種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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闘人都市編

迷宮攻略編7

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「あっ……しまった」


右腕の銀の鎖で転移魔方陣を地面に展開したまでは良かったが、行先を決めなければ発動できない。以前に転移した際は外部の人間が勝手に起動させたため、無理やり連れ込まれただけだった。頭の中で先ほどの噴水のアーチがあった広間を思いだし、地面に築いた転移魔方陣を何とか発動させようとした時、


ガキィンッ……



「……?」


不意に後方から何かの金属音が聞こえたような気がする。だが、先ほどまで延々とこの通路を歩き続けた際はレノ以外に生物は存在しないはず。振り返ってみるが、特に通路には何も変化はない。暗闇でいい加減に目が疲れてくるが、特におかしな点は見当たらないはずだが、先ほどまでは感じなかった異様な空気が通路内を包んでいる。


ブォンッ――!!


「っ!!」


ジャラララァッ!!


背後から何かを振りかぶる音が聞こえ、咄嗟に地面に敷いた銀の鎖を操作し、自分の背中に絡みつける。


ガキィィイインッ!!


「がはぁっ!?」


想像以上の衝撃が背中に走り、そのまま前方の通路に吹き飛ばされる。鎖で受けたからこそ堪え切れたが、何か鈍器ではなく、鋭利な刃物に斬り付けられたような感覚に陥る。


「くっ……」


身体に巻き付いた銀の鎖を解除し、すぐに異変に気が付く。所々が黒く腐敗しており、先ほどの攻撃の影響だろう。幸い、この鎖の重要な部分である「聖爪」のネイルリングは無事であり、「銀の鎖」も延々と伸ばせるので腐敗した部分だけを取り外す事は出来るが。


――ギィイイイイイイッ……!!


「……何だお前」


レノを吹き飛ばしたと思われる「敵」は何時の間にか後方の通路に立っており、全身を完全に黒衣で纏っており、身長は150センチにも満たない。唯一に黒衣から出したまるで死人のように肌色が悪い両手には黒く錆びた巨大な大剣を握りしめ、その小柄な体からでは想像できないほどの怪力だ。

大剣は以前にジャンヌと相対していた時に彼女が持っていた「聖斧」に匹敵し、狭い通路内で器用に振り回しながら、レノに向かってくる。

少なからず、先端の聖爪(ネイルリング)のお蔭で銀の鎖自体にも聖属性の魔力が満ちているはずだが、あの剣に触れただけで「腐敗」してしまう。直接受けるのは危険と判断し、レノは左手を向けて最大出力の乱刃を放つ。


「乱刃っ!!」


ドォオンッ!!


三日月状の風の刃が生み出され、真っ直ぐに通路を駆け抜ける黒衣の人物に向かうが、


「ヌンッ!!」


バシュウウゥッ!!


大剣で風の刃を薙ぎ払い、一瞬で消散させる。あのビルドとの戦いで魔石結合して以来、それなりに威力が向上しているはず乱刃が通じないのを確認し、レノは次の一手に出る。


「紫電!!」


バチィイイイッ!!


「ヌオッ……!?」


速効性の紫の雷を放ち、今度は流石に相手も防ぐことが出来ず、見事に大剣に感電してそのまま肉体に電流を伝える事に成功するが、


「ガァアアアアアッ!!」
「ちっ……」


身体に電流を流しこまれながらも、そのまま黒衣の剣士は大剣を下から振り上げてくる。地面を抉りながらも、刃は恐るべき速度で向い来る。間違いなくその一撃は白狼の一撃にも匹敵するのは間違いなく、下手に防ぐことは不可能。ならば、避ける以外に手段は無い。


「くっ……」


ブオオンッ!!


後方に下がって大剣を躱すが、相手はすぐに振り上げた大剣を両手で握りしめ、そのまま振り落としてくる。


「このっ……!!」


今度は避けきれないと判断し、銀の鎖に繋がれた聖爪を右手に装着し、何とか軌道を弾く様に繰り出す。


ガキィンッ!!


ズガァアアアッ!!


聖爪で大剣の刃を横方向から弾き、軌道を反らすことに成功すると、そのまま大剣は派手に土煙を上げて地面に突き刺さる。レノは間近でそれを確認し、すぐに先ほど黒衣の剣士が地面を抉りながらも攻撃したことを思いだし、その場から「瞬脚」で離れる。


ダァアンッ!!


「くっ……」


一気に距離を開くと、レノは聖爪を確認する。大剣の刃に触れたが、特に腐敗している様子は見えず、だからといって未だに危機的状況であることには変わりはないが。


「何なんだ一体……」
「ウギィイイイイイッ……!!」


まるでもがき苦しむように黒衣の剣士はその場に膝をつき、衣の間から赤い瞳だけを向けてくる。顔は確認できないが、先ほどの死人と同じ死臭を感じられる。


「セイケェエエエエンッ!!」
「……くそっ!」


ダンッ!!


此方に向かってくる剣士に背を向け、レノは一気に走り出す。この相手が何処から現れたのかは分からないが、もしかしたら通路の空間魔法が解除されて外部から侵入してきた可能性もある。

第一に先ほどの死人やビルドの時と違い、明らかに今回の相手が装備している武器は危険過ぎる。元はセンチュリオンが持っていた鎖を破壊、正確には腐敗させるほどの「呪詛」を纏った大剣など聞いたことも無い。

全力で走りながら後方を振り返ると、またもや敵の姿が掻き消えていた。いや、正確に言えば陽炎のように妙にぶれている空間を確認し、どうやらレノの「銀の鎖」のように透明化させて追跡しているようだ。


「……仕方ない」


この狭い場所を逆に利用し、レノは攻撃手段に移ることにする。撃雷や雷槍などの腕に魔力付与を行う魔術ではなく、最大限の「嵐」の球体を生み出し、


「失せろ!!」


約2年ぶりに発動させる最大の「嵐」の魔法、レノは左手を向けて「紋様」を発動させ、


「撃嵐!!」


――ドゴォォオオオオオオオオッ!!


通路内に凄まじい竜巻が満たされ、後方から追跡していた黒衣の剣士に目掛けて放たれた――
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