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第四部隊編
予想外の再会
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「ふ~ん……そんな事が起きてたのか」
「いや、ふ~んって……それだけかい?」
「そう言われてもね。まあ、コトミが無事だったんならどうでもいい」
「……うん」
コトミの頭を撫でながら、バルたちから話を聞き終えたレノは淡白な反応を返し、彼女は違和感を覚える。
「ま、火災についても問題ないよ。魔術師部隊が間に合って、消火作業は順調だったから」
「そうなんすか?」
「帰り際に見てきた。結構激しく燃えていたけど、幸い死傷者は出ていないって」
「へえ……って、なんであんたがそんな事まで知ってるんだい?」
レノが通っている酒場は中心街であり、東側に存在する闇ギルドの地下酒場とは距離が離れているはずだが、
「ああ……レグの奴がお気に入りの酒のつまみが切れたからパシられ……買い物を頼まれてね、たまたま出向いていたら火災を見かけたんだよ」
「まじっすか!?どんな感じでした!?」
「俺が見たときはもう酒場が焼け落ちていたからな……周りの建物に火が回っていたけど、来た時には住人の避難は済んでいたよ」
「あんたは救助活動に参加しなかったのかい?水の魔法も使えるようになったんじゃなかったのかい?」
「いや、火怖いし……」
「今更何を怖がってんだい!?」
今までに様々な化け物や人間を相手に戦ってきたレノの言葉とは思えないが、すぐにカリナが反応する。
「いや、兄貴は半分は森人族っすから、火が怖いのは仕方ないじゃないんすか?」
「ああ……そう言えばそうか。悪かったね」
「え、そこで納得するの?」
「わうっ……森人族の方は本能的に火を怖がりますから、仕方ないですよ」
「……よしよし」
「撫でるなっ」
半分は冗談のつもりだったが、まさかのバルたちの反応に今度はレノの方が反応に困る(正確に言えばレノは「ダークエルフ」の血を継いでおり、彼らは火属性の魔法も扱えるので火災など恐れないが)。
「それで?直接現場にまで行ったんだから、あいつらの姿は見たのかい?」
「いや、そこまでは……でも簡単に死ぬとは思えないな」
「だろうねぇ……」
地下酒場にいた禿げ頭のマスターや無愛想の受付嬢を思いだし、彼らがただの火災で焼け死んだとは思えない。
「でも、放火犯とは会ったよ」
「「は!?」」
何気ない風に語ったレノの言葉に全員が驚愕し、コトミが彼の袖を引き、
「……ローブを着てた人?」
「そうそう……と言っても、俺が会ったのはコトミの奴じゃないかもしれないけど」
「……?」
「どういう事っすか?」
彼の発言に全員が首を傾げ、詳細を訪ねてくる。レノは面倒気に椅子に座り込み、先ほど体験した出来事を語り始める。
――レノが酒場に戻った時刻の1時間ほど前、いつもよりも早く練習を切り上げ、枯葉レグに頼まれて都市の東街に移動し、彼女の買い物を終えてコウランの酒場に移動していた。
「たくっ……まさか受講料が酒のつまみとは……」
両手には大きめの紙袋を下げ、中身はこの東街でしか購入できない食物が入っており、外見は「枝豆」と酷似している。名前は「ミドリマメ」と言い、値段は高めだが一般人でも購入できる品物なので人気が高い。
「さっさと帰って続きを……ちっ」
レノは舌打ちすると、すぐに周囲を確認して人目の少ない街路に移動する。そして振り返ると、大きなため息を吐きながら荷物を地面に降ろす。
「……おい、もういいだろ?」
あまりにも雑な尾行に苛立ちを抱きながら言葉を掛けると、近くの路地裏から複数の漆黒のローブを纏った者たちが現れ、1人が前に出る。、
「久しぶりだな……」
「……?」
「何だ?忘れたか?前にもこの都市で会っただろう?」
「……ああ」
声音は違うが、確かにこの状況には覚えがあり、1年半ほど前に地下闘技場で勝ち抜いた際にも同じような状況に陥った。そして、今回はの相手は腐敗臭や死臭の類の臭いを感じ取れないため、思い出すのに少し時間が掛かったが、先ほどから右手の紋様が微弱に反応している事に相手が以前に対峙した死霊使いであることに気付く。
「お前か……何のようだ?」
「別にお前に用があるわけではないが……まあいい、帰る前にここで始末してやる」
「どういう……」
ドガァアアアアアッ!!
遠方から「爆発音」が聞こえ、音の方角に首を向けると、少し離れた建物から黒煙が沸き上がっている事に気が付く。方角的にも心当たりがある場所であり、レノは魔術師を睨み付ける。
「なるほど……そう言う事ね」
「理解が速くて助かる……お前の始末も依頼に入っているからな」
「依頼?」
目の前で複数人の魔術師を操作していると死霊使いもセンチュリオンの一員かと思ったが、彼の口振りに違和感を感じる。
「さて……立ち話もこれぐらいでいいだろう。今回は生きの良い人形を仕入れたからな……」
「生きの良い人形……?」
「お前にも関わりがある者達だそうだが……どれ」
ブァサッ……!
「……なっ……」
話しかけてきた人物の後方に待機していた2人組が唐突に全身を覆い隠すローブを取り払い、姿を現す。そしてレノは見覚えのある人物だと気が付いて目を見開き、彼にとっても幼少の頃から因縁のある相手とも言える。
「……テキ、コロス……」
「ハーフエルフ……イカシテオケン……」
――それは過去に幼いレノを暴行した「ムメイ」の護衛を勤めていた森人族の戦士であり、地下闘技場で叩きのめしたはずの「レン」と「ラン」が、変わり果てた姿で立っていた。
「いや、ふ~んって……それだけかい?」
「そう言われてもね。まあ、コトミが無事だったんならどうでもいい」
「……うん」
コトミの頭を撫でながら、バルたちから話を聞き終えたレノは淡白な反応を返し、彼女は違和感を覚える。
「ま、火災についても問題ないよ。魔術師部隊が間に合って、消火作業は順調だったから」
「そうなんすか?」
「帰り際に見てきた。結構激しく燃えていたけど、幸い死傷者は出ていないって」
「へえ……って、なんであんたがそんな事まで知ってるんだい?」
レノが通っている酒場は中心街であり、東側に存在する闇ギルドの地下酒場とは距離が離れているはずだが、
「ああ……レグの奴がお気に入りの酒のつまみが切れたからパシられ……買い物を頼まれてね、たまたま出向いていたら火災を見かけたんだよ」
「まじっすか!?どんな感じでした!?」
「俺が見たときはもう酒場が焼け落ちていたからな……周りの建物に火が回っていたけど、来た時には住人の避難は済んでいたよ」
「あんたは救助活動に参加しなかったのかい?水の魔法も使えるようになったんじゃなかったのかい?」
「いや、火怖いし……」
「今更何を怖がってんだい!?」
今までに様々な化け物や人間を相手に戦ってきたレノの言葉とは思えないが、すぐにカリナが反応する。
「いや、兄貴は半分は森人族っすから、火が怖いのは仕方ないじゃないんすか?」
「ああ……そう言えばそうか。悪かったね」
「え、そこで納得するの?」
「わうっ……森人族の方は本能的に火を怖がりますから、仕方ないですよ」
「……よしよし」
「撫でるなっ」
半分は冗談のつもりだったが、まさかのバルたちの反応に今度はレノの方が反応に困る(正確に言えばレノは「ダークエルフ」の血を継いでおり、彼らは火属性の魔法も扱えるので火災など恐れないが)。
「それで?直接現場にまで行ったんだから、あいつらの姿は見たのかい?」
「いや、そこまでは……でも簡単に死ぬとは思えないな」
「だろうねぇ……」
地下酒場にいた禿げ頭のマスターや無愛想の受付嬢を思いだし、彼らがただの火災で焼け死んだとは思えない。
「でも、放火犯とは会ったよ」
「「は!?」」
何気ない風に語ったレノの言葉に全員が驚愕し、コトミが彼の袖を引き、
「……ローブを着てた人?」
「そうそう……と言っても、俺が会ったのはコトミの奴じゃないかもしれないけど」
「……?」
「どういう事っすか?」
彼の発言に全員が首を傾げ、詳細を訪ねてくる。レノは面倒気に椅子に座り込み、先ほど体験した出来事を語り始める。
――レノが酒場に戻った時刻の1時間ほど前、いつもよりも早く練習を切り上げ、枯葉レグに頼まれて都市の東街に移動し、彼女の買い物を終えてコウランの酒場に移動していた。
「たくっ……まさか受講料が酒のつまみとは……」
両手には大きめの紙袋を下げ、中身はこの東街でしか購入できない食物が入っており、外見は「枝豆」と酷似している。名前は「ミドリマメ」と言い、値段は高めだが一般人でも購入できる品物なので人気が高い。
「さっさと帰って続きを……ちっ」
レノは舌打ちすると、すぐに周囲を確認して人目の少ない街路に移動する。そして振り返ると、大きなため息を吐きながら荷物を地面に降ろす。
「……おい、もういいだろ?」
あまりにも雑な尾行に苛立ちを抱きながら言葉を掛けると、近くの路地裏から複数の漆黒のローブを纏った者たちが現れ、1人が前に出る。、
「久しぶりだな……」
「……?」
「何だ?忘れたか?前にもこの都市で会っただろう?」
「……ああ」
声音は違うが、確かにこの状況には覚えがあり、1年半ほど前に地下闘技場で勝ち抜いた際にも同じような状況に陥った。そして、今回はの相手は腐敗臭や死臭の類の臭いを感じ取れないため、思い出すのに少し時間が掛かったが、先ほどから右手の紋様が微弱に反応している事に相手が以前に対峙した死霊使いであることに気付く。
「お前か……何のようだ?」
「別にお前に用があるわけではないが……まあいい、帰る前にここで始末してやる」
「どういう……」
ドガァアアアアアッ!!
遠方から「爆発音」が聞こえ、音の方角に首を向けると、少し離れた建物から黒煙が沸き上がっている事に気が付く。方角的にも心当たりがある場所であり、レノは魔術師を睨み付ける。
「なるほど……そう言う事ね」
「理解が速くて助かる……お前の始末も依頼に入っているからな」
「依頼?」
目の前で複数人の魔術師を操作していると死霊使いもセンチュリオンの一員かと思ったが、彼の口振りに違和感を感じる。
「さて……立ち話もこれぐらいでいいだろう。今回は生きの良い人形を仕入れたからな……」
「生きの良い人形……?」
「お前にも関わりがある者達だそうだが……どれ」
ブァサッ……!
「……なっ……」
話しかけてきた人物の後方に待機していた2人組が唐突に全身を覆い隠すローブを取り払い、姿を現す。そしてレノは見覚えのある人物だと気が付いて目を見開き、彼にとっても幼少の頃から因縁のある相手とも言える。
「……テキ、コロス……」
「ハーフエルフ……イカシテオケン……」
――それは過去に幼いレノを暴行した「ムメイ」の護衛を勤めていた森人族の戦士であり、地下闘技場で叩きのめしたはずの「レン」と「ラン」が、変わり果てた姿で立っていた。
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