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テンペスト騎士団編
教会総本部に
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全員の視線がたまたま黒猫酒場に立ち寄っていたヨウカに集まり、彼女は困惑した風に首を見渡す。
「えっ……わ、私が教会に?」
「お願いします!!友人の命が掛かっているんです!!」
「お、お願いします!!ヨウカさん!!」
「……頼みます!!」
「ちょちょっ……!?や、やめてよ!!頭を上げてよ皆!?」
ヨウカの前でリノン達が不可部下と頭を下げ、ゴンゾウに至っては土下座を行う。慌てふためきながら彼女は皆の顔を上げさせ、少しだけ考える素振りを行うとホノカに視線を向け、彼女も頷く。
「う、うん……そういう事情なら私も力になりたいけどけど、あんまり期待しないでね」
「彼女も複雑な事情があってね……僕も一緒に赴きたいが、流石に盗賊が教会に入るのは拒まれるだろうな」
「俺は……やっぱり問題あるか」
ハーフエルフであるレノが聖導教会に訪れるのは色々と問題があるが、ヨウカが非常に動揺したように彼の手を掴む。
「ええっ!?レノたんは着いてきてよ!!ホノカちゃんもいないのにレノたんまで来てくれないなら、私絶対に泣いちゃうよ!?」
「いや、俺が居たらもっと厄介なことになると思うけど……」
涙目で自分に縋り付くヨウカにレノは頬を搔き、ヴァンパイア同様に聖導教会にとっては粛清対象であるハーフエルフの彼が赴くのは不味い。
前回の時は腐敗竜の討伐の件で事なきを得たが、正式な手続きを行わずにレノがもう一度聖導教会総本部に訪れるのは問題がある。いくら教会の最高権力者である「巫女姫(ヨウカ)」であれど、下手をしたらその座を追われるかねない。
「でもでも……!!2人のどっちかがいないと私心細いよ~……!!」
「そう言われてもね……」
「こっそり着いて行くわけにもいかないし……」
「……大丈夫」
唐突にコトミがひょっこりと顔を出し、彼女はレノが首に下げている王国から授与された「S級冒険者」の証であるペンダントを掴み、
「……これを見せれば中に入れる」
「え?」
「なるほど……その手があったか!!」
リノンが心当たりがあるのか、納得したように声を上げ、レノが彼女に視線を向けると大きく頷いてくる。
「その紋章はただの冒険者の証じゃない。このペンダントを持つ者はバルトロス王国にとって重要な人物の証明だから……もしかしたらこれを身に着けていれば教会にも入れるかもしれない」
「なるほど、王国の立場を利用して入り込むのか……」
「そ、その言い方はあれだが……まあ、問題ないと思う。後で王国側から詰問位は有るかも知れないが……」
「それぐらいなら問題ない」
レノとしてもジャンヌは大切な仲間であり、色々と世話になっている。そんな彼女を見捨てる事は出来ない。
「さて……なら善は急げだ。早く教会に立ち寄って本部に転移した方がいいだろうね」
「わ、分かった……皆、行こう!!」
「「「はい(押忍)!!」」」
「「行ってらっしゃ~い」」
バルとカリナ、さらにはホノカに見送られる形で酒場を出ると、レノ達は闘人都市の聖導教会に向かう――
――そして、教会に辿り着いて早々、巫女姫が訪れたとして慌てて教会側に混乱が起きた。前回に訪れた時は深淵の森のエルフの捕虜を聖導教会総本部の監獄に送り込む際であり、数日ぶりに訪れる事になる。
何時もとは違う真剣な表情のヨウカの登場に慌てて教会側の人間が全員集合し、すぐに出迎えられる。
「こ、これはこれは巫女姫様……今回の用件は?」
「えっと……何だっけ?」
「聖導教会総本部に向けての移動だよ」
教会内の建物内に通され、以前にレノが教会に忍び込んだときにも見かけた猫背の老人が現れる。どうやら彼がこの教会の神父であり、巫女姫を相手に敬語も使わずに話すレノに憎々しげな視線を向けてくるが、レノが軽く睨み返すと怯えた風に顔を反らしてくる。
神父は全身を汗だくでヨウカに頭を下げ、前回に見かけたときも教皇を相手に怖じ怖じとしていたが、今回は教会の代表と言っても過言ではない巫女姫の出現に顔色を真っ青にしている。意外と小心者の性格かもしれない。
「えっと……教会の本部に戻りたいんだけど」
「そ、それは……何か急用でしょうか?」
ヨウカの言葉に明らかに焦りを感じている神父にレノは不審に思い、ヨウカの耳元に囁く。
(教皇に会いたいと伝えて)
「えっと……きょ、教皇さんに会いたくなったかな~」
「何と……それは、そうですか……ですが……」
明らかに動揺を隠せない神父にレノ達は首を傾げ、
「……わ、分かりました。ならば、私達も巫女姫様を全力で支持いたしましょう」
「え?」
「支持?」
「とうとう、ご決心を為されたのですね……ミキ様の遺言に従い、我らも微力ながら力添えを致します」
「え、マザー?……え?」
唐突に頭を下げる神父達にヨウカは何が起きているのか理解できず、説明を求めるようにレノ達に視線を向けるが、彼らとしても状況を理解できない。だが、「ミキ」という言葉にレノはある予想を抱く。
彼女は1年半前、巫女姫であるヨウカの権力を強めるために色々と準備を行っていた事は聞いている。各地を巡回し、儀式を行わせて巫女姫の実力を見せつける事で民衆から支持を得て、教会内の巫女姫の立場を強めるために動いていた。もしかしたらこの教会の人間とも接触していた可能性が高い。
「ミキ様が亡くなってから1年半……やっと覚悟をお決めになったのですね。ヨウカ様がご決心され以上、我らも全力で支援いたします」
「「巫女姫様万歳!!万歳!!」」
「え、え、えぇえええええっ!?」
「わうっ……!?」
「……万歳?」
「い、一体何が……?」
「……面倒くさい」
「……すうっ……」
ただ、ヨウカの力を借りて聖導教会の総本部に転移するはずだったが、またもや面倒事に巻き込まれそうな気配にレノは頭を抱えた。
「えっ……わ、私が教会に?」
「お願いします!!友人の命が掛かっているんです!!」
「お、お願いします!!ヨウカさん!!」
「……頼みます!!」
「ちょちょっ……!?や、やめてよ!!頭を上げてよ皆!?」
ヨウカの前でリノン達が不可部下と頭を下げ、ゴンゾウに至っては土下座を行う。慌てふためきながら彼女は皆の顔を上げさせ、少しだけ考える素振りを行うとホノカに視線を向け、彼女も頷く。
「う、うん……そういう事情なら私も力になりたいけどけど、あんまり期待しないでね」
「彼女も複雑な事情があってね……僕も一緒に赴きたいが、流石に盗賊が教会に入るのは拒まれるだろうな」
「俺は……やっぱり問題あるか」
ハーフエルフであるレノが聖導教会に訪れるのは色々と問題があるが、ヨウカが非常に動揺したように彼の手を掴む。
「ええっ!?レノたんは着いてきてよ!!ホノカちゃんもいないのにレノたんまで来てくれないなら、私絶対に泣いちゃうよ!?」
「いや、俺が居たらもっと厄介なことになると思うけど……」
涙目で自分に縋り付くヨウカにレノは頬を搔き、ヴァンパイア同様に聖導教会にとっては粛清対象であるハーフエルフの彼が赴くのは不味い。
前回の時は腐敗竜の討伐の件で事なきを得たが、正式な手続きを行わずにレノがもう一度聖導教会総本部に訪れるのは問題がある。いくら教会の最高権力者である「巫女姫(ヨウカ)」であれど、下手をしたらその座を追われるかねない。
「でもでも……!!2人のどっちかがいないと私心細いよ~……!!」
「そう言われてもね……」
「こっそり着いて行くわけにもいかないし……」
「……大丈夫」
唐突にコトミがひょっこりと顔を出し、彼女はレノが首に下げている王国から授与された「S級冒険者」の証であるペンダントを掴み、
「……これを見せれば中に入れる」
「え?」
「なるほど……その手があったか!!」
リノンが心当たりがあるのか、納得したように声を上げ、レノが彼女に視線を向けると大きく頷いてくる。
「その紋章はただの冒険者の証じゃない。このペンダントを持つ者はバルトロス王国にとって重要な人物の証明だから……もしかしたらこれを身に着けていれば教会にも入れるかもしれない」
「なるほど、王国の立場を利用して入り込むのか……」
「そ、その言い方はあれだが……まあ、問題ないと思う。後で王国側から詰問位は有るかも知れないが……」
「それぐらいなら問題ない」
レノとしてもジャンヌは大切な仲間であり、色々と世話になっている。そんな彼女を見捨てる事は出来ない。
「さて……なら善は急げだ。早く教会に立ち寄って本部に転移した方がいいだろうね」
「わ、分かった……皆、行こう!!」
「「「はい(押忍)!!」」」
「「行ってらっしゃ~い」」
バルとカリナ、さらにはホノカに見送られる形で酒場を出ると、レノ達は闘人都市の聖導教会に向かう――
――そして、教会に辿り着いて早々、巫女姫が訪れたとして慌てて教会側に混乱が起きた。前回に訪れた時は深淵の森のエルフの捕虜を聖導教会総本部の監獄に送り込む際であり、数日ぶりに訪れる事になる。
何時もとは違う真剣な表情のヨウカの登場に慌てて教会側の人間が全員集合し、すぐに出迎えられる。
「こ、これはこれは巫女姫様……今回の用件は?」
「えっと……何だっけ?」
「聖導教会総本部に向けての移動だよ」
教会内の建物内に通され、以前にレノが教会に忍び込んだときにも見かけた猫背の老人が現れる。どうやら彼がこの教会の神父であり、巫女姫を相手に敬語も使わずに話すレノに憎々しげな視線を向けてくるが、レノが軽く睨み返すと怯えた風に顔を反らしてくる。
神父は全身を汗だくでヨウカに頭を下げ、前回に見かけたときも教皇を相手に怖じ怖じとしていたが、今回は教会の代表と言っても過言ではない巫女姫の出現に顔色を真っ青にしている。意外と小心者の性格かもしれない。
「えっと……教会の本部に戻りたいんだけど」
「そ、それは……何か急用でしょうか?」
ヨウカの言葉に明らかに焦りを感じている神父にレノは不審に思い、ヨウカの耳元に囁く。
(教皇に会いたいと伝えて)
「えっと……きょ、教皇さんに会いたくなったかな~」
「何と……それは、そうですか……ですが……」
明らかに動揺を隠せない神父にレノ達は首を傾げ、
「……わ、分かりました。ならば、私達も巫女姫様を全力で支持いたしましょう」
「え?」
「支持?」
「とうとう、ご決心を為されたのですね……ミキ様の遺言に従い、我らも微力ながら力添えを致します」
「え、マザー?……え?」
唐突に頭を下げる神父達にヨウカは何が起きているのか理解できず、説明を求めるようにレノ達に視線を向けるが、彼らとしても状況を理解できない。だが、「ミキ」という言葉にレノはある予想を抱く。
彼女は1年半前、巫女姫であるヨウカの権力を強めるために色々と準備を行っていた事は聞いている。各地を巡回し、儀式を行わせて巫女姫の実力を見せつける事で民衆から支持を得て、教会内の巫女姫の立場を強めるために動いていた。もしかしたらこの教会の人間とも接触していた可能性が高い。
「ミキ様が亡くなってから1年半……やっと覚悟をお決めになったのですね。ヨウカ様がご決心され以上、我らも全力で支援いたします」
「「巫女姫様万歳!!万歳!!」」
「え、え、えぇえええええっ!?」
「わうっ……!?」
「……万歳?」
「い、一体何が……?」
「……面倒くさい」
「……すうっ……」
ただ、ヨウカの力を借りて聖導教会の総本部に転移するはずだったが、またもや面倒事に巻き込まれそうな気配にレノは頭を抱えた。
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