種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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英雄編

聖天魔導士の由来

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――2年前、闘人都市の剣乱武闘がロスト・ナンバーズの襲来によって崩壊する前、レノは訓練も兼ねてミキに防御魔法陣(プロテクト)を教わっていた。その際、一度だけ彼女に前から気になっていたことを問い質す。

レノが尋ねたのはそれは聖天魔導士という称号の由来であり、聖導教会内では巫女姫よりもむしろ知名度が高い「聖天魔導士」の称号、その名前の由来は魔術教会から聖導教会の名前へと変化する際、ある1人の女性が関係している事をミキから聞いた事がある。

女性は異世界人の受け継ぐ人間であり、彼女は生まれながらに強い魔力を有しており、英雄しか扱えないという「天属性」を極めていた。その後、聖導教会にてヴァルキリー騎士団(ワルキューレ騎士団の基)に入団し、瞬く間に総団長の地位にまで登り詰め、本来ならば幼少の頃から特殊な魔石を埋め込まなければ習得できないはずの聖属性すら身に着けてしまう。

彼女は原初の英雄「アイル」と「フォルム」の再臨と言われるほどに才能があり、同時に心優しい女性と語り継がれており、聖属性と天属性の力を極めていた事から、何時の間にか彼女は「聖天の騎士」と呼ばれていた。


当時の巫女姫は彼女の偉業を讃え、聖導教会に「聖天魔導士」という役職を正式に造り上げ、彼女の死後も「聖天魔導士」の称号を受け継いだ後任たちは教皇よりもある意味では影響力を持つ存在となる。


その話を聞いた際、ミキは初代の聖天魔導士の称号を得た女性が興味深い話を残している事も教えてくれた。それはまだ彼女が天属性だけを極めていた頃、彼女はある死霊使いの集団に命を狙われ、彼等の放つ闇属性の魔法を打ち破ったという話であり、もしかしたら彼女が聖属性を習得出来たのも天属性を極めていた事が関係しているかも知れないという。

実際、今までに天属性を極めたという人間達の中には聖属性のように人を癒したり、悪霊を払う者もいたという文献も存在し、もしかしたら天属性とは聖属性と限りなく近い「退魔」の力を宿っている可能性があり、当時は死霊使いに対抗できるのは聖導教会の魔導士だけだったため、彼女は騎士でありながら「聖天魔導士」という魔導士の称号を巫女姫から授けられたらしい。



――最も「天属性」を極めた人間など歴史上でも数少なく、彼女の話が事実なのかどうかを確かめる術は無いのだが、カラドボルグから放たれる金色の雷光は確かに腐敗竜の呪詛を振り払っていた事を思い出し、ソフィアはミキの話を思い返しながら一か八かの賭けに出る。



「アルト!!」
「ああっ!!」


ゴォオオオオッ……!!


ソフィアの掛け声とともにアルトは魔力を刀身に集中させ、聖属性の優し気な白光が放たれる。すぐにゼロは彼の狙いを察し、まだ魔力が集まり切る前に阻止しようと自分の甲冑を透明化をさせようとした瞬間、ソフィアは右手に握りしめた魔石を黒甲冑の騎士に向けると、


「捕えろ!!」


ジャララララッ……!!


『何っ!?』


収納用の魔石から五つの聖爪のリングが射出され、それぞれに銀色の鎖が接合されている。そのまま放出された聖爪はゼロの身体を拘束し、瞬時に銀の鎖によって大剣ごと彼の身体を拘束する。前回の時よりも若干デザインが変化しており、恐らくは鎖に埋め込まれていたエクスカリバーの欠片を回収したと思われる。


『これは……我等が扱っている鎖を改造したのか?こんな物で……ぬおっ!?』


ドォオオオオンッ!!


唐突に電流が流れ込み、ゼロは驚いて前方を見るとそこには鎖を右腕に巻き付けたソフィアが立っており、彼女の魔術痕から電流が放たれている事を悟る。情報ではソフィアの状態では魔法が使用できないと聞いていたが、彼女はしっかりと銀の鎖を握り締め、


「解放(リリース)!!」
『ぬおぉおおおおおっ!?』


大声で叫んだ瞬間、ソフィアの右腕から金色に光り輝く雷光が迸り、鎖に伝導してゼロの肉体に流し込まれる。その瞬間、ゼロの全身を武装していた黒色の「魔鎧(ダークネス)」が消え去り、彼は驚愕する。彼はソフィアが天属性の力を使用するなど想像さえできなかった。


『馬鹿な……!?この力……一体どこまで!?ぐおぉおおおおおっ!?』
「す、すごい……!!」
「これが……雷光の英雄」


鎖から流し込まれる天属性の雷撃の威力は凄まじく、その熱量は銀の鎖でさえも耐え切れずに溶解を始める。その光景にソフィアは躊躇しかけたが、それでも構わずに電撃を送り続ける。例え、これまでに何度も自分の窮地を救ってくれた武器であろうと、今だけはこのゼロと名乗る黒甲冑の騎士を打ち倒さなければならない。

決して地下迷宮の甲冑の騎士との戦闘のように油断する事は無く、ソフィアは魔術痕に封印した魔力を使い切るまで電撃を送り込み続けるのをやめない。やがて、鎖が高熱によって崩壊しかける寸前、遂に魔力を刀身に収束させたアルトがそのままゼロに向かって大剣を振り翳し、彼女が造った好機を逃さないとばかりに感電する事も構わずに振り下ろす。



『ま、待てぇっ!!』
「ディバインスラッシュッ!!」



ドゴォオオオオオオオオオオンッ!!



凄まじい衝撃音が放たれ、デュランダルの刃が直接に黒甲冑に食い込み、そのまま聖属性の魔力を放出しながら鎧を破壊し、一刀両断してしまう。



『うおォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ……!!』



鎧が破壊された瞬間、魔人族の王であり、魔王を守護する騎士を名乗ったゼロの断末魔の叫び声が響き渡り、ソフィアの天属性とアルトの聖属性によって甲冑の中に存在した「黒色の靄」としか表現できない彼の魂が徐々に薄れていき、完全に消滅した。


バキィィイインッ……!!


ゼロの消失と同時に役目を終えた途端、銀の鎖と先端のネイルリングが砕け散り、地面に散らばる。その瞬間、ソフィアの目に今までの思い出と、そしてカトレアがにんまりと彼女らしく少し艶めかしい笑みを浮かべる姿が浮かび上がり、思い返せばこの鎖の所持者は彼女だったことを思い出す。

心の中で礼を遂げると、そのままアルトが大剣を握りしめたまま動かない事に気が付き、慌てて自分のせいで感電してどうにかなってしまったのかと心配して近づいた瞬間、


「……やったな」


その場で片膝を着きながらもアルトはソフィアに向けて振り返り、彼女も同時に笑みを浮かべて頷く。手を差し出して彼を立ち上がらせると、後方から仲間達が驚愕の表情のまま硬直している事に気が付き、


「何してんの、まだ終わってないよ」
「そうだな……行こう」
「え、あ、はい!!」
「だ、大丈夫なのか?」
「流石だな!!」
「……魔人王」


全員が驚きながらも最強の敵を打ち倒したことに歓喜する中、アルトとソフィアだけはすぐに結界に侵入するために移動し、慌ててジャンヌも追いかける。ギガノだけは粉々に砕け散ったゼロの鎧を前に思う所はあるが、今は感傷に耽っている場合ではない。

すぐに聖剣組が結界を目の前にし、それぞれが結界石を取りだして頷き、鳳凰学園に侵入しようとした途端、



『――遅いから何をしているのかと思いきや、まさかゼロが打ち倒されてるとはねぇ』



突然、前方の結界から声が掛けられ、結界内に異変が起きる。先ほどまで確実に内部で遮断されていた鉄柵が開いており、結界に波紋が生まれて五つの人影が飛び出してくる。すぐにソフィアたちはその場を後退り、彼等の前に黒色の服装で統一した男女が現れる。


「情報相違、契約者の魔力が向上」
「たくっ……結局、碌な時間稼ぎにもなってねえじゃねえか」
「ゼロ……まさか君ほどの男が破れるなんて……くっ!!」
「ほほほっ……随分と成長したのう」
「さてと……それじゃあ、あんた達?作戦通りに動きな」



――学園の正門を前に、ロスト・ナンバーズの残されたメンバーが全員勢揃いであり、彼等はソフィア達を前にして余裕の態度で姿を現した。
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