種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

文字の大きさ
上 下
271 / 1,095
テンペスト騎士団編

作戦会議

しおりを挟む
「……聞きだせることは聞きだせたかな?」
「わふっ……そうだと思います」
「何だか知らないけど、厄介ごとを持ち込んでてくれたねぇ……」
「……レノだけのせいじゃない」
「分かってるよ。一番の問題は、こいつらの頭が固すぎるって事だけどね!!」
「「くっ……!!」」


ココウと呼ばれるエルフを解放し、コトミは彼の前で手拍子を行うと、そのまま糸が切れた人形のように倒れ込む。一体彼女がどんな魔法を使用したのかが気にかかるが、今は森の中に見張り番として残したゴンゾウの身が心配である。


「せりゃっ!!」


ジャラララッ!!


黒衣の左腕から「銀の鎖」を出現させ、酒場の床の板に転移魔方陣を敷くと、森の中に描き残した転移魔方陣とまだ繋がる事を確認し、ゴンゾウが未だに魔方陣を守護しているのは間違いない。


「ちょっ……あんた、その腕……!?」
「ど、どうしたんすか!?それ!?」
「あ」


ここで酒場のバルたちがレノの左腕を見て目を丸くする。彼女達にはまだ義手になったことを話しておらず、手短に説明を行うとバルは呆れたような表情を浮かべ、女部下たちは目を輝かせる。


「すごいっすね!!まるで秘密兵器じゃないすか!!」
「恰好良い……」
「黒衣の左腕……魔術師っぽい」
「あんたらねぇ……」


女部下たちの反応にバルは頭を悩ませるが、すぐに首を振ってレノ達に視線を向け、


「それで……あんた達はどうする気なんだい?」
「そうだな……案の1つはこのまま転移して、集落に突っ込む」
「「「何だと!?」」」


レノの言葉にその場にいたエルフの戦士たちが大声でわめき散らし、バルの部下たちがフライパンを頭に叩き込んで黙らせる。彼らとしては追放されたレノが集落に戻る事は、何が何でも阻止しなければならない事態だが、今の状態では抵抗すらできない。


「だ、大丈夫なんでしょうか……危なくないですか?」
「……増援申請」
「まあ、流石に無茶だとは思うけどね……」


今回の相手は全員が魔法と武芸に長けた森人族(エルフ)であり、掟を破ったレノを本気で敵意を殺害するために動くだろう。しかし、このままでは延々と刺客を送り込まれ続けるのは間違いなく、レノとしては早々に誤解を解くため、さらには「第二の封印」の調査を行うためにも深淵の森に戻らなければならない。


「……たくっ、しょうがないね。あんた達!!」
「「「はい?」」」


女部下とガーネは声を掛けられ、バルは拳を慣らしながら、


「……しばらく酒場は休店だよ!!あんた達、準備をしな!!」
「「はっ!!」」
「バル?」


驚いた風にレノが視線を向けると、彼女は面倒気に頭を搔きながら、酒場を見渡す仕草を行う。先ほどの乱闘騒ぎのせいで、机や椅子の破片が散乱し、酒類の類も随分と破壊されている。これではしばらくは営業は難しいだろう。


「こんな目に遭わされたからね……あいつらに弁償代を請求しないと気が済まないよ!!」
「……またまた~……」
「本当は兄貴の事が心配な癖に……あいたっ!?」


ゴスンッ!!


女部下たちに拳骨を食らわせると、バルは照れくさそうに頬を赤らめ、


「ま、まあ……乗り掛かった舟だからね……ここまで来たら、最後まで付き合うよ!!」
「あっ、そうですか」
「そうですかって……反応薄くないかい!?」
「いや、足手まといは困るから」
「ちょっ、ひどくないっすか!?」


辛辣なレノの反応に女部下が反応するが、今回の相手は非常に厄介な存在である。森人族は六種族の中でも魔法に長けており、武技にも優れており、目の前の拘束した戦士たちは不意を突く形で何とか捕らえたが、まともに戦闘を行っていたとしたら大勢の被害が出ていただろう。


「とりあえず、ゴンゾウを呼び出すか……」



――数分後、転移魔方陣からゴンゾウを呼び出し、彼は大きすぎるため酒場の外で見張りをさせると、作戦を考えるためにバルの部屋に一度集まる。ポチ子だけはテンペスト騎士団に報告のために闘人都市に存在する騎士団の駐留所に向かい、残された者達は作戦会議を行う。



「さてと……まずは攻め入る前に情報を聞きださないとね」
「くっ……殺せ!!」
「おおっ……本当にこんな台詞を言うんだ」


バルの部屋の中には一番年若い(それでも70代は超えている)エルフを連れ出し、そのまま縄で両手両足を拘束したまま柱に縛りつける。このまま拷問して集落の情報を聞き出すよりも、コトミに頼んで先ほどのように「精神操作(本人曰く、名前は無いらしい)」させた方が速い気もするが、


「……あの魔法は一日に一回だけ」
「……それを先に言ってよ」
「別に問題ないよ。力ずくで……」
「くっ……!!」


エルフの戦士は舌を噛み切らんばかりに追い詰められた表情を浮かべるが、例え舌を噛もうが元ワルキューレ騎士団であるコトミは医療魔法も扱えるため、治療は可能である。だが、このまま拷問してもエルフがそう簡単に口を割るとは思えず、大勢のエルフ達が見張っている「抜け道」以外に集落に移動する方法が無いかと考えると、不意にレノの脳裏にある人物が浮かぶ。


(……待てよ?)


たった1人だけ、彼ら以外に集落の出入口を知っている可能性が高い人物を思い出し、彼女はレノと共に放浪島にアイリィに引き込まれ、その後の消息は不明だが、もしかしたら彼女ならばレノに協力してくれる可能性も高い。今、彼女が何処に居るのかは分からない。だが、未だに放浪島で彷徨っている可能性も高く、レノは自分の叔母に当たる人物の名を口にする。


「……フレイと連絡を取れないか試してみる」
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

ゲームスタート時に死亡済み王女は今日も死んだふりをする

館花陽月
ファンタジー
乙女ゲームが大好きだった主人公「釘宮あんな」は友達の付き合いで行った占いの帰り道に事故死した。 転生時に「全てを手にするか」「1つだけにするか」のよく解らない二択を選んだ結果、なんとか転生が叶った私は石棺の上で目を覚ます。 起き上がってみると自分を取り囲むのは何処かで見た見覚えのある人物達・・!? クリア出来なかった乙女ゲーム「ー聖女ルルドの恋模様ー亡国のセレナード」の世界にいた。 どうやら私が転生したのは、ゲーム内の王太子様クレトスのルートで、一瞬だけ登場(モノクロ写真)したヒロインのルルドに姿形がそっくりな初恋の王女様だった。 ゲームスタート時には死亡していた私が、ゲームが始まるまで生き残れるのか。 そして、どうやら転生をさせた女神様の話によると生きている限り命を狙われ続けることになりそうなんだけど・・。建国の女神の生まれ変わりとして授かった聖女の8つの力の内、徹底的防御「一定時間の仮死」(死んだふり)が出来る力しか使えないって無理ゲー。誰かに暗殺対象として狙わている私が生き残ることは出来るのか!?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

私の部屋で兄と不倫相手の女が寝ていた。

ほったげな
恋愛
私が家に帰ってきたら、私の部屋のベッドで兄と不倫相手の女が寝ていた。私は不倫の証拠を見つけ、両親と兄嫁に話すと…?!

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...