種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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魔王大戦編

大騒動

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「うおぉおおおおっ!!」
「ゴンゾウ!?」


ビキィイイイッ……!!


ゴンゾウはホムラの顔を見た瞬間に鬼人化を発動させ、瞬時にゴーテンとの戦闘で見せた形態に変化する。誰もがその新しい彼の姿に驚き、ホムラも少しだけ面白そうに見つめると、ゴンゾウは彼女に向かって走り出し、右拳を繰り出す。


「金剛撃!!」



――ズドォオオオオオオオンッ!!



まるで大型トラックが突っ込んだような衝突音が屋敷中に響き渡り、そこにはゴンゾウの渾身の一撃を両手で抑えつけるホムラの姿があり、彼女は手元から伝わる痺れに笑みを浮かべ、


「お前は覚えているぞ……そうか、剣乱武闘の」
「うおおっ!!」


バキィイイイッ!!


ホムラの言葉が聞こえていないのか、ゴンゾウは右拳を引いて今度はリバーブローの要領で下から左拳を突きあげ、彼女は瞬時に右腕で防ぎ、その威力に腕が痺れる。以前に戦った時よりも急激な彼の成長に驚く一方、口元に笑みを浮かべる。


「ふんっ!!」
「ぐはっ……!?」


ドゴォンッ!!


彼女も負けじと右拳を的確にゴンゾウの顎に当てると、彼はよろめきながらも気を取り直したように両腕を振るい、


「おぉおおおおおおっ!!」
「ほうっ?」


そのままホムラの身体に抱き付き、彼女を締め上げながら持ち上げ、すぐ傍に存在する柱に向けて突進する。その拘束力は彼女ですらも容易には振り解けず、ゴンゾウの力任せの攻撃が決まる。


ドガァアアアンッ!!


「や、屋敷がぁっ!?」
「気持ちは分かりますけど、今はそれどころじゃありませんよ!!」


柱どころか2人はそのまま建物内に突っ込み、派手に壁を崩壊させながら内部に侵入する。その光景に黙って見守っていた者達もすぐに動き出し、非戦闘員であるヨウカとバルたちは涙目のセンリの元に集まり、武器が無いリノンたちも彼女達を守るように前に出る。


「ぐぐっ……な、何が起きた?」
「おわっ!?生きてたのかいあんたっ!!」
「勝手に殺すな……!!」


扉の残骸を振り払いながらライオネルが起き上がり、彼は頭を抑えながら目の前の屋敷の光景に驚愕し、すぐに自分が何者かにやられたことを思い出して歯を食い縛る。


「何者かは知らんが……許さんぞ!!」
「あっ」


ライオネルは崩壊した壁の方角に向かい、レノが引き留めようとしたが、


ズガァアアアンッ!!


壁の穴からゴンゾウの巨体が飛び出し、そのままライオネルの肉体に衝突して2人の身体が吹き飛ばされる。


「ぐはぁっ!?」
「ごはぁっ!?」


お互いの身体がもつれあいながら転がり込み、ゆっくりと崩壊した壁から頭に血を流したホムラが姿を現し、彼女は笑みを浮かべたまま魔槍を握り締める。


「……中々の怪力だが……まだまだだな」
「ぐぅっ……まだだっ……!!」
「おい……止めろっ!!」


ゴンゾウは立ち上がろうとしたが後ろからライオネルが引き留め、既に彼の身体は傷だらけであり、鬼人化も解除されている。ゴーテンとの戦闘で目覚めた鬼人化の「第二形態」は身体の負担が激しく、半月程度の間を挟んだ程度では完全な回復には至らない。

そんな彼の姿に少しだけ残念そうな表情を浮かべながらも、彼女は本命であるレノの姿を探し、すぐにラビットに憑依したアイリィの姿を見つけ出す。姿形は変わってしまったが、よく覚えのある魔力を感知し、正体を見抜く。


「お前……まだ生きていたのか」
「あはは……お久しぶりですね~」
「丁度いい……ここで始末……!?」


冷や汗を流しながらアイリィはホノカの後ろに隠れ、そんな彼女にホムラは槍を向けようとした瞬間、後方から感じる気配に気付くのが一瞬遅れ、振り返った瞬間、



「――弾撃」



ズドォオオオオンッ!!



腹部に先ほどのゴンゾウの一撃を上回る威力の衝撃が走り、ホムラは声を挙げる暇も無く吹き飛ばされる。彼女は空中に浮揚しながらも体勢を整え、着地を決めながら口元から血を流し、自分が損傷を受けた事に驚きを隠せない。


「ふぅっ……」


前方を確認すると、そこには拳を打ち込んだ状態の青髪の少女が立っており、ソフィアは自分の攻撃がホムラにも通じる事を理解した。


「驚いたな……ぺっ!」


血液混じりの唾を吐き捨て、まさか自分に傷を負わせるほどに成長したゴンゾウとレノ(ソフィア)に素直に感心しながらも、何時の間にか自分が囲まれている事に気が付き、椅子を片手で抱えたテンが問い質す。


「何者だいあんた!!私のダチの祝いの席をぶち壊しやがって!!」
「貴女は剣乱武闘の……事情は分かりませんが、拘束します!!」
「てめえ……あいつらの仇だ!!」
「落ち着いて下さい!!」
「止めろ!!彼女は危険すぎる!!」


この場に居る半分以上が彼女の詳細を知らないが、アイリィやホノカやバルにとっても因縁深い相手であり、真面な武器が無い状態にも関わらずに戦闘に入ろうとする者を止めなければならない。そんな彼らを見渡し、全員がそれなりの実力者である事を見抜くと、


「いいだろう……まとめて掛かってこい」
「なら、遠慮なく!!」


ダァンッ!!


ソフィアが瞬脚を想像させる勢いで直線的に突進し、そんな彼女にホムラは槍を地面に突き刺し、同じように右拳を構えると、


「ふっ!!」
「らあっ!!」


ドゴォオオオオオオンッ!!


2人の拳がぶつかり合い、まるで大砲が炸裂したような衝撃音が響き渡り、近くにいた者は実際に衝突の際に生じた風圧を感じとる。それでも2人のエルフは止まらず、無数の拳が交わる。


「せいっ!!」
「ふんっ!!」


バキィイイッ……!!


顔面にソフィアの拳が的中しながらも、ホムラも彼女の脇腹に拳を返し、2人は少しだけよろけるが、すぐに反対側の拳を振り被り、


「はあっ!!」
「甘いっ!!」


ブォンッ……!!


ソフィアがアッパーの要領で突き上げた拳を躱され、ホムラがカウンター気味に放った拳を寸前回避され、御互いが空振りしたにも関わらずに風圧が発生する。


「このっ!!」
「おっと!!」


右肘を叩き込もうとしたソフィアの攻撃をホムラは掌底で受け止め、逆に足払いを掛けようとするが寸前で跳躍されて躱され、逆にそのままの勢いで身体を掴まれる。


「どりゃあっ!!」
「ぬぅっ!?」


ドォオオンッ!!


そのまま柔道の大外刈りで彼女の身体を地面に叩き付け、流石のホムラも現実世界の武術は体験したことはなく、背中から地面に叩き込まれた事に驚きの表情を浮かべる。その一方でソフィアは右腕に「魔鎧(フラム)」を形成させ、


「炎斧(えんぶ)!!」


ドゴォオオオオンッ!!


右肘をまるで斧のように叩き込むが、寸前でホムラはその場をバク転してその場を回避し、地面に右ひじをめり込ませたソフィアに視線を向ける。


「……驚いたな、まさか本当にあの時の小僧がここまで腕を上げているとはな。期待して見逃した価値はあったな」
「そりゃどうも……」


口元の血を拭きながら、素直に感心した様子のホムラの態度にソフィアは眉を顰め、この女に幼少の頃に共に過ごした孤児院の皆や、バルが拾い上げた最初の仲間達が殺されたと考えると、今にも暴走してしまいそうだが、何とか理性で抑えてあらん限りの魔力を肉体強化に回そうとした時、


「なら……そろそろ私も本気で行かせてもらおう」


一瞬、彼女が何を言っているのか理解できなったが、すぐに彼女の雰囲気が一変したことに気が付き、


ビキィイイイッ……!!


「……死ぬなよ」


ほんの少しだけホノカの身体から血管が浮き上がり、彼女が初めて「肉体強化」を発動させた事に気付き、今まで彼女が純粋な身体能力で戦っていたことにソフィアは大きく目を見開き、



――ドゴォオオオンッ!!



次の瞬間、今までの人生で一番の衝撃がソフィアの身体を駆け巡った――
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