種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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聖導教会総本部編

最悪との再会

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「グガァァアアアアアッ!!」
「ぬぐぐっ!?」


ダンゾウは一気に加藤に押し寄せられ、後方にいる人々が悲鳴を上げる。彼が倒されれば間違いなく自分たちの身も危険に晒される。


「……年は、取りたくないものだな!!」


ズズズズッ……!!


何とか体勢を立て直そうと踏ん張るが、後退の速度を減少させるだけ限界であり、ダンゾウの身体からは滝のような汗が噴き出す。全盛期だった頃の自分ならばこれほどまで苦戦しなかっただろうが、今は泣き言を言ってはいられない。


「ふんっ!!」


ガシィッ!!


加藤の身体を渾身の力で掴み上げ、そのまま彼は咆哮を上げると、相手の身体を持ち上げる。


「おぉおおおおおおおっ!!」
「ヌオッ……!?」


ダンゾウは加藤の腹部を掴み上げ、上下を逆転させて彼の頭部を両足で挟み込み、頭から突き落とす(所謂プロレス技の「パイル・ドライバー」の形になる)。


「おおっ!!」
「あれこそダンゾウ・ドライバー!!」
「技名あるの!?」
「結構有名でござるよ」
「ゴンゾウにしろ……巨人族はああいう技を好むのか?」


彼の派手すぎる技に全員が感嘆の声を上げるが、すぐに異変が起きる。ダンゾウに頭部から真面に落とされたにも関わらず、加藤は両手で地面に着くと、


「グァアアッ!!」
「ぐふっ!?」


バキィッ!!


不利な体勢でありながら、両足を彼の顔に突き出し、咄嗟に反応に遅れたダンゾウは真面に喰らう。そのまま加藤は彼から両腕の力だけで跳躍して距離を取る。


「ぐっ……」
「無事かダンゾウ!!」
「ああ……だが、あの小僧……見かけによらずやりおる」


顔面から鼻血を吹き出しながらダンゾウは起き上がるが、誰が見ても彼に限界が近い事は分かる。だが、この状況でバーサーカーの状態である加藤と闘えるのは彼だけであり、周囲の聖導教会の医療魔導士が彼に向けて回復魔法を行う。


「ヒーリング!!」
「レトロ・ヒール!!」
「エナジー・ライト!!」


周囲の聖導教会の直属の魔術師たちがそれぞれ詠唱を終え、ダンゾウに回復魔法を施す。すぐに彼の傷は癒えるが、回復魔法でも体力までは回復せず、ダンゾウは顔面の鼻血を拭って立ち上がる。


「ウオォオオオオオオオッ!!」
「ぬうっ……!!」


ズシンッ!!


もう一度突進を試みる加藤にダンゾウは正面から抑えつけるが、明らかに誰の目から見ても体力負けをしている事は分かった。加藤は傷が治癒していないにも関わらず、未だに力が衰える様子は無く、全力で動き続けながら疲労を見せないのは勇者の中でも彼は指折りの実力者と伺える。


「おらぁあああああっ!!動けぇえええええっ!!」
「くくっ……!!」
「わふぅうううううっ!!」
「ぽ、ポチ子殿……力が抜けるので、その掛け声はやめて欲しいでござる……!!」
「ぬぬぬっ……こ、腰が……」
「頑張れおじいちゃん~」


一方でテン達はデュランダルを引き上げようとするが、やはり数センチ単位で動かすのが限界であり、ワルキューレ騎士団の女騎士は訪問者と巫女姫(ヨウカ)の護衛から離れられず、他の訪問者達も目の前のダンゾウと加藤の光景を見せつけられ、怖気ついで前に出て来れない。


「くっ……!!」
「オォオオオオオッ!!」



たった一人の勇者により、聖堂内の者達が追い詰められていく――






――その一方、勇者3人をナナと共に撃破したレノは聖堂に向かう途中、一階の通路にまでたどり着いていた。



「音は……こっちか」



予想外に入り組んだ通路のせいで遅れてしまったが、何とか聴覚を頼りに聖堂に繋がる通路を発見すると、そのまま肉体強化させた両足で疾走する。



ズザザザッ……!!



だが、唐突に前方から不穏な気配を感じ取り、レノは睨み付ける。


「……誰だ?」
『あれれ~?』


ブゥンッ――


前方の通路の空間から唐突に人の形をした歪みが生まれ、徐々に姿を現す。


「……変態」
「ああんっ!!いきなり罵倒なんて、君すごく良い!!」



数年ぶりに再会を果たしたカトレアの登場にレノは舌打ちする。この状況で彼女が自分から姿を現すなど、碌な事態ではない事だけは分かる。



「でもでも……今はここから先へは行かせられないの、ごめんね?」
「うざい……」


バチィイイイッ!!


レノは右手に紫色の電流を纏わせ、自身の魔法の中で最速の紫電を放つ。


ズドォオオンッ!!


「あんっ♪」


向い来る電撃に対してカトレアは同様に右の掌を向け、そこには「渦巻き」の紋様が刻み込まれていた。


ゴォオオオオオッ!!


そして彼女の掌から竜巻が吹き荒れ、レノの得意とする「風盾」と酷似した魔法を生み出して電撃を受け流す。威力はともかく、相性が悪い雷属性の魔法では彼女の作り出した風の障壁は突破できない。


「……気配がすると思えば……お前が聖痕の所持者だったのか?」
「あの時は違ったけどね~」


右手の紋様の反応を確認し、薄々とだが彼女がここにいる事は気付いていた。以前に地下の宝物庫で彼女の聖痕の力の残滓を感じ取った事もあるが、先ほどからこの建物内で微弱ではあるが紋様が反応していた。


「それじゃあ、殺し合おうか?」
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