種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘 覇者編

修行

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――レノが無事に王国に帰還した後、報告のために休憩中だったアルトの私室に立ち寄ると、彼から剣乱武闘の開催日と場所が決定したことを伝えられる。今回の大会の開催地は闘人都市に変わりはないが、場所は都市内部に存在する闘技場だけではなく、この一年の間に都市の外部に設立した特別闘技場で予選が行われる事が決定した。


「今回の予選参加者は1万人を超える事が予測される以上、予選も例年より厳しくし、大会期間も一種間から十日間に変更された。予選の内容はまだ決まっていないが、きっと今までとは違った趣向の催しになるだろう」
「アルトは参加しないんだっけ?」
「ああ、僕も出来る事なら出場したいが……今回は君たちに任せる。きっと、君たちの誰かが優勝する事を信じているよ」
「わふっ‼ 任せてください‼」
「うむ」
「ふっ……そこまで期待されたら応えるしかないな」
「……最善は尽くす」


部屋の中にはレノ以外にも彼の膝の上に乗ったポチ子と、その隣には一時的に帰還しているコトミが肩に頭を乗せており、ゴンゾウはダンベルを担ぎながら身体を鍛え、リノンも腰に挿した剣の柄を握りしめる。ここにいる全員が呼び出されたのは大会参加者であり、それぞれが大会に備えて準備を整えていた。


「というかコトミも本当に参加するの?」
「……大会に参加するなら仕事を休んでもいいって言われた」
「まあ、コトミならいい所まで勝ち残るとは思うけど……試合の途中で寝るなよ」
「……頑張る」


魔術師としての腕は確かだが、コトミの弱点は猫のようによく睡眠を取る事であり、戦闘の最中に睡魔に襲われては危険極まりない。今まではレノ達がサポートしていたからこそ問題なかったが、大会を勝ち進んだ場合はトーナメントにも出場する事となり、一対一の戦闘を強いられる。その場合は自力で何とかしなければならないが、当の本人はあまりやる気はないのかうとうととレノの肩に頭を乗せて瞼を擦る。


「そう言えばデルタは参加しないのか?彼女ならば大会にも十分に通用すると思うが……」
「いや、デルタは大迷宮の様子を調べてもらっている。デルタもあの迷宮に関してはデータが……いや、情報を何も知らないみたいだから気になるんだって」


地下迷宮から出てきたデルタも世界各地に誕生したという「大迷宮」と呼ばれる遺跡については何も知らず、もしかしたら地下施設を管理していたベータならば何か知っていたのかもしれないが、今となっては知る由もなく、デルタは自らの意思で大迷宮と呼ばれる遺跡に調査に出向く。

テラノの情報を頼りにするならば相当に危険な場所であることは間違いないが、カノンも同行するという理由でアルトも許可を与え、現在は二人とも大迷宮に赴いている。万が一の場合は退却することを約束させ、念のために2人に何か起きた場合はレノがすぐに駆け付けられるように魔導電話を渡している。


「大迷宮か……テラノ将軍、いやテラノからの報告で危険性は十分に承知しているが、今は剣乱武闘に集中したい。今回の大会優勝者で種族間のバランスが大きく変化するのは間違いないからな」
「まさか森人族の代表として、あのホムラが出るとはね……」



――世界最強のダークエルフであるホムラが今回の剣乱武闘に参戦する事は既に伝わっており、レノ自身も本人から直接報告されている。彼女としては森人族の立場などどうでもいいらしいが、強者と戦えるという理由で剣乱武闘には乗り気だった。



『お前との戦闘も楽しみだが、あの巨人族のガキ、それにあの忌まわしい女との決着を付けるいい機会だ』



彼女の目的は弟であるレノ、そして成長したゴンゾウと意外なことに参加を表明したホノカであり、三人はそれぞれがホムラとは因縁が存在し、彼女としても三人が参加するのならば出場しない理由などない。

この件に嗅ぎついたレフィーアは即座にホムラを森人族の代表としてバックアップする事を近い、ホムラとしては森人族という種族の立場などどうでもいいのだが、面倒な予選を免除できるという理由で協力を了承し、彼女は特別選手枠として登録されている。


「ホムラ以外にも各種族からは選りすぐりの精鋭が出場するだろう……僕たち王国と聖導教会は協力し、何としても一位の座を取らなければならない」


聖天魔導士であるコトミが参加するのは王国と聖導教会が内密に同盟を結んだ事が関係し、聖導教会は基本的には人間で組織されており、彼等としても剣乱武闘の影響で人間側の立場が不利になる事を避けたく、だからこそ教会の代表に等しい聖天魔導士を派遣させたのだ。


「森人族は2000人の戦士、巨人族側は500名の勇士、獣人族も1000名以上の強者に、他にも世界各地から集まった実力はの冒険者たちが参加するだろう……だが、一番の難敵は魔人族の猛者たちだな」
「あんまり詳しくは知らないけど、ライオネル以外にも強い人っているの?」


実際の所、レノはあまり魔人族とは戦闘の経験はない。ライオネルや魔人王、あるいは魔王を除くと魔人族との戦闘はミノタウロスかサイクロプス程度であり、魔王討伐大戦でも基本的には魔物達の相手をしていた。


「そうだな……一番の有名処はライオネル殿だろうが、他にもデュラハンやミノタウロスといった強敵も参加するのは確定だろうな。他にも「竜人将」の称号を持つジンガイや、紅蓮の炎を操るサキュバスも参加すると聞いている。この大会、恐らくは剣乱武闘の歴史上でも最大規模の危険な戦いになるだろうな……」
「なるほど……そう聞くと、聖遺物が使えないのはきついな」
「あまり聖遺物に頼るような戦闘は避けた方がいいぞ? まあ、レノはその点はよくわかっていると思うが……」


今回の大会では聖遺物が禁止されている以上、純粋な実力で勝ち残らねばならない。最も、レノ自身はあまり今のカリバーンを使用する機会は殆どないのだが。


「わぅんっ‼ 私は実家に戻って犬牙流を見直してきます‼ 次に会う時の私はもっと強くなっています‼」
「俺は、今まで通りに鍛錬を行う。急激に強くなる方法など、存在しない。強者と呼ばれる者は、日々の鍛錬を欠かさずにやり遂げた者だけに与えられる称号だからだ」
「私も少しばかり武者修行に出ようと思う。カゲマルが棲んでいる里からも誘いがあるし、しばらくの間は王城を離れたいと思う」
「……帰って寝る」
「最後の奴はやる気が無さすぎる」


それぞれが大会に備えて準備を整える決心を抱くなか、コトミだけはやる気が起きないのか面倒そうにレノに身体を預け、その一方でレノも考え込む。


(とりあえず、俺も何か考えないと……)


今一度、テラノの助言を信じて自分の戦闘スタイルを見直すため、まずは何をすべきか考え直す事が必要だった。
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