種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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闘人都市崩壊編

プロテクトドーム

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「くっ……何が……!?」
「悪いねゴンちゃん、でも……」


右腕の魔鎧を解除し、レノは指先に雷属性の魔力を集め、彼に接近する。脳震盪で真面に動けないゴンゾウを気絶させるためでもあるが、一番の目的は別にある。


ビュンッ!!


(来たっ!!)


性懲りも無く、三度目のクナイが今度はレノの足元に放たれ、ゴンゾウに接近する際に隙が出来たと判断して狙ったのだろうが、アイリィの急成長によって上昇している彼の優れた五感は相手の位置を把握した。


「そこか!!」


ズドォオオンッ!!


ナイフを難なく回避し、右腕をピストルの形に変え、刃物を回避すると同時に在る方向に向けて紫電を放つ。レノの扱う魔法の中でも最速の「雷」であり、これを避ける事は白狼でも不可能である。



バチィィイイイッ!!



「ぐおおっ!?」


30メートルほど離れた建物の屋根から悲鳴が聞こえ、どうやら紫電が命中したらしい。威力は手加減せず、相手を焼失させる勢いで放ったが、距離があるため完全には仕留められなかった。


「ふうっ……さて」


ガシィッ……!!


後方を振り返るとゴンゾウが片手で頭を抑えながらも立ち上がり、棍棒を握りしめるがその動きは明らかに鈍い。まだ「脳震盪」の影響が残っており、幾ら鬼人化したとは言え、今までの損傷が今消えるわけではない。

仮にゴンゾウが冷静な状態ならばこのような姿など見せず、万全の状態の彼と戦っていたとしたら、こんな形で決着を迎える事は無かった。


「……撃雷」


ダァンッ!!


右腕に螺旋の風雷をそのまま瞬脚で接近し、大きく右腕を振り上げ、足の裏から、足首、膝、股関節、腹部、胸、肩、肘、腕、拳の順で身体を回転、及び加速させ、今までの中で最大の勢いを乗せた拳を振り抜き、



「レノォオオオオッ!!」
「――弾撃!!」



ゴンゾウは両腕を交差させて構えるが、それすらも先読みしてレノは彼の腕の隙間を掻い潜り、



ズドォオオオオオオンッ!!



「ぐはぁっ……!!」



一筋の雷と化した右腕が鬼人化したゴンゾウの腹部を貫き、彼の身体に電流が迸る。枯葉ゆっくりと前のめりに倒れ込み、レノに抱き抱えられ、薄れゆく意識の中、


「俺は……負けたのか」
「……ああ」
「……そう、か」



――それだけを告げるとゴンゾウは瞼を閉じ、最後の彼の瞳は虚ろな物ではなく、元の彼の真っ直ぐとした瞳に戻ったような気がしたのは間違いではないだろう。



「……後は任せろ」


ゴンゾウをゆっくりと地面に下ろし、レノは彼を避難させるために転移魔方陣を地面に書き込もうとした時、



――ドゴォオオオオンッ!!



「くっ……また酷くなってきたな」


近くの建物に隕石が衝突し、瓦礫が地面に落下する。先ほどよりも降り注ぐ隕石の量が減少したとはいえ、このままでは本当にこの闘人都市が崩壊してしまう。

レノはすぐにもゴンゾウを移動させるため、地面に銀の鎖で転移魔方陣を書き込み、彼だけを枯葉の森に転移させる。幸い、以前にムミョウがプロテクト・ドームを発動させたときとは違い、今の所は転移魔法を阻害する類の結界は張られていない。


「じゃあねゴンちゃん」
「うっ……」


ボウッ……!!


転移魔方陣が光り輝き、ゴンゾウの巨体が光に飲みこまれ、次の瞬間には彼の巨体が消え去る。上手く転移が成功し、安堵の息を吐く(センリの指示の元、目標物だけを他の転移魔方陣に送り込める技術は習得済み)。


「……まだ戦える」


先ほどから全力で魔法を使用しているが、魔力は十分に有り余っている。そして転移魔方陣を使用した際にレノは忘れていたことを思い出す。



――それはシャドウとの戦闘の際、闘技場の地下施設に二つの「転移魔方陣(スターゲート)」を残したままだ。あまりの非常事態に忘れていたが、ここからでも十分に転移できる。すぐに地面に新しい魔方陣を搔きこもうとした時、



「……?」



不意に周囲から隕石の轟音が聞こえなくなり、疑問を抱いて周囲を見渡すと、すぐに異変の正体に気が付く。



ブゥウウウウンッ――!!



「これは……」



レノを中心に半径10メートルの範囲に「緑色の膜」のような物が形成されており、上空20メートルの位置まで展開される。以前にも二度ほど見たことがある代物であり、森人族の「プロテクト・ドーム」と呼ばれる結界だ。舌打ちを堪え、すぐに深淵の森の刺客が現れると判断したが、



「――久しぶりじゃのう……といっても二か月ぐらいか」



予想外の人物の声が聞こえ、振り返るとそこには何時の間にか「兎耳の少女」を片手で掴んだ幼女が立っており、深淵の森の族長であり、ムミョウの母親でもある「ムメイ」が立っていた。
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