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腐敗竜編
雷の鎖
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――ガラァアアアアンッ!!
ジャンヌとポチ子が通路の奥にまで吹き飛ばされたのと同時に、彼女の手元から離れたジャイアント・キリングが地面に転がり落ちる。銀髪の青年へと変わり果てたシルバー・スライムは笑みを浮かべ、
「も~らいっ」
「くっ……そ、それは……!!」
不気味に口元を裂きながら「聖斧」に手を伸ばし、ジャンヌは口元を吐血しながらも、何とか制止しようと立ち上がろうとするが、あまりにも距離が遠すぎた。
ガシィッ!!
青年はついに聖斧を掴み上げ、天高く掲げると、そのまま高笑いを行う。
「あはははははっ!!……流石は名高いジャイアント・キリング……何っ!?」
ジュワァアアアアッ……!!
突然、聖斧の柄を握り締める掌に異変が起きる。触れている箇所が赤く発光し、痛覚が存在しないはずのスライムだが堪らずに斧を手放す。
「くっ……!!」
ガァアアンッ!!
青年は咄嗟に地面に聖斧を放り投げ、すぐに掴んでいた右手を確認する。そこには高熱で焼かれた痕跡があり、すぐに変形させて傷を修復する。
「……無駄です……その聖斧は選ばれた物しか扱えません」
顔色が悪いが口元に笑みを浮かべ、ジャンヌは気絶したポチ子を抱えて立ち上がる。聖斧を奪えなかったことに青年は忌々しげに彼女を見つめる。だが、すぐに笑みを浮かべ、
「その口調から察するに……どうやら確かにこれはお前にしか扱え無いようだな……なら、お前を吸収した撲ならばどうかな?」
「なっ……!?」
このジャイアント・キリングが選ばれた者しか扱えないというならば、その選定された者を吸収すればどうなるのか、恐らくは「カネキ」の時と同じように彼女の能力は全て自分の物へと変える事は可能なはず。ならば、高い確率でジャイアント・キリングを取り扱う力も手に入れられるだろう。
青年は前方に転がった地面の上の聖斧を蹴り飛ばし、ジャンヌたちの元に向けて歩き出す。既に先ほどの一撃でまともに動けない2人は逃げ場はない。
「くっ……」
「わぅうっ……」
ジャンヌはこれまでかと覚悟を決め、せめて相手の手にかかる前にせめて自害をしようと舌を噛む。仮に眼の前の青年が死んだ相手であろうとその能力を吸収する事が出来るならばお手上げだが、少しでも聖斧を奪われない可能性が在るのだとしたら迷う暇はない。
青年が来る前に舌を噛み締め、覚悟を決めた瞬間、
――ジャラララッ!!
「……あっ……!?」
「えっ……」
「わふっ……?」
突如として、銀髪の青年の後方から「銀色に光り輝く鎖」が出現し、彼の身体を絡みつく。
「何だ……ぐっ!?」
バチィイイイッ!!
全身に絡みつく鎖から電流が流れ込み、青年は苦悶の表情を浮かべる。痛覚は無いはずの彼の身体に溶解を始める。相当な電圧であり、吸収したカネキの魔法(スキル)や能力では取り外すことは出来ない。
唖然とその光景を見つめるジャンヌとポチ子は目の前の光景に目を奪われながら、不意に後方から気配を感じて振り返ると、
「――久しぶりに人の姿が見れたと思ったら、一体どういう状況だよ」
鎖が放たれた方向から1人の少年が姿を現し、暗闇の中から出てきた人物にポチ子は大きく目を見開き、そして瞳を潤ませる。
「れ、レノ……レノさぅううううん!!」
――黒衣を纏った左腕から「銀の鎖」を伸ばしながら、よりポチ子の記憶の中の子供の頃の彼よりも、より逞しく成長した黒髪の少年が現れる。この1年半の間に身長は160センチにまで成長し、髪の毛はより長く、顔立ちはより整い、服装は黒で統一したレノが立っていた。
彼はゆっくりとジャンヌたちの元に歩み寄り、ポチ子は涙を流しながら駆け寄ろうとした時、
「……えっ……誰?」
「わふっ!?」
レノは彼女の姿を見て首を傾げる。彼の記憶の中のポチ子とは大きく違っており、彼女はがくりとその場でこける。
「ひ、ひどいです!!私です、ポチ子ですよぉっ!!」
「ポチ子……ああ、お母さんですか!娘さんには色々とお世話になってます」
「お母さん!?」
「……え、ポチ子さん娘さんが居たんですか?」
「違いますよ!?いませんよ!!」
久しぶりの再会にボケで返すレノに対し、ポチ子はぶんぶんと首を振る。こんな状況にも関わらず、ほのぼのとした空気が漂い始めた時、
「俺を無視すんじゃねぇええええっ!!」
ギチギチィッ……!!
レノの左腕部分の黒衣の間から出てくる「銀の鎖」に拘束された青年は、力ずくで鎖を破壊しようと試みる。それを確認し、レノはすぐに異変に気が付く。鎖越しを通して目の前の「生物」の異変に感付き、人の姿をしているが人間ではない事を察知し、すぐに手加減をする必要がない相手と判断した。
「雷電(ライデン)」
バチィィイイイッ!!
「がぁああああっ!?」
銀の鎖に紫の雷が走り、より一層に青年の身体は溶解を始めた。
ジャンヌとポチ子が通路の奥にまで吹き飛ばされたのと同時に、彼女の手元から離れたジャイアント・キリングが地面に転がり落ちる。銀髪の青年へと変わり果てたシルバー・スライムは笑みを浮かべ、
「も~らいっ」
「くっ……そ、それは……!!」
不気味に口元を裂きながら「聖斧」に手を伸ばし、ジャンヌは口元を吐血しながらも、何とか制止しようと立ち上がろうとするが、あまりにも距離が遠すぎた。
ガシィッ!!
青年はついに聖斧を掴み上げ、天高く掲げると、そのまま高笑いを行う。
「あはははははっ!!……流石は名高いジャイアント・キリング……何っ!?」
ジュワァアアアアッ……!!
突然、聖斧の柄を握り締める掌に異変が起きる。触れている箇所が赤く発光し、痛覚が存在しないはずのスライムだが堪らずに斧を手放す。
「くっ……!!」
ガァアアンッ!!
青年は咄嗟に地面に聖斧を放り投げ、すぐに掴んでいた右手を確認する。そこには高熱で焼かれた痕跡があり、すぐに変形させて傷を修復する。
「……無駄です……その聖斧は選ばれた物しか扱えません」
顔色が悪いが口元に笑みを浮かべ、ジャンヌは気絶したポチ子を抱えて立ち上がる。聖斧を奪えなかったことに青年は忌々しげに彼女を見つめる。だが、すぐに笑みを浮かべ、
「その口調から察するに……どうやら確かにこれはお前にしか扱え無いようだな……なら、お前を吸収した撲ならばどうかな?」
「なっ……!?」
このジャイアント・キリングが選ばれた者しか扱えないというならば、その選定された者を吸収すればどうなるのか、恐らくは「カネキ」の時と同じように彼女の能力は全て自分の物へと変える事は可能なはず。ならば、高い確率でジャイアント・キリングを取り扱う力も手に入れられるだろう。
青年は前方に転がった地面の上の聖斧を蹴り飛ばし、ジャンヌたちの元に向けて歩き出す。既に先ほどの一撃でまともに動けない2人は逃げ場はない。
「くっ……」
「わぅうっ……」
ジャンヌはこれまでかと覚悟を決め、せめて相手の手にかかる前にせめて自害をしようと舌を噛む。仮に眼の前の青年が死んだ相手であろうとその能力を吸収する事が出来るならばお手上げだが、少しでも聖斧を奪われない可能性が在るのだとしたら迷う暇はない。
青年が来る前に舌を噛み締め、覚悟を決めた瞬間、
――ジャラララッ!!
「……あっ……!?」
「えっ……」
「わふっ……?」
突如として、銀髪の青年の後方から「銀色に光り輝く鎖」が出現し、彼の身体を絡みつく。
「何だ……ぐっ!?」
バチィイイイッ!!
全身に絡みつく鎖から電流が流れ込み、青年は苦悶の表情を浮かべる。痛覚は無いはずの彼の身体に溶解を始める。相当な電圧であり、吸収したカネキの魔法(スキル)や能力では取り外すことは出来ない。
唖然とその光景を見つめるジャンヌとポチ子は目の前の光景に目を奪われながら、不意に後方から気配を感じて振り返ると、
「――久しぶりに人の姿が見れたと思ったら、一体どういう状況だよ」
鎖が放たれた方向から1人の少年が姿を現し、暗闇の中から出てきた人物にポチ子は大きく目を見開き、そして瞳を潤ませる。
「れ、レノ……レノさぅううううん!!」
――黒衣を纏った左腕から「銀の鎖」を伸ばしながら、よりポチ子の記憶の中の子供の頃の彼よりも、より逞しく成長した黒髪の少年が現れる。この1年半の間に身長は160センチにまで成長し、髪の毛はより長く、顔立ちはより整い、服装は黒で統一したレノが立っていた。
彼はゆっくりとジャンヌたちの元に歩み寄り、ポチ子は涙を流しながら駆け寄ろうとした時、
「……えっ……誰?」
「わふっ!?」
レノは彼女の姿を見て首を傾げる。彼の記憶の中のポチ子とは大きく違っており、彼女はがくりとその場でこける。
「ひ、ひどいです!!私です、ポチ子ですよぉっ!!」
「ポチ子……ああ、お母さんですか!娘さんには色々とお世話になってます」
「お母さん!?」
「……え、ポチ子さん娘さんが居たんですか?」
「違いますよ!?いませんよ!!」
久しぶりの再会にボケで返すレノに対し、ポチ子はぶんぶんと首を振る。こんな状況にも関わらず、ほのぼのとした空気が漂い始めた時、
「俺を無視すんじゃねぇええええっ!!」
ギチギチィッ……!!
レノの左腕部分の黒衣の間から出てくる「銀の鎖」に拘束された青年は、力ずくで鎖を破壊しようと試みる。それを確認し、レノはすぐに異変に気が付く。鎖越しを通して目の前の「生物」の異変に感付き、人の姿をしているが人間ではない事を察知し、すぐに手加減をする必要がない相手と判断した。
「雷電(ライデン)」
バチィィイイイッ!!
「がぁああああっ!?」
銀の鎖に紫の雷が走り、より一層に青年の身体は溶解を始めた。
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