種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘 覇者編

クラーケン三号機

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城塞都市からクラーケン三号機で闘人都市へと向かう際中、レノは飛行船に内蔵されたカフェに案内され、一先ずはこれまでの経緯を三人に話す。


「かくかくわふ~(事情説明)」
「ふ~んっ……レノたん、まだ強くなりたいんだ」
「ヨウカ、鼻にクリームが付いているよ。というか、どうしてそんな場所に付くんだい?」
「……うまうま」
「まさかこの世界でケーキが食べられるとは思わなかった」


丸型のテーブルに囲む形で四人は座り込み、ホノカの用意したケーキを食す。ヨウカはショートケーキというよりは結婚式などで用意されているウェディングケーキを想像させる巨大なケーキを頬張り、ホノカはチーズケーキを食し、コトミはチョコレートケーキを食べ、レノはキャロットケーキを食す。

この世界の菓子は基本的には甘い物よりも煎餅などといった和菓子(?)が一般的であり、ケーキなどの食べ物は上流階級の人間にしか食べられない嗜好品であり、久しぶりの甘味に感動しながらもレノは話を続ける。


「ホノカも参戦するんでしょ? 聖遺物の使用が禁止されているのに大丈夫?」
「僕としては今すぐにでも出場を辞退したいんだが……あの女が戦わなければ僕の都市を崩壊させると脅してきてね」
「ホムホムはホノカちゃんの事が嫌いだからね~」
「そのホムホムってホムラの事?命知らずだなヨウカ……」


ホノカがどうして剣乱武闘に参加する事を表明したのかというと、時を一ヶ月ほど前に遡り、彼女がアマラ砂漠の交易都市に滞在している際、宮殿の警備を全て薙ぎ倒してホムラが姿を現したことが切っ掛けであり、再開されるという剣乱武闘に出場するように脅迫されたのだ。



『約束がある以上はお前は殺さない。だが、試合形式で戦う分には約束には反しない』



などと堂々と王座の前で告げられ、ホノカとしては何の利益もない大会参加に渋ったが、彼女はさらにこう続けた。



『お前が聖遺物に興味を示しているのは知っている。だから賭けをしよう。お前か、もしくはレノが私に勝てたらこの槍を渡す。その代わりに私が勝った暁にはお前のクサナギを貰うぞ』



武器コレクターであるホノカにとっては非常に興味深い内容であり、彼女は迷った末に譲歩としてホムラには大会中に「魔槍(ゲイ・ボルグ)」の使用を封じさせ、さらには彼女が自分たち以外の相手に敗退した場合も受け渡す事を条件に大会出場を承諾した。


「完全にそれ俺とばっちりじゃん」
「仕方ないだろう。だいたい、あれは君の姉じゃないか? 姉の不始末は弟の君が引き受けてくれ」
「理不尽な世の中だな……」


全く関係ない自分が二人の間の賭けに巻き込まれている事にレノが溜息を吐く一方、ホノカがホムラの魔槍にまで興味を持っていたのは意外だった気がする。前の時は禍々しすぎて興味がないと言っていたような気がしたが、気が変わったのだろうかと視線を向けると、


「まあ、僕としてもあんな使い手を選びそうな槍なんて要らないんだけどね。あの女を一度でいいからぎゃふんと言わせたい」
「なるほど」


ホノカとしてはしつこく自分に付きまとってくるホムラをひと泡吹かせたいらしく、そのために自分の身を危険に晒しながらも大会に参加する辺りは感心するが、そもそも彼女が聖遺物抜きで戦えるのかが疑問だが。


「ホノカって強いの?」
「どうかな~私と腕相撲で勝った事はないよね」
「ああ、10歳の頃に冗談抜きにヨウカに腕をへし折られた時から勝負はしなくなったね」
「え、ヨウカってサ〇ヤ人なの?」
「ち、違うよ~‼ あの時は手加減が上手く出来なくて……今はちゃんと骨に罅が入る程度の手加減は出来るようになったんだから‼」
「……あんまり変わんない」


小さい頃から巫女姫の才能(ポテンシャル)を発揮していたヨウカに対し、いっその事彼女が大会に出場した方が良いのではないかと思うが、流石にそれはセンリが認めないだろう。


「まあ、僕の事は大丈夫だ。聖遺物や聖痕がなくとも戦える手段はあるさ。それよりもレノ君の話に戻るんだが……君は何もする必要がないと思うが」
「ん? どういう事?」


ホノカの発言にレノが首を傾げると、彼女は少し呆れが混じった溜息を吐きだし、人差し指を突き付ける。


「この際だからはっきりと言わせてもらうが……君に指導できる人間なんてこの世にはいないよ」
「じゃあ、他の種族に頼むしかないのか……」
「いや、今のは僕の言い方が悪かった。より正確には君に指導できる存在何ていないという事だよ」
「どういう事?」


彼女の言葉に三人が首を傾げると、ホノカはまだ分からないのかとばかりに首を振り、


「レノ君……君は自分より強い人がこの世界にどれだけいると思う?」
「自分より強い人……?」


言われてみて考えるが、心当たりのある人物と言えば真っ先にホムラが思い浮かぶが、その他に確実に自分よりも強いという相手は思い浮かばない。ジャンヌやゴンゾウ、他にもリノンといった強者は知っているが、彼等が自分よりも圧倒的に強いという感じはない。

ライオネルやロスト・ナンバーズのメンバーも猛者であることは認めるが、それでも一度だって自分が彼等よりも劣っているなど考えたことがない。自分1人じゃ勝てない存在(伝説獣)ならば幾らでもいるだろうが、人間に限定されると自分よりも強い相手はホムラ以外に思い浮かばない。


「う~ん……ホムラとか」
「そのホムラも君にも君は一度勝ってるじゃないか? 例え、他の仲間達の協力を得たとしても君は確かに彼女に勝利している」
「そりゃそうだけど……」
「これ以上、強くなろうとするなら誰にも指導されずに自分自身で限界まで力を極めてみたらどうだい?」
「限界……」


ホノカの限界が近いという言葉にレノは何故かアイリィの事を思い出し、よくよく考えれば自分の強さは彼女の「急成長」のお蔭である事を思い出す。



――寿命と引き換えに肉体を急激に成長させる「急成長」アイリィに施されたこの能力でレノは大幅に身体能力と魔力容量を大幅に伸ばし、引き換えに削られたはずの寿命はアイリィ自身の命によって元に戻った。



だが、急成長が発動する前の段階でも、レノは北部山岳や地下迷宮などの過酷な環境を克服したからこそ強くなっており、今の自分に必要な物が何となく分かったような気がした。



「僕が言いたい事が分かったかい?まずは基本から見直してみたらどうだい?君が今までどのように強くなったのかを思い出し、そして自分なりに考えないといけないと思うよ」
「う~ん……」
「まあ、僕から言わせてみれば君がそれ以上強くなられたら困るからね。大会の組み合わせで君と対戦になった時を考えたら背筋が震えるよ」
「大丈夫だよホノカちゃん‼ どんな大怪我をしても私が治してあげるから‼」
「それ、僕が大怪我をする前提で話してないかい?」
「……むしろ何でレノと戦って怪我しないと思ってるの?」
「コトミ君……時折、さり気なく怖い事をさらっと言うね……」


三人が話し込んでいる間、レノはホノカに言われたことを頭の中で反芻し、残された手段は今の能力を最有効活用する方法を考える事であり、これまでの戦闘方法を見直す方針に切り替えるしかない。
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