種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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闘人都市編

ウォーミングアップ

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「クォオオオッ……」
「うわっ……平気だって、お前は相変わらずだな」


レノは服の裾に噛みつくモーヒを引き剥がし、以前に無数の狼男に襲われた草原に辿り着く。周囲に無数の気配はするが、縄張りを犯すまでは彼らも手出しはしない。獲物として狙われる前にモーヒに戻るように指示を出し、寂しげな声を上げながら、何度も振り返りながらもモーヒは大人しく従う。そんな彼女を手を振りながら見送ると、ゆっくりと振り返る。


「さて、と……久しぶりだな」


――グルルルッ……!!


1メートルを軽く超える芝生の中から、無数の狼の鳴き声がする。正確に言えば「狼男」の群れがレノに威嚇を行っているのだ。以前は彼等との戦闘で酷く損傷し、アイリィに助けられたからこそ生き延びることは出来たが、今回は彼女の助けは必要ない。


「……はあっ……」


あからさまな殺気にレノは溜息を吐く。北部山岳の魔獣どもと比べたら、あまりにも脅威が浮かばない相手に苦笑する。挑発とも取れるレノの態度に苛立ちを感じたのか、数匹の狼男が姿を現し、その手には動物の骨で作られた槍が持ち構えられ、


「ウオォオオオオンッ!!」
「ガァアアアッ!!」


先走った狼男たちがレノに向かって飛びかかり、


「甘い」


ズドォオオオンッ!!


「ギャヒィッ!?」


次の瞬間、肉体強化した彼の拳が顎を撃ちぬき、1匹が宙高く舞う。それを見た残りの狼男は目を見開きながら頭上に視線を集中させ、


「隙だらけだ!!」


ドォオンッ!!

バキィッ!!


「ギャンッ!?」
「ゲフゥッ!?」


続けて2匹ほど腹部に拳と蹴りを喰いこませ、吹き飛ばす。これぐらいの相手ならば最小限の肉体強化の魔法だけで十分に対応できる。半分は「ダークエルフ」の血を引いているため、子供の頃と比べても身体能力は大きく向上している。

倒した1体の狼男の手から零れた槍を掴み、瞬時に先端部に螺旋状に「嵐」の魔力を渦巻かせ、最期の1体に投擲する。


ズガァアアアアアンッ!!


悲鳴を上げる暇も無く、正面から槍を受けた狼男は上半身をミキサーのように粉々に砕かれ、残された下半身は膝をつく。


「……こんな所か」


――ウガァアアアアアッ!!


流石にじっと見ていた狼男たちも危機を察知したのか、芝生の中から数十匹もの群れが出現してくる。


(54……随分と増えたな)


以前の時よりも2倍以上の数だが、レノにとってはいい「前哨戦」に過ぎない。北部山岳で待つ「奴」との決着の前には手ごろな相手だ。



「――来なよ……」



足元に落ちていた新たな槍を手にすると、すぐに嵐を付与させ、四方から降りかかる狼男に槍を構えると、久しぶりの感覚に身体を震わせ、


「がぁああああああああああっ!!」


まるで自分が獣になったような感覚に陥りながら、北部山岳で自分を待つ「奴」に聞こえんばかりに声を張り上げる――




――同時刻、北部山岳の麓には2匹の白い狼の親子が、偶然なのか、それとも優れた野生の勘というべきが、レノが居る芝生の方角へと顔を向ける。この島の王者である「白狼」は、息子のレノが名付けた「ウル」を一目見て、大きく息を吸い上げ、



――ウォオオオオオオオオオオオッ!!



まるで山岳全体が震えんばかりの咆哮を上げ、帰ってきた「宿敵」に居場所を知らせんばかりに鳴き声を張り上げる。「レノ」と「白狼」1人のハーフエルフと島の王者が戦うまで、それほど時間はかからないだろう――
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