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闘人都市編
因縁の相手
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続けての二回戦、三回戦の相手についても問題も無くレノは勝ち進む。相手は虎の獣人だったり、戦場を渡り歩いたという腕利きの戦士と激闘を繰り広げたが、放浪島の北部山岳の魔物達と比べればそれほどの相手ではない。人数も大分絞られ、ついには四回戦に上がると、試合場にはレノにとては因縁深い相手が待ち構えていた。
「……ちっ……厄介だね」
「ええ……これは困りましたね」
「えっ……そ、そんなに強い人なの?」
レノの相手に気付いてバルは悪態を吐き、ミキも同意する。ヨウカは心配そうに声を掛けると、
「あいつは……森人族の戦士だ」
よりにもよって、レノにとってはトラウマの対象に成りかねない相手だった――
「――ふんっ……貴様、よくも顔を出せたな」
「……どうも」
「気安く話しかけるな!!この汚れた血が……」
「相変わらずだな……」
レノの前にはまるで筋肉の鎧で覆われたような森人族の戦士が立っており、その顔は間違いなく、エルフの集落で幼少の頃の彼を痛めつけた門番の1人だった。名前はレノの記憶通りならば「レン」であり、どうして彼が集落を離れてこの闘技場にいるのかが気にかかるが、今はそれどころではない。
「おい、私語は慎め……準備はいいか?」
「黙れ下郎……人間ごときが俺に軽々しく話しかけるな」
「……なら、試合場から降りろ。こっちもくそ生意気なエルフの顔は見たくねえ」
「ちっ……さっさと始めろ」
審判役であるカインにまで悪態を吐くレンの傲慢な態度に、苛立ちを通り越して呆れてしまう。相変わらずの性格だ。レノにとってはある意味ではダークエルフと同じく、因縁のある敵だが妙に彼が以前に会った時と比べて小さく見える。あの時は身体が小さかったため、そう見えるだけかも知れないが。
「……開始っ!!」
試合が始まり、レノは短剣を抜き放ち、レンは後ろに下がる。先ほどの傲慢な態度からは考えられないほどの慎重さであり、冷静にレノの出方を観察してくる。そんな彼に油断できない相手と判断し、レノは短剣を鞘に戻し、掌を向ける。そんな彼の姿にレンは顔をしかめる。
――『反魔紋』を刻み込まれた者が、魔法を扱えるはずがないと思い込んでいるのか、彼は特に警戒もせずに待ち構えると、レノは強い想像(イメージ)を抱く。
「乱刃」では避けられる可能性もある、かと言って「アクセル」で肉体強化をして勝てるとは限らない。ならば、イメージを抱くのはゴウが扱っていた「紫雷」という名の雷。今までに何度か練習を繰り返し、掌に集中する。
口元を開き、呪文を口にすると体中から電流が迸る。そんな彼の姿にレンは笑みを浮かべるが、すぐに驚愕の表情を浮かべる。体中から数十万ボルトは流れ込んでいるはずだが、レノは顔色を変えずに掌を向けたまま、
「紫電!!」
ズドォオオオオンッ!!
一筋の「紫色」の雷が放たれ、レンは避ける暇も無く直撃する。
「があっ!?」
ドスンッ!!
真面に電撃を受けたことで、レンは膝を付く。想像していた物とは大きく違うか、放たれた雷の速度はレノの魔法の中でも最も早く、気付いた時には相手の身体を貫いていた。だが、まだ威力の調整は上手く行かず、レンは腹部を抑えながらも激高して立ち上がってくる。
「小童が!!」
「っ……」
此方に向かって「双剣」を引き抜いて向かってくるレン。しかし、その動きは先ほどの「紫電」によって若干鈍い。この速度ならば、十分にレノも対応が可能であり、無詠唱で肉体強化を発動させ、両足だけを部分強化すると右腕に体内残った電流と嵐を合成させ、
「撃雷!!」
螺旋状に纏わせた「風雷」をレンに放つ。今度は無詠唱で魔法を発動させるレノンに驚く暇も無く、彼は双剣で受け止める。
ズガァアアアアアンッ!!
「ぬおおっ!?」
「……あああっ!!」
レンの双剣を融解させる勢いで拳を放ち、彼は慌てて後ろに下がろうとするが、その前に一歩踏み出し、
「一発!!」
「ぐはっ!?」
ズゥンッ!!
残りの左腕でがら空きの腹部にコークスクリュー気味にめり込ませる。当然、肉体強化は済ませた拳はめり込み、さらに追撃とばかりに右脚を叩き込む。
「もう一発!!」
「ごぼぉっ……!?」
バキィイイイッ!!
隙だらけの顔面に上段回し蹴りを放ち、そのままレンを地面に強く叩き込む。
「ぐふっ……ごほっ!?」
「おまけっ!!」
ドォオオオオンッ!!
ふらふらと身体を震わせながら、四つん這いになるレンに向けて、容赦なく踵を振り上げて頭部に叩き込む。所謂「踵落とし」だった。
「……ごふっ……」
レノに頭を踏みつけられながら、顔面血塗れの状態でレンは闘技場の上に倒れこむ。完全に気を失っているらしく、すぐにカインがそれを確かめると、
「勝者!!レノぉおおおおおっ!!」
「「「うおぉおおおおっ!!」」」
観客が凄まじい声援を上げ、レノの勝利を褒め称える。どうやら、殆どの人間が彼の試合を観戦していたらしい。さらに武器ではなく、止めは肉体で仕留めたことから、大勢の人間が興奮したようだ。ボクシングなどの試合会場はこのような観客の熱気で密封されているのかと考えながら、
「ふうっ……」
レノは自分の足元で伸びているレンに視線を向け、
「あ~……すっきりした」
長年の恨みを果たせたようで、心が軽く、試合場を降り立った――
「……ちっ……厄介だね」
「ええ……これは困りましたね」
「えっ……そ、そんなに強い人なの?」
レノの相手に気付いてバルは悪態を吐き、ミキも同意する。ヨウカは心配そうに声を掛けると、
「あいつは……森人族の戦士だ」
よりにもよって、レノにとってはトラウマの対象に成りかねない相手だった――
「――ふんっ……貴様、よくも顔を出せたな」
「……どうも」
「気安く話しかけるな!!この汚れた血が……」
「相変わらずだな……」
レノの前にはまるで筋肉の鎧で覆われたような森人族の戦士が立っており、その顔は間違いなく、エルフの集落で幼少の頃の彼を痛めつけた門番の1人だった。名前はレノの記憶通りならば「レン」であり、どうして彼が集落を離れてこの闘技場にいるのかが気にかかるが、今はそれどころではない。
「おい、私語は慎め……準備はいいか?」
「黙れ下郎……人間ごときが俺に軽々しく話しかけるな」
「……なら、試合場から降りろ。こっちもくそ生意気なエルフの顔は見たくねえ」
「ちっ……さっさと始めろ」
審判役であるカインにまで悪態を吐くレンの傲慢な態度に、苛立ちを通り越して呆れてしまう。相変わらずの性格だ。レノにとってはある意味ではダークエルフと同じく、因縁のある敵だが妙に彼が以前に会った時と比べて小さく見える。あの時は身体が小さかったため、そう見えるだけかも知れないが。
「……開始っ!!」
試合が始まり、レノは短剣を抜き放ち、レンは後ろに下がる。先ほどの傲慢な態度からは考えられないほどの慎重さであり、冷静にレノの出方を観察してくる。そんな彼に油断できない相手と判断し、レノは短剣を鞘に戻し、掌を向ける。そんな彼の姿にレンは顔をしかめる。
――『反魔紋』を刻み込まれた者が、魔法を扱えるはずがないと思い込んでいるのか、彼は特に警戒もせずに待ち構えると、レノは強い想像(イメージ)を抱く。
「乱刃」では避けられる可能性もある、かと言って「アクセル」で肉体強化をして勝てるとは限らない。ならば、イメージを抱くのはゴウが扱っていた「紫雷」という名の雷。今までに何度か練習を繰り返し、掌に集中する。
口元を開き、呪文を口にすると体中から電流が迸る。そんな彼の姿にレンは笑みを浮かべるが、すぐに驚愕の表情を浮かべる。体中から数十万ボルトは流れ込んでいるはずだが、レノは顔色を変えずに掌を向けたまま、
「紫電!!」
ズドォオオオオンッ!!
一筋の「紫色」の雷が放たれ、レンは避ける暇も無く直撃する。
「があっ!?」
ドスンッ!!
真面に電撃を受けたことで、レンは膝を付く。想像していた物とは大きく違うか、放たれた雷の速度はレノの魔法の中でも最も早く、気付いた時には相手の身体を貫いていた。だが、まだ威力の調整は上手く行かず、レンは腹部を抑えながらも激高して立ち上がってくる。
「小童が!!」
「っ……」
此方に向かって「双剣」を引き抜いて向かってくるレン。しかし、その動きは先ほどの「紫電」によって若干鈍い。この速度ならば、十分にレノも対応が可能であり、無詠唱で肉体強化を発動させ、両足だけを部分強化すると右腕に体内残った電流と嵐を合成させ、
「撃雷!!」
螺旋状に纏わせた「風雷」をレンに放つ。今度は無詠唱で魔法を発動させるレノンに驚く暇も無く、彼は双剣で受け止める。
ズガァアアアアアンッ!!
「ぬおおっ!?」
「……あああっ!!」
レンの双剣を融解させる勢いで拳を放ち、彼は慌てて後ろに下がろうとするが、その前に一歩踏み出し、
「一発!!」
「ぐはっ!?」
ズゥンッ!!
残りの左腕でがら空きの腹部にコークスクリュー気味にめり込ませる。当然、肉体強化は済ませた拳はめり込み、さらに追撃とばかりに右脚を叩き込む。
「もう一発!!」
「ごぼぉっ……!?」
バキィイイイッ!!
隙だらけの顔面に上段回し蹴りを放ち、そのままレンを地面に強く叩き込む。
「ぐふっ……ごほっ!?」
「おまけっ!!」
ドォオオオオンッ!!
ふらふらと身体を震わせながら、四つん這いになるレンに向けて、容赦なく踵を振り上げて頭部に叩き込む。所謂「踵落とし」だった。
「……ごふっ……」
レノに頭を踏みつけられながら、顔面血塗れの状態でレンは闘技場の上に倒れこむ。完全に気を失っているらしく、すぐにカインがそれを確かめると、
「勝者!!レノぉおおおおおっ!!」
「「「うおぉおおおおっ!!」」」
観客が凄まじい声援を上げ、レノの勝利を褒め称える。どうやら、殆どの人間が彼の試合を観戦していたらしい。さらに武器ではなく、止めは肉体で仕留めたことから、大勢の人間が興奮したようだ。ボクシングなどの試合会場はこのような観客の熱気で密封されているのかと考えながら、
「ふうっ……」
レノは自分の足元で伸びているレンに視線を向け、
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