種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
734 / 1,095
真章 〈終末の使者編〉

終末者

しおりを挟む
荒らされた裏庭の後片付けを終え、レノ達は別室に移動する。机にデルタとコトミを座らせ、事の顛末を尋ねる。センリとヨウカは別件で聖導教会総本部に戻り、ある程度の修繕を終えてから話を聞きに来るらしい。



「で、何があったんだ?」
「……デルタが襲われてた。だから、助けた」
「私から説明します主人マスター」
「デルタも随分と流調に喋れるようになったな……」



何時の間にか昔と比べても随分と声音が安定しており、今までは機械音声でしか受け答えが出来ていないと思っていたが、ちゃんと普通の人間のように話すデルタに驚きを隠せない。彼女曰く、他の姉妹機よりも人間に近い身体の造りのため、喋れるようになったらしい。



「主人から与えられた任務を実行中、突如として終末者が訪れ、私の情報を提示するように要求して来ました」
「ちょっと待った。終末者?」
「はい。特別なシステムが搭載された私が開発される前に作られた機体です」
「……しすてむ?」



コトミが首を傾げるが、そんな彼女の頭を撫でながらレノは話を尋ねる。初めて耳にする「終末者」という単語にデルタがどれほど相手の情報を知っているのかを聞きださねばならない。



「その、終末者ってのはお前の姉妹機なのか?」
「違います。正確に言えば私達が開発される1世代前のシリーズです。セカンド・ライフ社は彼女を終末者という呼称を付けています」
「つまり……お前達が造られる前から存在するアンドロイド?」
「はい。私達は世界を管理するために製造されましたが、彼女は全くの真逆の存在であり、世界を終わらせるために開発されました」
「……終わらせる?」



何だか随分と話が大きくなってきたが、とりあえずは情報を整理する。コトミとデルタを襲ってきた相手は「終末者」と呼ばれる存在であり、地下施設のアンドロイドよりも1世代前の戦闘型に特化した機体であり、世界を終わらせるために生み出された兵器という。



「世界を終わらせる存在だから終末者か……でも、なんでそんな厄介な存在を作ったんだ?」
「セカンド・ライフ社曰く、彼女はあくまでも保険にしか過ぎません。会社側の思惑を外れ、世界が間違った方向に変革した場合、彼女を使用して一度世界を「ゼロ」に戻し、再び世界を造り替える計画が存在しました。会社は「終末システム」と名付け、終末者と呼ばれる最初のアンドロイドを開発したと記録が残っています」
「また、随分と大袈裟な話だな……」



自分たちの都合の悪い世界を滅ぼし、また一からやり直すなど随分と身勝手な話だが、デルタの話によれば彼女達を襲ったアンドロイドこそが「終末者」と呼ばれる存在であり、彼女話が本当ならば終末者は素手にこの世界が「失敗」したと判断し、世界を滅ぼすために動いている事になる。



「……でも、そんなに強くなかった」
「話を聞く限りではリーリスの方がよっぽどやばいと思うけど……」



後型機として開発されたデルタと、腕利きの魔術師とは言え、センリと比べればまだまだ未熟なコトミの二人が善戦していたことを考えると、それほど驚異的な存在とは思えないが、



「終末者その者の戦闘力は私達と大差はありません。ただ、搭載されている金属は私達の物よりも頑丈で耐久性が高く、それに旧世代とはいえ相当数の武器を内蔵されています。あのまま戦闘を続けていたらこちらが破壊された可能性は67%です」
「33%は勝てったの?」
「力ずくで拘束され、私のメディアにハッキングして乗っ取られる可能性が33%です」
「怖いなそれ……」
「……何を言っているか分からない」



コトミはレノ達が何を話しているのか理解できず、確かに現代人の知識が無ければ色々と小難しい話であり、誤魔化すように彼女の頭を撫でながら質問を続ける。



「お前たちより戦闘向きの機体だってことは分かったけどさ、それでも世界を終わらせるというには力不足じゃないの?」
「終末者自身は世界を終焉に導く力は持ち合わせていません。ですが、世界を終焉に追い込む存在は把握しています」
「……例えば?」



嫌な予感が拭えず、レノは恐る恐る尋ねてみると、最悪の予想が返ってくる。



「終末者はこの世界に存在する生物……現時点の世界では「伝説獣」と呼ばれる存在を全て把握しています。恐らく、彼女は全ての伝説獣の居場所及び、解放の方法を知っているはずです」
「それを早く言えっ」



まさか伝説獣などという単語が飛び出すなど思いもせず、その場でレノは頭を抱える。既に伝説獣の内の「腐敗竜」「バジリスク」「フェンリル(正確には違うが)」の討伐を終えているが、アイリィが残した資料によれば、まだ出現していない「三体」の伝説獣が残っているはずであり、間違いなく終末者はそれらの存在を目覚めさせるために動くだろう。



「お前は伝説獣の情報は知らないのか?」
「私の管轄外の情報なので……ベータならば知っている可能性がありますが、既に彼女の消失は確認されています」
「そうかい……どうしてそんな重要な事を伝え忘れるかなあいつ……」
「……伝説獣?」



コトミが首を傾げ、レノは深い溜息を吐く。伝説獣とは過去に二度ほど戦闘を行ったが、どちらも偶然の勝利であり、カラドボルグやレーヴァティンという聖剣の助けがあったからこそ生き残る事が出来た。

現在のレノには殆どの力を失ったカリバーンしか手元に残されておらず、仮に伝説獣が復活した場合は対処できるとは限らない。出来る事ならば終末者が伝説獣を復活させる前に取り抑えるのが一番なのだが、デルタのセンサーも反応しない事から彼女を追跡する事は難しい。



「終末者の数は? まさか、お前等みたいに他の姉妹機がいるとか言い出さないだろうな……」
「終末者は常に一機です。世界でも非常に希少な素材で製造されたらしく、一体しか開発されなかったと私のデータベースに残っています」
「そうか……少し安心したけど、どうやって探すかだな」
「……ポチ子に臭いで追跡してもらう」
「いや、それで見つかる相手なら苦労しないけどさ……」
「終末者は消臭機能も搭載されています。その案は不可能です」
「真面目に答えなくていい」



終末者という新たな存在にレノが頭を抱える一方、封印されいてる伝説獣の中でもかなり身近に存在する獣を思い出す。



「そう言えば……聖導教会の総本部にも封印されている奴がいたっけ」
「……オルトロス」



以前に何度かロスト・ナンバーズが封印を解こうと襲撃を仕掛けた事があるが、結局は封印の扉の鍵が見つからず、オルトロスの封印が解かれる事は無かったが、未知の科学技術が搭載されている終末者ならばオルトロスの封印を解く可能性も否定しきれない。



「こうしちゃいられない……すぐにセンリ達の所に――」



ドドドドッ――‼



レノが立ち上がろうとした瞬間、唐突に地震でも起きた様に床が揺れ、即座に扉が勢いよく開かれて全力で駆けだしてきたヨウカが飛び込む。



「た、大変だよレノたん‼ 教会の方で、何か異変が起きてるってセンリが‼」
「早速か⁉」
「……急いで行く」



既に行動に移していた事に驚く暇も無く、レノはコトミとデルタを連れ、ヨウカの先行で屋敷と教会に繋がっている転移魔方陣がある部屋に走り出す。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話

紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界―― 田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。 暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。 仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン> 「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。 最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。 しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。 ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと―― ――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。 しかもその姿は、 血まみれ。 右手には討伐したモンスターの首。 左手にはモンスターのドロップアイテム。 そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。 「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」 ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。 タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。 ――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――

魅了の対価

しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。 彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。 ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。 アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。 淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

三十歳、アレだと魔法使いになれるはずが、異世界転生したら"イケメンエルフ"になりました。

にのまえ
ファンタジー
フツメンの俺は誕生日を迎え三十となったとき、事故にあい、異世界に転生してエルフに生まれ変わった。 やった! 両親は美男美女! 魔法、イケメン、長寿、森の精霊と呼ばれるエルフ。 幼少期、森の中で幸せに暮らしていたのだが……

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

処理中です...