種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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英雄編

共闘

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『うあぁああああああっ!!』
「怖っ!!」
「ふざけてる場合か!?」


まるでホラー映画のようにこちらに向けて走り寄る合成獣に対し、ソフィアとマドカは同時に動く。どちらも周囲に広がる呪詛によって思うようには動けず、特に全身を魔鎧によって完全武装しているソフィアは常時魔力を消費しており、しかも肉体強化は使用できない。


ドスドスンッ……!!


巨体でありながらまるでトップアスリートのような動作で駆けつけるキメラに対し、勇者の能力を吸収したせいなのかは不明だが、巨体に似合わずに凄まじい速度である。マドカとソフィアの元に追いつくと、相手は両腕を大きく広げ、


『すまっしゃあっ!!』


ビキィイイイッ……!!


両腕の筋肉が異様に肥大化し、そのまま後ろから2人に目掛けてラリアットの要領で叩き付け、咄嗟に2人とも両腕を交差させて防御態勢に入るが、


ズドォオオオンッ!!


「がはっ……!?」
「げふっ……!?」


ソフィアとマドカの身体に凄まじい衝撃が走り、そのまま彼らの身体が大きく吹き飛ばされる。2人はそのまま直線的に飛ばされ、地面に受け身も取れずに倒れ込み、全身に激痛が走る。


「いつぅっ……!!」
「なんて馬鹿力だっ……くそっ……!!」


両腕から感じる痛みに2人は顔を顰め、今の攻撃で腕が壊れなかったことが奇跡に近い。2人は前方に視線を向け、異形の怪物は筋肉を縮小化させ、そのまま歩み寄ってくる。その光景にマドカは血が混じった唾を吐きながら、隣にいるソフィアに話しかける。


「おい……1つ提案がある」
「何……?」
「あのくそ野郎をぶっ飛ばすまで、一緒に戦えや」
「……勝算は?」
「そんなもの知った事かっ」


マドカは自分の取り付け白色の魔石のペンダントをソフィアに向けて放り投げ、それを受け取ると聖石が取り付けられたペンダントであり、周囲に漂っている呪詛を装備しているだけで打ち払う。


「あいつを倒すまで貸してやるよ……そんな状態じゃ真面に戦えないんだろ?」
「良く分かったね……」


現在のソフィアは全身を「蒼炎」で覆っており、この魔鎧を解除してしまうと当然だが周囲に漂う呪詛に侵されてしまう。本来ならばエクスカリバーを所持していれば聖剣の力で浄化できるのだが、アイリィが完全に修復させて持ち込むまで時間が掛かる。

聖石に何かしらの罠が張られていない事を調べ上げ、すぐにソフィアは首元にペンダントを下げて全身の魔鎧を解除し、キメラを睨み付ける。同時に隣のマドカも笑みを浮かべ、ゆっくりと首の骨を鳴らすと、


「最初から全力だ……躊躇するじゃねえぞ!!限界超越(リミット)、魔力暴走(オーバー)!!」


ゴォオオオオ……!!


マドカの身体全体から漆黒の魔力が溢れだし、ソフィアの魔鎧の完全武装のように身体全身を覆う。その光景にソフィアの脳裏に先ほどアルトと共に対峙したゼロの姿が重なり、どうやら彼女も彼同様に闇属性の「魔鎧(ダークネス)」を形成できるらしい。

ソフィアもそれに習うように両腕に魔鎧(フラム)を纏わせ、他の部位に肉体強化を発動させる。この状態では魔法を使用できないため、どちらも素手で戦わなければならない。


『うおぉっ……!?』
「行くぞ、おらぁっ!!」
「っ!!」


ドォオオオンッ!!


ほぼ同時に2人は地面を大きく踏み出し、そのままキメラに向けて跳躍する。レノは右拳、マドカは左拳を構え、同時に突く。


ドゴォオオオンッ!!


グラウンドに轟音が響き渡り、2人の攻撃を両腕で交差させることで防いだが怪物の姿があり、流石にこの2人の攻撃を受けた事で体勢を崩す。その隙を逃さず、マドカはさらに右足を振り上げ、ソフィアは地面に着地して足払いを仕掛けた。


バシィッ!!


『おぐぅっ!?』
「顔面直撃ぃっ!!」


咄嗟に反撃しようとしたキメラに対し、事前にマドカの右足の蹴りが顔面にめり込んだ事で反応が遅れ、そのまま倒れ込む。まだ完全には馴染んでいないのか、先ほどからキメラの動きが鈍く、この調子ならば倒せるかもしれないと二人が思った瞬間、


『うおおっ……!!』 


ガシィッ!!


倒れようとした瞬間、怪物は右腕で地面に支え、あろう事か腕だけの力で身体を持ち上げ、その場で新体操選手のように両足を回転させる。まさかの反応にソフィアもマドカも回避する事で精一杯であり、慌てて2人はその場を離れる。


「こいつ……!!なんて身軽さだ!?」
「油断すんな!!耳を塞げ!!」


マドカの言葉にすぐに反応し、ソフィアは咄嗟に耳を塞ぐのと同時に目の前の怪物の胸元が膨らみ、周囲の空気を吸い上げて凄まじい咆哮を放つ。



『いぎゃあぁあああああああああっ!!』



ドォンッ……!!



まるで衝撃波のように周囲一帯に凄まじい咆哮が放たれ、建物だけではなく地面までも震える。マドカの言う通りに両耳を塞ぎ、用心のために魔鎧で見も基を防護していなければ間違いなく鼓膜が潰れており、レノは視界が若干歪みながらも持ち直す。


「何てデタラメな……」
「ここまで化け物とはな……くそ、どうしてこういう時にあいつ等が居ないんだ」


どう考えても2人には手が余る相手であり、少なくとも単純な腕力だよりの相手ではない。先ほどから外見からは考えられない程の軽い身のこなしであり、さらには勇者の魔法(スキル)と思われる技能を使用し、想像もつかない行動を繰り返す。

この場にアルトやジャンヌがいれば彼らの聖剣でどうにか出来るかと思ったが、その前にまだ結界外で彼らが戦闘を繰り広げている可能性が高く、援軍は期待できない。


「アイリィ……!!冗談抜きで早く来てくれ……!!」


こんな時こそエクスカリバーとカラドボルグを所持している彼女の力が必要なのだが、まだ約束された時間まで5分弱の猶予がある。今のソフィアに残された手は最後の奥の手と、マドカに期待するしかない。


「ねえマドカ……そっちは秘密兵器とか隠してないの?」
「はっ……流石に目聡いな。お前専用に取って置いた武器がある……だが、こいつは一度きりだ」


マドカはスマートフォンを取りだし、何かを考え込むように見つめながらも、すぐに首を振って握りしめる。彼はスマホを握り締め、その内部にはツインが装備していた魔水晶とは別の最上位魔法を表す「ノヴァ」級の魔法が封じ込められている。


「ライジング・ノヴァ……但し、ある程度まで弱らせないと効果は薄い」
「俺とあいつを一網打尽にとか考えていない?」
「ちっ……見抜かれたか」


ソフィアはマドカに視線を向けると、彼は笑みを浮かべ、スマートフォンを握りしめる手が震えている。そんな彼の様子に疑問を抱きながらも、ここは彼に信じて戦うしかない。幸いにも「雷属性(天属性)」の攻撃と思われる魔法を使用するらしく、ソフィアの奥の手にも問題ない。


『あ、がぁ……』


2人が会話を行っている間もキメラはゆっくりと首を動かし、徐々に体を馴染ませている様子が伝わってくる。
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