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腐敗竜編
グール戦
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「な、ここは!?」
「わふっ!?」
「戻ってきたのか!?」
ウォール・グールの襲撃から逃れるため、リノンたちは移動を開始すると、すぐに見覚えのある広間に辿り着いた。そこは間違いなく、最初にこの地下迷宮に潜り込んだ際に辿り着いた広間であり、数日前のアルトたちの戦闘の後もまだ残されている。
――オイテケェエエエエッ……!!
偶然にも広間を見つけて全員の顔が一瞬だけ明るくなったが、すぐにグールの呻き声を耳にして慌てて気を引き締める。
「……ここにいたという死人は、もしかしたら私達を追いかけている個体が生み出したのかもしれませんね!!」
「つまり、親玉か!!」
ジャンヌはこの地下迷宮に潜んでいた無数の死人達を思い出し、シルバー・スライムとの会話、さらには実際に交戦をしたレノの話を聞き、彼女は自分の背中に掲げる「聖剣エクスカリバー」の刀身部分を確認する。
死人たちは1人残らず、このエクスカリバーの欠片で造りだされた聖剣を欲していた。状況によっては同士討ちを行い、聖剣を奪い合うにまで発展していたらしい。もしも普通の「死人」ならば死霊使いに操られていようが争う事はないはずだが、あまりにも数多くの死人を操作する場合は意識が分断され、思うように動かせないのかも知れない。
ジャンヌが今までこの地下迷宮に存在する死人を操っていた黒幕の正体に気が付き、完全に操作は出来てはいなかったとはいえ、これだけの死人を操れる辺りは相当な実力者で間違いなく、生前は悪名高い存在だったのだろう。。
――彼女の予想通り、この「ウォール・グール」こそが地下迷宮内の全ての死人達を統率する死霊使いの成れの果てであり、死して尚も自分自身に「死霊術」を施してまで聖剣を求めていた。
何故このような姿に成り果ててまで聖剣を求める理由はジャンヌたちには分からないが、だからといって渡すわけにはいかない。グールは「聖属性」の生前の頃と同じく耐性を持っており、もしかしたらエクスカリバーを奪われる可能性もある。
この聖剣が無ければ地上の腐敗竜もアンデットの群れも浄化できず、地上は大惨事となる。それだけは何としても避けなければならないが、ウォール・グールはなりふり構わず襲い掛かってくる。
「――セイケェエエエエンッ……!!」
ズポォオオッ……!!
「ひぅっ……!?」
「……薄気味悪いな」
広間の中央部、噴水らしきものが建てられた傍の地面から、まるで水中から顔を出すように「グール」は地中から現れ、全身を黒衣で纏っている。その顔は明らかに腐りきっており、一体どれほどの長い間をこの迷宮内で彷徨っているのか分からない。
全員が身構えるが既にここまでの移動で体力は使い果たし、残された魔力も少ない。アルトは聖剣を構え、リノンたちもそれぞれの武器を構えるが、グールは薄気味悪い顔で笑い声を上げ、ジャンヌに視線を向ける。
「ミツケタァッ……!!エクスカリバァアアアアッ……!!」
「……やはり、こちらが狙いでしたか」
ジャンヌは聖斧を構え、何としても奪われまいと聖剣の「刀身部分」を隠すが、グールは四つん這いの状態で彼女達を睨み付け、
「ヤレェエエエッ……!!」
グールは右手を大きく掲げ、地面に向けて振り上げる。その瞬間、
「……ガァアアアアッ……!!」
「ウオォオオオンッ……!!」
「グエェエエエエッ……!!」
周囲の通路から魔物達の声が聞こえ、全員が一か所に集まって身構える。まさか、死人以外に魔物まで操れるのかとアルトたちは冷や汗を流すが、すぐにその光景に目を見開く。
――通路から現れたのは、以前に地下迷宮に潜り込んだ際に撃破したはずの「魔物」たちが姿を現した。肌は腐敗し、肉が削げ落ち、骨が露出している部分も多々ある。
中には「トロール」や「グリフォン」さらには「ダークウルフ(黒狼とは違う種)」が現れ、その姿は一匹残らず「死人」と同様の状態だった。
「まさか……魔物に死霊術を……!?」
「この数……まずいですね」
「うっ……は、鼻がきついです……」
「……こんな時に……」
「……皆、下がれ」
ゴンゾウが一番前に出て、その巨体で皆を守るように立ち尽くす。だが、魔物達は臆する事も無く、グールの周囲を取り囲む。死人である以上、最低限の知性は合っても感情は持ち合わせていない。例え相手が「白狼」などの威圧感に満ち溢れた存在だろうと、決して「生き物」のように怯える感情は持ち合わせていない。
棍棒を構え、ゴンゾウは戦闘態勢に入るが、このままでは多勢に無勢だ。彼の後ろでアルトたちも武器を構えるが、グールはまるで馬鹿にするように口元を裂け、
「シネェエエエッ!!」
「「「ウオォオオオオオオッ!!」」」
広間内を覆いつくさんばかりの大量の魔物達が、アルトたちに向けて襲い掛かる――
「わふっ!?」
「戻ってきたのか!?」
ウォール・グールの襲撃から逃れるため、リノンたちは移動を開始すると、すぐに見覚えのある広間に辿り着いた。そこは間違いなく、最初にこの地下迷宮に潜り込んだ際に辿り着いた広間であり、数日前のアルトたちの戦闘の後もまだ残されている。
――オイテケェエエエエッ……!!
偶然にも広間を見つけて全員の顔が一瞬だけ明るくなったが、すぐにグールの呻き声を耳にして慌てて気を引き締める。
「……ここにいたという死人は、もしかしたら私達を追いかけている個体が生み出したのかもしれませんね!!」
「つまり、親玉か!!」
ジャンヌはこの地下迷宮に潜んでいた無数の死人達を思い出し、シルバー・スライムとの会話、さらには実際に交戦をしたレノの話を聞き、彼女は自分の背中に掲げる「聖剣エクスカリバー」の刀身部分を確認する。
死人たちは1人残らず、このエクスカリバーの欠片で造りだされた聖剣を欲していた。状況によっては同士討ちを行い、聖剣を奪い合うにまで発展していたらしい。もしも普通の「死人」ならば死霊使いに操られていようが争う事はないはずだが、あまりにも数多くの死人を操作する場合は意識が分断され、思うように動かせないのかも知れない。
ジャンヌが今までこの地下迷宮に存在する死人を操っていた黒幕の正体に気が付き、完全に操作は出来てはいなかったとはいえ、これだけの死人を操れる辺りは相当な実力者で間違いなく、生前は悪名高い存在だったのだろう。。
――彼女の予想通り、この「ウォール・グール」こそが地下迷宮内の全ての死人達を統率する死霊使いの成れの果てであり、死して尚も自分自身に「死霊術」を施してまで聖剣を求めていた。
何故このような姿に成り果ててまで聖剣を求める理由はジャンヌたちには分からないが、だからといって渡すわけにはいかない。グールは「聖属性」の生前の頃と同じく耐性を持っており、もしかしたらエクスカリバーを奪われる可能性もある。
この聖剣が無ければ地上の腐敗竜もアンデットの群れも浄化できず、地上は大惨事となる。それだけは何としても避けなければならないが、ウォール・グールはなりふり構わず襲い掛かってくる。
「――セイケェエエエエンッ……!!」
ズポォオオッ……!!
「ひぅっ……!?」
「……薄気味悪いな」
広間の中央部、噴水らしきものが建てられた傍の地面から、まるで水中から顔を出すように「グール」は地中から現れ、全身を黒衣で纏っている。その顔は明らかに腐りきっており、一体どれほどの長い間をこの迷宮内で彷徨っているのか分からない。
全員が身構えるが既にここまでの移動で体力は使い果たし、残された魔力も少ない。アルトは聖剣を構え、リノンたちもそれぞれの武器を構えるが、グールは薄気味悪い顔で笑い声を上げ、ジャンヌに視線を向ける。
「ミツケタァッ……!!エクスカリバァアアアアッ……!!」
「……やはり、こちらが狙いでしたか」
ジャンヌは聖斧を構え、何としても奪われまいと聖剣の「刀身部分」を隠すが、グールは四つん這いの状態で彼女達を睨み付け、
「ヤレェエエエッ……!!」
グールは右手を大きく掲げ、地面に向けて振り上げる。その瞬間、
「……ガァアアアアッ……!!」
「ウオォオオオンッ……!!」
「グエェエエエエッ……!!」
周囲の通路から魔物達の声が聞こえ、全員が一か所に集まって身構える。まさか、死人以外に魔物まで操れるのかとアルトたちは冷や汗を流すが、すぐにその光景に目を見開く。
――通路から現れたのは、以前に地下迷宮に潜り込んだ際に撃破したはずの「魔物」たちが姿を現した。肌は腐敗し、肉が削げ落ち、骨が露出している部分も多々ある。
中には「トロール」や「グリフォン」さらには「ダークウルフ(黒狼とは違う種)」が現れ、その姿は一匹残らず「死人」と同様の状態だった。
「まさか……魔物に死霊術を……!?」
「この数……まずいですね」
「うっ……は、鼻がきついです……」
「……こんな時に……」
「……皆、下がれ」
ゴンゾウが一番前に出て、その巨体で皆を守るように立ち尽くす。だが、魔物達は臆する事も無く、グールの周囲を取り囲む。死人である以上、最低限の知性は合っても感情は持ち合わせていない。例え相手が「白狼」などの威圧感に満ち溢れた存在だろうと、決して「生き物」のように怯える感情は持ち合わせていない。
棍棒を構え、ゴンゾウは戦闘態勢に入るが、このままでは多勢に無勢だ。彼の後ろでアルトたちも武器を構えるが、グールはまるで馬鹿にするように口元を裂け、
「シネェエエエッ!!」
「「「ウオォオオオオオオッ!!」」」
広間内を覆いつくさんばかりの大量の魔物達が、アルトたちに向けて襲い掛かる――
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