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剣乱武闘 覇者編
龍皇という存在
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「俺がお前に会いに来たのは、この龍皇と呼ばれる存在が目覚めるかも知れない事を伝えるためだ。アルトの奴は余計な心配をさせたくないために連絡しなかったようだが、事態は一刻も争うかも知れん」
「どういう事?」
「……この資料を調べたところ、どうやら文字の筆跡から確認するにこれを書いたのは先代の魔人王らしい」
「えっ」
レノの脳裏にアルトと2人がかり打ち倒した漆黒の鎧を纏った魔人王(ゼロ)が浮かび、言われてみれば彼は1000年以上前の時代から魔王リーリスに仕えていた存在であり、有り得ない話ではない。彼がこの資料を保管していたのも、自分が書いた資料を保管していても別に可笑しくはない。
「この資料の内容を読み解くと、どうやらヤマタノオロチという生物の事細かな情報が書き込まれているらしい。資料というよりは日記に近く、内容の半分は魔王に対する忠誠を誓った文章だったが……どうやらこの巻物によると1000年も前に魔王はヤマタノオロチと交戦したらしい」
「あの魔王(リーリス)が?」
1000年前となると魔王がアイリィ(アイル)の身体を乗っ取り、恐らくは彼女の人生(?)の中でも全盛期と思われる時代にヤマタノオロチと交戦した事になるが、結果が気になる。
「これによれば魔王は大陸の大部分を制覇し、そして最後の標的としてアマラ砂漠に侵攻したらしい」
「え? でもあそこって森人族にとっては天敵のような場所だから侵攻しなかったはずじゃ……」
「うむ。俺もそう伝えて聞いていたが……どうやら一度だけ、アマラ砂漠に魔王が赴いたことがあるらしい」
レノは以前に全種族を支配した魔王はアマラ砂漠だけは「何の利益も生まない土地」として見捨てたという話を聞いたことがあるが、どうやら巻物に書き込まれた内容では事実は違うらしく、大陸の殆どを制覇した魔王が侵攻した事があるという事実に驚きを隠せない。
「まあ、行軍中で魔王が何度も引き返そうとしたらしいが、先代が根気よく説得して思いとどまらせたらしい」
「身体を乗っ取っても、森人族の本能には抗えなかったか……」
緑の自然を愛する森人族にとっては砂漠のような緑が存在しない場所は忌み嫌われ、実際にレノもホノカに交易都市に遊びに来ないかを誘われた事が何度かあるが、あまり興味を持てない。
「まあ、結局は魔王も最後の反抗勢力が存在するかもしれないアマラ砂漠を放っておくわけにもいかず、渋々と侵攻したようだが……砂漠での行軍の最中にこのヤマタノオロチが出現したらしい」
「砂漠に?」
その話が事実ならばヤマタノオロチはアマラ砂漠で誕生した生物なのかと思ったが、それだとレノが地下迷宮で出会った人型の生物の話と辻褄が合わず、もしかしたら何らかの理由でヤマタノオロチが地下迷宮から抜け出し、アマラ砂漠に移動した可能性もある。
「その巻物が書き込まれた時期は分からない? 放浪島が魔王に地上から隔離した後か前か……」
「いや、資料には暦は何も書かれていない。ただ、内容から確認するに恐らくは放浪島を隔離した後だろうな。あの島は勇者を打ち倒した直後に天空に浮き上がったと聞いている」
ライオネルの話が事実だとするとレノは疑問を抱く。地下迷宮でヤマタノオロチが誕生したとすると、どの時期から放浪島からアマラ砂漠に移動したのかが謎であり、まさか放浪島が地上から隔離された後にヤマタノオロチがアマラ砂漠に移動したとは思いにくい。あの島は常に数千メートルの高度で飛行しており、いくら伝説獣とは言え、あの高さから落ちたら生物であるならば生きているとは思えないが、もしかしたらヤマタノオロチは腐敗竜や嵐水竜のように飛行できる生物かもしれない。
「話を戻すが、魔王は突如として出現したヤマタノオロチと交戦し、数多くの被害を生みながらも封印することに成功したらしい。だが、この戦闘を切っ掛けに魔王も相当な損傷を受けたらしく、長い眠りについたそうだ」
「あの魔王が……」
レノは魔王討伐大戦で姿を現した魔王の姿を思い浮かべ、あの時は複数の聖痕をアイリィが取り戻していたからこそ弱体化していたが、それでもレノ達全員の総攻撃、さらにはアイリィとカリバーンの力でやっと打ち倒せたが、全盛期はさらにあの時以上の力を保有していたことは間違いない。
そんな魔王が大勢の配下を引き連れながらヤマタノオロチと交戦し、しかも倒しきれずに封印する方法を選び、さらにはその戦闘が切欠で弱体化した事からヤマタノオロチの戦闘力は魔王と同等、いやそれ以上の可能性が高い。恐らくはこの時期にアイリィは魔王がこの時に休眠活動に入った隙を狙い、魂だけの存在として抜け出して魔槍と聖剣を奪取する事ができたのだろう。
「まさか、今度はこのヤマタノオロチが復活するとでも書いてあったの?」
「いや……文章には封印は魔王が生存している限りは解かれることはないと書かれていた。つまり……既に復活していると考えるべきだろう」
まさかのライオネルの発言にレノは黙り込み、最早ここまで来ると驚きを通り越して呆れてしまう。だが、すぐにある疑問を抱く。
「魔王が死んだのは随分前だけど、伝説獣の件はともかく、結構何事も起きてない様に思うけど……」
ライオネルの推測が正しいとしたら「ヤマタノオロチ」と呼ばれる生物は当の昔に復活しており、それならばどうして未だに世界には何事も問題は起きていないのか。他の伝説獣は一体が目覚めるだけでも様々な事件を巻き起こしたが、ヤマタノオロチと呼ばれる生物は発見すらされていない。
「恐らくだが長き封印によって衰弱している可能性がある。バジリスクとは違い、アマラ砂漠は栄養となる物は豊富ではないからな……」
「なるほど……」
深淵の森に眠っていたバジリスクは目覚めたときでも驚異的な力を誇ったが、あれは深淵の森の大地のエネルギーを喰らっていただからであり、実際に海底に沈んでいたリバイアサンも再戦時の時は100メートルを超えていたが、最初の頃は体長が50メートルにも満たないほどに衰弱した状態だった。
「とは言っても、これはあくまでも推測の域を出ん。ヤマタノオロチが本当に復活しているのかも分からんし、そもそも証拠となりそうな物がこの古びた巻物だけではな……一応は世界会議でも忠告したが、結局は信憑性が薄いという事であまり奴等も耳は貸さなかった」
「アルトが連絡しなかったのってそれが原因じゃない」
「まあ……俺としても考え過ぎかと思ったが、一応は忠告しておくべきだと思ってな」
ライオネル自身も巻物の内容は信じ切れていない節があり、それでもわざわざこの場所までレノに伝えに来た辺りは不安を拭いきれなかったのだろう。
「それとここから本題に入るが……今回の大会、どうやら雲行きが怪しいぞ」
「どういう事?」
「森人族の影の事を知っているな? 奴等の仕出かした行為で森人族側は立場が危うくなり、それが功を差して六種族同盟が設立した訳だが……どうやら奴等は独自でまたもや禄でもない事を企んでいるらしい」
「そんな情報をどこで掴んできたのさ?」
「魔人族の情報収集力を舐めるな。人間や森人族のような「影」と呼ばれる存在は居ないが、我等には我らの情報網が存在する。そして聞いた話によると今度の大会に途轍もない大物も出て来るらしい」
「なっ……まさか聖導教会のリーサルウェポンのヨウカが……⁉」
「違う‼ というかあの姫は戦えるのか⁉」
「じゃあ誰?」
ヨウカならば案外ノリノリで出場し、対戦相手から派手に土煙を巻き上げながら逃げ惑う光景が思い浮かぶが、流石にセンリが許すはずがない。ライオネルの語る大物とは何者なのかと問い質すと、
「森人族の中でも異端児と呼ばれている男が参加する。俺は奴と一度だけ戦ったことがあるが……強いぞ」
「どういう事?」
「……この資料を調べたところ、どうやら文字の筆跡から確認するにこれを書いたのは先代の魔人王らしい」
「えっ」
レノの脳裏にアルトと2人がかり打ち倒した漆黒の鎧を纏った魔人王(ゼロ)が浮かび、言われてみれば彼は1000年以上前の時代から魔王リーリスに仕えていた存在であり、有り得ない話ではない。彼がこの資料を保管していたのも、自分が書いた資料を保管していても別に可笑しくはない。
「この資料の内容を読み解くと、どうやらヤマタノオロチという生物の事細かな情報が書き込まれているらしい。資料というよりは日記に近く、内容の半分は魔王に対する忠誠を誓った文章だったが……どうやらこの巻物によると1000年も前に魔王はヤマタノオロチと交戦したらしい」
「あの魔王(リーリス)が?」
1000年前となると魔王がアイリィ(アイル)の身体を乗っ取り、恐らくは彼女の人生(?)の中でも全盛期と思われる時代にヤマタノオロチと交戦した事になるが、結果が気になる。
「これによれば魔王は大陸の大部分を制覇し、そして最後の標的としてアマラ砂漠に侵攻したらしい」
「え? でもあそこって森人族にとっては天敵のような場所だから侵攻しなかったはずじゃ……」
「うむ。俺もそう伝えて聞いていたが……どうやら一度だけ、アマラ砂漠に魔王が赴いたことがあるらしい」
レノは以前に全種族を支配した魔王はアマラ砂漠だけは「何の利益も生まない土地」として見捨てたという話を聞いたことがあるが、どうやら巻物に書き込まれた内容では事実は違うらしく、大陸の殆どを制覇した魔王が侵攻した事があるという事実に驚きを隠せない。
「まあ、行軍中で魔王が何度も引き返そうとしたらしいが、先代が根気よく説得して思いとどまらせたらしい」
「身体を乗っ取っても、森人族の本能には抗えなかったか……」
緑の自然を愛する森人族にとっては砂漠のような緑が存在しない場所は忌み嫌われ、実際にレノもホノカに交易都市に遊びに来ないかを誘われた事が何度かあるが、あまり興味を持てない。
「まあ、結局は魔王も最後の反抗勢力が存在するかもしれないアマラ砂漠を放っておくわけにもいかず、渋々と侵攻したようだが……砂漠での行軍の最中にこのヤマタノオロチが出現したらしい」
「砂漠に?」
その話が事実ならばヤマタノオロチはアマラ砂漠で誕生した生物なのかと思ったが、それだとレノが地下迷宮で出会った人型の生物の話と辻褄が合わず、もしかしたら何らかの理由でヤマタノオロチが地下迷宮から抜け出し、アマラ砂漠に移動した可能性もある。
「その巻物が書き込まれた時期は分からない? 放浪島が魔王に地上から隔離した後か前か……」
「いや、資料には暦は何も書かれていない。ただ、内容から確認するに恐らくは放浪島を隔離した後だろうな。あの島は勇者を打ち倒した直後に天空に浮き上がったと聞いている」
ライオネルの話が事実だとするとレノは疑問を抱く。地下迷宮でヤマタノオロチが誕生したとすると、どの時期から放浪島からアマラ砂漠に移動したのかが謎であり、まさか放浪島が地上から隔離された後にヤマタノオロチがアマラ砂漠に移動したとは思いにくい。あの島は常に数千メートルの高度で飛行しており、いくら伝説獣とは言え、あの高さから落ちたら生物であるならば生きているとは思えないが、もしかしたらヤマタノオロチは腐敗竜や嵐水竜のように飛行できる生物かもしれない。
「話を戻すが、魔王は突如として出現したヤマタノオロチと交戦し、数多くの被害を生みながらも封印することに成功したらしい。だが、この戦闘を切っ掛けに魔王も相当な損傷を受けたらしく、長い眠りについたそうだ」
「あの魔王が……」
レノは魔王討伐大戦で姿を現した魔王の姿を思い浮かべ、あの時は複数の聖痕をアイリィが取り戻していたからこそ弱体化していたが、それでもレノ達全員の総攻撃、さらにはアイリィとカリバーンの力でやっと打ち倒せたが、全盛期はさらにあの時以上の力を保有していたことは間違いない。
そんな魔王が大勢の配下を引き連れながらヤマタノオロチと交戦し、しかも倒しきれずに封印する方法を選び、さらにはその戦闘が切欠で弱体化した事からヤマタノオロチの戦闘力は魔王と同等、いやそれ以上の可能性が高い。恐らくはこの時期にアイリィは魔王がこの時に休眠活動に入った隙を狙い、魂だけの存在として抜け出して魔槍と聖剣を奪取する事ができたのだろう。
「まさか、今度はこのヤマタノオロチが復活するとでも書いてあったの?」
「いや……文章には封印は魔王が生存している限りは解かれることはないと書かれていた。つまり……既に復活していると考えるべきだろう」
まさかのライオネルの発言にレノは黙り込み、最早ここまで来ると驚きを通り越して呆れてしまう。だが、すぐにある疑問を抱く。
「魔王が死んだのは随分前だけど、伝説獣の件はともかく、結構何事も起きてない様に思うけど……」
ライオネルの推測が正しいとしたら「ヤマタノオロチ」と呼ばれる生物は当の昔に復活しており、それならばどうして未だに世界には何事も問題は起きていないのか。他の伝説獣は一体が目覚めるだけでも様々な事件を巻き起こしたが、ヤマタノオロチと呼ばれる生物は発見すらされていない。
「恐らくだが長き封印によって衰弱している可能性がある。バジリスクとは違い、アマラ砂漠は栄養となる物は豊富ではないからな……」
「なるほど……」
深淵の森に眠っていたバジリスクは目覚めたときでも驚異的な力を誇ったが、あれは深淵の森の大地のエネルギーを喰らっていただからであり、実際に海底に沈んでいたリバイアサンも再戦時の時は100メートルを超えていたが、最初の頃は体長が50メートルにも満たないほどに衰弱した状態だった。
「とは言っても、これはあくまでも推測の域を出ん。ヤマタノオロチが本当に復活しているのかも分からんし、そもそも証拠となりそうな物がこの古びた巻物だけではな……一応は世界会議でも忠告したが、結局は信憑性が薄いという事であまり奴等も耳は貸さなかった」
「アルトが連絡しなかったのってそれが原因じゃない」
「まあ……俺としても考え過ぎかと思ったが、一応は忠告しておくべきだと思ってな」
ライオネル自身も巻物の内容は信じ切れていない節があり、それでもわざわざこの場所までレノに伝えに来た辺りは不安を拭いきれなかったのだろう。
「それとここから本題に入るが……今回の大会、どうやら雲行きが怪しいぞ」
「どういう事?」
「森人族の影の事を知っているな? 奴等の仕出かした行為で森人族側は立場が危うくなり、それが功を差して六種族同盟が設立した訳だが……どうやら奴等は独自でまたもや禄でもない事を企んでいるらしい」
「そんな情報をどこで掴んできたのさ?」
「魔人族の情報収集力を舐めるな。人間や森人族のような「影」と呼ばれる存在は居ないが、我等には我らの情報網が存在する。そして聞いた話によると今度の大会に途轍もない大物も出て来るらしい」
「なっ……まさか聖導教会のリーサルウェポンのヨウカが……⁉」
「違う‼ というかあの姫は戦えるのか⁉」
「じゃあ誰?」
ヨウカならば案外ノリノリで出場し、対戦相手から派手に土煙を巻き上げながら逃げ惑う光景が思い浮かぶが、流石にセンリが許すはずがない。ライオネルの語る大物とは何者なのかと問い質すと、
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