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闘人都市編
放浪島の地下迷宮
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「銀の鎖」と「ロスト」を組み合わせたことによって生まれた鍵爪(ロスト・ネイル)は、結果的に言えばレノは非常に扱いやすく、剣よりも便利な存在となった。普段は鎖同様に透明化も可能であり、日常生活では邪魔にならない。また、鎖に鉤爪のリングを溶接したことにより、五つのネイルリングが先端部に取り付けられ、攻撃力が大幅に増す。
だが、今まで以上に鎖を使用する度に大幅に魔力を消費するようになり、同時に魔力を抑える機能も残っている。しっかりと「エクスカリバー・ロスト」の時の能力も追加されており、先端の五つのネイルリングに魔力の刃が纏うことも可能だった。
レノにとっては刀剣の類よりも、鍵爪のように直接攻撃する方が相性が良く、訓練も捗る。しかし、問題が1つだけ起きた。
「――申し訳ありません……魔力が足りませんね」
「は?」
あろう事か、レノを「闘人都市」に転移させるだけの魔力が足りないとアイリィは告げてきた。ここまで訓練をしておきながら、今更そのような事を言われても困り果てる。
「いや~……すいませんね。よくよく考えれば、この島って一日に何十キロも移動するのを忘れてまして……正確な位置に転移させるのは難しいんですよ」
「……待て、それじゃあ……」
「はい……今の私の魔力じゃ、せいぜい「トウキョウ」に送り込むのが限界ですね」
「トウキョウ!?」
闘人都市からトウキョウまでは随分と離れている。例え、馬や足の速い魔獣で移動したとしても、少なくとも半月近くはかかる。彼女は頭を搔きながら考え込み、
「予想外に聖剣の合成や、レノさんの「銀の鎖」の改造に魔力を使い果たしましてね……せめて、あと一人分の聖痕を回収しておけば何とかなるんですけど」
「無茶を言うな……というより、その聖痕を回収するために大会に出場するんだろうが……」
「そうですね……困りましたね」
わざとらしく、アイリィは腕を組んで考える素振りを行い、何かを思いついたようにぽんと掌に手を置くと、
「そうだ!今のレノさんなら問題ないと思いますし……この島のダンジョンに挑戦でもしてみますか?」
「……ダンジョン?」
急にゲームでよく耳にする単語が出てきたことに首を傾げるが、アイリィは地面にこの島の簡易的な地図を一瞬で描き出す。そして、放浪島の中央部を木の枝で差すと、
「今、私達が居るのはこの中央部の草原地帯です。ダンジョンがあるのはここ……この島の地下です」
彼女の説明によると、この放浪島の地下には巨大な空洞が存在するらしく、そこには嘗て魔族侵攻大戦の前の時代から存在するという巨大な「地下迷宮」が広がっているとの事。
地下迷宮を作り出したのは、今は存在しない「ドワーフ」と呼ばれる種族であり、彼らは高度な技術力を誇り、たった数十年でこの広大な「放浪島」の地下の空洞に迷宮を作り上げたと言われている。但し、真偽は定かではなく、アイリィ自身も本当は誰が造り出したのかは知らないらしい。
地下迷宮には無数の魔物が存在しており、独自の生態系を築いているらしい。下手をしたら、この世界の中でも異質な生物が生息している可能性も高く、また嘗てダンジョンに挑んだ冒険者たちの残した金塊や魔道具が残っている可能性も高く、もしかしたら「聖剣」などの「聖遺物」の存在するかもしれないとの事。
「そんな迷宮がこの島に……?」
「この事を知っているのは現在はバルトロス王国の上層部ぐらいですからね……当然、この島の囚人や看守も知りません。地下迷宮に行くことを許されるのは世界を救う「勇者」だけですからね」
「……隠しダンジョンみたいもの?」
「ゲームで例えるならその通りですね……最も、その勇者もここ1000年近くは訪れていませんけど……」
「最近、勇者召喚された奴がいるけど……」
「あの人たちは勇者って言うより……いや、なんでもありません」
「……?」
歯切れの悪いアイリィにレノは首を傾げ、今更ながらに彼女が何者なのかが気にかかる。この放浪島の秘密を知っていたり、そもそもどうして聖痕を集めているのかなど気にかかるが、敢えて何も聞かずに地下迷宮の話に戻す。
「レノさんに頼みたいことはその新しい武器の試用も兼ねて、地下迷宮に封印された私の「聖遺物」を回収してほしいんですよ」
「私の……?」
「そう、過去に私が唯一愛用した聖剣……「カラドボルグ」を」
――「カラドボルグ」現実世界ではあのアーサー王が使用していた「エクスカリバー」の原形とも言われる聖剣であり、アルスター伝説の英雄が使用したと言われる。
この世界の「カラドボルグ」も同様に「聖剣エクスカリバー」を作成する前に造られた聖剣であり、その力はエクスカリバーに匹敵、もしくはそれ以上の力を誇る。だが、開発当初に「カラドボルグ」は何者かに盗まれたらしく、そのまま行方知れずとなる。レノも鳳凰学園のクズキの授業で名前だけは聞いたことはあるが、まさかこの放浪島の「地下迷宮」に隠されているなど思いもしなかった。
(……愛用していた?)
アイリィの発言から察するに、彼女は以前に「カラドボルグ」を使用していたようだが、それほどの「聖遺物」をどういった経緯で彼女が手にしたのか気にかかるが、それよりも気になることは、何故、以前にも使用していたはずの「カラドボルグ」がこの島の地下迷宮に在るのかだ。レノの疑問を察したように、アイリィは苦笑い浮かべ、
「……奪われたんですよ。気が遠くなるほどの昔の話です……本物の「センチュリオン」の1人に」
だが、今まで以上に鎖を使用する度に大幅に魔力を消費するようになり、同時に魔力を抑える機能も残っている。しっかりと「エクスカリバー・ロスト」の時の能力も追加されており、先端の五つのネイルリングに魔力の刃が纏うことも可能だった。
レノにとっては刀剣の類よりも、鍵爪のように直接攻撃する方が相性が良く、訓練も捗る。しかし、問題が1つだけ起きた。
「――申し訳ありません……魔力が足りませんね」
「は?」
あろう事か、レノを「闘人都市」に転移させるだけの魔力が足りないとアイリィは告げてきた。ここまで訓練をしておきながら、今更そのような事を言われても困り果てる。
「いや~……すいませんね。よくよく考えれば、この島って一日に何十キロも移動するのを忘れてまして……正確な位置に転移させるのは難しいんですよ」
「……待て、それじゃあ……」
「はい……今の私の魔力じゃ、せいぜい「トウキョウ」に送り込むのが限界ですね」
「トウキョウ!?」
闘人都市からトウキョウまでは随分と離れている。例え、馬や足の速い魔獣で移動したとしても、少なくとも半月近くはかかる。彼女は頭を搔きながら考え込み、
「予想外に聖剣の合成や、レノさんの「銀の鎖」の改造に魔力を使い果たしましてね……せめて、あと一人分の聖痕を回収しておけば何とかなるんですけど」
「無茶を言うな……というより、その聖痕を回収するために大会に出場するんだろうが……」
「そうですね……困りましたね」
わざとらしく、アイリィは腕を組んで考える素振りを行い、何かを思いついたようにぽんと掌に手を置くと、
「そうだ!今のレノさんなら問題ないと思いますし……この島のダンジョンに挑戦でもしてみますか?」
「……ダンジョン?」
急にゲームでよく耳にする単語が出てきたことに首を傾げるが、アイリィは地面にこの島の簡易的な地図を一瞬で描き出す。そして、放浪島の中央部を木の枝で差すと、
「今、私達が居るのはこの中央部の草原地帯です。ダンジョンがあるのはここ……この島の地下です」
彼女の説明によると、この放浪島の地下には巨大な空洞が存在するらしく、そこには嘗て魔族侵攻大戦の前の時代から存在するという巨大な「地下迷宮」が広がっているとの事。
地下迷宮を作り出したのは、今は存在しない「ドワーフ」と呼ばれる種族であり、彼らは高度な技術力を誇り、たった数十年でこの広大な「放浪島」の地下の空洞に迷宮を作り上げたと言われている。但し、真偽は定かではなく、アイリィ自身も本当は誰が造り出したのかは知らないらしい。
地下迷宮には無数の魔物が存在しており、独自の生態系を築いているらしい。下手をしたら、この世界の中でも異質な生物が生息している可能性も高く、また嘗てダンジョンに挑んだ冒険者たちの残した金塊や魔道具が残っている可能性も高く、もしかしたら「聖剣」などの「聖遺物」の存在するかもしれないとの事。
「そんな迷宮がこの島に……?」
「この事を知っているのは現在はバルトロス王国の上層部ぐらいですからね……当然、この島の囚人や看守も知りません。地下迷宮に行くことを許されるのは世界を救う「勇者」だけですからね」
「……隠しダンジョンみたいもの?」
「ゲームで例えるならその通りですね……最も、その勇者もここ1000年近くは訪れていませんけど……」
「最近、勇者召喚された奴がいるけど……」
「あの人たちは勇者って言うより……いや、なんでもありません」
「……?」
歯切れの悪いアイリィにレノは首を傾げ、今更ながらに彼女が何者なのかが気にかかる。この放浪島の秘密を知っていたり、そもそもどうして聖痕を集めているのかなど気にかかるが、敢えて何も聞かずに地下迷宮の話に戻す。
「レノさんに頼みたいことはその新しい武器の試用も兼ねて、地下迷宮に封印された私の「聖遺物」を回収してほしいんですよ」
「私の……?」
「そう、過去に私が唯一愛用した聖剣……「カラドボルグ」を」
――「カラドボルグ」現実世界ではあのアーサー王が使用していた「エクスカリバー」の原形とも言われる聖剣であり、アルスター伝説の英雄が使用したと言われる。
この世界の「カラドボルグ」も同様に「聖剣エクスカリバー」を作成する前に造られた聖剣であり、その力はエクスカリバーに匹敵、もしくはそれ以上の力を誇る。だが、開発当初に「カラドボルグ」は何者かに盗まれたらしく、そのまま行方知れずとなる。レノも鳳凰学園のクズキの授業で名前だけは聞いたことはあるが、まさかこの放浪島の「地下迷宮」に隠されているなど思いもしなかった。
(……愛用していた?)
アイリィの発言から察するに、彼女は以前に「カラドボルグ」を使用していたようだが、それほどの「聖遺物」をどういった経緯で彼女が手にしたのか気にかかるが、それよりも気になることは、何故、以前にも使用していたはずの「カラドボルグ」がこの島の地下迷宮に在るのかだ。レノの疑問を察したように、アイリィは苦笑い浮かべ、
「……奪われたんですよ。気が遠くなるほどの昔の話です……本物の「センチュリオン」の1人に」
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