種族統合 ～宝玉編～

闘人都市崩壊編

ケンキ

ケンキの生い立ちは皮肉にも彼が殺したと言っても過言ではないリュウケンと酷似しており、ダンゾウの実弟であるレイゾウと人間の女性との間に生まれた子供であり、彼はその生まれから本来ならば迫害される立場だった。

しかも、リュウケンと大きく違うのは彼は両親から愛を受けられず、彼女の母親は彼を産む際に体力を使い果たし、そのまま亡き者となる。父親であるレイゾウも巨人族の代表である兄の顔に泥を塗る形を取ってしまい、周囲からの信用を失ってしまう。

レイゾウは遥か東方の地に追放され、生まれてきた巨人族と人間の血を継ぐ赤子はダンゾウに託される。彼は弟が巨人族の掟を破り、生まれてきた子供に対して差別は行わず、まるで我が子同然に育て上げた。彼の名前である「ケンキ」はレイゾウが巨人族の土地を立ち去る際にダンゾウに頼み込み、彼も了承してその名前を名付けた。



――その後、ダンゾウの下で立派に育てられた「ケンキ」は体格は人間その物だが、腕力は父親譲りであり、戦場に繰り出しては誰よりも功績を上げる。やがて、少しずつだがハーフである彼に対しての周囲の態度が軟化し、ケンキの扱いも改善されていく。



だが、ケンキが１５歳の誕生日を迎えた際に生まれてきた「ゴンゾウ」が切っ掛けで彼の人生は狂い始め、ケンキはずっと自分がダンゾウの息子ではなく、その弟の「レイゾウ」の子供であることを知らされていなかった(ずっと自分が戦災孤児だと思っていた)。

日に日に育っていくゴンゾウに対し、両親は愛情を注ぎ込み、そんな２人にケンキは不安を抱く。自分が大切にされていたのは２人が長い間を子供が授からなかったからであり、本当に自分に対して愛情を抱いていたのかに疑問を抱いてしまう。

その後、赤ん坊である「ゴンゾウ」に対してケンキは嫉妬に似た感情を抱きながらも、それでもここまで育ててくれた２人を信用したが、明らかに親子の関係に罅が出来てしまった。



ダンゾウとしては実の子供でなかろうとケンキに対して同じ愛情を抱いていたつもりだが、彼の妻である「カイリ」は自分が苦労して産んだゴンゾウに対して深い愛情を注ぎ込み、そんな彼女の姿がケンキの心を追い詰める。さらには自分がダンゾウの弟であるレイゾウの子供である事をダンゾウの配下の巨人族から聞き出し、より一層にケンキは両親に疑問を抱く。



――そして、ゴンゾウが１歳の誕生日を迎えようとした時、ケンキはある噂を耳にする。それは彼の本当の父親であるレイゾウが病に伏し、あと半年の命だと宣言されたという。



親の「愛情」を欲していたケンキはその情報を耳にすると、一度でいいから自分の実の父親と会ってみたいという願望が抱き、彼が追放されたという東方の地に出向く。

そして３カ月の歳月を費やし、ケンキは闇ギルドの情報を頼りに自分の父親であるレイゾウの居場所を特定すると、彼は山奥の山村で寝たきりの状態の彼と再会を果たした。

レイゾウは一目で自分の子供であるケンキと見抜き、そんな彼にケンキは本当に自分の父親である事を理解し、２人は共に生活を始める。長い間離れていた分、レイゾウは今までの時間を取り戻すようにケンキと会話を行い、家族からの愛情に飢えていた彼も嬉しげに応え、彼の介護を行う。



――２人は共に生活し、これまでの出来事を話し合いながら幸せな時を過ごした。だが、既にレイゾウの身体には不治の病が身体中を侵しており、ケンキが彼の元に辿り着いてから２か月もせずに限界を迎え、その時が訪れた。



『……お前と暮らせて、俺は幸せだった。こんな最低な父親に会いに来てくれて……ありがとう』



それだけを告げると、レイゾウはケンキの目の前で息を引き取り、彼は自分の父親を失ったことに泣き叫び、生まれて初めて父親をここまで追い詰めた「巨人族」に怒りを抱いた。

その後は彼の遺体を埋葬し、ケンキは巨人族の土地に戻ると、そこにはいなくなった彼を心配するダンゾウの姿があり、レイゾウの死を伝える。

彼は実の弟が死んだことに涙を流さず、レイゾウが追放されたときから既に覚悟をしていた。そして、無事に帰ってきたケンキを慰めるように抱きしめるが、彼の心中はとても落ち着いていられなかった。



――自分の弟であり、そしてケンキの実の父親が死んだことに涙一つ流さないダンゾウに対し、レイゾウをあのような姿にまで追い詰めた巨人族にケンキは「復讐」を誓う。



彼は戻って早々に幼いゴンゾウを誘拐し、そのまま消息を絶つ。ダンゾウも突然のケンキの行動に動揺しながらも、すぐに動かせる兵士を動員して追跡を行うが、結局はゴンゾウの居場所を判明したのは約１０年後であり、彼はある巨人族の親子の下で育てられていた。

その親子は母親を早くに亡くしており、父一人、娘一人で暮らしていたが、ある時に川に流されていたゴンゾウを偶然にも父親が見つけ出し、そのまま彼を自分の息子同然に育て上げた。それを知ったダンゾウは本当の親子同然に暮らしているゴンゾウに、自分が父親であることを名乗る事は出来なかった。

やがて成長したゴンゾウは偶然にもバルトロス王国の王太子であるアルトと知り合い、彼の援助の元で学園都市に通っていた。その後は知っての通り、マドカとカトレアによる二度のセンチュリオンの襲撃により、学園都市の鳳凰学園は閉鎖して彼は一時期は冒険者の職に就く。



――ダンゾウが腐敗竜の討伐の一件で開催されたパーティーで２人は遂に運命の再会を果たしたが、既にゴンゾウは彼の事を忘れており、自分の父親は川に流れていた自分を救い出してくれた父親と妹だけだと宣言した。