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魔王大戦編
聖域守護結界
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「随分と脱線してしまったが……テラノ大将軍、及び他の大将軍御二方も魔人族に対応してもらいたい。他の将軍たちも各自準備を行ってくれ」
「しかし……それではフェンリルに関してはどうするのですかな?まだ何の反応も示していない今のうちに叩くべきでは……」
「その事についてですが……実は聖導教会にてフェンリルを封印する方法が見つかりました」
「なんと!?」
センリに全員の視線が集まり、彼女は一度だけソフィア(アイリィ)に視線を向け、事前に打ち合わせた内容を語る。
「正確に言えば封印というよりは閉じ込めると言った方が正しいのでしょうが……聖導教会に古くから伝わる聖域守護結界を発動させます。この結界術を使用すれば例え、伝説のフェンリルであろうと外部に抜け出す事は不可能です」
「おおっ……それは頼もしい」
「動かないフェンリルを閉じ込めるだけでも心強いが……あまり聞いたことが無い封印術ですな」
「聖導教会に古くから伝わる由緒正しき結界です。ただ、この方法には四人の聖天魔導士クラスの魔力量の持ち主が必要です。そのためにレミア将軍のお力をお借りしたいのですが」
「わ、私ですか?」
まさか自分の名前を呼ばれるとは思わず、レミアが驚いた表情を浮かべると、
「正確にはレミア様が宿している先代の聖天魔導士のミキの力が必要なのです。彼女を憑依すれば全盛期のミキを呼び出せるはずです」
「なるほど……分かりました。是非、協力させてください」
「しかし……レミア将軍がいないとなると戦力が落ちてしまいますな」
「だが、フェンリルに関しても見捨てておけぬ問題だ。レミア将軍の穴は僕が埋めよう」
「馬鹿な……まさか国王自身が戦場に立つおつもりですか!?」
「いけません!!それだけは決してあってはなりません!!」
ドォンッ!!
反対する家臣たちにアルトは机を強く叩き込み、父親同様に覇気を纏わせながら怒鳴り込む。
「今はそんな事を言っている場合か!!この王国の存亡が掛かっているんだぞ!!僕の代わりなどいくらでもいる!!だが、王国その物が無くなってしまえば何の意味もない!!あの時にああしていれば、などという泣き言を言える状況じゃないんだ!!」
身体全身から聖属性の魔力を沸きだし、その力は間違いなく先王の力を受け継いでいる事を証明し、テラノは若かりし頃のバルトロス13世の姿を思い出す。
「今回の魔人族の動きは必ず魔王を名乗るリーリスとロスト・ナンバーズの残党が関わっている!!ならば、必ず僕だけではなくデュランダルの力も必要となる。ここで敗北をすれば何百万人の人間の命が犠牲になると思っているのだ!!」
「し、しかし……」
「くどい!!私はもう王子ではない!!この国の頂点に立つ者として、民衆を守るために動く時なのだ!!」
「感動しましたアルト様ぁああああっ!!」
バタァンッ!!
突然、会議室の扉が押し開かれ、出入口から久しぶりに登場した美香が現れ、先ほどまでの威厳はどうしたのかアルトは彼女の姿を見た瞬間に動揺し、全身の魔力が引っ込んでしまう。
「み、美香……?」
「流石はアルト様!!国民のために自分の命を危険に晒すなんて……婚約者としては止めるべき立場なのでしょうが、そこまでの覚悟を抱いているのならば私も一緒に行きます!!」
「こ、これは勇者様……今は大事な会議中なので」
「お待ちなさい!!」
唐突に現れた美香に会議室の皆が混乱する中、美香の後ろから先代国王の孫娘であるリオが姿を現し、どうやら彼女同様に聞き耳を立てていたらしい。
「先ほどから聞いていれば……どうして私の名前が上がらないんですの!?こう見えても腕には自信がありましてよ!!」
「り、リオ……君は王女なのだから戦線に赴く理由は……」
「まあ!?ご自分はご出陣なさるのに私だけ安全な場所に避難していろと言うのですかお兄様!?私とて、お爺様の血を受け継いでおりますのよ!!」
「お、王女様……どうか落ち着いて下され」
流石のテラノも2人の婦女子の登場に冷や汗を流し、何とか宥めようとするが戦力的に考えれば2人とも確かに常人を遥かに上回る実力者であり、彼女達の言葉にも一理はある。
「アルト様!!こんな時のために私も爆裂魔導砲が存在するんです!!どんな敵だろうと薙ぎ倒して見せますよ!!」
「私もこのような時のために新しい術を生み出しましたわ!!足手まといにはなりませんので、どうかお連れに!!」
「い、いや……そうは言ってもね」
2人の女性に詰め寄られ、アルトは助けを求めるように会議室の皆に視線を向けるが、全員が目を反らす。その間にもアイリィだけはレノに近寄り、
(何だか面倒な事態になってきたので抜け出しましょう)
(いや……いいのか放っといて?)
(後はアルトさんに任せておいて、何か言われる前に私達は先に向かいましょう)
(この状況で置いて行かないでほしいでござる!!)
ぼそぼそと話しているとカゲマルが天井から落下し、2人を引き留める。面倒気に視線を向けると珍しく本気で焦っているのか、2人の手首にしがみ付いて離さない。
(拙者はリオ殿の目付け役になったので、問題を起こす度に給料が差し引かれるのでござる!!どうか逃げないで止めるのを手伝ってほしいでござる)
(無理でござる)
(ごめんなさいでござる)
(拙者の語尾を真似てもいいから、手伝ってくれでござるぅうううっ!!)
(諦めろでござるん)
(無理っすん)
(最早、語尾まで変わっているでござるぅうううっ!!)
――結局、会議はその場で打ち切り、当初の予定通りフェンリルに関しては聖導教会とレミアに任せ、王国側はソフィア(アイリィ)が赴く事が決まり、他の人間たちは魔人族との決戦に備えて最終準備を行い次第、闘人都市に移動をする事が決定した。
「しかし……それではフェンリルに関してはどうするのですかな?まだ何の反応も示していない今のうちに叩くべきでは……」
「その事についてですが……実は聖導教会にてフェンリルを封印する方法が見つかりました」
「なんと!?」
センリに全員の視線が集まり、彼女は一度だけソフィア(アイリィ)に視線を向け、事前に打ち合わせた内容を語る。
「正確に言えば封印というよりは閉じ込めると言った方が正しいのでしょうが……聖導教会に古くから伝わる聖域守護結界を発動させます。この結界術を使用すれば例え、伝説のフェンリルであろうと外部に抜け出す事は不可能です」
「おおっ……それは頼もしい」
「動かないフェンリルを閉じ込めるだけでも心強いが……あまり聞いたことが無い封印術ですな」
「聖導教会に古くから伝わる由緒正しき結界です。ただ、この方法には四人の聖天魔導士クラスの魔力量の持ち主が必要です。そのためにレミア将軍のお力をお借りしたいのですが」
「わ、私ですか?」
まさか自分の名前を呼ばれるとは思わず、レミアが驚いた表情を浮かべると、
「正確にはレミア様が宿している先代の聖天魔導士のミキの力が必要なのです。彼女を憑依すれば全盛期のミキを呼び出せるはずです」
「なるほど……分かりました。是非、協力させてください」
「しかし……レミア将軍がいないとなると戦力が落ちてしまいますな」
「だが、フェンリルに関しても見捨てておけぬ問題だ。レミア将軍の穴は僕が埋めよう」
「馬鹿な……まさか国王自身が戦場に立つおつもりですか!?」
「いけません!!それだけは決してあってはなりません!!」
ドォンッ!!
反対する家臣たちにアルトは机を強く叩き込み、父親同様に覇気を纏わせながら怒鳴り込む。
「今はそんな事を言っている場合か!!この王国の存亡が掛かっているんだぞ!!僕の代わりなどいくらでもいる!!だが、王国その物が無くなってしまえば何の意味もない!!あの時にああしていれば、などという泣き言を言える状況じゃないんだ!!」
身体全身から聖属性の魔力を沸きだし、その力は間違いなく先王の力を受け継いでいる事を証明し、テラノは若かりし頃のバルトロス13世の姿を思い出す。
「今回の魔人族の動きは必ず魔王を名乗るリーリスとロスト・ナンバーズの残党が関わっている!!ならば、必ず僕だけではなくデュランダルの力も必要となる。ここで敗北をすれば何百万人の人間の命が犠牲になると思っているのだ!!」
「し、しかし……」
「くどい!!私はもう王子ではない!!この国の頂点に立つ者として、民衆を守るために動く時なのだ!!」
「感動しましたアルト様ぁああああっ!!」
バタァンッ!!
突然、会議室の扉が押し開かれ、出入口から久しぶりに登場した美香が現れ、先ほどまでの威厳はどうしたのかアルトは彼女の姿を見た瞬間に動揺し、全身の魔力が引っ込んでしまう。
「み、美香……?」
「流石はアルト様!!国民のために自分の命を危険に晒すなんて……婚約者としては止めるべき立場なのでしょうが、そこまでの覚悟を抱いているのならば私も一緒に行きます!!」
「こ、これは勇者様……今は大事な会議中なので」
「お待ちなさい!!」
唐突に現れた美香に会議室の皆が混乱する中、美香の後ろから先代国王の孫娘であるリオが姿を現し、どうやら彼女同様に聞き耳を立てていたらしい。
「先ほどから聞いていれば……どうして私の名前が上がらないんですの!?こう見えても腕には自信がありましてよ!!」
「り、リオ……君は王女なのだから戦線に赴く理由は……」
「まあ!?ご自分はご出陣なさるのに私だけ安全な場所に避難していろと言うのですかお兄様!?私とて、お爺様の血を受け継いでおりますのよ!!」
「お、王女様……どうか落ち着いて下され」
流石のテラノも2人の婦女子の登場に冷や汗を流し、何とか宥めようとするが戦力的に考えれば2人とも確かに常人を遥かに上回る実力者であり、彼女達の言葉にも一理はある。
「アルト様!!こんな時のために私も爆裂魔導砲が存在するんです!!どんな敵だろうと薙ぎ倒して見せますよ!!」
「私もこのような時のために新しい術を生み出しましたわ!!足手まといにはなりませんので、どうかお連れに!!」
「い、いや……そうは言ってもね」
2人の女性に詰め寄られ、アルトは助けを求めるように会議室の皆に視線を向けるが、全員が目を反らす。その間にもアイリィだけはレノに近寄り、
(何だか面倒な事態になってきたので抜け出しましょう)
(いや……いいのか放っといて?)
(後はアルトさんに任せておいて、何か言われる前に私達は先に向かいましょう)
(この状況で置いて行かないでほしいでござる!!)
ぼそぼそと話しているとカゲマルが天井から落下し、2人を引き留める。面倒気に視線を向けると珍しく本気で焦っているのか、2人の手首にしがみ付いて離さない。
(拙者はリオ殿の目付け役になったので、問題を起こす度に給料が差し引かれるのでござる!!どうか逃げないで止めるのを手伝ってほしいでござる)
(無理でござる)
(ごめんなさいでござる)
(拙者の語尾を真似てもいいから、手伝ってくれでござるぅうううっ!!)
(諦めろでござるん)
(無理っすん)
(最早、語尾まで変わっているでござるぅうううっ!!)
――結局、会議はその場で打ち切り、当初の予定通りフェンリルに関しては聖導教会とレミアに任せ、王国側はソフィア(アイリィ)が赴く事が決まり、他の人間たちは魔人族との決戦に備えて最終準備を行い次第、闘人都市に移動をする事が決定した。
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