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テンペスト騎士団編
異常な男
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「おぅらぁっ!!」
「くっ!!」
剣を構えるリノンに対して全く物怖じせず、リュウケンは接近してくる。右拳を振り上げ、そのまま彼女の身体に向けて放つ。リノンはその拳を何とか紙一重で躱したが、
ズガァアアアアンッ!!
彼女の後方に存在する建物の壁に拳型の窪みが生じ、亀裂が発生して壁が崩壊する。リュウケンはそのまま拳を引き戻し、口元に笑みを浮かべる。リノンは後方の建物の変化に冷や汗を流し、真面に拳を受けていたら間違いなく死亡していただろう。
(……何なんだこいつは!?)
ただ拳を振るっただけで建物を崩壊させたリュウケンにリノンは剣を構え、捕獲する事は不可能と判断し、相手を討伐する事に頭を切り替える。
「ふんっ!!」
「くっ……」
今度は回し蹴りを放つリュウケンにリノンは咄嗟に体勢を低くさせて躱し、今度は拳と違って後方に存在する建物には異変が生じず、隙が生まれた彼に向けてリノンは長剣を構え、そのまま胸元に向けて突きを放つ。
「はあっ!!」
――ガキィンッ!!
だが、予想外の衝撃が両手に広がり、リノンは驚愕で目を見開く。間違いなく、男の胸を貫くと思っていたが、刃は突き刺さるどころか火花を放って弾かれてしまう。恐らくは極限にまで身体の筋肉を凝縮させ、刃を弾いたのだろう。
慌てて剣を弾かれたリノンは後方に後退し、リュウケンは刺された胸元を掌でさすると、落胆したように大きな溜息を吐き、
「ちっ……この程度かよ……」
「……化け物め……」
リュウケンは単純な「肉体強化」だけで自身の肉体、正確に言えば筋肉をまるで鋼鉄のように硬化させて刃を防意だ事にリノンは背筋が凍り、ただの人間がここまで肉体強化を極めた事にある意味感心してしまう。
今までに様々な魔物や人間を相手にしてきたが、ここまで常識外れな相手は初めてである。人間でありながらまるでゴーレム並の外殻を想像させる程の硬度を誇る肉体であり、ある意味ではソフィアの強化術と似通っている。
「火炎剣」
ボウッ!!
すぐにリノンは刀身に炎を走らせるが、男はそれを見て再び興味を抱いたのか、自分の胸元をどんと叩き、
「いいぜ……ハンデだ。もう一度狙ってみな」
「何?」
「ここだよここ!!もう一度、突いてみやがれって言ってんだよ!!」
再び、胸元を強く叩き付ける男にリノンは呆気にとられるが、どうやらもう一度彼女に自分の肉体に刃を走らせろと迫っているらしい。
(何を考えて……ただの馬鹿とは思えないが……)
このリノンが得意とする火炎剣は地下迷宮のゴーレム・キングの外殻でさえも通じた技であr。いくら鍛えこまれていようが、リュウケンの筋肉だろうが貫ける可能性は高い。だが、彼は仁王立ちしながら大きく腕を広げ、完全にリノンを誘っている。相当に自分の肉体に自信があるのか、それとも何か考えがあるかは不明だが、
(……時間は掛けられない)
ここで時間を無駄に消費する訳にはいかず、ポチ子とゴンゾウが追い付く以前に周囲の人間達の命が危ない。彼らはリュウケンが城門を破壊した際に巻き込まれた者たちであり、傷が深すぎて地面から起き上がれない物も多数存在する。
「行くぞ!!」
「来いやぁっ!!」
ドォンッ!!
最大限に足の裏に力を込め、全力で疾走し、両腕で長剣を構えながら真っ直ぐに突きを放つ。
――その軌道は男の胸元、ではなく「顔面」に向けて放たれ、より確実に相手を殺すために振り切る。
ガキィイイイインッ――!!
周辺に激しい金属音が響き渡り、その光景を見ていた地面に倒れ込んだ者たちは目を見開く。そこには頭部を貫かれたリュウケンの姿は無く、
「……ほうふると、おもっひゃたぜ?」
「馬鹿な……!?」
あろう事か、リノンが放った長剣をリュウケンは「歯」で食い止めたのだ。当然、刀身に纏われた炎が彼の顔を焼くが、それでも男は笑みを浮かべ、
「ふぐっ!!」
ビキィイイッ!!
「なっ……!?」
犬歯の部分が刃に喰いこみ、リノンの長剣に罅が入る。慌てて彼女は剣を抜き取ろうとするが、しっかり刀身の部分はリュウケンに噛みつかれたままであり、
バリィイインッ!!
長剣は無残に噛み砕かれ、そのまま刀身の先端部が崩壊して地面に散る。リノンは眼前の光景に呆気にとられ、すぐに顔を見上げると、
「ふんっ……男前が台無しだ」
口元に大きな火傷を負ったリュウケンの姿があり、まるで痛みを感じないかのように唇を抑え、醜悪な笑みを浮かべてくる。
(何なんだこいつは……!?)
ある意味では以前に鳳凰学園で出会ったカトレア以上に異常な存在を相手にリノンは冷や汗が止まらず、半分に砕かれた長剣を構えながら、
「これはどうだ!?」
懐から魔石を取り出し、リュウケンに向けて放り投げる。彼は面倒そうに右手で振り払おうとした瞬間、
「ホールド!!」
「うおっ!?」
ブゥンッ――!!
リュウケンの身体、正確に言えば銅体と足元に魔方陣が出現し、そのまま拘束具のようにリュウケンの動き抑制する。この魔法はつい最近に作り出された物であり、希少な魔石と引き替えに対象を捕縛する魔道具だ。
「くっ!!」
剣を構えるリノンに対して全く物怖じせず、リュウケンは接近してくる。右拳を振り上げ、そのまま彼女の身体に向けて放つ。リノンはその拳を何とか紙一重で躱したが、
ズガァアアアアンッ!!
彼女の後方に存在する建物の壁に拳型の窪みが生じ、亀裂が発生して壁が崩壊する。リュウケンはそのまま拳を引き戻し、口元に笑みを浮かべる。リノンは後方の建物の変化に冷や汗を流し、真面に拳を受けていたら間違いなく死亡していただろう。
(……何なんだこいつは!?)
ただ拳を振るっただけで建物を崩壊させたリュウケンにリノンは剣を構え、捕獲する事は不可能と判断し、相手を討伐する事に頭を切り替える。
「ふんっ!!」
「くっ……」
今度は回し蹴りを放つリュウケンにリノンは咄嗟に体勢を低くさせて躱し、今度は拳と違って後方に存在する建物には異変が生じず、隙が生まれた彼に向けてリノンは長剣を構え、そのまま胸元に向けて突きを放つ。
「はあっ!!」
――ガキィンッ!!
だが、予想外の衝撃が両手に広がり、リノンは驚愕で目を見開く。間違いなく、男の胸を貫くと思っていたが、刃は突き刺さるどころか火花を放って弾かれてしまう。恐らくは極限にまで身体の筋肉を凝縮させ、刃を弾いたのだろう。
慌てて剣を弾かれたリノンは後方に後退し、リュウケンは刺された胸元を掌でさすると、落胆したように大きな溜息を吐き、
「ちっ……この程度かよ……」
「……化け物め……」
リュウケンは単純な「肉体強化」だけで自身の肉体、正確に言えば筋肉をまるで鋼鉄のように硬化させて刃を防意だ事にリノンは背筋が凍り、ただの人間がここまで肉体強化を極めた事にある意味感心してしまう。
今までに様々な魔物や人間を相手にしてきたが、ここまで常識外れな相手は初めてである。人間でありながらまるでゴーレム並の外殻を想像させる程の硬度を誇る肉体であり、ある意味ではソフィアの強化術と似通っている。
「火炎剣」
ボウッ!!
すぐにリノンは刀身に炎を走らせるが、男はそれを見て再び興味を抱いたのか、自分の胸元をどんと叩き、
「いいぜ……ハンデだ。もう一度狙ってみな」
「何?」
「ここだよここ!!もう一度、突いてみやがれって言ってんだよ!!」
再び、胸元を強く叩き付ける男にリノンは呆気にとられるが、どうやらもう一度彼女に自分の肉体に刃を走らせろと迫っているらしい。
(何を考えて……ただの馬鹿とは思えないが……)
このリノンが得意とする火炎剣は地下迷宮のゴーレム・キングの外殻でさえも通じた技であr。いくら鍛えこまれていようが、リュウケンの筋肉だろうが貫ける可能性は高い。だが、彼は仁王立ちしながら大きく腕を広げ、完全にリノンを誘っている。相当に自分の肉体に自信があるのか、それとも何か考えがあるかは不明だが、
(……時間は掛けられない)
ここで時間を無駄に消費する訳にはいかず、ポチ子とゴンゾウが追い付く以前に周囲の人間達の命が危ない。彼らはリュウケンが城門を破壊した際に巻き込まれた者たちであり、傷が深すぎて地面から起き上がれない物も多数存在する。
「行くぞ!!」
「来いやぁっ!!」
ドォンッ!!
最大限に足の裏に力を込め、全力で疾走し、両腕で長剣を構えながら真っ直ぐに突きを放つ。
――その軌道は男の胸元、ではなく「顔面」に向けて放たれ、より確実に相手を殺すために振り切る。
ガキィイイイインッ――!!
周辺に激しい金属音が響き渡り、その光景を見ていた地面に倒れ込んだ者たちは目を見開く。そこには頭部を貫かれたリュウケンの姿は無く、
「……ほうふると、おもっひゃたぜ?」
「馬鹿な……!?」
あろう事か、リノンが放った長剣をリュウケンは「歯」で食い止めたのだ。当然、刀身に纏われた炎が彼の顔を焼くが、それでも男は笑みを浮かべ、
「ふぐっ!!」
ビキィイイッ!!
「なっ……!?」
犬歯の部分が刃に喰いこみ、リノンの長剣に罅が入る。慌てて彼女は剣を抜き取ろうとするが、しっかり刀身の部分はリュウケンに噛みつかれたままであり、
バリィイインッ!!
長剣は無残に噛み砕かれ、そのまま刀身の先端部が崩壊して地面に散る。リノンは眼前の光景に呆気にとられ、すぐに顔を見上げると、
「ふんっ……男前が台無しだ」
口元に大きな火傷を負ったリュウケンの姿があり、まるで痛みを感じないかのように唇を抑え、醜悪な笑みを浮かべてくる。
(何なんだこいつは……!?)
ある意味では以前に鳳凰学園で出会ったカトレア以上に異常な存在を相手にリノンは冷や汗が止まらず、半分に砕かれた長剣を構えながら、
「これはどうだ!?」
懐から魔石を取り出し、リュウケンに向けて放り投げる。彼は面倒そうに右手で振り払おうとした瞬間、
「ホールド!!」
「うおっ!?」
ブゥンッ――!!
リュウケンの身体、正確に言えば銅体と足元に魔方陣が出現し、そのまま拘束具のようにリュウケンの動き抑制する。この魔法はつい最近に作り出された物であり、希少な魔石と引き替えに対象を捕縛する魔道具だ。
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