種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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テンペスト騎士団編

豹変

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「テン団長……何の真似ですか?」
「はっ……こっちにも色々と事情があってね」
「愚かな……」


テンは床に突き刺さった大剣を抜き取り、レノ達を庇うように仁王立ちする。彼女の登場にその場にいたワルキューレ騎士団に動揺が走り、教皇と団長のどちらに指示を仰ぐべきかと戸惑う。センリは教皇を一瞥し、どうするべきかと視線で問い質すと、彼は深いため息を吐く。


「仕方ない……テン団長、今日をもって貴様を解任とする。ワルキューレよ!!謀反人を捕えよ!!」
「はっ……正体を現したな!!」


教皇の指示にワルキューレ騎士団は顔を見合わせ、テンに困惑の視線を向ける。彼女はその間にも大剣を振りかざし、教皇に向けて刀身を向ける。


「教皇様……あんた、自分が何をしているのか理解しているのかい?」
「何を戯言を……それはこちらの台詞だと思いますが?」
「だったら聞くけど、この教会で最も偉い人は誰だか分かってんのかい?」


テンはヨウカに振り向くと、教皇は苦い表情を浮かべる。だが、すぐに気を取り直したように冷静な態度を振る舞う。


「巫女姫様はそこにいる悪魔の手先に操られている……すぐに我々の手で救出しなければならないのだ」
「悪魔~?はっ、笑わせるね!!」


レノに顔を向けて「悪魔」と言い張る教皇にテンは鼻で笑い、すぐにセンリに視線を向けると、


「センリさん!!あんたの事はミキさん同様に尊敬していたよ!!けどね、今のこいつの言葉に従うというのなら、容赦はしないよ!!」
「口を慎みなさい!!テン団長!!ソード!!」


ボウッ……!!


教皇を守るように彼女は前に出ると、今度は杖の上部分を光り輝く「刀身」へと形成させて構える。テンも同時に大剣を構え、レノ達も身構える。自分たちの総団長の登場で明らかにワルキューレ騎士団には動揺が走り、どうするべきか困惑して戦闘に入り込む様子はない。


「よく考えるんだよセンリさん!!今の教皇様は何かおかしい!!」
「黙りなさい!!」


ボウッ……!!


前方のセンリの周囲に複数の光球が出現し、徐々に先ほどのように弓矢の「鏃」に変化する。一つ一つがレノの風盾を貫通する威力であり、いくら屈強なテンの肉体でも耐え切れないだろう。だが、もう一度カラドボルグの雷を出現させれば防ぐことも出来るかも知れないが、あと一度使用すれば次に発動させるまでに時間が掛かり過ぎる。


(仕方ない……使うか?)


レノは右手に刻まれた紋様に視線を向け、バジリスク戦でも使わなかった「奥の手」を使わざるを得ないのかと迫られた時、


「ま、待ってよ!!喧嘩はダメだよ!!」
「「巫女姫様!?」」


ヨウカがテンの前に出ると、センリは慌てて光球を消し去り、杖を下ろす。従うべき主人を前に武器を向ける事は出来ないようであり、テンもセンリと同様に大剣を背中に収めてヨウカの元に跪き、それに習うように周囲の兵士やワルキューレ騎士団の女騎士達も跪く。


「皆、私の話を聞いてくれるよね?ね!?」
「は、はい!!」
「巫女姫様!!」
「我らワルキューレ騎士団、貴女様のために存在します!!」


流石に巫女姫という位は伊達ではないのか、その場にいる教会側の人間が彼女の言葉に従おうとするが、


「何をしている!!今のうちに巫女姫様を保護しろ!!」
「えっ……わあっ!?」


教皇が即座に動き出し、その老体からは考えられないほどの俊敏な動きでヨウカに接近する。そのままセンリの横を通り過ぎ、テンが咄嗟にヨウカの前に立ちはだかろうとした時、


「下がれ!!」
「きゃっ!?」
「おおっ!?」


ジャララララッ!!


テンとヨウカの間から銀の鎖が放たれ、そのまま突進してくる教皇に対して放たれる。鎖の先端には聖爪のリングが取り付けられており、教皇に向かってそのまま突き刺さろうとするが、


「くっ……」


ダンッ!!


「「えっ!?」」


教皇は向い来る鎖に対し、そのまま空中に跳躍して躱すと同時に天井を足の裏で叩き付け、地面に着地すると同時に距離を取る。

獣人族も驚きのアクロバティックな彼の行動に皆が目を見開くが、同時にレノだけは彼の身体から異様な魔力を感知し、まるで闘人都市で出会った死霊使いが操作していた「ビルド(死人)」と似た気配を感じ取る。


「きょ、教皇様……?」
「……くくくっ……流石に一筋縄ではいかないようだな」


彼の行動に戸惑いを隠せないセンリに対し、当の教皇は醜悪な笑みを浮かべ、同時に全員に寒気が走る。レノはまるで「死人」として操られたビルドと相対した時のような圧迫感に冷や汗を流す。


「だが、既に仕込みは終わっている……ここで用事を済ませようか」
「な、何を言っているのですか教皇様!?」
「下がれ!!」


不用意に近づこうとしたセンリにレノは叫び声を上げたが、既に彼女は教皇の傍にまで接近し、


「お前の身体を寄越せ!!」
「なっ……むぐっ!?」


ガシッ!!


センリの両頬を鷲掴み、教皇は大きく口を開けると、そのまま無理やりにセンリの口元に向け、


「あがっ……!!」
「んぐぅっ!?」



――教皇の口から黒色の「物体」が出現し、そのままセンリの口内に入り込む。
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