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聖導教会総本部編
聖堂の異変
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――数分前、アルトとナナが通路内で3人の勇者達と戦闘を始めるのと同時刻、聖堂では教皇の葬式が行われようとしていた。参加人数は300人を超え、聖堂内で彼の冥福を祈る者達が集まっていた。
この世界の葬式とは聖導教会が進行している光の精霊に祈りを捧げる事で、魂を天上へと導くという考え方であり、以前に「トウキョウ」でミキが行ったように魂の残滓が現れ、天に向かって浄化する光景が広がる。
「……教皇様」
「おおっ……なんという力強い光」
「ううっ……」
聖堂内に出現した光り輝く球体の出現に全員が視線を向け、ある者は瞳を潤ませ、ある者は敬礼を行い、ある者は涙を流しながらも笑顔で見送ろうとする。彼がヨウカを追い込んだ事は事実だが、それでも彼は彼なりに聖導教会のために尽くしたのも事実である。
「……巫女姫様」
「うん……」
「「おおっ!!」」
いつもとは違う青い礼装に身を包んだ巫女姫(ヨウカ)の登場に聖堂内の人間がどよめき、まさか彼女が登場するとは思っていなかったのだろう。何せ、聖導教会を教皇に追い出されたに等しい彼女がわざわざ彼の弔いを行うために戻ってくるのは誰も想像できなかった。
「――光の精霊よ、我が教会のためにその人生を尽くした尊い彼の魂を、どうか天上の世界へ受け入れてください」
ボウッ……!!
聖堂内の「光の精霊」を模したステンドグラスが光り輝き、教皇の魂の残滓である光球がゆっくりと光の中に吸い込まれる様に移動する。そして、ステンドグラスに光球が飲み込まれるのを確認し、ヨウカは額に汗を流して安堵する。
「……ふうっ」
「お疲れ様でした。巫女姫様」
疲れた表情のヨウカにセンリは頭を下げ、その頬には大粒の涙が伝っている。教皇とは半生を共にした仲であり、彼女にとって彼は何よりも大切な友人であり、そして人生の師でもあった。
「教皇様の魂は天上の世界に召されました……ありがとうございます」
「……その、良かったの?私で……」
「ええ……巫女姫様だからこそ良いのです」
最初はこの葬式はセンリが行う物だとヨウカは思い込んでいたが、彼女はそれを辞退してヨウカに彼の「魂の救済式」を頼み込む。教皇とヨウカの歪な関係性は知っていたが、それでも尚、彼の魂をより楽に天上の世界へと送り込むことが出来るのは巫女姫である彼女だけであり、実際に彼の魂は召された。
「皆様……黙祷を」
「「「…………」」」
センリの言葉に全員が捧げるように両の掌を合わせ、光の精霊を模したステンドグラスに祈りを捧げる。この状態で声を発する事は厳罰であり、誰もが口を閉ざしていると、
――ガタンッ……
「「……?」」
不意に聖堂内の後方から扉が開け放たれた音が聞こえ、不審に思った者が振り返ろうとしたが、祈りを捧げている最中に不用意に音を漏らす事は許されず、どうせ遅れてやってきた人間が入ってきたのだろうと思い込むが、
ゴォオオオオッ……!!
「っ!?」
「あつっ……あっ!?」
「……何だ?」
聖堂内に激しい熱気が発生し、堪らずに何人かが声を上げてしまう。そして、全員が異変を感じ取り、振り返った瞬間、
「えっ……」
「何あれ……」
「……勇者、殿?」
――そこには扉を押し開けて入ってきた「加藤」の姿があり、彼の身体から異様な熱気が漂っていた。
「勇者殿!!ここを何処だと思って……!!」
「ま、待ちなさい!!」
すぐにワルキューレ騎士団の女騎士達が彼を注意するように接近した途端、彼はゆっくりと胸元に掌を押し当て、
「スキル発動……ベルセルク!!」
ドォンッ!!
「わぅんっ!?」
「なっ……」
「ぬぐっ……!?」
「これは……」
壁際でワルキューレの騎士団と共に祈りをささげていたリノンたちが即座に前に出ようとしたが、すぐに彼から感じ取れる歪な魔力に硬直する。
「ほ、ホノカちゃん……」
「……下がってくれ」
「これは……なんと禍々しい……!!」
ヨウカを守るようにセンリとホノカが前に出ると、葬式に参加した人間達は避難するように前方に集まる。すぐにワルキューレとテンペスト騎士団、さらには他の種族の代表たちを守る護衛兵が警戒行動を取る。
「おい、何事だバルトロス国王」
「むうっ……儂にも分からん」
「無責任だな~もう」
この聖堂内には「バルトロス国王」並びに巨人族の代表である「ダンゾウ」人魚族の代表の「アクア」も参加しており、残りの代表たちは不参加だが、一応は獣人族からは弔いのための花束が送られている(魔人族は元々、この聖導教会には立ち入る事は許されていない)。
「……はははははっ……!!」
加藤は全身から常人の目でも視認できるほどの「黒色」の魔力を吹き出し、明らかに普通ではない。その瞳は虚ろであり、聖堂内に居る全員に嫌な汗が噴き出す。
彼は勇者の中では最も問題児であり、女に見境が無い事で有名だった。だが、本来の彼の実力はこの世界に召喚された勇者達の中でも「2番目」を誇り、そして彼だけが扱える魔法(スキル)が存在する。
――それが現在彼が扱う「ベルセルク」と呼ばれる「超身体能力強化魔法」であり、彼の扱う最強の肉体強化あり、その能力の内容は自身の身体能力を通常の「3倍」近くにまで引き上げるという内容だった。
この世界の葬式とは聖導教会が進行している光の精霊に祈りを捧げる事で、魂を天上へと導くという考え方であり、以前に「トウキョウ」でミキが行ったように魂の残滓が現れ、天に向かって浄化する光景が広がる。
「……教皇様」
「おおっ……なんという力強い光」
「ううっ……」
聖堂内に出現した光り輝く球体の出現に全員が視線を向け、ある者は瞳を潤ませ、ある者は敬礼を行い、ある者は涙を流しながらも笑顔で見送ろうとする。彼がヨウカを追い込んだ事は事実だが、それでも彼は彼なりに聖導教会のために尽くしたのも事実である。
「……巫女姫様」
「うん……」
「「おおっ!!」」
いつもとは違う青い礼装に身を包んだ巫女姫(ヨウカ)の登場に聖堂内の人間がどよめき、まさか彼女が登場するとは思っていなかったのだろう。何せ、聖導教会を教皇に追い出されたに等しい彼女がわざわざ彼の弔いを行うために戻ってくるのは誰も想像できなかった。
「――光の精霊よ、我が教会のためにその人生を尽くした尊い彼の魂を、どうか天上の世界へ受け入れてください」
ボウッ……!!
聖堂内の「光の精霊」を模したステンドグラスが光り輝き、教皇の魂の残滓である光球がゆっくりと光の中に吸い込まれる様に移動する。そして、ステンドグラスに光球が飲み込まれるのを確認し、ヨウカは額に汗を流して安堵する。
「……ふうっ」
「お疲れ様でした。巫女姫様」
疲れた表情のヨウカにセンリは頭を下げ、その頬には大粒の涙が伝っている。教皇とは半生を共にした仲であり、彼女にとって彼は何よりも大切な友人であり、そして人生の師でもあった。
「教皇様の魂は天上の世界に召されました……ありがとうございます」
「……その、良かったの?私で……」
「ええ……巫女姫様だからこそ良いのです」
最初はこの葬式はセンリが行う物だとヨウカは思い込んでいたが、彼女はそれを辞退してヨウカに彼の「魂の救済式」を頼み込む。教皇とヨウカの歪な関係性は知っていたが、それでも尚、彼の魂をより楽に天上の世界へと送り込むことが出来るのは巫女姫である彼女だけであり、実際に彼の魂は召された。
「皆様……黙祷を」
「「「…………」」」
センリの言葉に全員が捧げるように両の掌を合わせ、光の精霊を模したステンドグラスに祈りを捧げる。この状態で声を発する事は厳罰であり、誰もが口を閉ざしていると、
――ガタンッ……
「「……?」」
不意に聖堂内の後方から扉が開け放たれた音が聞こえ、不審に思った者が振り返ろうとしたが、祈りを捧げている最中に不用意に音を漏らす事は許されず、どうせ遅れてやってきた人間が入ってきたのだろうと思い込むが、
ゴォオオオオッ……!!
「っ!?」
「あつっ……あっ!?」
「……何だ?」
聖堂内に激しい熱気が発生し、堪らずに何人かが声を上げてしまう。そして、全員が異変を感じ取り、振り返った瞬間、
「えっ……」
「何あれ……」
「……勇者、殿?」
――そこには扉を押し開けて入ってきた「加藤」の姿があり、彼の身体から異様な熱気が漂っていた。
「勇者殿!!ここを何処だと思って……!!」
「ま、待ちなさい!!」
すぐにワルキューレ騎士団の女騎士達が彼を注意するように接近した途端、彼はゆっくりと胸元に掌を押し当て、
「スキル発動……ベルセルク!!」
ドォンッ!!
「わぅんっ!?」
「なっ……」
「ぬぐっ……!?」
「これは……」
壁際でワルキューレの騎士団と共に祈りをささげていたリノンたちが即座に前に出ようとしたが、すぐに彼から感じ取れる歪な魔力に硬直する。
「ほ、ホノカちゃん……」
「……下がってくれ」
「これは……なんと禍々しい……!!」
ヨウカを守るようにセンリとホノカが前に出ると、葬式に参加した人間達は避難するように前方に集まる。すぐにワルキューレとテンペスト騎士団、さらには他の種族の代表たちを守る護衛兵が警戒行動を取る。
「おい、何事だバルトロス国王」
「むうっ……儂にも分からん」
「無責任だな~もう」
この聖堂内には「バルトロス国王」並びに巨人族の代表である「ダンゾウ」人魚族の代表の「アクア」も参加しており、残りの代表たちは不参加だが、一応は獣人族からは弔いのための花束が送られている(魔人族は元々、この聖導教会には立ち入る事は許されていない)。
「……はははははっ……!!」
加藤は全身から常人の目でも視認できるほどの「黒色」の魔力を吹き出し、明らかに普通ではない。その瞳は虚ろであり、聖堂内に居る全員に嫌な汗が噴き出す。
彼は勇者の中では最も問題児であり、女に見境が無い事で有名だった。だが、本来の彼の実力はこの世界に召喚された勇者達の中でも「2番目」を誇り、そして彼だけが扱える魔法(スキル)が存在する。
――それが現在彼が扱う「ベルセルク」と呼ばれる「超身体能力強化魔法」であり、彼の扱う最強の肉体強化あり、その能力の内容は自身の身体能力を通常の「3倍」近くにまで引き上げるという内容だった。
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