丈夫なのかと不安を抱く一方、現時点での王国の出せる勢力は彼等だけであり、皆を信じて剣乱武闘の参加証を机の上に取り出す。
「これが今回の大会の参加者メダルだ。レノはソフィアの姿として出場する分、二つ用意してある」
「金ぴかだ」
「すんすん……あんまり美味しくなさそうです」
「メダル型のチョコじゃないんだから」
机に並べられたのは参加者の証であるメダルが複数存在し、大将軍のレミアと英雄として有名なレノには「金色のメダル」が渡され、無条件で本戦出場枠に入り込める。各種族がそれぞれ2人分だけ支給される貴重なメダルであり、バルトロス王国側はレノとレミアが参加する事になった。
「このメダルを所持していれば大会7日目のトーナメントに出場できるらしい。王国側は大将軍のレミア将軍とレノに参加してもらう」
「え?私などよりゴンゾウさんやジャンヌさんが……」
「いえ、私などよりレミアさんの方がよろしいと思います。私は聖剣が無ければ銀の英雄や私の師……ミキには勝てないでしょう」
「俺は、自分の力で勝ち残る」
ゴンゾウは敢えて「銅のメダル」を取り上げ、このメダルは予選出場枠として最も多く発行されている参加証であり、大将軍でありながらゴンゾウは自らの力で予選を勝ち抜くために銅のメダルを所望した事になる。
「ちなみに聖導教会からコトミさん……いや聖天魔導士に渡すようにこのメダルを渡されたんだが……起こした方が良いのかな?」
「ほら、起きろタマ‼」
「……はっ、猫みたいな名前で呼ばれた気がする」
レノが声をかけるとコトミは目覚め、すぐに彼の手からメダルを差し出される。聖導教会から送られてきたのは「銀色のメダル」であり、こちらは5日目の最終予選に出場できる参加証である。
「君たちがいない間に何度か大会側から規則変更や参加証の出場枠の変更が行われている。今回の参加者は1万人を予想されていたが、実際のところは参加するのはその半分に満たないだろう」
「わふっ? 何でですか?」
「余分な出場枠を潰すために参加証のメダルを買い占めたり、強奪したりする輩がいるからでしょ?」
「そういう事か……」
前回や前々回の大会にも行われた方法であり、金銭に余裕がある者は参加証を余分に買い占め、腕に自信のある者は参加者からメダルを強奪し、彼等が出場できない様に隠蔽する。今回は今までの中でも最大規模の参加者が出場する予定だが、それでも自分が優勝する可能性を挙げるために参加証を横領する者は後を絶たない。
「とはいえ、参加証を独占するというのは剣乱武闘の恒例のような物だから厳しくは注意できない……問題を起こせば当然ながら罰するが、現状では参加証を正当な手段で余分に獲得した貴族や豪族には注意する事が出来ない」
「まあ、そりゃそうだろうね」
参加証は決して安い値段とは言えず、それなりの数を揃えるとしたら途轍もない費用を必要とする。そもそも正式な手段で購入した参加証ならばその後の使い道は購入者の自由であり、それを禁じる事は出来ない。
「私は銀のメダルか……別に銅でも構わないんだが」
「私は銅のメダルです。ゴンゾウさんと一緒ですね‼」
「おお、共に勝ち残るぞ」
「俺は……いや、女の方の俺も銅のメダルか……」
「私は銀のメダルですか」
どうやら一日目の第一次予選に参加するメンバーはレノ、ゴンゾウ、ポチ子という旧第四部隊メンバーとなり、他の者達は5日目以降に合流する事になりそうだった。
「けど、予選から参加するとなるとまた森人族に命を狙われそうだな……仕方ない、殺られる前に殺るか……」
「……手伝う」
「お供します‼」
「待て‼ 一体何をする気だお前たち⁉」
レノが指を鳴らしながら目つきを鋭くさせると、すぐにコトミとレミアが反応し、リノンがツッコミを入れる。そんな彼らにアルトは苦笑を浮かべ、
「いや、その事なら大丈夫だ。今回の予選は種族別に分けるような規則は存在しないよ」
「え、そうなの?」
「ああ……但し、例年と比べて随分と風変わりな内容になっているらしい。今回の第一次予選は参加者をいくつかに纏めて行われるらしい」
「また魔物と戦うの?」
「それは分からないが……情報によれば交易都市で最近誕生した飛行船が闘人都市に停泊しているらしい。大会のために必要な品物を輸送してきたようだが、中には危険度の高さから飼育を禁じられているはずの魔物が拘束された状態で運び込まれたと聞いている」
「もう税関とかで捕まえたら?」
明らかに余計な代物を持ち出してきたホノカに文句を言いたいところだが、彼女は大会側の要望で運んで来ただけであり、それに世界中に交易を執り行っている彼女がいなくなるのは王国側にも不利益を生むらしく、捕まえる事は出来ない。
「まあ、決して間違いがないように彼女も魔物達を拘束しているし、それに聖導教会からもワルキューレ騎士団が派遣されて見張りを行っているから問題ない……と思いたい」
「しかし……余興とはいえ魔物を取り扱うとなると観客が危険に巻き込まれる可能性もありますね」
「その点についても大丈夫だ。今回は今までの失敗を教訓に観客席には森人族の結界石が取り付けられている。聖遺物クラスの砲撃でも無ければ打ち破れない強固な結界で守護している以上、魔物が観客達に危害を加える事はないだろう」
「……さっきから気になっていたが、やたらと詳し過ぎないかアルト?まさか、自分は出場しないからといって傍観者として大会を楽しもうと下調べしているじゃ……」
「そ、そんな事はないさ‼あくまでも大会側から伝えられた事を話しているだけだよ⁉」
焦った風に説明するアルトにリノンは疑わし気な視線を向け、確かに大会に参加しない者にとっては気楽な気持ちだろうが、一応は優勝者によっては種族間のバランスにも影響があるため、釘を刺して置く。
「けど、この大会って俺とかゴンゾウとかポチ子が優勝したどうなるの? 所属は王国とは言え、種族的には俺はハーフエルフ、ゴンちゃんは巨人族、ポチ子はワンコ族……いや獣人族側の有利になるんじゃないの?」
「うっ……そ、その場合はきっと優勝者の種族と所属している国が有利に傾くだろう。だが、レノの場合は恐らくは王国が有利になると思うが……」
「そうだね。あいつら、未だに俺の事を嫌ってるしね」
英雄になったとはいえ、森人族の大半はハーフエルフであるレノの事を受け入れる様子はなく、むしろ罪深き存在(魔王と同じハーフエルフという理由)でありながら英雄扱いをされているレノに憎悪を向ける者もいる。
レフィーアやカイザンといったレノの母親であるレイアと親交があった者は比較的に友好的だが、先の森人族の影とのいざこざの件もあり、レノは一層に森人族の恨みを買ってしまった。
「そう言えば大会の開始時刻は何時から? 朝早くだとうちのペット達が起きれなそうだけど」
「わふぅっ……(欠伸)眠くなってきました」
「……ぐうぐうっ(睡眠中)」
「もう寝とる!?」
既に時刻も夕方を迎え、だいたい19時(この世界の一日は22時間)を迎えており、普段ならばレノも就寝している時間帯だった。アルトはそんな2人を見て苦笑しながらも、大会側に渡されたと思われる資料を読み上げる。
「……予選の開始時刻は正午からだそうだが、1時間前に開会式が執り行われる。各種族の挨拶が終った後、人魚族の歌唱劇ライブが行われる」
「なんか半分はお祭り気分な感じだね」
「剣乱武闘は決して武力を競うだけの大会じゃないからな。皆が笑い合い、楽しみ合い、そして力を競い合う伝統ある大会だぞ」
「そう聞くと楽しそうだけど、実際は命を落とすぐらいの危険性がある大会なんだよなぁ……」
実際にレノも何度か危うかった場面があり、油断はできない。それぞれが明日から始まる剣乱武闘に備え、今日の所は解散とし、明日の朝にレノの転移魔方陣で予選が開始される闘人都市の郊外に設立された「予選闘技場」に向かう事が決定した。
「皆、無事に帰ってきて何よりだ。修業はどうだった?」
「まあ、それなりの成果はあったよ」
「わぅんっ‼」
「俺もだ」
「私も手ごたえはあったぞ」
「私は普段通りですね……王城での政務もありますし、今回はあまり自信はありませんが……」
「私の方も似た感じです。一応は憑依術も復活しましたが、やはり今回の大会は気乗りしませんね……」
「コトミはどんな感じ……はっ⁉た、立ったまま寝てやがる……⁉」
「……すぅっ……すぅっ……」
幼馴染組のレノ達はそれ相応の手ごたえはあったが、職務上は色々と忙しいジャンヌとレミアは大会に備えてくの訓練を行えず、コトミに至っては立ったまま昼寝を行うという特技を習得しただけだった。
若干、色々と不安を覚える大会参加者のメンバーにアルトは内心大丈夫なのかと不安を抱く一方、現時点での王国の出せる勢力は彼等だけであり、皆を信じて剣乱武闘の参加証を机の上に取り出す。
「これが今回の大会の参加者メダルだ。レノはソフィアの姿として出場する分、二つ用意してある」
「金ぴかだ」
「すんすん……あんまり美味しくなさそうです」
「メダル型のチョコじゃないんだから」
机に並べられたのは参加者の証であるメダルが複数存在し、大将軍のレミアと英雄として有名なレノには「金色のメダル」が渡され、無条件で本戦出場枠に入り込める。各種族がそれぞれ2人分だけ支給される貴重なメダルであり、バルトロス王国側はレノとレミアが参加する事になった。
「このメダルを所持していれば大会7日目のトーナメントに出場できるらしい。王国側は大将軍のレミア将軍とレノに参加してもらう」
「え?私などよりゴンゾウさんやジャンヌさんが……」
「いえ、私などよりレミアさんの方がよろしいと思います。私は聖剣が無ければ銀の英雄や私の師……ミキには勝てないでしょう」
「俺は、自分の力で勝ち残る」
ゴンゾウは敢えて「銅のメダル」を取り上げ、このメダルは予選出場枠として最も多く発行されている参加証であり、大将軍でありながらゴンゾウは自らの力で予選を勝ち抜くために銅のメダルを所望した事になる。
「ちなみに聖導教会からコトミさん……いや聖天魔導士に渡すようにこのメダルを渡されたんだが……起こした方が良いのかな?」
「ほら、起きろタマ‼」
「……はっ、猫みたいな名前で呼ばれた気がする」
レノが声をかけるとコトミは目覚め、すぐに彼の手からメダルを差し出される。聖導教会から送られてきたのは「銀色のメダル」であり、こちらは5日目の最終予選に出場できる参加証である。
「君たちがいない間に何度か大会側から規則変更や参加証の出場枠の変更が行われている。今回の参加者は1万人を予想されていたが、実際のところは参加するのはその半分に満たないだろう」
「わふっ? 何でですか?」
「余分な出場枠を潰すために参加証のメダルを買い占めたり、強奪したりする輩がいるからでしょ?」
「そういう事か……」
前回や前々回の大会にも行われた方法であり、金銭に余裕がある者は参加証を余分に買い占め、腕に自信のある者は参加者からメダルを強奪し、彼等が出場できない様に隠蔽する。今回は今までの中でも最大規模の参加者が出場する予定だが、それでも自分が優勝する可能性を挙げるために参加証を横領する者は後を絶たない。
「とはいえ、参加証を独占するというのは剣乱武闘の恒例のような物だから厳しくは注意できない……問題を起こせば当然ながら罰するが、現状では参加証を正当な手段で余分に獲得した貴族や豪族には注意する事が出来ない」
「まあ、そりゃそうだろうね」
参加証は決して安い値段とは言えず、それなりの数を揃えるとしたら途轍もない費用を必要とする。そもそも正式な手段で購入した参加証ならばその後の使い道は購入者の自由であり、それを禁じる事は出来ない。
「私は銀のメダルか……別に銅でも構わないんだが」
「私は銅のメダルです。ゴンゾウさんと一緒ですね‼」
「おお、共に勝ち残るぞ」
「俺は……いや、女の方の俺も銅のメダルか……」
「私は銀のメダルですか」
どうやら一日目の第一次予選に参加するメンバーはレノ、ゴンゾウ、ポチ子という旧第四部隊メンバーとなり、他の者達は5日目以降に合流する事になりそうだった。
「けど、予選から参加するとなるとまた森人族に命を狙われそうだな……仕方ない、殺られる前に殺るか……」
「……手伝う」
「お供します‼」
「待て‼ 一体何をする気だお前たち⁉」
レノが指を鳴らしながら目つきを鋭くさせると、すぐにコトミとレミアが反応し、リノンがツッコミを入れる。そんな彼らにアルトは苦笑を浮かべ、
「いや、その事なら大丈夫だ。今回の予選は種族別に分けるような規則は存在しないよ」
「え、そうなの?」
「ああ……但し、例年と比べて随分と風変わりな内容になっているらしい。今回の第一次予選は参加者をいくつかに纏めて行われるらしい」
「また魔物と戦うの?」
「それは分からないが……情報によれば交易都市で最近誕生した飛行船が闘人都市に停泊しているらしい。大会のために必要な品物を輸送してきたようだが、中には危険度の高さから飼育を禁じられているはずの魔物が拘束された状態で運び込まれたと聞いている」
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「まあ、決して間違いがないように彼女も魔物達を拘束しているし、それに聖導教会からもワルキューレ騎士団が派遣されて見張りを行っているから問題ない……と思いたい」
「しかし……余興とはいえ魔物を取り扱うとなると観客が危険に巻き込まれる可能性もありますね」
「その点についても大丈夫だ。今回は今までの失敗を教訓に観客席には森人族の結界石が取り付けられている。聖遺物クラスの砲撃でも無ければ打ち破れない強固な結界で守護している以上、魔物が観客達に危害を加える事はないだろう」
「……さっきから気になっていたが、やたらと詳し過ぎないかアルト?まさか、自分は出場しないからといって傍観者として大会を楽しもうと下調べしているじゃ……」
「そ、そんな事はないさ‼あくまでも大会側から伝えられた事を話しているだけだよ⁉」
焦った風に説明するアルトにリノンは疑わし気な視線を向け、確かに大会に参加しない者にとっては気楽な気持ちだろうが、一応は優勝者によっては種族間のバランスにも影響があるため、釘を刺して置く。
「けど、この大会って俺とかゴンゾウとかポチ子が優勝したどうなるの? 所属は王国とは言え、種族的には俺はハーフエルフ、ゴンちゃんは巨人族、ポチ子はワンコ族……いや獣人族側の有利になるんじゃないの?」
「うっ……そ、その場合はきっと優勝者の種族と所属している国が有利に傾くだろう。だが、レノの場合は恐らくは王国が有利になると思うが……」
「そうだね。あいつら、未だに俺の事を嫌ってるしね」
英雄になったとはいえ、森人族の大半はハーフエルフであるレノの事を受け入れる様子はなく、むしろ罪深き存在(魔王と同じハーフエルフという理由)でありながら英雄扱いをされているレノに憎悪を向ける者もいる。
レフィーアやカイザンといったレノの母親であるレイアと親交があった者は比較的に友好的だが、先の森人族の影とのいざこざの件もあり、レノは一層に森人族の恨みを買ってしまった。
「そう言えば大会の開始時刻は何時から? 朝早くだとうちのペット達が起きれなそうだけど」
「わふぅっ……(欠伸)眠くなってきました」
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既に時刻も夕方を迎え、だいたい19時(この世界の一日は22時間)を迎えており、普段ならばレノも就寝している時間帯だった。アルトはそんな2人を見て苦笑しながらも、大会側に渡されたと思われる資料を読み上げる。
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実際にレノも何度か危うかった場面があり、油断はできない。それぞれが明日から始まる剣乱武闘に備え、今日の所は解散とし、明日の朝にレノの転移魔方陣で予選が開始される闘人都市の郊外に設立された「予選闘技場」に向かう事が決定した。
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