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腐敗竜編
金色の雷光
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「……あれかっ……」
ゴーレムの頭部が崩壊し、レノは後頭部に突き刺さった「巨人殺し(ジャイアント・キリング)」を確認する。先ほどの一撃で岩石の罅割れは後頭部にまで達し、聖斧が突き刺さっている部分も崩れ落ちる。
「間に合えよっ!!」
ドォンッ!!ドォンッ!!
レノは空中で幾度も「瞬脚」を繰り返し、移動と方向転換を同時に行いながら地面に落下する「巨人殺し(ジャイアント・キリング)」に接近する。
ある程度の距離が縮まり、レノは「銀の鎖」を巻きつけた左腕を伸ばす。正式な所有者では無い者が聖斧に触れた瞬間、高熱を発して武器そのものが拒む。だが、銀の鎖は魔力そのものを吸収する能力もあり、鎖を通してならば聖斧も問題なく掴むことは可能。空中では鎖を操作するのは困難な以上、この左手で掴まなければならない。
ドォオンッ!!
「とどっ……けぇっ!!」
一気に嵐の魔力を足元に解放させ、落下中の岩石に接近し、聖斧の柄に手を伸ばし、
ガシィッ!!
「よしっ……!!」
ズボォオオオオッ!!
聖斧に手が届き、硬い岩石から力ずくで抜き取ると、そのまま落下中の岩石を足場に跳躍する。
「……ゴォオオオオオッ……!!」
「……早いな」
後方からゴーレムの鳴き声が聞こえ、振り返ると既に土煙を掻き分けて身体中の岩石が盛り上がり、新しい頭部を作り出す。心なしか先ほどよりも岩石の量が多く、肥大化している。あれでは再び破壊するのは苦労するだろう。数発の雷撃や撃雷などの技ではどうしようもなく、やはりレノはアイリィから刻まれた紋様の新たな能力を使用するしかない。
(合図を……!!)
ダンッ!!
地上に降り立ち、レノは右腕を突き上げ、
「雷撃!!」
ズドォオオオオンッ――!!
今度は腕全体に電流を帯電させるのではなく、外部に向けて雷を放出する。天井にまで届く白みがかった雷が「作戦」の開始の合図である。
「――ふんっ!!」
ドゴォオオオオンッ!!
「ゴウッ……!?」
雷が上がった直後、ゴーレムの太い右足に衝撃が走る。見ると、そこには先ほどのレノの一撃によって地面に墜落したゴーレムの残骸の岩石を持ち上げたゴンゾウが立っており、
「うおぉおおおおっ!!」
そのあらん限りの腕力を使用し、岩石を振り被ってゴーレムの右足部分に叩き込む。
ドガァアアアアンッ!!
ゴンゾウの一撃によってゴーレムの右足に罅割れが発生し、膝が大きく曲がる。だが、それはゴンゾウが使用している岩石も同じであり、衝撃に耐え切れずに砕けている。彼はすぐに岩石を放り投げ、自分の腰に付けている二つの棍棒を持ち上げ、大きく振るう。
「ふんっ!!」
ドゴォオンッ!!ドガァアッ!!
「ゴァアアッ……!!」
ブオッ――!!
棍棒を立て続けに叩き込み、亀裂が更に深まるが、流石に危険を察知したゴーレムが右腕を振り上げ、彼の元に振り落そうとした時、
「はぁあああっ!!」
ガキィイインッ!!
「ゴォッ……!?」
何時の間にか移動していたリノンが空中に浮かび上がり、事前に長剣に「炎」を纏わせ、ゴーレムの右腕の関節部分に向けて突き刺す。普通の剣では弾かれるが折れてしまいかねない硬度の外殻だが、炎を纏った刀身は岩石の皮膚を易々と付き刺し、
「火炎陣!!」
ボウッ!!
刀身の炎が外殻の内部に走り込み、
ドガァアアアアンッ!!
「ウゴォオオオオッ……!?」
まるで内側から爆弾を仕込まれたように爆裂が起き、ゴーレムの右肩部分が破壊され、右腕が吹き飛ぶ。
「おっと……」
リノンは爆裂の直前で剣を離して地面に飛び降り、上空から落下する右腕の瓦礫を避けて移動を開始する。
「ふんぬぅうううっ!!」
――ズガァアアアアンッ!!
その隙にもゴンゾウの渾身の一撃が遂にゴーレムの右足を破壊し、脛の部分が完全崩壊を起こした。
「ゴァアアアッ……!?」
ズズゥウウウンッ……!!
ゴーレムは耐え切れずに片膝を着く形で地面に崩れ落ち、ゴンゾウとリノンはすぐに離れる。岩石の巨人は右腕と右足を壊され、再生を始めようとしたが、
「――ディバインスラッシュ!!」
ズガァアアアアアッ!!
残されたゴーレムの左足に向い、遥か前方に待機していたアルトが聖剣を振り落とし、光の奔流が放たれる。
ドガァアアアアアンッ――!!
「ウゴォオオオオッ!?」
ドズゥウウウンッ……!!
残された左足も破壊され、ゴーレムは前のめりに倒れ込み、残された左腕のみで身体を支える。右腕を引き剥がされ、両脚(脛の部分)を粉々に砕かれ、再生が追い付かない。その間にもゴンゾウとリノンはアルトの方角に移動し、陽動を終えたジャンヌもそれに続き、最後にレノも移動を始めた。
途中、背中に「巨人殺し(ジャイアント・キリング)」を掲げたままレノだけ立ち止まり、ゴーレムに向けて振り返る。
「――ォォオオオオオオオオッ……!!」
ゴォオオオオッ……!!
周囲の空気を吸い込みながら、ゴーレムは大きく咢を広げ、レノ達の咆哮に向けて顔を向ける。その口内は赤く光り輝き、最初に解き放った「破壊光線」を放つつもりだ。位置的にもアルトたちを巻き込みかねず、最早避難する時間は無い。
(時間との勝負か……)
レノは右手の「紋様」を確認し、瞼を閉じると、掌をゴーレムの身体に向け、
『――聖剣の代理者として命じる』
呪文の詠唱ではなく、現実世界の「日本語」で唱える。この言葉を理解できるのは世界でアイリィと自分だけだ。ゴーレムの口が大きく開かれ、赤色の発光は徐々に光度を強める。全体の岩石の外殻に血管らしきもの浮き上がり、胸元の部分が盛り上がる。
恐らくはあの胸元部分にゴーレムの「核」が存在するんだろうが、中央部は黒色の岩石で覆われており、あれは迷宮を構成する壁の部分と似ている。ゴンゾウの怪力でも、アルトの聖剣でも破壊は不可能だろう。
以前はソフィアの状態で「強化術」を使用し、迷宮の壁を粉砕した事はあるが、今から使用する「力」はあの時よりも遥かに強く、よりレノの魔力と体力を根こそぎ奪う。それでも使用しなければ皆が殺されるのは時間の問題であり、覚悟を決めて言葉を続ける。
『所有者アイリィの代理として命じる……今この場に、その姿を現せ』
カッ――!!
レノの右手の「紋様」が金色に光り輝き、数字の「Ⅳ」ではなく、剣を想像させる紋様が浮かび上がる。
ビュォオオオオオッ……!!
彼の右手から凄まじい強風が吹き溢れ、掌から金色の魔方陣が生み出される。
「す、すごい……!!」
「な、何て魔力……!?」
「か、身体が震えて動きません……!!」
「この反応は……まさか!!」
「レノ……!!
「な、何これ……こんな魔法……私知らない……!?」
遠方からレノの様子を確認する他の面々は、周囲一帯に吹き溢れる「嵐」に身体を震わせる。これほどの強大な魔力、とても個人で生み出せるものではない。例え、歴代の勇者であろうとここまでの事は不可能。
アルトは震えていた。こんな力を持つ彼に、自分は敵意を向けていたのかと身体が身震いする。リノンは驚愕で目を見開く。学園に居た頃よりも逞しく成長しているとは思っていたが、ここまで自分と差が開いているなど思いもしない。ポチ子は尊敬の眼差しを彼の背中に向ける。小さい頃から自分を可愛がり、そして誰よりも優しいレノの後ろ姿に胸が高鳴る。ゴンゾウは感動していた。自分よりも遥かに小さく、決して体格に恵まれていない彼が、あの強大なゴーレムを前に堂々と仁王立ちする姿に。ミカは戸惑う。目の前の光景は彼女の現実世界の「M・S・W2」のオンラインゲーム」では、このような「イベント」も「魔法(スキル)」も存在しない。
五者五様子に全員に視線を向けられながら、レノは左腕で右腕を支え、魔方陣を展開したまま、突風を吹き起こす。
――取り出したはこの地下迷宮内に封印されていた伝説の「聖剣」恐らくはエクスカリバーに匹敵する最強の剣であり、彼女(アイリィ)が唯一愛用した「金色の雷」を纏う武器。
「カラドボルグッ――!!」
ズドォォオオオオオンッ!!
左手の魔方陣から無数の雷が迸り、剣の柄らしき物が出現し、すぐに黒衣の包帯で巻かれた左手で掴み取り、魔方陣の中から引き抜く。
バチィイイイイイイッ!!
彼の左手に握りしめらた最強の聖剣「カラドボルグ」は、刃に金色の電流を走らせ、今度は右手を左手で支えながら構える。
「ウゴォオオオオオオオオッ……!!」
――ゴゴゴゴゴッ……!!
その間にも「ゴーレム・キング」は左手のみで上体を起き上げ、顔面の発射口を大きく広げ、
ドゴォオオオオオオオオッ――!!
今まで一番の規模と火力を誇る赤き光線を解き放つ。まるで怪獣映画を思わせる光景だが、レノは向い来るレーザー砲を思わせる光に対し、
「あぁああああああっ――!!」
――ズドォオオオオオオオオンッ!!
横薙ぎに剣を振り払い、刀身が金色の光を放ち、一筋の巨大な「雷」を生み出す。
ビュゴォオオオオオオッ……!!
「金色の雷光」は正面からゴーレムの放った「破壊光線」に対し、拮抗すらせずに光線を四散させながら真っ直ぐに貫き、
「ァガッ……!!」
そのまま大きく開かれたゴーレムの口内に入り込んだ瞬間、一瞬の間を置くと、岩石の巨人の身体から金色の光が灯り、
――ズガァアアアアアアアアンッ!!
ゴーレム・キングの体内が爆散、弾け飛び、大広間全体に無数の岩石が降り注いだ――
ゴーレムの頭部が崩壊し、レノは後頭部に突き刺さった「巨人殺し(ジャイアント・キリング)」を確認する。先ほどの一撃で岩石の罅割れは後頭部にまで達し、聖斧が突き刺さっている部分も崩れ落ちる。
「間に合えよっ!!」
ドォンッ!!ドォンッ!!
レノは空中で幾度も「瞬脚」を繰り返し、移動と方向転換を同時に行いながら地面に落下する「巨人殺し(ジャイアント・キリング)」に接近する。
ある程度の距離が縮まり、レノは「銀の鎖」を巻きつけた左腕を伸ばす。正式な所有者では無い者が聖斧に触れた瞬間、高熱を発して武器そのものが拒む。だが、銀の鎖は魔力そのものを吸収する能力もあり、鎖を通してならば聖斧も問題なく掴むことは可能。空中では鎖を操作するのは困難な以上、この左手で掴まなければならない。
ドォオンッ!!
「とどっ……けぇっ!!」
一気に嵐の魔力を足元に解放させ、落下中の岩石に接近し、聖斧の柄に手を伸ばし、
ガシィッ!!
「よしっ……!!」
ズボォオオオオッ!!
聖斧に手が届き、硬い岩石から力ずくで抜き取ると、そのまま落下中の岩石を足場に跳躍する。
「……ゴォオオオオオッ……!!」
「……早いな」
後方からゴーレムの鳴き声が聞こえ、振り返ると既に土煙を掻き分けて身体中の岩石が盛り上がり、新しい頭部を作り出す。心なしか先ほどよりも岩石の量が多く、肥大化している。あれでは再び破壊するのは苦労するだろう。数発の雷撃や撃雷などの技ではどうしようもなく、やはりレノはアイリィから刻まれた紋様の新たな能力を使用するしかない。
(合図を……!!)
ダンッ!!
地上に降り立ち、レノは右腕を突き上げ、
「雷撃!!」
ズドォオオオオンッ――!!
今度は腕全体に電流を帯電させるのではなく、外部に向けて雷を放出する。天井にまで届く白みがかった雷が「作戦」の開始の合図である。
「――ふんっ!!」
ドゴォオオオオンッ!!
「ゴウッ……!?」
雷が上がった直後、ゴーレムの太い右足に衝撃が走る。見ると、そこには先ほどのレノの一撃によって地面に墜落したゴーレムの残骸の岩石を持ち上げたゴンゾウが立っており、
「うおぉおおおおっ!!」
そのあらん限りの腕力を使用し、岩石を振り被ってゴーレムの右足部分に叩き込む。
ドガァアアアアンッ!!
ゴンゾウの一撃によってゴーレムの右足に罅割れが発生し、膝が大きく曲がる。だが、それはゴンゾウが使用している岩石も同じであり、衝撃に耐え切れずに砕けている。彼はすぐに岩石を放り投げ、自分の腰に付けている二つの棍棒を持ち上げ、大きく振るう。
「ふんっ!!」
ドゴォオンッ!!ドガァアッ!!
「ゴァアアッ……!!」
ブオッ――!!
棍棒を立て続けに叩き込み、亀裂が更に深まるが、流石に危険を察知したゴーレムが右腕を振り上げ、彼の元に振り落そうとした時、
「はぁあああっ!!」
ガキィイインッ!!
「ゴォッ……!?」
何時の間にか移動していたリノンが空中に浮かび上がり、事前に長剣に「炎」を纏わせ、ゴーレムの右腕の関節部分に向けて突き刺す。普通の剣では弾かれるが折れてしまいかねない硬度の外殻だが、炎を纏った刀身は岩石の皮膚を易々と付き刺し、
「火炎陣!!」
ボウッ!!
刀身の炎が外殻の内部に走り込み、
ドガァアアアアンッ!!
「ウゴォオオオオッ……!?」
まるで内側から爆弾を仕込まれたように爆裂が起き、ゴーレムの右肩部分が破壊され、右腕が吹き飛ぶ。
「おっと……」
リノンは爆裂の直前で剣を離して地面に飛び降り、上空から落下する右腕の瓦礫を避けて移動を開始する。
「ふんぬぅうううっ!!」
――ズガァアアアアンッ!!
その隙にもゴンゾウの渾身の一撃が遂にゴーレムの右足を破壊し、脛の部分が完全崩壊を起こした。
「ゴァアアアッ……!?」
ズズゥウウウンッ……!!
ゴーレムは耐え切れずに片膝を着く形で地面に崩れ落ち、ゴンゾウとリノンはすぐに離れる。岩石の巨人は右腕と右足を壊され、再生を始めようとしたが、
「――ディバインスラッシュ!!」
ズガァアアアアアッ!!
残されたゴーレムの左足に向い、遥か前方に待機していたアルトが聖剣を振り落とし、光の奔流が放たれる。
ドガァアアアアアンッ――!!
「ウゴォオオオオッ!?」
ドズゥウウウンッ……!!
残された左足も破壊され、ゴーレムは前のめりに倒れ込み、残された左腕のみで身体を支える。右腕を引き剥がされ、両脚(脛の部分)を粉々に砕かれ、再生が追い付かない。その間にもゴンゾウとリノンはアルトの方角に移動し、陽動を終えたジャンヌもそれに続き、最後にレノも移動を始めた。
途中、背中に「巨人殺し(ジャイアント・キリング)」を掲げたままレノだけ立ち止まり、ゴーレムに向けて振り返る。
「――ォォオオオオオオオオッ……!!」
ゴォオオオオッ……!!
周囲の空気を吸い込みながら、ゴーレムは大きく咢を広げ、レノ達の咆哮に向けて顔を向ける。その口内は赤く光り輝き、最初に解き放った「破壊光線」を放つつもりだ。位置的にもアルトたちを巻き込みかねず、最早避難する時間は無い。
(時間との勝負か……)
レノは右手の「紋様」を確認し、瞼を閉じると、掌をゴーレムの身体に向け、
『――聖剣の代理者として命じる』
呪文の詠唱ではなく、現実世界の「日本語」で唱える。この言葉を理解できるのは世界でアイリィと自分だけだ。ゴーレムの口が大きく開かれ、赤色の発光は徐々に光度を強める。全体の岩石の外殻に血管らしきもの浮き上がり、胸元の部分が盛り上がる。
恐らくはあの胸元部分にゴーレムの「核」が存在するんだろうが、中央部は黒色の岩石で覆われており、あれは迷宮を構成する壁の部分と似ている。ゴンゾウの怪力でも、アルトの聖剣でも破壊は不可能だろう。
以前はソフィアの状態で「強化術」を使用し、迷宮の壁を粉砕した事はあるが、今から使用する「力」はあの時よりも遥かに強く、よりレノの魔力と体力を根こそぎ奪う。それでも使用しなければ皆が殺されるのは時間の問題であり、覚悟を決めて言葉を続ける。
『所有者アイリィの代理として命じる……今この場に、その姿を現せ』
カッ――!!
レノの右手の「紋様」が金色に光り輝き、数字の「Ⅳ」ではなく、剣を想像させる紋様が浮かび上がる。
ビュォオオオオオッ……!!
彼の右手から凄まじい強風が吹き溢れ、掌から金色の魔方陣が生み出される。
「す、すごい……!!」
「な、何て魔力……!?」
「か、身体が震えて動きません……!!」
「この反応は……まさか!!」
「レノ……!!
「な、何これ……こんな魔法……私知らない……!?」
遠方からレノの様子を確認する他の面々は、周囲一帯に吹き溢れる「嵐」に身体を震わせる。これほどの強大な魔力、とても個人で生み出せるものではない。例え、歴代の勇者であろうとここまでの事は不可能。
アルトは震えていた。こんな力を持つ彼に、自分は敵意を向けていたのかと身体が身震いする。リノンは驚愕で目を見開く。学園に居た頃よりも逞しく成長しているとは思っていたが、ここまで自分と差が開いているなど思いもしない。ポチ子は尊敬の眼差しを彼の背中に向ける。小さい頃から自分を可愛がり、そして誰よりも優しいレノの後ろ姿に胸が高鳴る。ゴンゾウは感動していた。自分よりも遥かに小さく、決して体格に恵まれていない彼が、あの強大なゴーレムを前に堂々と仁王立ちする姿に。ミカは戸惑う。目の前の光景は彼女の現実世界の「M・S・W2」のオンラインゲーム」では、このような「イベント」も「魔法(スキル)」も存在しない。
五者五様子に全員に視線を向けられながら、レノは左腕で右腕を支え、魔方陣を展開したまま、突風を吹き起こす。
――取り出したはこの地下迷宮内に封印されていた伝説の「聖剣」恐らくはエクスカリバーに匹敵する最強の剣であり、彼女(アイリィ)が唯一愛用した「金色の雷」を纏う武器。
「カラドボルグッ――!!」
ズドォォオオオオオンッ!!
左手の魔方陣から無数の雷が迸り、剣の柄らしき物が出現し、すぐに黒衣の包帯で巻かれた左手で掴み取り、魔方陣の中から引き抜く。
バチィイイイイイイッ!!
彼の左手に握りしめらた最強の聖剣「カラドボルグ」は、刃に金色の電流を走らせ、今度は右手を左手で支えながら構える。
「ウゴォオオオオオオオオッ……!!」
――ゴゴゴゴゴッ……!!
その間にも「ゴーレム・キング」は左手のみで上体を起き上げ、顔面の発射口を大きく広げ、
ドゴォオオオオオオオオッ――!!
今まで一番の規模と火力を誇る赤き光線を解き放つ。まるで怪獣映画を思わせる光景だが、レノは向い来るレーザー砲を思わせる光に対し、
「あぁああああああっ――!!」
――ズドォオオオオオオオオンッ!!
横薙ぎに剣を振り払い、刀身が金色の光を放ち、一筋の巨大な「雷」を生み出す。
ビュゴォオオオオオオッ……!!
「金色の雷光」は正面からゴーレムの放った「破壊光線」に対し、拮抗すらせずに光線を四散させながら真っ直ぐに貫き、
「ァガッ……!!」
そのまま大きく開かれたゴーレムの口内に入り込んだ瞬間、一瞬の間を置くと、岩石の巨人の身体から金色の光が灯り、
――ズガァアアアアアアアアンッ!!
ゴーレム・キングの体内が爆散、弾け飛び、大広間全体に無数の岩石が降り注いだ――
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