種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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魔王大戦編

空中戦

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テラノとカノンが空中戦を行う頃、レノは真っ先にゴンゾウと合流し、ある作戦を立てる。その話を聞いて彼は驚愕し、半ば呆れながらもそれに協力してくれた。


「お願いゴンちゃんっ!!」
「任せろ……!!」


ビキィイイイッ……!!


「うおぉおおおおおおおおおおっ!!」


ゴンゾウはレノの身体を抱え、そのまま筋肉を肥大化させると、人魚族が浮かんでいる場所を確認し、渾身の力を込めて彼を勢いよく投げ飛ばす。



ビュオォオオオオッ……!!



「にぎぎっ……!!」


襲い掛かる風圧に歯を食い縛りながらも、レノはある程度の距離まで上昇し、徐々に勢いが弱まる。そのまま両脚に嵐属性の竜巻を纏わせ、瞬脚を発動させて何度も空中で跳躍を繰り返す。


「ぬっ!?」
「レノさん!?」
「よっ!」


その途中、地上に滑空する雷雲号とすれ違いになる形であり、軽く手を振りながら彼等に向かって放たれる無数の水の刃に掌を向け、


「乱刃!!」


ドォオオオンッ!!


まるでホノカのクサナギ並の巨大な三日月状の嵐の刃を放ち、そのまま水属性の魔弾を撃ち落とす。万全な状態且つ、魔力切れを考えなければ最大限に魔法を発動させ、修得していない広域魔法並の威力を引き出す事は出来る。だが、それでも300人の人魚族は伊達ではなく、彼女達は標的をレノに変更する。


「「「レイン・レーザー」」」


唐突に黒雲に向けて各自が水球を放ち、その行動に疑問を抱いて上を見上げると、すぐにレノの直感がその場に残る事を危険だと悟り、瞬脚で後方に避難する。


チュドンッ!!


直後、一筋の水の光線が先ほど先ほどまで滞空していた場所に放たれ、続けて数百の水の光線が降り注ぐ。レノは瞬脚で高速移動を行い、それらを全て避けながら距離を取る。


チュドドドッ!!


「ちっ……まるでカノンの魔弾だな」


威力は彼女の方が上なのだろうが、流石にこれほどの数の攻撃を一度に浴びるのは危険であり、まずは厄介な黒雲をどうにかしなければどうしようもない。


プルルルッ……!!


「こんな時に……!?」


魔導電話が鳴り響き、アイリィからの連絡だと思ったが、攻撃が止んだので瞬脚で飛び続けながら電話に出ると、意外な相手の声が聞こえてきた。


『レノ!!聞こえるか!?』
「リノン?どうやって……」
『ホムラさんが念のためにと私達全員に電話を送ってくれたんだ!!』
「流石は世界一の金持ち」


学園都市で開発された魔導電話は非常に高価であり、最大価格ではアトラス金貨並の値段を誇るが、流石は盗賊王の異名だけはあり、今だけは彼女に感謝しなければならない。


「それで状況はどうなってる?」
『将軍とレノのお蔭で負傷者はそれほどいないが、退去するのに時間が掛かりそうだ。本当なら私達も一緒に戦いたいんだが、上空では手出しが出来ない……!!』
「仕方ないよ。フライングシャーク号があればなぁ……」


フライングシャーク号の巨体ならば大勢の魔術師を乗せる事も可能であり、口先から放たれる砲弾で人魚族も一網打尽に出来たかもしれない。生憎とあの船体はホムラによって破壊されており、肝心な時に役に立たないのが難点だが。


『魔術師部隊も地上から魔法を試みているが、どうしても相手に届かないそうだ。出来るだけ時間を稼いで、適当なところで逃げ出してくれ!!』 
「そう言われてもね……あの黒雲さえ何とかできれば……」
『リノンさん、代わってください』


声がジャンヌに切り替わり、レノは片足で跳躍を繰り返しながら、疲れたらもう片足で瞬脚を繰り返す事で空中に滞在していると、


『聞こえますかレノさん?あの黒雲の事を呟いていたのが聞こえたので伝えたいのですが、あれは水属性と風属性と雷属性の三つの属性によって形成されています。通常、二つ以上の属性を合成させるなど不可能に近いはずですが、流石は魔法技術に関しては森人族と双璧を為す人魚族……私達よりも魔法に精通しています』
「そういう知識は今はいいから、どうすればいい?」
『す、すいません……あの黒雲を消散させるには莫大な規模の火属性の魔法を打ち込めばきっと内部で崩壊し、黒雲は消滅すると思います。ですがカノン将軍の魔銃では火力不足……私のレーヴァティンなら何とかできると思いますが、地上と距離が離れすぎていてどうしようもできないのです』
「火属性か……」


流石にレノの魔鎧(フラム)だけではどうしようもなく、地上を走る雷雲号に視線を向け、もう一度飛行する気なのか平原を疾走しており、こちらを伺っている。


「ジャンヌ、レーヴァティンの力を蓄積させといて。テラノ将軍が魔導電話を持っているのなら、カノンと交代させてもらうように頼んで」
『分かりました。レノさんは……?』
「時間稼ぎ!!」


それだけ告げて電話を終えると、レノは人魚族に向けて再び突進し、彼女達は掌を差し出して完全無詠唱で水球を様々な武器へと変えて投擲する。向い来る槍、剣、斧の形状をした水弾に対してレノは両腕に螺旋状の雷を纏わせ、


「撃雷」


バチィイイッ!!


両腕に電流を迸らせながら全ての攻撃を打ち払い、無謀とも思える突進を繰り返し、身体の至る箇所に攻撃を掠らせながらも突撃を続ける。


「「「アクア・スライサー」」」


人魚達がそれぞれお3~4人ずつ集まり、掌を向ける事で一際大きな水球を発現させ、そのままレノの乱刃を想像させる三日月状の水の刃を生成し、解き放つ。


「しゃらくさいっ!!」


――ドパァァアアンッ!!


だが、レノは正面から撃雷を纏った右腕で水刃を打ち払い、そのまま瞬脚で加速しながら突進する。全ての水刃を躱し、受け流し、弾き返しながら移動を行い、遂に1人の人魚族の真上に移動すると、


「ちょっとごめん」
「うわっ!?」


ドォンッ!!


金魚鉢を足場にさらに跳躍し、鳳凰学園で見たライジング・ノヴァを見て考え付いた新技を試すため、両手を合わせる。片腕だけでは到底出来ない芸当であり、嘗て鳳凰学園で風属性と雷属性を合成させた時を思い出し、今度は別々の属性同士ではなく、雷属性を掛け合わせ、片腕では負担の大きい「天属性」の力を生み出す。



――ドゴォオオオオオンッ!!



まるで落雷でも起きたかのような轟音が響き渡り、レノの両手の間から金色の雷が漏れ出し、そのまま拡散させる。


「爆雷!!」


ズドォオオオオンッ!!


金色の雷が周囲一帯に電流と化して拡散し、そのまま彼を囲むように浮揚していた人魚族たちは悲鳴を上げる暇も無く墜落していく。だが、それでも倒したのは全体の三分の一であり、レノは全身から汗を流しながら共に降下していく。


「……少し、やり過ぎたか」


魔力消費量が半端ではなく、それでも大多数の人魚を倒せたことは良いが、残された人魚たちは落下していくレノに向けて掌を向け、仲間達諸共に攻撃を行おうとする。


ブォオオオオンッ……!!


「レノさん!!」
「どけい!!人魚ども!!」


寸前で雷雲号に乗ったテラノ達が到着し、今度は彼らに注目が引かれ、人魚たちは2人に向けて攻撃を行う。まだジャンヌの姿が見えない所、連絡が届いていないのか、それとも落下していくレノを見捨てられず動いたのかは不明だが、結果的には命拾いした。


「くっ……」
「こちらに手を!!」


ブルルンッ……!!


伸ばされたカノンの手を握り締め、そのまま雷雲号は滑空し、人魚たちが追撃を行うが事前にレノに三分の一を倒されたせいなのか、十分に回避できる攻撃だった。片手でレノを掴みながらカノンは向い来る水刃を迎撃し、テラノは見事なドライブテクニックで回避し、何とか射程範囲外にまで避難に成功する。
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