種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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闘人都市崩壊編

魔力暴走

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マドカは服の袖からスマートフォンを取り出し、耳に押し当てると、何事か呟く。


「ヒカリ……頼むよ」


レノは耳を澄まし、彼が一体誰と連絡を取り合っているのか聞き取ろうとするが、スマートフォンからは何も聞こえず、直後にマドカに異変が起きた。


ゴォオオオオッ……!!


彼の全身から「漆黒」の魔力が溢れだし、視認できるほどの魔力密度にレノは冷や汗を流す。ヨウカのような魔力眼を持たない彼でもはっきりと見える魔力の放出に冷や汗を流す。

レノも魔鎧を発動させれば「蒼炎」や「紅炎」を想像させる魔力を生み出せるが、それは訓練によって生み出した技術であり、マドカのように全身から魔力を放出するなど出来ない。



「――魔力暴走(オーバーリミット)!!」



ドォオオオオンッ!!



マドカが一歩踏み出した途端、地面に亀裂が走り、彼は笑みを浮かべる。その馬鹿げた「膂力」にレノはゴンゾウの「鬼人化」を想像するが、彼の場合は肉体強化に魔力を注ぎ込むのであり、マドカのように外部に常に魔力を放出し続けているわけではない。

魔力とは謂わば「生体エネルギー」であり、使い方によっては他者を「癒す」事も「破壊」する事も可能とする。現在のマドカは自分の魔力を全て攻撃エネルギーに変換しており、動いただけで周囲に振動が起きる。

現在のマドカは擬似的な「魔鎧(攻撃型)」を全身に覆っている状態であり、迂闊に触れればどうなるか分からない。


「ぐ、ううっ……!!」


一歩一歩踏み込むだけでもマドカは苦痛の声を上げるが、すぐに彼はレノに視線を向け、


「おぉおおおおっ!!」


ドォンッ!!


マドカはレノの瞬脚を想像させる跳躍を行い、真っ直ぐに突進してくる。レノはすぐに避けようとしたが、その速度は尋常ではなく、既に目前にまで迫っていた。


「くっ……!!」
「おらぁっ!!」



ドゴォオオオオオンッ!!



凄まじい轟音が周囲一帯に響き渡り、レノの肉体が吹き飛ぶ。まるで大型トラックに吹き飛ばされたように数メートルも先に飛ばされたが、


「がはっ……!!」


ズザザザッ……!!


何とか空中で体勢を整え、地面に足を擦りつけながら停止する。相当な威力だったが、既にレノの右腕には魔鎧が形成されており、寸前で攻撃を防いだ。

防御型の魔鎧だった事が幸いし、衝撃の殆どを外部に受け流す事が出来たが、それでもレノの肉体は大きく吹き飛ばされた。今現在のマドカは途轍もない膂力を誇り、下手をしたらゴンゾウの金剛撃にも匹敵する威力だった。


「何て馬鹿力……!?」
「よそ見、してんな!!」


痺れる右腕を抑えながら、レノは上空を仰ぐと、そこには拳を振り上げた状態のマドカの姿があり、咄嗟に後方に下がる。



ズガァアアンッ!!



マドカの右拳が地面に衝突した瞬間、周囲一帯に地震が発生し、レノは空中で回避しながら距離を取る間にもマドカは走り出しており、


「うらぁっ!!」
「うわっ!?」


向い来るマドカの拳を躱すが、空振りしただけでも激しい風圧が発生し、レノの身体が浮き上がる。これほどまでに凄まじい身体能力の相手は初めてであり、冗談抜きで地下迷宮の魔物達よりも強い。

今まで、レノはどんな相手だろうと地下迷宮や北部山岳の戦闘経験を生かして戦い続けた。だが、これほどまでに規格外の相手などゴーレム・キングや甲冑の騎士以来であり、単独で撃破出来るとは思えないが、今は援軍は期待できない。


(こっちも「強化術」を……いや)


現在のマドカは言ってみればソフィアの「強化術」と「魔鎧」を同時に発動させた状態であり、生半可な攻撃は通用しない。だからと言ってカラドボルグで打ち倒すにも建物が多い街中では使用できるはずがなく、明らかに分が悪い。


「がぁああっ!!」


ドガァアアアンッ!!


「くそっ……!?」


横薙ぎにマドカが蹴りを放っただけで風圧が周囲に襲い掛かり、建物に罅割れが発生する。直に当たった訳でもないのに風圧だけでも相当な殺傷能力があり、もしも真面に彼女の攻撃を受けたら即死は免れない。レノは空中に回避しながら、右手をマドカに向けて複数の魔法を放つ。


「乱刃!!紫電!!」


ドォンッ!!


バチィイイイイッ!!


三日月状の嵐属性の刃と、紫色の電流が放たれ、地上のマドカに放たれるが、


バシィッ!!


「ふんっ!!」


彼女は右腕を振り払う動作で二つの魔法を打消し、逆に拳を上空に振り上げ、レノに向けて「風圧の拳」を放つ。



ズドォオオオンッ!!



「くっ……瞬脚!!」



向かってくる風圧にレノは空中で高速移動を行い、何とか紙一重で避けるが、マドカは両腕を振るい、何度も風圧を放つ。


「おおぉおおおおおっ!!」



ズドドドドォオオンッ!!



拳を振り上げる度に拳ほどの大きさの風圧が無数に放たれ、レノは瞬脚で躱し続けながら、マドカの隙を伺う。


「くっ……よっ、おっと……」


ドォオオンッ!!


風圧の拳を避け続けながら、レノはすぐに異変に気が付く。マドカの身体から異常なまでの汗が噴き出しており、顔色が悪いことに。


(魔力暴走(オーバーリミット)……そう言う事か)


すぐにレノはマドカの「魔力暴走」の真意を見抜き、ソフィアの「強化術」やゴンゾウの「鬼人化」と同様に現在の彼には相当な肉体の負荷が掛かっているのだ。
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