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第四部隊編
おてんば娘
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「――という事ですの」
「どういう事?」
だいたいの彼女の身の上話を聞き終えたが、リオが何を伝えたいのかは理解できない。眼の前のリオがアルトに次ぐバルトロス王国の王位第二位継承者であり、最近になって王国貴族たちから彼女が王位を継ぐに相応しいという噂が流れている事は分かった。
しかし、そんな彼女が何故「地下闘技場」に出場して、自分を破って優勝を果たしたソフィアに接触を計ったのかは説明されていない。
「本題はここからですわ……この噂というのが、実は信憑性が高いと思いますの。以前にお爺様……国王様に呼び出された時、王になりたいかどうかを問いただされたのですわ」
「ふ~ん……」
「その際はお兄様……アルト様と争う気は無いし、王位には興味は無いと断言したんですけど……どうにも最近、おじい様とお兄様の仲が険悪なのです」
「そうなの?」
「険悪……かどうかは分からぬでござるが、確かに最近はお二人の距離が開いたように思えるでござる」
ソフィアとしてはどちらとも最近はあまり接点が無いため分からないが、もし彼女の話が事実ならばあながち彼女の王位継承という話しも有り得ない事ではない。だが、幼少の頃から英才教育を受けているはずのアルトと比べ、目の前の彼女がどれほどの人物かはまだ分からない。少なくとも魔術師の腕は相当な物だが、それだけでは判断しかねる。
「私の願いというのは……お兄様とおじい様の仲を取り持つのに強力してほしいのですわ」
「そう言われてもね……何で私?」
「別に貴女1人に全てを任せるつもりはありませんわ。ただ、私の護衛役として傍に控えて欲しいだけですわ」
「護衛役って……そう言えば何で1人で行動してんの?一応は身分の高い令嬢なんでしょ?」
「抜け出してきましたが何か?」
「……お転婆だな」
あれほどの実力を持つ魔術師ならば生半可な実力の襲撃者も簡単に撃退できるだろうが、それでも危険な行動に変わりはない。
「というより、護衛役って……王国の専属の護衛が居るんじゃないの?」
「一応はいますけど……どうにも彼らは信じられませんわ。やたらと私の行動に口を出すし、城下町に出向くのを禁止しますし……」
「当たり前でしょ、それが仕事なんだから」
「それは分かりますけど……彼らは私の護衛ではなく監視が目的で付けられた者達ですから、正直に言えばうざいですわ」
「だからって一般人から護衛役を募集するのもおかしいでしょっ」
「仕方ないじゃありませんの!!おじい様に相談しても反対されるし、他の貴族から斡旋された護衛は信用できませんし……だったら私が直接腕利きの冒険者を護衛役として雇うしかありませんもの!!」
「いや、そういう問題じゃなくてさ……」
一般人から王族の護衛を募集する考え自体が非常識であり、そのためにわざわざ自分で闇ギルドが経営する地下闘技場にまで出場するなど、お転婆娘などという生半可なレベルではない。最早、ここまできたらただの馬鹿娘である。
「……というか、何でこんな場所にまで尋ねて護衛役を探してるの?探すとしたら、普通は王城の城下街でいいじゃん」
「あら?知らないんですの?今回の剣乱武闘は各国の王族が呼び集められているのですよ。だから、私もおじい様もお兄様も都市に居ますわ」
「そうなの?」
「いちいち転移魔法で訪れるのも魔術師に負担が掛かりますからね。まあ、私としては初めて訪れる場所なので嬉しい事ですけど」
そんな話は王国側からは報告されていなかったが、とりあえずは彼女がこの都市で新しい護衛役を募集していた理由は判明した。
「それにお爺様も腕利きの冒険者ならば護衛役として引き入れても構わないと約束してくれましたわ。だからこそ、大会目当てに集まった冒険者の方々に話をしているのですわ」
「よく許可してくれたなぁ……」
「許可してくれなければ断髪する覚悟だと告げたら、快く了承してくれましたわ」
「どれだけ必死なの?」
普通、頼みごとをするためだけに断髪などという言葉を口にする女子などいるはずがない。国王としても断ろうにも断れず、渋々と承諾したのだろう。
「私の目的は今まで通り、好きなだけ趣味に没頭したり、下々の人間から崇められたり、自由気ままな生活を送りたいだけですわ!!」
「不純な動機だなぁ……」
「というわけで、貴女を私の第一の護衛役に任命しますわ」
「お断りします」
「何故!?」
本気で驚愕するリオにソフィアの方が逆に冷汗を流し、その後は夜が明けるまで勧誘を続けるリオと頑なに断るソフィアの光景が繰り返され、結局は面倒ではあるがカゲマルが仲裁に入り、彼女を連れ、バルトロス国王とアルトが宿泊しているという闘人都市の最大の宿泊施設(最高級宿屋)へと向かう。
「ほら、行くでござるよ!!あいたっ、暴れないで欲しいでござる!!」
「私は絶対にあきらめませんわよ~!!」
「勘弁してよ……」
「変なのに目を付けられたね……」
酒場を去り際、カゲマルに引きずられながらも勧誘を諦めない言葉を残してリオは立ち去る。残されたソフィアは地下闘技場で戦った時よりも疲労が増し、そのままレグの訓練の時間帯までベッドに倒れ込んだ――
「どういう事?」
だいたいの彼女の身の上話を聞き終えたが、リオが何を伝えたいのかは理解できない。眼の前のリオがアルトに次ぐバルトロス王国の王位第二位継承者であり、最近になって王国貴族たちから彼女が王位を継ぐに相応しいという噂が流れている事は分かった。
しかし、そんな彼女が何故「地下闘技場」に出場して、自分を破って優勝を果たしたソフィアに接触を計ったのかは説明されていない。
「本題はここからですわ……この噂というのが、実は信憑性が高いと思いますの。以前にお爺様……国王様に呼び出された時、王になりたいかどうかを問いただされたのですわ」
「ふ~ん……」
「その際はお兄様……アルト様と争う気は無いし、王位には興味は無いと断言したんですけど……どうにも最近、おじい様とお兄様の仲が険悪なのです」
「そうなの?」
「険悪……かどうかは分からぬでござるが、確かに最近はお二人の距離が開いたように思えるでござる」
ソフィアとしてはどちらとも最近はあまり接点が無いため分からないが、もし彼女の話が事実ならばあながち彼女の王位継承という話しも有り得ない事ではない。だが、幼少の頃から英才教育を受けているはずのアルトと比べ、目の前の彼女がどれほどの人物かはまだ分からない。少なくとも魔術師の腕は相当な物だが、それだけでは判断しかねる。
「私の願いというのは……お兄様とおじい様の仲を取り持つのに強力してほしいのですわ」
「そう言われてもね……何で私?」
「別に貴女1人に全てを任せるつもりはありませんわ。ただ、私の護衛役として傍に控えて欲しいだけですわ」
「護衛役って……そう言えば何で1人で行動してんの?一応は身分の高い令嬢なんでしょ?」
「抜け出してきましたが何か?」
「……お転婆だな」
あれほどの実力を持つ魔術師ならば生半可な実力の襲撃者も簡単に撃退できるだろうが、それでも危険な行動に変わりはない。
「というより、護衛役って……王国の専属の護衛が居るんじゃないの?」
「一応はいますけど……どうにも彼らは信じられませんわ。やたらと私の行動に口を出すし、城下町に出向くのを禁止しますし……」
「当たり前でしょ、それが仕事なんだから」
「それは分かりますけど……彼らは私の護衛ではなく監視が目的で付けられた者達ですから、正直に言えばうざいですわ」
「だからって一般人から護衛役を募集するのもおかしいでしょっ」
「仕方ないじゃありませんの!!おじい様に相談しても反対されるし、他の貴族から斡旋された護衛は信用できませんし……だったら私が直接腕利きの冒険者を護衛役として雇うしかありませんもの!!」
「いや、そういう問題じゃなくてさ……」
一般人から王族の護衛を募集する考え自体が非常識であり、そのためにわざわざ自分で闇ギルドが経営する地下闘技場にまで出場するなど、お転婆娘などという生半可なレベルではない。最早、ここまできたらただの馬鹿娘である。
「……というか、何でこんな場所にまで尋ねて護衛役を探してるの?探すとしたら、普通は王城の城下街でいいじゃん」
「あら?知らないんですの?今回の剣乱武闘は各国の王族が呼び集められているのですよ。だから、私もおじい様もお兄様も都市に居ますわ」
「そうなの?」
「いちいち転移魔法で訪れるのも魔術師に負担が掛かりますからね。まあ、私としては初めて訪れる場所なので嬉しい事ですけど」
そんな話は王国側からは報告されていなかったが、とりあえずは彼女がこの都市で新しい護衛役を募集していた理由は判明した。
「それにお爺様も腕利きの冒険者ならば護衛役として引き入れても構わないと約束してくれましたわ。だからこそ、大会目当てに集まった冒険者の方々に話をしているのですわ」
「よく許可してくれたなぁ……」
「許可してくれなければ断髪する覚悟だと告げたら、快く了承してくれましたわ」
「どれだけ必死なの?」
普通、頼みごとをするためだけに断髪などという言葉を口にする女子などいるはずがない。国王としても断ろうにも断れず、渋々と承諾したのだろう。
「私の目的は今まで通り、好きなだけ趣味に没頭したり、下々の人間から崇められたり、自由気ままな生活を送りたいだけですわ!!」
「不純な動機だなぁ……」
「というわけで、貴女を私の第一の護衛役に任命しますわ」
「お断りします」
「何故!?」
本気で驚愕するリオにソフィアの方が逆に冷汗を流し、その後は夜が明けるまで勧誘を続けるリオと頑なに断るソフィアの光景が繰り返され、結局は面倒ではあるがカゲマルが仲裁に入り、彼女を連れ、バルトロス国王とアルトが宿泊しているという闘人都市の最大の宿泊施設(最高級宿屋)へと向かう。
「ほら、行くでござるよ!!あいたっ、暴れないで欲しいでござる!!」
「私は絶対にあきらめませんわよ~!!」
「勘弁してよ……」
「変なのに目を付けられたね……」
酒場を去り際、カゲマルに引きずられながらも勧誘を諦めない言葉を残してリオは立ち去る。残されたソフィアは地下闘技場で戦った時よりも疲労が増し、そのままレグの訓練の時間帯までベッドに倒れ込んだ――
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