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テンペスト騎士団編
酒場の乱闘
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「出て来い!!ここにいるのは分かっている!!」
「姿を現せ!!」
「うわぁっ!?」
「な、何ですか貴方達は!?」
レノ達が酒場の一階に戻ると、そこには数人の森人族の戦士らしき男たちが酒場の中で暴れ回っていた。獣人の酔っぱらった客を蹴散らし、彼等を止めようとした者たちも問答無用で斬り付けられ、中には冒険者も務める獣人族たちも存在したが、騒ぎを起こしている森人族も相当な手練れ揃いなのか剣先を向けて牽制する。
「さあ!!早く奴を出せ!!」
「だ、だから何の話なんですか!!」
エルフの1人にガーネが毅然と向かい合い、彼等に抗議を申し込もうとするが、
「どけ!!薄汚い種族が!!」
「きゃあっ!?」
人間である彼女の態度が気に入らなかったのか、エルフはガーネの身体を乱暴に押し飛ばす。それを見た女部下の1人が頭に血が上り、
「何すんだよ!!この長耳野郎!!」
「げふっ!?」
ドォンッ!!
容赦なく、ガーネを突き飛ばしたエルフの股間を蹴りあげ、身体を浮き上がらせる。その場にいた男たちは咄嗟に股間を抑え込み、青い顔を浮かべる。
「き、貴様……!!」
「無礼な……!!」
「何が無礼だい!!あんた達の方から喧嘩を売ってきたんだろうが!!」
「ごふっ!?」
後方から現れたバルが股間を抑えるエルフを蹴り飛ばし、そのまま彼は地面に無様に転がり込む。それを見た他の森人族の戦士たちは激昂し、すぐに襲い掛かろうとした時、
「――やめろっ!!」
「「「っ!?」」」
レノの大声が店内に響き渡り、まるで狼が咆哮を上げたような想像(イメージ)が頭に思い浮かぶ。すぐに耳を抑えばがらもエルフ達は声の発生源である彼に視線を向け、憎々しげに睨み付けてくる。
「見つけたぞ……この恥知らずが!!」
「殺してやる!!」
「首を差し出せ!!」
店の中にも関わらず、剣を抜き放ち、今にもレノに襲い掛かりそうな雰囲気に変化する。すぐにポチ子とコトミがレノを守るように前に出ると、
「そこを退け!!獣人如き邪魔をする気か!!」
「わふっ!!」
「……させない」
「兄貴を守れ!!」
他にもウエイトレス姿のバルの女部下たちが集まり、バル自身もレノを渡す気は当然あるはずが無く、拳を鳴らしながらゆっくりと動き出す。一触即発の雰囲気の中、森人族の代表らしき年長のエルフが前に出ると、レノに向けて人差し指を差す。
「……大罪人め!!お前は集落を追放されたにもかかわらずに我等が住処に戻ろうとした!!掟に従い、その首を頂戴するぞ!!」
どうやら数日前にレノ達が「第二の封印」を確かめるために調査を行った森のエルフであるらしく、彼等の言葉から発するにバルの言葉通り、あの森はレノが幼少期に訪れた「深淵の森」であることが判明する。
このエルフ達はレノが追放された身分にも関わらず、彼が彼等の住処である「深淵の森」に偶然にも入り込もうとした事を咎めに来たようだが、それでも無関係の人間を巻き込む必要性はない。
「はっ!!ふざけたこと抜かすんじゃないよ!!勝手に追い出して、今度は勝手に斬るって?馬鹿にしてんのかい!!」
「何だと……!!」
「猫が!!」
レノの代わりにバルが鼻で笑い、森人族の戦士たちの殺意が向けられる。だが、この年に至るまで幾度も修羅場を潜り抜けてきた彼女にそのような視線などで今更怯えなどしない。
「獣人風情が……何様のつもりだ!!」
「こいつの育て親だよ!!とっととうちの店から消えな!!」
「この女!!」
我慢の限度を超えたエルフの1人が剣を抜き取り、バルに切りかかろうとし、すぐに彼女の方も身構えるが、
「――いい加減にしろ」
ゴキィッ!!
「「えっ?」」
次の瞬間、バルの目の前に居たエルフの戦士の腕が異様な方向に曲がり、そのまま剣を地面に落とす。
「ぎ、ぎゃあぁああああっ!?」
「うるさい」
「がふっ!?」
ズドォンッ!!
何時の間にか男の後方に移動していたレノが勢いを付けた踵落としを頭部に放ち、そのままエルフの男は顔面から地面に叩き付けられる。
酒場の中にいた者たちはその光景を見て、数秒後に眼の前で何が起きたのかを理解した。一瞬にしてレノは「肉体強化(アクセル)」を発動させ、バルに手を出そうとした森人族の戦士の男の腕を掴み、そのまま乱雑にへし折った。さらには追撃とばかりに後ろからエルフを叩き付けたのだ。
「なっ……」
「ば、馬鹿な……」
「す、すごいっす……」
「流石だねぇ……にしても、少しやりすぎじゃないかい?」
ぴくぴくと痙攣するだけで起き上がる様子を見せないエルフの男を尻目にバルが答えると、レノは頭を搔きながら、首を回し、
「……少しだけ、本気を出すか」
ゴキゴキィッ……!!
右手の指の骨を鳴らしながら、レノは腕を軽く振り回して本格的な戦闘態勢に入る。そんな彼の姿に森人族の戦士たちは怖気着いたように後退するが、
「……油断」
「わうっ!!」
「えっ……ぎゃあっ!?」
ドスッ!!ゴキィッ!!
さり気に1人のエルフの後方に移動していたコトミとポチ子が、同時に攻撃を行い、2人の足の踵がエルフの両脚の脛に喰いこむ。
「こっちもっす!!」
「死になさい!!」
「ぐあっ!?」
「があっ!?」
女部下とガーネも調理用のフライパンをエルフ達の頭部に叩き込み、
「舐めやがって!!」
「森人族だからってどうした!!」
「き、貴様ら……ぐはっ!!」
「この……!!」
他の酒場の客達も動き出し、意識を削いでいた残りのエルフ達に飛びかかる。
「……あらら」
――うわぁああああああああっ!!
店内が完全に乱闘騒ぎとなり、暴れ回っていたエルフ達は圧倒的な数の暴力で押し潰される。結局、手を出す必要がなくなったため、レノは肉体強化を解除して傍観に入った。
「姿を現せ!!」
「うわぁっ!?」
「な、何ですか貴方達は!?」
レノ達が酒場の一階に戻ると、そこには数人の森人族の戦士らしき男たちが酒場の中で暴れ回っていた。獣人の酔っぱらった客を蹴散らし、彼等を止めようとした者たちも問答無用で斬り付けられ、中には冒険者も務める獣人族たちも存在したが、騒ぎを起こしている森人族も相当な手練れ揃いなのか剣先を向けて牽制する。
「さあ!!早く奴を出せ!!」
「だ、だから何の話なんですか!!」
エルフの1人にガーネが毅然と向かい合い、彼等に抗議を申し込もうとするが、
「どけ!!薄汚い種族が!!」
「きゃあっ!?」
人間である彼女の態度が気に入らなかったのか、エルフはガーネの身体を乱暴に押し飛ばす。それを見た女部下の1人が頭に血が上り、
「何すんだよ!!この長耳野郎!!」
「げふっ!?」
ドォンッ!!
容赦なく、ガーネを突き飛ばしたエルフの股間を蹴りあげ、身体を浮き上がらせる。その場にいた男たちは咄嗟に股間を抑え込み、青い顔を浮かべる。
「き、貴様……!!」
「無礼な……!!」
「何が無礼だい!!あんた達の方から喧嘩を売ってきたんだろうが!!」
「ごふっ!?」
後方から現れたバルが股間を抑えるエルフを蹴り飛ばし、そのまま彼は地面に無様に転がり込む。それを見た他の森人族の戦士たちは激昂し、すぐに襲い掛かろうとした時、
「――やめろっ!!」
「「「っ!?」」」
レノの大声が店内に響き渡り、まるで狼が咆哮を上げたような想像(イメージ)が頭に思い浮かぶ。すぐに耳を抑えばがらもエルフ達は声の発生源である彼に視線を向け、憎々しげに睨み付けてくる。
「見つけたぞ……この恥知らずが!!」
「殺してやる!!」
「首を差し出せ!!」
店の中にも関わらず、剣を抜き放ち、今にもレノに襲い掛かりそうな雰囲気に変化する。すぐにポチ子とコトミがレノを守るように前に出ると、
「そこを退け!!獣人如き邪魔をする気か!!」
「わふっ!!」
「……させない」
「兄貴を守れ!!」
他にもウエイトレス姿のバルの女部下たちが集まり、バル自身もレノを渡す気は当然あるはずが無く、拳を鳴らしながらゆっくりと動き出す。一触即発の雰囲気の中、森人族の代表らしき年長のエルフが前に出ると、レノに向けて人差し指を差す。
「……大罪人め!!お前は集落を追放されたにもかかわらずに我等が住処に戻ろうとした!!掟に従い、その首を頂戴するぞ!!」
どうやら数日前にレノ達が「第二の封印」を確かめるために調査を行った森のエルフであるらしく、彼等の言葉から発するにバルの言葉通り、あの森はレノが幼少期に訪れた「深淵の森」であることが判明する。
このエルフ達はレノが追放された身分にも関わらず、彼が彼等の住処である「深淵の森」に偶然にも入り込もうとした事を咎めに来たようだが、それでも無関係の人間を巻き込む必要性はない。
「はっ!!ふざけたこと抜かすんじゃないよ!!勝手に追い出して、今度は勝手に斬るって?馬鹿にしてんのかい!!」
「何だと……!!」
「猫が!!」
レノの代わりにバルが鼻で笑い、森人族の戦士たちの殺意が向けられる。だが、この年に至るまで幾度も修羅場を潜り抜けてきた彼女にそのような視線などで今更怯えなどしない。
「獣人風情が……何様のつもりだ!!」
「こいつの育て親だよ!!とっととうちの店から消えな!!」
「この女!!」
我慢の限度を超えたエルフの1人が剣を抜き取り、バルに切りかかろうとし、すぐに彼女の方も身構えるが、
「――いい加減にしろ」
ゴキィッ!!
「「えっ?」」
次の瞬間、バルの目の前に居たエルフの戦士の腕が異様な方向に曲がり、そのまま剣を地面に落とす。
「ぎ、ぎゃあぁああああっ!?」
「うるさい」
「がふっ!?」
ズドォンッ!!
何時の間にか男の後方に移動していたレノが勢いを付けた踵落としを頭部に放ち、そのままエルフの男は顔面から地面に叩き付けられる。
酒場の中にいた者たちはその光景を見て、数秒後に眼の前で何が起きたのかを理解した。一瞬にしてレノは「肉体強化(アクセル)」を発動させ、バルに手を出そうとした森人族の戦士の男の腕を掴み、そのまま乱雑にへし折った。さらには追撃とばかりに後ろからエルフを叩き付けたのだ。
「なっ……」
「ば、馬鹿な……」
「す、すごいっす……」
「流石だねぇ……にしても、少しやりすぎじゃないかい?」
ぴくぴくと痙攣するだけで起き上がる様子を見せないエルフの男を尻目にバルが答えると、レノは頭を搔きながら、首を回し、
「……少しだけ、本気を出すか」
ゴキゴキィッ……!!
右手の指の骨を鳴らしながら、レノは腕を軽く振り回して本格的な戦闘態勢に入る。そんな彼の姿に森人族の戦士たちは怖気着いたように後退するが、
「……油断」
「わうっ!!」
「えっ……ぎゃあっ!?」
ドスッ!!ゴキィッ!!
さり気に1人のエルフの後方に移動していたコトミとポチ子が、同時に攻撃を行い、2人の足の踵がエルフの両脚の脛に喰いこむ。
「こっちもっす!!」
「死になさい!!」
「ぐあっ!?」
「があっ!?」
女部下とガーネも調理用のフライパンをエルフ達の頭部に叩き込み、
「舐めやがって!!」
「森人族だからってどうした!!」
「き、貴様ら……ぐはっ!!」
「この……!!」
他の酒場の客達も動き出し、意識を削いでいた残りのエルフ達に飛びかかる。
「……あらら」
――うわぁああああああああっ!!
店内が完全に乱闘騒ぎとなり、暴れ回っていたエルフ達は圧倒的な数の暴力で押し潰される。結局、手を出す必要がなくなったため、レノは肉体強化を解除して傍観に入った。
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