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テンペスト騎士団編
聖堂
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周囲の兵士たちの数が増しており、明らかに尾行されている。ゴンゾウは彼等に視線を向けて棍棒を握りしめ、
「……俺が囮になる。皆は、すぐに逃げろ」
「ゴンちゃんが一番の戦力だろ。魔法を封じられても、お前の怪力なら何とかできる」
「しかし……」
「ね、ねえ……兵士さん達が……」
ヨウカに言われて皆が周囲に視線を向けると、既に数多くの兵士たちが集まってきており、このままでは訪れた際に使用した転移魔方陣が存在する「儀式の間」に戻る前に仕掛けてくるだろう。仕方なく、全員が不利だとは分かっている武器を握りしめて応戦体勢に入ろうとした時、ヨウカがレノの服の袖を退く。
「レノたんレノたん……あそこに行こう!!あそこなら安全だよ!!」
「あそこ……なるほど」
彼女が指を差す方向には巨大な水晶壁で作り出された扉が存在し、すぐにレノ達は場所を移動し、ゆっくりとゴンゾウが扉を押し開く。
ギィイイッ……!!
「ここは……聖堂か」
「うん……私も久しぶりだよ」
そこには聖導教会が崇拝する「光の精霊」を模した翼の生えた女性が描かれた巨大なステンドグラスが取り付けられており、太陽の光で輝くステンドグラスの女性の姿は非常に神秘的な光景だが、今はその風景を楽しむ暇はない。
「ここなら大丈夫だよ。兵士の人たちは立ち入りが禁止されているし、それにこの場所で戦闘行為をする事は絶対に許されないってマザーが言ってたから」
ヨウカ曰く、聖導教会の掟でこの聖堂内への争い事は絶対禁止であり、例えどのような理由があろうと争いを起こした者には罰を与えらえるという。実際、扉の向こう側でレノ達を追いかけてきた兵士たちの困惑した声が聞こえてくる。
『お、おい……どうする?』
『どうするって……』
案の定、大勢の兵士たちが水晶壁の扉の前に立ち止まり、一般の兵士はこの聖堂内に入り込むのは厳重に禁止でもされているせいで入り込む様子はない。しばらくの間はここで時間を稼げるが、何時までもこの聖堂内に立ち止まっているわけにはいかない。
「戦闘を避けられたけど……逃げる手段が無いことにはどうしようもない」
「わうっ……レノさんの転移魔方陣は使えないんですか?」
「いや、無理だろう……聖導教会総本部の建物内は教会側の人間の魔法は弱体化する術式が建物全体に施されていると聞く。いくらレノでも転移魔方陣を発動する事は無理だろう……」
「……だろうね……ん?」
不意にレノは紋様が再び反応している事に気が付き、先ほどよりも気のせいか反応が強まっている事に気が付く。そして、紋様がより強く反応する方向に視線を向けると、
「……あの扉は?」
「え?えっと……何だっけ?」
聖堂の隅の方に木製の扉があり、ヨウカに問い質すが彼女も首を傾げる。ヨウカも扉の向こう側は知らないらしく、レノ達は扉に向かう。近付けば近づくほどにレノの紋様が聖痕の残滓が感じ取り、この奥に何があるのか気にかかってレノは扉の取っ手に手を伸ばすと、
バチィッ!!
「うわっ!?」
「レノたん!?」
「これは……結界か!」
ドアノブに触れた瞬間にレノの右手が弾かれるが、特に痛みは感じない。どうやら特定の人間にしか触れられない仕掛けなのか、これでは先に進めない。
「困ったな……完全に囲まれたか」
「ど、どうしましょう……」
「う~ん……」
「……巫女姫様のお力で、何か出来ないか?」
「そ、そう言われても……私が出来るのは回復魔法だけだし」
「それだけでも十分凄いけど……」
この世界で回復魔法を扱えるのは聖導教会の上位魔導士か、人魚族ぐらいであり、その数は少ない。ちなみに回復魔法は大怪我の治療は出来ても病気を癒すことは出来ない(生命力を高める事ぐらいは出来る)。
全員が考え込む中、レノは再び扉の方に視線を向ける。これが魔法による物ならば「銀の鎖」で無効化できるかもしれず、レノは左腕を差し出して鎖の腕を形成しようとした時、
「……あっ」
「え?」
思い出したようにヨウカの顔を見て、よくよく考えれば巫女姫である彼女ならばこの扉を開けるかもしれない。
「……ヨウカなら大丈夫じゃないの?」
「……えっと、な、何が?」
「わふっ……もしかしたら……」
「試してみる価値はある、のか?」
「巫女姫様……お願いします」
「え、ええっ!?」
全員に急かされ、ヨウカは扉の前に立たされ、彼女は恐る恐るドアノブに手を伸ばした瞬間、
ボウッ……!!
「おおっ……」
「凄い……!!」
「……なんだか、暖かい」
ガチャッ……
ドアノブを掴んだ瞬間、扉に白い魔方陣が浮かんだと思うと瞬時に消失する。同時に扉が勝手に開かれ、扉の向こう側には白色の煉瓦で統一された通路が開かれていた。
レノ達が通路に出ると、最後尾のゴンゾウが窮屈そうに扉を通り過ぎた瞬間に勝手に扉は締まる。試しに内側からヨウカに開けさせるように頼むと、普通に扉は開く事に成功したので罠のような仕掛けは施されていない。
「ここは……何か知ってるヨウカ?」
「さ、さあ……こんな場所、マザーにも聞いたことないけど……」
「教会の秘密通路か……こんな状況でなければ元冒険者としては心躍る状況だが……」
「……狭い」
「ご、ゴンさん大丈夫ですか?」
3メートルを越えるゴンゾウには扉の内側の通路は狭く、腰を屈めないと進む事も出来ない。通路は一本道であり、少し先には地下に続く階段が見えた。
「……こっちだ」
レノの「紋様」が聖痕の魔力の残滓を感じ取り、全員が彼に続いて地下に向けて移動を開始する。
「……俺が囮になる。皆は、すぐに逃げろ」
「ゴンちゃんが一番の戦力だろ。魔法を封じられても、お前の怪力なら何とかできる」
「しかし……」
「ね、ねえ……兵士さん達が……」
ヨウカに言われて皆が周囲に視線を向けると、既に数多くの兵士たちが集まってきており、このままでは訪れた際に使用した転移魔方陣が存在する「儀式の間」に戻る前に仕掛けてくるだろう。仕方なく、全員が不利だとは分かっている武器を握りしめて応戦体勢に入ろうとした時、ヨウカがレノの服の袖を退く。
「レノたんレノたん……あそこに行こう!!あそこなら安全だよ!!」
「あそこ……なるほど」
彼女が指を差す方向には巨大な水晶壁で作り出された扉が存在し、すぐにレノ達は場所を移動し、ゆっくりとゴンゾウが扉を押し開く。
ギィイイッ……!!
「ここは……聖堂か」
「うん……私も久しぶりだよ」
そこには聖導教会が崇拝する「光の精霊」を模した翼の生えた女性が描かれた巨大なステンドグラスが取り付けられており、太陽の光で輝くステンドグラスの女性の姿は非常に神秘的な光景だが、今はその風景を楽しむ暇はない。
「ここなら大丈夫だよ。兵士の人たちは立ち入りが禁止されているし、それにこの場所で戦闘行為をする事は絶対に許されないってマザーが言ってたから」
ヨウカ曰く、聖導教会の掟でこの聖堂内への争い事は絶対禁止であり、例えどのような理由があろうと争いを起こした者には罰を与えらえるという。実際、扉の向こう側でレノ達を追いかけてきた兵士たちの困惑した声が聞こえてくる。
『お、おい……どうする?』
『どうするって……』
案の定、大勢の兵士たちが水晶壁の扉の前に立ち止まり、一般の兵士はこの聖堂内に入り込むのは厳重に禁止でもされているせいで入り込む様子はない。しばらくの間はここで時間を稼げるが、何時までもこの聖堂内に立ち止まっているわけにはいかない。
「戦闘を避けられたけど……逃げる手段が無いことにはどうしようもない」
「わうっ……レノさんの転移魔方陣は使えないんですか?」
「いや、無理だろう……聖導教会総本部の建物内は教会側の人間の魔法は弱体化する術式が建物全体に施されていると聞く。いくらレノでも転移魔方陣を発動する事は無理だろう……」
「……だろうね……ん?」
不意にレノは紋様が再び反応している事に気が付き、先ほどよりも気のせいか反応が強まっている事に気が付く。そして、紋様がより強く反応する方向に視線を向けると、
「……あの扉は?」
「え?えっと……何だっけ?」
聖堂の隅の方に木製の扉があり、ヨウカに問い質すが彼女も首を傾げる。ヨウカも扉の向こう側は知らないらしく、レノ達は扉に向かう。近付けば近づくほどにレノの紋様が聖痕の残滓が感じ取り、この奥に何があるのか気にかかってレノは扉の取っ手に手を伸ばすと、
バチィッ!!
「うわっ!?」
「レノたん!?」
「これは……結界か!」
ドアノブに触れた瞬間にレノの右手が弾かれるが、特に痛みは感じない。どうやら特定の人間にしか触れられない仕掛けなのか、これでは先に進めない。
「困ったな……完全に囲まれたか」
「ど、どうしましょう……」
「う~ん……」
「……巫女姫様のお力で、何か出来ないか?」
「そ、そう言われても……私が出来るのは回復魔法だけだし」
「それだけでも十分凄いけど……」
この世界で回復魔法を扱えるのは聖導教会の上位魔導士か、人魚族ぐらいであり、その数は少ない。ちなみに回復魔法は大怪我の治療は出来ても病気を癒すことは出来ない(生命力を高める事ぐらいは出来る)。
全員が考え込む中、レノは再び扉の方に視線を向ける。これが魔法による物ならば「銀の鎖」で無効化できるかもしれず、レノは左腕を差し出して鎖の腕を形成しようとした時、
「……あっ」
「え?」
思い出したようにヨウカの顔を見て、よくよく考えれば巫女姫である彼女ならばこの扉を開けるかもしれない。
「……ヨウカなら大丈夫じゃないの?」
「……えっと、な、何が?」
「わふっ……もしかしたら……」
「試してみる価値はある、のか?」
「巫女姫様……お願いします」
「え、ええっ!?」
全員に急かされ、ヨウカは扉の前に立たされ、彼女は恐る恐るドアノブに手を伸ばした瞬間、
ボウッ……!!
「おおっ……」
「凄い……!!」
「……なんだか、暖かい」
ガチャッ……
ドアノブを掴んだ瞬間、扉に白い魔方陣が浮かんだと思うと瞬時に消失する。同時に扉が勝手に開かれ、扉の向こう側には白色の煉瓦で統一された通路が開かれていた。
レノ達が通路に出ると、最後尾のゴンゾウが窮屈そうに扉を通り過ぎた瞬間に勝手に扉は締まる。試しに内側からヨウカに開けさせるように頼むと、普通に扉は開く事に成功したので罠のような仕掛けは施されていない。
「ここは……何か知ってるヨウカ?」
「さ、さあ……こんな場所、マザーにも聞いたことないけど……」
「教会の秘密通路か……こんな状況でなければ元冒険者としては心躍る状況だが……」
「……狭い」
「ご、ゴンさん大丈夫ですか?」
3メートルを越えるゴンゾウには扉の内側の通路は狭く、腰を屈めないと進む事も出来ない。通路は一本道であり、少し先には地下に続く階段が見えた。
「……こっちだ」
レノの「紋様」が聖痕の魔力の残滓を感じ取り、全員が彼に続いて地下に向けて移動を開始する。
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