種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘 覇者編

試練

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「で、本物の忍頭さんは試練を受け終えるまで会う気はないと?」
「そういう事でござるな……迷惑をかけてしまって申し訳ないでござるが、出来れば受けて欲しいでござる」
「いや~あっしの正体を見破る兄さんならダイジョブですよ‼」


馴れ馴れしく忍頭に変装していたシャドがレノの肩に手を掛け、さり気に身体をべたべたと触ってくる彼女を引き離し、レノは周囲を伺う。屋敷に入ってから何人かの視線を感じており、まるでこちらを監視しているようだが北部山岳や地下迷宮で数多くの魔物達と戦い続けたレノにとっては自分に向けられる視線は敏感に感じ取り、正確な位置まで把握する事が出来る。

忍といっても個人差があるらしく、カゲマルやレノの義弟の2人は完全に気配を殺して隠密行動を取れるが、先ほどのシャドの迂闊な行動にしろ、全員が隠密や演技に長けているわけではなさそうであり、新調に気を付けて行動して入れば不意打ちにも十分に対処できるだろう。


「ところで兄さんに聞きたいことがあるんすけど、今日は聖剣を持ってきてないんですか? 実はあっし、有名な刀剣には目が無くて……少し興味があったんすけど」
「君の喋り方、誰かに似てる気がする」
「はい?」


現在は黒猫酒場を離れて大商人のバルルの元で修行中のカリナの事を思い出し、最近では黒猫酒場を大々的に改装する計画を打診しており、バルもそれに賛成して資金を集めているらしい。

ちなみにレノの「カリバーン」は現在は王国に預けており、滅多なことでは持ち出さない。ジャンヌやアルトは常日頃から武装しているが、レノの場合は遠出する際は王国に預けており、普段は竜爪を装備している。


「レノ殿、拙者はシャドと静香殿に話があるから先に屋敷に入っているでござるよ」
「すぐに客人を持て成す用意をいたしますので、しばらくの間はここでお待ちください。準備が出来ましたら使いの者を送りますので……」
「分かった」


普通は客人を屋敷の前で待たせるのは失礼じゃないかと思わなくもないが、恐らくは言葉通りに客人を持て成す容易をするわけではなく、次の試練とやらの準備を行うつもりだろう。レノは三人を見送ってから周囲の視線を感じながらも持ってきた魔導電話(ここ数年で軽量化に成功。今では一部の貴族達が使用している)を取り出し、ある相手に電話を掛ける

ちなみに魔導電話はアイリィが生前に残してくれた計画書によって大幅な改善が加えられ、現在では4~5000キロの距離であろうと電話する事が可能となる。遠方に存在する相手に電話する時は通話に時間差が生まれるが、それでも最初の頃と比べると随分と便利になった。



トゥルルルルッ……!



電話に耳を押し当てながら相手が出るのを待つと、すぐに聖導教会で待機している猫耳娘に繋がる。


『……もしもしカメよ』
「その電話の取り方(? )は誰に教わった……コトミ、ちゃんと屋敷に居たんだな」
『……レノ? 何処に居る?』
「ちょっとした事情でカゲマルの里帰りに付き合っていて……かくかくしかじかわふわふ(事情説明)」
『……大変そう』


聖天魔導士の屋敷にいるコトミにだいたいの事情を伝え、一先ずは数日ほど帰ってこれない事を告げると、彼女は少し不機嫌そうな声音で告げる。


『……私も行きたかった』
「コトミは剣乱武闘まではヨウカの護衛の仕事あるだろ。今日はちゃんと仕事した?」
『……ヨウカとお菓子食べてたら、センリに怒られた』
「そりゃそうだろ……また仕事サボってヨウカと遊んでたな」
『……護衛も立派な仕事』


現在のコトミはレノの護衛の任務をではなく、大会までの間はヨウカの護衛(という名の遊び相手)を行っており、政務に関してはセンリが管理している。


「帰ったら甘やかしてやるから、頑張って仕事しなさい」
『……頑張る』
「よし、いい子だ」
『……早く帰ってきて』
「了解」


それだけ告げるとコトミの通話を切り、レノは魔導電話を戻してまだ準備が整わないのかと屋敷の方に視線を向けると、唐突に屋根の上から気配を感じ取り、見上げると黒装束の3人組が立っていた。


「とうっ‼」
「はっ‼」
「そいっ‼」



ドォンッ‼



瓦を吹き飛ばしかねない勢いで三人組は屋根から地面に降り立ち、レノは何者かと視線を向けると、三人組はそれぞれが奇妙なポーズを取りながら自己紹介を始める。



「我等‼」
「忍刀‼」
「三人衆‼」



ドォオオオオンッ‼



まるでどこぞの戦隊ヒーローのように三人組の背後に爆発が生じ、レノが目を点にしながら呆気に取られていると、三人組は「決まった‼」とばかりに笑い声を挙げながらレノに向き合う。



「我が名は一番刀‼」
「我が名は二番刀‼」
「我が名は三本刀‼」
「最後の人だけおかしくない?」



忍刀三人衆と名乗る男(声音から察するに)達は自己紹介を終えると、レノのツッコミを無視しながら移動を開始する。一体、何が起きているのか分からないが次の「試練」が始まったのは間違いない。


「行くぞ兄者‼」
「おう‼」
「準備出来たぞ‼」


黒装束の三人はレノを取り囲むように分散し、丁度三角形の形でレノを取り囲む。あまりの行動に呆気に取られていたレノもすぐに対応できるように拳を握りしめ、相手の出方を待っていると、



「「「土遁‼岩壁の術‼」」」



ドゴォオオオンッ‼



三人は両手で印と思われる指の形に変化させ、そのまま地面に両の掌を叩き付ける。次の瞬間、地面が盛り上がり、巨大な岩石を思わせる土塊が誕生し、レノの周囲を取り囲む。



(何だ⁉ )



レノも初めて見る属性魔法であり、風、火、水、雷、無のどの属性にも適応しない技にレノは動揺したが、目の前に迫りくる土の壁に閉じ込められる。


「ぬっ?」
「何だ?」
「もう終わりか?」


あっさりと自分たちが生み出した土塊に飲み込まれたレノに三人組は拍子抜けたような声を挙げるが、すぐに異変が起きる。



ビキィイイイッ……‼



巨大な土団子と化したはずの土塊の罅割れが生じ、直後に亀裂から電流が迸り、轟音が響き渡った。



「撃雷‼」



ズガァアアアンッ‼



土塊からレノの右拳が出現し、そのままドリルのように螺旋状に纏った風雷が土塊を削り飛ばし、脱出に成功する。身体中が泥だらけになったが、レノは口に入った土を唾で吐き出しながら三人組を睨み付ける。


「ぺっぺっ……たくっ、服の中にまでに土が入ったよもうっ」
「なんと……」
「こうもあっさりと打ち破るとわ……」
「流石は我等が妹弟子に見初められた男だな」


土塊から難なく脱出したレノに三人組は感心した風に頷き、すぐに再集結する。今度は別の印に組み直し、1人は以前にカゲマルが使用した「護符」を取り出し、1人はその護符に掌を押し当て、もう1人は再び地面に両の掌を押し付ける。


「これならばどうだ‼ 土遁‼ 拘束岩‼」
「足が狙い?」


地面が盛り上がり、自分に向かって接近してくる土の隆起に対し、すぐに自分の両足を拘束し、その間に他の2人が攻撃を仕掛ける事と予測し、久しぶりに足から電流を地面に流し込む。



「地雷‼」



ドォオオオンッ‼



落雷のような轟音が響き渡り、レノの身体から電流が迸り、地面を伝って向かってくる地面の隆起と衝突する。


ズガァアアンッ‼


「うおっ⁉」
「地面から電撃が⁉」
「なんという威力……⁉」



地面から一筋の電撃が放出され、そのまま地面の隆起ごと吹き飛ばす。その隙にレノは右手を掲げ、電撃に気を取られた2人組に掌を向ける。


「乱刃‼」
「ぬっ⁉」
「いかん‼」



ドォオオオンッ‼



三日月状の嵐の刃が放出され、そのまま三人衆に放たれる。
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