種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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剣乱武闘編

バルのために

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「彼等の目的は掴めませんが……この大会にのこのこと姿を現した時が最期です。私の最愛の友であり、そして戦友でもあったミキを死なせた事を必ず後悔させます」
「……マザー」


センリがミキの名前を出した途端、隣に座っていたヨウカがあからさまに落ち込み、彼女はミキが死亡したのを未だに引きずっており、すぐにホノカが彼女を抱き寄せる。


「……ミキさんのためにも、今君がやれることをやるんだ」
「私の……?」
「取りあえずはもっと治癒魔法を上達させて、どんな大怪我や病気の人でも治せるようになる事かな」
「……うん、私頑張るよ」
「その意気だ」


ホノカは彼女の頭を撫でやるが、それでもまだ影が差している。彼女にとってミキは年が離れていた母親同然の存在であり、彼女は大勢の人々を守るためにその身を犠牲にした。ヨウカがそんな彼女と同じような道を辿らせないためにも、センリとホノカは彼女の護衛を行い、センチュリオンとの因縁は一刻も早く解消しなければならない。


「センチュリオンか……」
「どうかしたんすか姉貴?」
「いや……何でもないよ」
「……?」


バルの発言にレノは視線を向け、彼女は以前にある組織に所属しており、組織に関わる情報を漏らさない様に「怨痕」が植えつけられている。その組織というのが気にかかるが、少なくともバルは信用できる。

だが、彼女は以前に「ハナムラ侯爵家」に盗みに入った際にホムラに命を狙われており、話から察するに彼女が所属していた組織の人間の誰かにホムラは深い恨みを持っており、レノが住んでいた孤児院を経営していたビルドも殺害している。彼女もバルと同じ組織に所属しており、恐らくはムミョウも嘗ては所属していたと思われる。

色々と問いただしたいところだが、怨痕が埋め込まれている以上、バルから聞き出す事は彼女の身が危ない。


(んっ……?怨痕……?)


そこでレノは目の前に立つ聖導教会出身の巫女姫と聖天魔導士に視線を向け、


「あのさ……2人とも怨痕を解除出来ない?」
「え?」
「は?」
「ちょっ……レノ!!」


レノの発言にヨウカとセンリは顔を見合わせ、バルが慌てふためくが、


「怨痕ですか……一応は何度か浄化したことはありますが、それならば巫女姫様の方が適任かと」
「ええ!?わ、私!?……あれ、前にもこんな事があったような……?」


以前に闘人都市でシャドウの操る死人に襲われた際、レノが打ち倒した魔術師の死人が装備していた呪具を浄化したのは巫女姫であるヨウカだった。

彼女は聖属性の魔力を放出するだけで他者を癒し、呪われた武具を浄化できる。また、この1年半でより魔法の技術を鍛え上げ、今では儀式の際に必要な魔法は全て習得している。


「但し、怨痕は浄化するのは危険が伴います。浄化の前にまずは私の方が確かめたいのですが……」
「だってさ」
「……たくっ、強引な奴だね」


観念したのかバルは2人の前に出る。そして、ゆっくりと自分の舌を出し、


「こふぇだよ……どうにふぁでひるかい?」
「これは……」
「うわぁっ……くっきり残ってるね」
「姉御、変なところにタトゥー入れたんすね……」
「おおっ……」
「へぇ~……僕も初めて見るな」
「何て酷い……」
「わふぅっ……」
「って、じろじろ見るんじゃないよ!!」


全員から口内を見られ、恥ずかしげにバルは舌を戻すが、センリは何かを考えるように顎に手を組み、


「ふむっ……バルさんの怨痕は私も初めてみますが、それだけに対処は慎重に行わないといけません」
「ちなみに怨痕の解除の方法ってどういうの?」
「方法自体はそれほど難しくはありません。怨痕を刻まれた部分に聖属性の魔力を送り込むだけですから……ただ、魔力を送り込む間に怨痕も抵抗をしますから、何の準備も無しに魔力を送り込むのは無謀です」
「へえ……聖属性か、アルトのディバインスラッシュでも出来るの?」
「……出来ない事は無いでしょうが……その場合はバルさんの舌は消え去ります」
「怖い事言うんじゃないよ!!」


逃げるようにバルは下がるが、怨痕を解除しない限りは彼女は本当の「自由」とはなれない。センリは自分の手荷物を確認し、


「こういった事はミキの方が得意のですが、怨痕の周囲に結界を張り、ヨウカ様が魔力を送り込めば浄化は出来ると思いますが……バルさんの場合は「舌」に埋め込まれているのが問題です。浄化の際中に何らかの悪影響が出てしまう可能性があります」
「聞いてるだけで怖いね……もうやめだやめ!!私の事は気にしないでいいよ!!」
「でも……センリさぁん……」
「うっ……そ、そんな目で見ないでください。他の方法が無いか、私の方も調べてみますから」


ヨウカに縋るように見つめられ、センリは慌てふためき、バルは頬を赤くして視線を反らす。自分のためにこれほど皆が反応してくれる事に照れているようだ。


「カゲマルは怨痕の事は詳しくないの?」
「拙者たちの場合は怨痕を仕込む側でござるからな……って、なんで皆拙者から距離を取るんでござる!?」


さり気なく恐ろしい事を口走ったカゲマルに全員が後ずさり、取りあえずパーティーを再開させる。センリだけは怨痕の事を調べるために先に抜け出したが、宴は夜が明けるまで続いた。
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