種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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聖痕回収編

囚人売買

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教会の中から無事に脱出して早々にソフィアは「転送」を使用して中心街に戻る(当然だが一度の「転送」では流石に戻れず、魔石が発熱するまで何度も利用した)。黒猫酒場に戻った頃には既に辺りは暗闇に覆われていた。

酒場に戻った途端バルから「随分と遅かったね?夜遊びでもしていたのかい?」とからかわれながら、ソフィアは適当に返して自分の部屋に戻る。


「ふうっ……」


すぐに服を男物に着替え、やっとの事で「レノ」の姿に戻れる。この状態の方が何となく落ち着く。そのままクローゼットにワンピースをしまい込むと、レノは今日集めた情報を整理する。


――まず、間違いなく「鮮血のジャンヌ」は何らかの「聖痕」を持っており、2週間後に行われる「剣乱武闘」に参加する予定らしい。闇ギルドの情報から、異世界に召喚された「勇者達」は各地で魔物の活性化を抑える一方で、色々と問題を起こしている。また、目的は不明だが「センチュリオン」が勇者達を誘拐している事が確認。


次にこの都市の聖堂教会はヨウカ以外の「巫女姫」の代わりを用意していたらしく、彼女が活躍し始めたことから巫女姫の入れ替えを断念した模様。


「問題ばっかだな……」


聖痕保持者のジャンヌについてはこの都市に滞在中の間に決着を付けたい。勇者がどうなろうとレノには関係ないが、聖導教会の不審な動きに関しては「剣乱武闘」に立ち寄るヨウカ達に知らせておけばいいだろう。

問題はどうやって「ジャンヌ」から聖痕を回収する方法を考える事だ。正面から挑んだとしても、彼女に勝てる保証は無い。レノの戦い方はどんな相手だろうと、自分の有利な場所を選んで戦ってきた。放浪島での「黒狼」との戦いでもそうであり、例外を上げるとすれば「ゴウ」や「アルファ」戦だけだろう。


「それに何処に聖痕を隠し持ってるんだ……?」


ゴウは右頬に、アルファは首筋に聖痕を刻んでいたが、彼女は見た限りはそのどちらでもない。もしかしたら服の下にでも隠しているのかも知れない。

彼女は全身を青い礼装と鎧ですっぽりと包んでおり、短めのスカートから両脚は露出しているが、黒い靴下で膝元まで隠している。また、両腕はガントレットを装備しているため、取り外すことは難しい。いっその事、彼女の宿を突き止めて、就寝中に身体を調べる方が現実的かも知れない。


「ただの変態だな……」


外見はまだ少女とも言えなくもない彼女に寝ている間に服を脱がして身体中を調べるなど、ただの変態行為にしか思えない。傍から見られたら誤解される事は間違いないだろうが、


「いや、何も直接確認する必要も無いか」


よくよく考えればジャンヌの身体のどこかにある「聖痕」を確認する方法は、他の者に任せても問題ないのだ。例えば、彼女が銭湯(この世界では自宅に風呂が存在するのは貴族だけであり、誰もがよく利用する)などに立ち寄った際に他の人間に彼女の身体を調べてもらえばいい。それこそバルや他の女部下たちにでも頼み込めばいいだけだ。

まあ、どちらにしろジャンヌの居所を再び掴まなければどうしようもなく、結局は彼女が滞在している場所を突き止める事は出来なかった。

それに何故、元は「聖騎士団」でもあるジャンヌが「闇ギルド」などという裏の世界に足を踏み入れたのかが気になる。一体、何の用で地下酒場に立ち寄ったのか――


「うっ……?」


不意に強い眠気が襲い掛かり、レノは「アイリィ」の仕業だと気づき、すぐに傍のベットに倒れこむ。いつも通り、次の瞬間には彼の視界は真っ白な世界に覆われた――




――気付けば、レノの目の前にはいつもとは違う表情を浮かべた「アイリィ」が立っており、彼女は何事か考え込んでいるようだ。


「……あ、すいません。来てたんですね?」


すぐにレノの存在に気付いたのか、顔を向けてくる。その表情は特に変わりは無く、深刻とまではいかないが、何か悩み事でもしているようだ。彼女の態度に疑問に思うと、すぐにアイリィは苦笑いを浮かべ、


「こっちの話ですから気にしないでください……ちょっとばっかし、こちらの島で問題が起きただけですよ」


――問題?


「……そうですね、レノさんにも無関係とは言えませんから話しておきましょうか。この放浪島である「囚人」が王国側の貴族に身柄を引き取られました」


死罪が確定された放浪島の囚人をわざわざバルトロス王国が引き取るなど、普通ならば考えられない。折角捕まえた死刑囚を放浪島から出すなど一体何が起きたのか、


「この囚人というのは西部監獄……つまりレノさんが立ち寄った東部監獄は真逆の方向にある施設なんですが……先日収監されたばかりの死刑囚なんです。まず、収監初日で大問題を起こしました。無数の拘束具を破壊し、西部監獄の囚人たちに暴行を行い、警備兵に取り押さえられたと思ったら、今度は警備兵から武器を奪って逃亡。ここから凄いのが、逃亡した後は三日間近くも監獄の外で暮らしていたそうです。西部監獄には大型の魔物がごく少数ですが存在するんですが、たった1人でそれらを蹴散らして生き抜いたそうです。その後は大勢の警備兵と魔術師に確保されたんだですが……どこから噂を嗅ぎつけたのか、王国のある貴族が彼の正体を知って、わざわざ高い金を支払って買い取ったんですよ、すごい話でしょう?」


矢継ぎ早に話すアイリィだが、その瞳は一切笑っていない。余程、その囚人とやらに興味があるのか、あるいは因縁がある相手かもしれない。


「貴族が囚人を買い取ることはそれほど珍しくもありませんが……問題なのはその囚人を「剣乱武闘」に参加させる事になったんです」
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