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テンペスト騎士団編
作戦会議
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「……聞きだせることは聞きだせたかな?」
「わふっ……そうだと思います」
「何だか知らないけど、厄介ごとを持ち込んでてくれたねぇ……」
「……レノだけのせいじゃない」
「分かってるよ。一番の問題は、こいつらの頭が固すぎるって事だけどね!!」
「「くっ……!!」」
ココウと呼ばれるエルフを解放し、コトミは彼の前で手拍子を行うと、そのまま糸が切れた人形のように倒れ込む。一体彼女がどんな魔法を使用したのかが気にかかるが、今は森の中に見張り番として残したゴンゾウの身が心配である。
「せりゃっ!!」
ジャラララッ!!
黒衣の左腕から「銀の鎖」を出現させ、酒場の床の板に転移魔方陣を敷くと、森の中に描き残した転移魔方陣とまだ繋がる事を確認し、ゴンゾウが未だに魔方陣を守護しているのは間違いない。
「ちょっ……あんた、その腕……!?」
「ど、どうしたんすか!?それ!?」
「あ」
ここで酒場のバルたちがレノの左腕を見て目を丸くする。彼女達にはまだ義手になったことを話しておらず、手短に説明を行うとバルは呆れたような表情を浮かべ、女部下たちは目を輝かせる。
「すごいっすね!!まるで秘密兵器じゃないすか!!」
「恰好良い……」
「黒衣の左腕……魔術師っぽい」
「あんたらねぇ……」
女部下たちの反応にバルは頭を悩ませるが、すぐに首を振ってレノ達に視線を向け、
「それで……あんた達はどうする気なんだい?」
「そうだな……案の1つはこのまま転移して、集落に突っ込む」
「「「何だと!?」」」
レノの言葉にその場にいたエルフの戦士たちが大声でわめき散らし、バルの部下たちがフライパンを頭に叩き込んで黙らせる。彼らとしては追放されたレノが集落に戻る事は、何が何でも阻止しなければならない事態だが、今の状態では抵抗すらできない。
「だ、大丈夫なんでしょうか……危なくないですか?」
「……増援申請」
「まあ、流石に無茶だとは思うけどね……」
今回の相手は全員が魔法と武芸に長けた森人族(エルフ)であり、掟を破ったレノを本気で敵意を殺害するために動くだろう。しかし、このままでは延々と刺客を送り込まれ続けるのは間違いなく、レノとしては早々に誤解を解くため、さらには「第二の封印」の調査を行うためにも深淵の森に戻らなければならない。
「……たくっ、しょうがないね。あんた達!!」
「「「はい?」」」
女部下とガーネは声を掛けられ、バルは拳を慣らしながら、
「……しばらく酒場は休店だよ!!あんた達、準備をしな!!」
「「はっ!!」」
「バル?」
驚いた風にレノが視線を向けると、彼女は面倒気に頭を搔きながら、酒場を見渡す仕草を行う。先ほどの乱闘騒ぎのせいで、机や椅子の破片が散乱し、酒類の類も随分と破壊されている。これではしばらくは営業は難しいだろう。
「こんな目に遭わされたからね……あいつらに弁償代を請求しないと気が済まないよ!!」
「……またまた~……」
「本当は兄貴の事が心配な癖に……あいたっ!?」
ゴスンッ!!
女部下たちに拳骨を食らわせると、バルは照れくさそうに頬を赤らめ、
「ま、まあ……乗り掛かった舟だからね……ここまで来たら、最後まで付き合うよ!!」
「あっ、そうですか」
「そうですかって……反応薄くないかい!?」
「いや、足手まといは困るから」
「ちょっ、ひどくないっすか!?」
辛辣なレノの反応に女部下が反応するが、今回の相手は非常に厄介な存在である。森人族は六種族の中でも魔法に長けており、武技にも優れており、目の前の拘束した戦士たちは不意を突く形で何とか捕らえたが、まともに戦闘を行っていたとしたら大勢の被害が出ていただろう。
「とりあえず、ゴンゾウを呼び出すか……」
――数分後、転移魔方陣からゴンゾウを呼び出し、彼は大きすぎるため酒場の外で見張りをさせると、作戦を考えるためにバルの部屋に一度集まる。ポチ子だけはテンペスト騎士団に報告のために闘人都市に存在する騎士団の駐留所に向かい、残された者達は作戦会議を行う。
「さてと……まずは攻め入る前に情報を聞きださないとね」
「くっ……殺せ!!」
「おおっ……本当にこんな台詞を言うんだ」
バルの部屋の中には一番年若い(それでも70代は超えている)エルフを連れ出し、そのまま縄で両手両足を拘束したまま柱に縛りつける。このまま拷問して集落の情報を聞き出すよりも、コトミに頼んで先ほどのように「精神操作(本人曰く、名前は無いらしい)」させた方が速い気もするが、
「……あの魔法は一日に一回だけ」
「……それを先に言ってよ」
「別に問題ないよ。力ずくで……」
「くっ……!!」
エルフの戦士は舌を噛み切らんばかりに追い詰められた表情を浮かべるが、例え舌を噛もうが元ワルキューレ騎士団であるコトミは医療魔法も扱えるため、治療は可能である。だが、このまま拷問してもエルフがそう簡単に口を割るとは思えず、大勢のエルフ達が見張っている「抜け道」以外に集落に移動する方法が無いかと考えると、不意にレノの脳裏にある人物が浮かぶ。
(……待てよ?)
たった1人だけ、彼ら以外に集落の出入口を知っている可能性が高い人物を思い出し、彼女はレノと共に放浪島にアイリィに引き込まれ、その後の消息は不明だが、もしかしたら彼女ならばレノに協力してくれる可能性も高い。今、彼女が何処に居るのかは分からない。だが、未だに放浪島で彷徨っている可能性も高く、レノは自分の叔母に当たる人物の名を口にする。
「……フレイと連絡を取れないか試してみる」
「わふっ……そうだと思います」
「何だか知らないけど、厄介ごとを持ち込んでてくれたねぇ……」
「……レノだけのせいじゃない」
「分かってるよ。一番の問題は、こいつらの頭が固すぎるって事だけどね!!」
「「くっ……!!」」
ココウと呼ばれるエルフを解放し、コトミは彼の前で手拍子を行うと、そのまま糸が切れた人形のように倒れ込む。一体彼女がどんな魔法を使用したのかが気にかかるが、今は森の中に見張り番として残したゴンゾウの身が心配である。
「せりゃっ!!」
ジャラララッ!!
黒衣の左腕から「銀の鎖」を出現させ、酒場の床の板に転移魔方陣を敷くと、森の中に描き残した転移魔方陣とまだ繋がる事を確認し、ゴンゾウが未だに魔方陣を守護しているのは間違いない。
「ちょっ……あんた、その腕……!?」
「ど、どうしたんすか!?それ!?」
「あ」
ここで酒場のバルたちがレノの左腕を見て目を丸くする。彼女達にはまだ義手になったことを話しておらず、手短に説明を行うとバルは呆れたような表情を浮かべ、女部下たちは目を輝かせる。
「すごいっすね!!まるで秘密兵器じゃないすか!!」
「恰好良い……」
「黒衣の左腕……魔術師っぽい」
「あんたらねぇ……」
女部下たちの反応にバルは頭を悩ませるが、すぐに首を振ってレノ達に視線を向け、
「それで……あんた達はどうする気なんだい?」
「そうだな……案の1つはこのまま転移して、集落に突っ込む」
「「「何だと!?」」」
レノの言葉にその場にいたエルフの戦士たちが大声でわめき散らし、バルの部下たちがフライパンを頭に叩き込んで黙らせる。彼らとしては追放されたレノが集落に戻る事は、何が何でも阻止しなければならない事態だが、今の状態では抵抗すらできない。
「だ、大丈夫なんでしょうか……危なくないですか?」
「……増援申請」
「まあ、流石に無茶だとは思うけどね……」
今回の相手は全員が魔法と武芸に長けた森人族(エルフ)であり、掟を破ったレノを本気で敵意を殺害するために動くだろう。しかし、このままでは延々と刺客を送り込まれ続けるのは間違いなく、レノとしては早々に誤解を解くため、さらには「第二の封印」の調査を行うためにも深淵の森に戻らなければならない。
「……たくっ、しょうがないね。あんた達!!」
「「「はい?」」」
女部下とガーネは声を掛けられ、バルは拳を慣らしながら、
「……しばらく酒場は休店だよ!!あんた達、準備をしな!!」
「「はっ!!」」
「バル?」
驚いた風にレノが視線を向けると、彼女は面倒気に頭を搔きながら、酒場を見渡す仕草を行う。先ほどの乱闘騒ぎのせいで、机や椅子の破片が散乱し、酒類の類も随分と破壊されている。これではしばらくは営業は難しいだろう。
「こんな目に遭わされたからね……あいつらに弁償代を請求しないと気が済まないよ!!」
「……またまた~……」
「本当は兄貴の事が心配な癖に……あいたっ!?」
ゴスンッ!!
女部下たちに拳骨を食らわせると、バルは照れくさそうに頬を赤らめ、
「ま、まあ……乗り掛かった舟だからね……ここまで来たら、最後まで付き合うよ!!」
「あっ、そうですか」
「そうですかって……反応薄くないかい!?」
「いや、足手まといは困るから」
「ちょっ、ひどくないっすか!?」
辛辣なレノの反応に女部下が反応するが、今回の相手は非常に厄介な存在である。森人族は六種族の中でも魔法に長けており、武技にも優れており、目の前の拘束した戦士たちは不意を突く形で何とか捕らえたが、まともに戦闘を行っていたとしたら大勢の被害が出ていただろう。
「とりあえず、ゴンゾウを呼び出すか……」
――数分後、転移魔方陣からゴンゾウを呼び出し、彼は大きすぎるため酒場の外で見張りをさせると、作戦を考えるためにバルの部屋に一度集まる。ポチ子だけはテンペスト騎士団に報告のために闘人都市に存在する騎士団の駐留所に向かい、残された者達は作戦会議を行う。
「さてと……まずは攻め入る前に情報を聞きださないとね」
「くっ……殺せ!!」
「おおっ……本当にこんな台詞を言うんだ」
バルの部屋の中には一番年若い(それでも70代は超えている)エルフを連れ出し、そのまま縄で両手両足を拘束したまま柱に縛りつける。このまま拷問して集落の情報を聞き出すよりも、コトミに頼んで先ほどのように「精神操作(本人曰く、名前は無いらしい)」させた方が速い気もするが、
「……あの魔法は一日に一回だけ」
「……それを先に言ってよ」
「別に問題ないよ。力ずくで……」
「くっ……!!」
エルフの戦士は舌を噛み切らんばかりに追い詰められた表情を浮かべるが、例え舌を噛もうが元ワルキューレ騎士団であるコトミは医療魔法も扱えるため、治療は可能である。だが、このまま拷問してもエルフがそう簡単に口を割るとは思えず、大勢のエルフ達が見張っている「抜け道」以外に集落に移動する方法が無いかと考えると、不意にレノの脳裏にある人物が浮かぶ。
(……待てよ?)
たった1人だけ、彼ら以外に集落の出入口を知っている可能性が高い人物を思い出し、彼女はレノと共に放浪島にアイリィに引き込まれ、その後の消息は不明だが、もしかしたら彼女ならばレノに協力してくれる可能性も高い。今、彼女が何処に居るのかは分からない。だが、未だに放浪島で彷徨っている可能性も高く、レノは自分の叔母に当たる人物の名を口にする。
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