種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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英雄編

無敵

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「ぐっ……」
「まさかっ!?」
「2人の攻撃を喰らって……無傷だと?」
「馬鹿なっ……!?」


アルトたちの目の前にはソフィアとギガノの攻撃を喰らいながら、無傷のまま立ち尽くしているゼロの姿が存在した。2人は同時に離れると、黒甲冑の騎士は首を鳴らす動作を行い、ゆっくりと大剣を担ぎ上げる。


『無駄だ……俺の身体を傷つけるものはいないと言っただろう。例え、リーリス様が相手であろうと私の身体を傷つける事は出来ん』
「貴様っ……!!」
「……なるほど」


歯を食いしばるギガノに対し、ソフィアは渾身の弾撃ですらも弾き返したゼロを確認し、先ほど感じた違和感に気が付く。もしかしたら、相当以上に厄介な相手と戦っているのかもしれない。


「……そう言う事か」
「ど、どうしたんですかソフィアさん?」
「何か、気付いたのか?」
「まあね……まさかこんな場所で同類と出会えるとはね」
『ほうっ……気付いたか』


ゼロはソフィアと向き合い、感心したように大剣を地面に置くと、全身から再び黒い魔力を吹き出す。同時に彼女は見抜き、黒甲冑だと思っていた鎧は実際はゼロが滲みだす「魔力」によって変色しており、その力は間違いなくソフィアが右腕に形成している魔鎧と同じ原理なのだろう。


「あんたも……魔闘術を扱えるのか」
「魔闘術……!?確か、ソフィアさんが扱う魔鎧と同じ……」
「なるほど……噂には聞いていたが、実在していたとはな……傭兵を生業とする一族が生み出した秘術」


ギガノが納得したように頷き、ゼロを睨み付ける。黒甲冑の騎士は全身の鎧に魔力を送り込み、それをレノと同様の防御型の魔鎧に変換して身に着けているのだ。だからこそ、今までの攻撃が通じなかった。

最強の鎧にあらゆる衝撃を受け流す魔力の鎧、この二つを併せ持ったからこそ、彼は自分を傷つけられる存在などいないと断言した。その言葉は否定できず、彼の言う通りにどんな衝撃を外部から与えようが、魔法を発現させようと全てを無力化させる事が出来る。正に「無敵」と言っても過言ではない。


『お前もどうやらこの技術を扱えるようだが、無駄だ。貴様と俺では相性が悪い』
「だろうね」


ソフィアの攻撃型の魔鎧に対し、防御型であるゼロの魔鎧は非常に相性が悪く、どんな攻撃を加えようと無効化してしまう。彼女の魔鎧がダイヤモンドに例えるなら、黒甲冑を覆う魔鎧はゴムのように弾力性に優れた素材なのだ。

例え、魔鎧を突破して攻撃を加えたところで、相手の身体を形成しているのは世界でも希少な金属を掛け合わせた合金であり、幾らソフィアの攻撃でも損傷を与えられる可能性は低い。この場でゼロの鎧を破壊できる物がいたとしたらアルトだけであり、彼の世界最硬のデュランダルならば魔鎧さえ何とかすれば甲冑を破壊出来る可能性は高い。

今までにデュランダルの所持者がゼロに対して傷一つを付けられなかったのは、彼が覆う魔鎧が原因であり、単純な硬度の高さはデュランダルが上である。即ち、魔鎧さえ無効化してしまえば後はアルトに任せる事が出来る。ソフィアはそう判断し、どうやって相手の魔鎧を解除させるかを考える。


『言っておくが、私の鎧には魔水晶が埋め込まれている。魔力切れでこの魔鎧(ダークネス)を解除するという甘い考えを抱いているのなら諦めろ』
「魔鎧(ダークネス)?」
『貴様の魔鎧は「火属性」のようだが、俺のは根本的に違う。今は失われた闇属性の魔力によって形成されている』
「闇属性……聖導教会の聖属性と相対する悪しき属性魔力か」


すぐにソフィアの脳裏にシャドウの存在を思い出し、闇属性とは死霊使い等が使用する属性魔法である。ソフィアの魔鎧とゼロの魔鎧は種類が大きく違い、今は無効化させる事に集中する。


『悪あがきは止めろ。お前たちが万の軍勢を呼び寄せたところで、私を殺せる人間は存在しない』
「私、ハーフエルフですけど」
「俺は、巨人族」
『……そう言えばそうだったな』


会話を続けながらソフィアは様子を観察し、仮に相手が闇属性の魔力で全身武装を施しているとしたら、闇を取り払う力で対抗できるのではないかと聖属性の力を宿すジャンヌとアルトに視線を向けるが、


「……ソフィア、君が今思ってる事は何となくわかるが、はっきりと言って無理だ。僕たちの聖属性の力では恐らくあの禍々しい魔力の鎧は取り生えない」
「闇属性に対抗できるのは聖属性のみ……ですが、私のレーヴァティンもアルトのデュランダルも使用したところで魔力の衣を振り払う事は難しいのです。それほどまでにあの男の身体からは恐ろしいほどの魔力を感じます」


2人とも聖剣に選ばれたものとはいえ、目の前に相対する1000年もの間を生き続けた黒甲冑の騎士が相手では分が悪く、悔し気に唇を噛み締める。正直な話、限界まで聖剣の力を引き出せば対抗できるのかもしれないが、それをした場合は2人とも魔力切れを起こして戦闘不能になる。

その場合、残されたロスト・ナンバーズとの戦闘には参加できず、さらに言えばゼロを確実に倒せるとは限らず、最悪なのは魔力を使い果たし、それでもゼロを戦闘不能の状態に追い込めない場合だ。


「くっ……こうしている間にも、結界内の呪詛が蓄積されていくというのに……!!」
『立ち去れ、私はあくまでもここに門番を任されただけだ。今のうちに遠くへ逃げて、再戦の機会を待てばいい』
「勝手なことを!!」


ボウッ!!


ゼロの言い分にジャンヌは激昂し、ここで自分たちだけが引いてしまえば数万人の命が犠牲になってしまう。


「仕方ない……取って置きだったんだけどな」
「ソフィア?」


彼女は右腕に宿された「解放術式」の魔術痕を確認し、既に半日分の魔力が込められている。この力を一気に解放すれば、短い間ではあるが雷属性よりもさらに上の段階の「天属性」を使用できる。それだけではなく、アイリィから事前に受け取った収納用の魔石を取り出し、これらを使えば原理上はゼロの魔鎧を突破できるはず。

ソフィアは魔法を使用できない。それは今でも変わらないが、この右腕に仕込まれた魔術痕を使用すれば一部の魔法だけを解放できる。使用できる魔法には制限があり、乱刃や紫電のような放出系の魔法は不可能であり、放てるとしたら撃雷のみ。これらを考慮して、考え抜いた作戦にはある人物の協力が必要だ。


「アルト、ちょっと来て」
「……何か策があるのか?」
「1つだけ」


アルトを呼び寄せ、恐らくはあの鎧を唯一破壊出来るであろうデュランダルを確認し、小声で話しかける。


「例の必殺技……ディバインスラッシュってどれくらいかかる?」
「駄目だ……あの技は溜めに時間が掛かり過ぎるし、消費量が激しい。それにあの魔力の鎧を突破する事は僕には……」
「あの魔鎧を何とかすれば、どうにか出来る?」
「それは……出来ると思うが、いや、やって見せる」
「なら、作戦は決まり」
『何をこそこそと話し合っている?俺を倒す算段でも考え付いたのか?』


正門の前で仁王立ちするゼロに対し、アルトとソフィアは前に出る。慌ててギガノが引き留めようとするが、すぐに2人が制する。


「さてと……何だかんだでアルトと一緒に戦うのは久しぶりかも」
「そうだな……地下迷宮以来かな」
『……世間話はそこまでにしろ』


漆黒の大剣を構えながら身構えるゼロに対し、2人は最後にお互いの拳を合わせ無敵を誇る敵に対して動き出す。
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