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聖痕回収編
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「魔術師部門?……剣乱武闘って部門に分かれてるの?」
「何だ知らねえのか?初日は武芸者だけが出場できる武芸部門、その次の日は魔術師だけが出場できる魔術師部門、そして三日目から七日目まで掛けた四日間は「剣乱武闘」の本番大会が行われるんだよ」
「初日と二日目の部門の優勝商品は?本番とどう違うの?」
「初日の武芸部門は出場者は事前に決まってんだよ。一般人は参加できねえ、王国の騎士や兵士、他には他種族の中でも腕利きの武芸者が推薦で出場してくる。二日目も似たようなもんだが……基本的に魔術師は表に出て戦う行為はしないからな、推薦を取り消した奴の分は一般参加という名目で高い金を払えばどこの魔術師ギルドにも所属していない野良魔術師でも出場が許される」
「野良魔術師……猫か」
「似たようなもんだろ。所属していない魔術士なんて、首輪が付けられていない動物そのものだからな」
「ひどい……」
だが、ギルドマスターの言い分には一理ある。並の剣士や武芸者と違い、魔術師というのは非常に厄介な存在でもある。例え、初級の魔法しか使えない人間だろうと、魔法が仕えるというだけで一般人からは驚異的な存在なのだ。
その為、ほとんどの魔術師は何らかのギルドや国のお抱えの専属魔術師として召し抱えらえることが多く、レノのように魔法が仕えるのに各地を放浪する人間など滅多にいない。
「賞金についてはどっちの部門も変わらねえ、せいぜい普通の金貨50枚と、名工に造らせた武器や杖が渡されてる程度だよ」
「しょぼい……」
四日目から始まる本番の剣乱武闘での賞金は「アトラス金貨」に「聖剣」が譲与されるにも関わらず、前2つの部門の賞金はかなりスケールダウンしている。
「そうでもねえさ、アトラス金貨を扱う店何て滅多にねえんだぜ?下手な買い物をしたら、お釣りだけでも金貨の山が出来ちまう」
「なるほど」
言われてみれば、アトラス金貨の値打ちは普通の金貨の「1000倍」もの価値が在る。下手な店で支払えば釣銭を返せない事は間違いない。そういう意味では価値は低いが金貨の方が扱いやすい点もあり、「剣乱武闘」ではなく部門大会に出場する人間も多いという。
現実世界なら「銀行」などで換金して貰えばいい話しだが、この世界には生憎とそのような物は存在しない。一応は探せば似たような存在はあるが、それでもアトラス金貨を他の通貨に換金できるほどの組織は少ない。
「今回は魔術師部門の推薦の取り消しが多かったからな……あんたも参加の受付でもしたらどうだ?大会出場は運に任せるしかないけどな」
「運……?」
「くじ引きだよ。一般参加者はくじ引きの抽選で決められるんだよ」
「何でやねんっ」
「知らねえよ、昔からそういう風に決まってんだからよ」
実力でも何でもなく、まさかの運勝負で大会出場が決まるなど、一部の人間は怒り狂いそうな話だ。が大会の抽選は昔からの決まり事らしく、どうしようもないとの事。
ギルドマスターとそれなりに楽しい談話を終えると、ソフィアはその場を離れることにする。しっかりと男は銀貨3枚を受け取り、ここに居てもしょうがないと判断した彼女は外に出ることにした。
結局、お互いに名前も名乗らずに話し続けたことを思いだし、一度だけ振り返ると彼は意味深げに笑みを浮かべるだけで首を振る。下手に闇ギルドの人間は表の人間と関わりを持つことは許されない、そう暗に告げられたような気がし、そのままソフィアは地下の酒場を後にした。
「――ふうっ……」
外に出ると、既に夕方の時刻を迎えており、すでに赤い光で街が覆われていた。すぐにでもバルの元に戻らないといけないが、
(っ……!!)
不意に闇ギルドの建物から離れると、後方から誰かが後を付けてくる気配が感じられる。これは盗賊時代に鍛えられたソフィアだからこそ気付けたが、一般人が相手なら気付かれることはないだろう。
闇ギルドの人間かと思ったが、それにしては随分と雑な足音だ。普通の人間なら気付く事は無いだろうが、一流の盗賊なら簡単に気付かれる追跡の仕方であり、どうやら違うらしい。
(誰だ……?)
左腕の魔石の「転送」を使えばいとも容易く逃げ出すことは可能だが、相手が気になり、ソフィアは敢えて路地裏に誘い込むように入る。すぐにワンピースの間から短剣を取り出し、構えるが何時まで経っても誰も来ない。
(……気のせいか、いや、確かに誰かが……)
短剣を仕舞い込もうとした時、
「――っ!!」
頭上から何かが落ちてくる気配を感じ取り、ソフィアはすぐに「転送」の魔法で少し離れた場所に身体ごと移動する。
――ズゥウウウンッ!!
人気の無い路地裏に派手な轟音が響き渡り、先ほどまでソフィアが居た場所に巨大な「斧」が地面に突き刺さる。
「むっ……避けましたか」
そこには「聖斧」を持ち構えた青い礼装の美少女が立っており、ソフィアに視線を向けてくる。その表情は人形のように無表情だった。
――間違いなく、ソフィアが先ほどまで追跡していた元聖騎士の「ジャンヌ」であり、明らかに敵意を浮かべていた。
「何だ知らねえのか?初日は武芸者だけが出場できる武芸部門、その次の日は魔術師だけが出場できる魔術師部門、そして三日目から七日目まで掛けた四日間は「剣乱武闘」の本番大会が行われるんだよ」
「初日と二日目の部門の優勝商品は?本番とどう違うの?」
「初日の武芸部門は出場者は事前に決まってんだよ。一般人は参加できねえ、王国の騎士や兵士、他には他種族の中でも腕利きの武芸者が推薦で出場してくる。二日目も似たようなもんだが……基本的に魔術師は表に出て戦う行為はしないからな、推薦を取り消した奴の分は一般参加という名目で高い金を払えばどこの魔術師ギルドにも所属していない野良魔術師でも出場が許される」
「野良魔術師……猫か」
「似たようなもんだろ。所属していない魔術士なんて、首輪が付けられていない動物そのものだからな」
「ひどい……」
だが、ギルドマスターの言い分には一理ある。並の剣士や武芸者と違い、魔術師というのは非常に厄介な存在でもある。例え、初級の魔法しか使えない人間だろうと、魔法が仕えるというだけで一般人からは驚異的な存在なのだ。
その為、ほとんどの魔術師は何らかのギルドや国のお抱えの専属魔術師として召し抱えらえることが多く、レノのように魔法が仕えるのに各地を放浪する人間など滅多にいない。
「賞金についてはどっちの部門も変わらねえ、せいぜい普通の金貨50枚と、名工に造らせた武器や杖が渡されてる程度だよ」
「しょぼい……」
四日目から始まる本番の剣乱武闘での賞金は「アトラス金貨」に「聖剣」が譲与されるにも関わらず、前2つの部門の賞金はかなりスケールダウンしている。
「そうでもねえさ、アトラス金貨を扱う店何て滅多にねえんだぜ?下手な買い物をしたら、お釣りだけでも金貨の山が出来ちまう」
「なるほど」
言われてみれば、アトラス金貨の値打ちは普通の金貨の「1000倍」もの価値が在る。下手な店で支払えば釣銭を返せない事は間違いない。そういう意味では価値は低いが金貨の方が扱いやすい点もあり、「剣乱武闘」ではなく部門大会に出場する人間も多いという。
現実世界なら「銀行」などで換金して貰えばいい話しだが、この世界には生憎とそのような物は存在しない。一応は探せば似たような存在はあるが、それでもアトラス金貨を他の通貨に換金できるほどの組織は少ない。
「今回は魔術師部門の推薦の取り消しが多かったからな……あんたも参加の受付でもしたらどうだ?大会出場は運に任せるしかないけどな」
「運……?」
「くじ引きだよ。一般参加者はくじ引きの抽選で決められるんだよ」
「何でやねんっ」
「知らねえよ、昔からそういう風に決まってんだからよ」
実力でも何でもなく、まさかの運勝負で大会出場が決まるなど、一部の人間は怒り狂いそうな話だ。が大会の抽選は昔からの決まり事らしく、どうしようもないとの事。
ギルドマスターとそれなりに楽しい談話を終えると、ソフィアはその場を離れることにする。しっかりと男は銀貨3枚を受け取り、ここに居てもしょうがないと判断した彼女は外に出ることにした。
結局、お互いに名前も名乗らずに話し続けたことを思いだし、一度だけ振り返ると彼は意味深げに笑みを浮かべるだけで首を振る。下手に闇ギルドの人間は表の人間と関わりを持つことは許されない、そう暗に告げられたような気がし、そのままソフィアは地下の酒場を後にした。
「――ふうっ……」
外に出ると、既に夕方の時刻を迎えており、すでに赤い光で街が覆われていた。すぐにでもバルの元に戻らないといけないが、
(っ……!!)
不意に闇ギルドの建物から離れると、後方から誰かが後を付けてくる気配が感じられる。これは盗賊時代に鍛えられたソフィアだからこそ気付けたが、一般人が相手なら気付かれることはないだろう。
闇ギルドの人間かと思ったが、それにしては随分と雑な足音だ。普通の人間なら気付く事は無いだろうが、一流の盗賊なら簡単に気付かれる追跡の仕方であり、どうやら違うらしい。
(誰だ……?)
左腕の魔石の「転送」を使えばいとも容易く逃げ出すことは可能だが、相手が気になり、ソフィアは敢えて路地裏に誘い込むように入る。すぐにワンピースの間から短剣を取り出し、構えるが何時まで経っても誰も来ない。
(……気のせいか、いや、確かに誰かが……)
短剣を仕舞い込もうとした時、
「――っ!!」
頭上から何かが落ちてくる気配を感じ取り、ソフィアはすぐに「転送」の魔法で少し離れた場所に身体ごと移動する。
――ズゥウウウンッ!!
人気の無い路地裏に派手な轟音が響き渡り、先ほどまでソフィアが居た場所に巨大な「斧」が地面に突き刺さる。
「むっ……避けましたか」
そこには「聖斧」を持ち構えた青い礼装の美少女が立っており、ソフィアに視線を向けてくる。その表情は人形のように無表情だった。
――間違いなく、ソフィアが先ほどまで追跡していた元聖騎士の「ジャンヌ」であり、明らかに敵意を浮かべていた。
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