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テンペスト騎士団編
闘人都市への襲撃
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闘人都市の城門に土煙が発生から数分前、門の前には無数の警備兵とリノンが残した騎士団の団員たちが在留しており、時刻も夕刻を回ろうとしていたため、そろそろ城門を閉じて引き上げようとした時に「その男」は現れた。
「……何だあいつ?」
「囚人服……?」
「何処かの監獄の脱走者か……?」
城門で警備を行っていた兵士たちの視界に大柄な男の姿が確認され、全員が訝しむ。その男は間違いなく囚人服を着こんでおり、外見は随分と薄汚れていた。
――男の容姿は全身を筋肉の鎧で覆われているのではないかと思われるほどに鍛えこまれており、この場にいる兵士や騎士達よりも見事な肉付きだった。頭部の方は髪の毛の類は無いが、黒い紋様のような火傷が存在し、身長はだいたい2メートルほどであり、顔つきは30代~40代ほど、そして何よりも両手には黒い手錠が付けられており、異様に長い鎖を地面に垂らしながら近づいてくる。
「何なんだあいつ……」
「おい、待てよ……あいつ何処かで見たことが……」
テンペスト騎士団の何人かが視界の男に見覚えがあり、確か手配書で見かけた人物だ。だが、どうにも思い出せない。
「おいおい……何だお前?」
「何処からか脱走でもしてきたのか?」
2人の警備兵が近寄ってくる男に対して槍を構えながら不用意に近づいた瞬間、
「――失せろ」
ゴキィッ!!
「「えっ……」」
次の瞬間、2人の首が180度に回転し、そのままゆっくりと地面に倒れこむ。
バタンッ……
「なっ……」
「何をした……?」
眼の前の光景にその場に居る全員が目を見開き、すぐに2人の兵士が囚人服の男に殺された事を理解する。だが、問題なのは彼ら決して瞬きなどしていなかったにも関わらず、唐突に兵士の首が180度に回転した原因が分からなかった。
間違いなく、囚人服の男が2人を殺したことは確かだろう。だが、どのような方法で殺害したのかが不明だ。他の者たちが見た限り、男は特に何も行動を起こしていなかったはずだが、現に兵士たちの首が異様な方向に曲がって死亡したのは事実だ。
考えられるのは男が目にも見えない速さで兵士たちの首を掴み、そのまま回転させて殺したのか、それとも何らかの魔法を使用して兵士たちの頭部を操った可能性もあるが、1つだけ言える事はこの男は間違いなく故意に兵士たちを殺した事である。
「敵だ!!」
「戦闘準備!!」
ガチャッ!!
決してこの男を闘人都市の中に入れるわけにはいかず、都市の警備兵とテンペスト騎士団の団員達はすぐさま武器を男に対して構える。
「はっ……いい反応だ」
囚人服の男は笑みを浮かべると、ゆっくりと両腕を振り回し、その態度に彼がこれほどの人数を相手にしながら降伏する気は無いことを悟らせる。
「舐めやがって……!!」
「魔法を放て!!」
男との距離はまだ10メートルあり、最初の警備兵達は不用意に近づいたから殺されたと判断し、距離があれば十分に魔法で狙い撃ちできる。
「火炎弾!!」
「岩石弾!!」
「フレイム・アロー!!」
「ウィンド・アロー!!」
ある者は詠唱を終えて杖の先端から魔法を放ち、ある物は魔石を使用して魔法を発動させ、無数の砲撃魔法が男に向けて放たれる。それを見た男は初めて顔を不快そうに歪ませ、
「しゃらくせぇっ!!」
ドォンッ!!
最初に向い来る炎の弾丸が男の眼前で消し飛び、次々と迫りくる無数の魔弾も激しい衝撃音と共に次々と掻き消える。他者から見たらその光景は男の目の前で魔弾が消散しているように見えた。
「防御魔法陣(プロテクト)か!?」
「風の障壁……?」
「いや……あれは……馬鹿な……!?」
次々と放たれる魔弾を搔き消す男の両手が残像を生み出すほどに動いており、恐らく男は高速で拳を動かて、正面から向かってくる全ての魔弾を拳で弾き返しているのだ。
「馬鹿な……有り得ん!!」
「何だあいつは!!」
「怯むな!!撃ち続けろ!!」
男が徐々に魔弾を打ち消しながら近づいているのを確認し、その場居る全員が魔法を放ち続け、
「全員下がれ!!広域魔法を放つ!!」
1人の騎士団が掌で収まり切れないほどの赤い魔石を取り出し、詠唱を行うと魔石の内部に強い光が灯り、
「――ファイヤーバード!!」
ゴォオオオオオッ!!
『ギィアァアアアアアッ!!』
魔石から炎が噴出し、巨大な鳥のような形に変形すると、そのまま鳴き声を上げて男の元に突進する。この攻撃ならば拳だけで防ぐことは不可能であり、全員が囚人服の男が炎に飲み込まれると確信したが、
「面白ぇ……!!」
男は両手の拳を合わせ、迫りくる火の鳥に向けて構えると、
「あの女から受け取った力……試してやるか」
ボウッ……!!
囚人服の間から見える腹部に渦巻きを想像させる「紋様」が浮かび上がり、男の周囲に風が集まり、彼を覆い囲むように纏わり付き、、
「吹き飛びやがれ!!」
――ドゴォオオオオオオオオッ!!
男の構えた拳の先から「竜巻」が生み出され、そのまま眼の前にまで迫っていた「風属性」とは相性が良いはずの「火属性」の魔法で生み出された火の鳥を飲み込み、竜巻は炎を吸収する形で警備兵と騎士団が居る場所に向けて放たれる。
「う、うわぁああああああっ!?」
「逃げっ……!!」
「いぎゃぁあああああああああああっ!!」
――ズガァアアアアアアアアアンッ!!
容赦なく、火炎旋風と化した竜巻は無数の人間達を巻き込み、そのまま闘人都市の巨大な城門に衝突した。
「……何だあいつ?」
「囚人服……?」
「何処かの監獄の脱走者か……?」
城門で警備を行っていた兵士たちの視界に大柄な男の姿が確認され、全員が訝しむ。その男は間違いなく囚人服を着こんでおり、外見は随分と薄汚れていた。
――男の容姿は全身を筋肉の鎧で覆われているのではないかと思われるほどに鍛えこまれており、この場にいる兵士や騎士達よりも見事な肉付きだった。頭部の方は髪の毛の類は無いが、黒い紋様のような火傷が存在し、身長はだいたい2メートルほどであり、顔つきは30代~40代ほど、そして何よりも両手には黒い手錠が付けられており、異様に長い鎖を地面に垂らしながら近づいてくる。
「何なんだあいつ……」
「おい、待てよ……あいつ何処かで見たことが……」
テンペスト騎士団の何人かが視界の男に見覚えがあり、確か手配書で見かけた人物だ。だが、どうにも思い出せない。
「おいおい……何だお前?」
「何処からか脱走でもしてきたのか?」
2人の警備兵が近寄ってくる男に対して槍を構えながら不用意に近づいた瞬間、
「――失せろ」
ゴキィッ!!
「「えっ……」」
次の瞬間、2人の首が180度に回転し、そのままゆっくりと地面に倒れこむ。
バタンッ……
「なっ……」
「何をした……?」
眼の前の光景にその場に居る全員が目を見開き、すぐに2人の兵士が囚人服の男に殺された事を理解する。だが、問題なのは彼ら決して瞬きなどしていなかったにも関わらず、唐突に兵士の首が180度に回転した原因が分からなかった。
間違いなく、囚人服の男が2人を殺したことは確かだろう。だが、どのような方法で殺害したのかが不明だ。他の者たちが見た限り、男は特に何も行動を起こしていなかったはずだが、現に兵士たちの首が異様な方向に曲がって死亡したのは事実だ。
考えられるのは男が目にも見えない速さで兵士たちの首を掴み、そのまま回転させて殺したのか、それとも何らかの魔法を使用して兵士たちの頭部を操った可能性もあるが、1つだけ言える事はこの男は間違いなく故意に兵士たちを殺した事である。
「敵だ!!」
「戦闘準備!!」
ガチャッ!!
決してこの男を闘人都市の中に入れるわけにはいかず、都市の警備兵とテンペスト騎士団の団員達はすぐさま武器を男に対して構える。
「はっ……いい反応だ」
囚人服の男は笑みを浮かべると、ゆっくりと両腕を振り回し、その態度に彼がこれほどの人数を相手にしながら降伏する気は無いことを悟らせる。
「舐めやがって……!!」
「魔法を放て!!」
男との距離はまだ10メートルあり、最初の警備兵達は不用意に近づいたから殺されたと判断し、距離があれば十分に魔法で狙い撃ちできる。
「火炎弾!!」
「岩石弾!!」
「フレイム・アロー!!」
「ウィンド・アロー!!」
ある者は詠唱を終えて杖の先端から魔法を放ち、ある物は魔石を使用して魔法を発動させ、無数の砲撃魔法が男に向けて放たれる。それを見た男は初めて顔を不快そうに歪ませ、
「しゃらくせぇっ!!」
ドォンッ!!
最初に向い来る炎の弾丸が男の眼前で消し飛び、次々と迫りくる無数の魔弾も激しい衝撃音と共に次々と掻き消える。他者から見たらその光景は男の目の前で魔弾が消散しているように見えた。
「防御魔法陣(プロテクト)か!?」
「風の障壁……?」
「いや……あれは……馬鹿な……!?」
次々と放たれる魔弾を搔き消す男の両手が残像を生み出すほどに動いており、恐らく男は高速で拳を動かて、正面から向かってくる全ての魔弾を拳で弾き返しているのだ。
「馬鹿な……有り得ん!!」
「何だあいつは!!」
「怯むな!!撃ち続けろ!!」
男が徐々に魔弾を打ち消しながら近づいているのを確認し、その場居る全員が魔法を放ち続け、
「全員下がれ!!広域魔法を放つ!!」
1人の騎士団が掌で収まり切れないほどの赤い魔石を取り出し、詠唱を行うと魔石の内部に強い光が灯り、
「――ファイヤーバード!!」
ゴォオオオオオッ!!
『ギィアァアアアアアッ!!』
魔石から炎が噴出し、巨大な鳥のような形に変形すると、そのまま鳴き声を上げて男の元に突進する。この攻撃ならば拳だけで防ぐことは不可能であり、全員が囚人服の男が炎に飲み込まれると確信したが、
「面白ぇ……!!」
男は両手の拳を合わせ、迫りくる火の鳥に向けて構えると、
「あの女から受け取った力……試してやるか」
ボウッ……!!
囚人服の間から見える腹部に渦巻きを想像させる「紋様」が浮かび上がり、男の周囲に風が集まり、彼を覆い囲むように纏わり付き、、
「吹き飛びやがれ!!」
――ドゴォオオオオオオオオッ!!
男の構えた拳の先から「竜巻」が生み出され、そのまま眼の前にまで迫っていた「風属性」とは相性が良いはずの「火属性」の魔法で生み出された火の鳥を飲み込み、竜巻は炎を吸収する形で警備兵と騎士団が居る場所に向けて放たれる。
「う、うわぁああああああっ!?」
「逃げっ……!!」
「いぎゃぁあああああああああああっ!!」
――ズガァアアアアアアアアアンッ!!
容赦なく、火炎旋風と化した竜巻は無数の人間達を巻き込み、そのまま闘人都市の巨大な城門に衝突した。
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