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放浪島編
学園では
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――鳳凰学園でレノとヴァンパイアが消息不明になってから1年の時が過ぎ、現在の「鳳凰学園」は経営に危機が訪れていた。
立て続けに正体不明の組織「センチュリオン」と名乗る侵入者の存在を許してしまい、大勢の生徒を危険にさらした事で学園側は外部からの信用を失い、学園の多額の出資を行っている「バルトロス王国」からもこれ以上の失態は起こすなと伝えられる。この学園は全ての種族の和解と共存のために造られたが、これではあと1年も持たずに閉校してしまうだろう。
――そんな状況で、世界各地に異変が訪れる。魔物たちが「活性化」を始めているという情報が全ての種族に伝えられる。
魔物の活性化とは数百年規模で発生する現象であり、世界的に魔物が増殖、及び凶暴性を増し、前々回は「魔族侵攻大戦」の時代で発生したという。基本的にこの世界の魔物は人里から離れた場所に生息し、無闇に人前に姿を現すことは無い。
しかし、活性化の時期では理由は不明だが魔物は急速的に増殖し、人間が住む場所に自ら進んで襲い掛かるという。この現象は未だに解明されず、前回の活性化から約400年ぶりに発生した。
――各種族は一時的に種族間の争い事を休止し、この活性化の問題を共に当たることが決定された。だが、あくまでも活性化の時期のみ「同盟」を結ぶだけであり、真の和解とは程遠い。
「森人族」は同盟を結んだが、あくまでも自分達の身を守るだけに専念し、各集落の結界を強め、魔物に備える。「獣人族」と「巨人族」は本格的な魔物の討伐のために、隣国同士で何度も戦争を起こした「バルトロス王国」と共同戦線を張る。
「人魚族」に関しては特に大きな被害もなく、現状を維持すると告げて完全に他の種族からの支援を拒否し、自分たちの問題は自分たちで解決すると宣言する。元々、彼女達は海底に住んでいるため、領土という領土は存在しないのだが。
「魔人族」に関しては今回の「センチュリオン」という「組織」の存在を人間側から問いただされ、彼らは強く「センチュリオン」の存在を否定し、森人族同様に自分の領土へと孤立する。彼等が住んでいるのは大陸ではなく島国であり、あまり活性化の影響を受けない。
「人間」つまり「バルトロス王国」は今回の「鳳凰学園」の件により、魔人族との関係が悪化し、お互いに睨み合う形となる。六種族の中では最大規模の国家とはいえ、あまりにも広大な領土が仇と無し、次々と起きる魔物の問題に王国の軍隊だけでは対処できないでいた。
世界各地の魔物の被害は徐々に強まり、下手をしたらこのままでは「魔族侵攻大戦」に匹敵する最悪の事態が陥るのではないかと噂されていた。
――現在の鳳凰学園は1年前の「ヴァンパイア」の侵入以来、学園は一時的に閉鎖しており、生徒達はそれぞれの実家に帰された。学園に残る事を希望した者は学生寮で大人しく過ごしており、外部に出ないように注意されている。
一部の生徒達は「バルトロス王国」の指示に従って王国が収める領土で出現した魔物の討伐を行うため、各地へと移動できる「転移魔方陣」が存在する学園に常時勤務していた。この学園の生徒は戦闘訓練も受けており、いざという時は冒険者のように戦闘する事も出来る。
勿論、学園の指折りの実力者が揃った「生徒会」も残っており、バルトロス王国の王族の血を継ぐ「アルト」を中心に無数の人間達が学園の管理を行っていた。
「――はあっ……」
学園の2階に存在する教室で、リノンは溜息を吐く。1年前よりも身長が伸びており、胸元も膨らんでいる。彼女は1年前にここで攫われた「レノ」の姿を思いだし、溜息を吐く。
(レノ……)
リノンにとって、彼は良き友人であり、そして弟のような存在だった。何だかんだ言って、自分たちの頼みは決して断らず、いつも共に行動していた。そんな彼がまさか「ハーフエルフ」だったとは、とても信じられない。彼女が知るハーフエルフとは、歴史上でも最も罪深き存在だと言い聞かされていた。
しかし、実際にリノと出会い、彼の事を見てきたが、とても彼女が知る罪深き存在とは思えない。そもそも、どうしてハーフエルフというだけで迫害されないといけないのか分からない。
「ふうっ……」
再度、溜息を吐くと彼女は教室の木造の地面に画かれた「転移魔方陣」を見つめる。この魔方陣によって、レノは何処か見知らぬ土地に攫われたのだ。魔方陣の専門家がこの教室に残された魔方陣の跡を調べてみたが、随分と古めかしい魔法陣であり、居場所を特定することは不可能との事。
すぐに学園側はレノの行方を追ったが、少なくともこの学園都市のどこかに移動した訳ではなく、下手をしたらこの大陸外の場所にまで転移したのではないかと噂されている。
「またここに居るのかい?」
後方から声を掛けられ、振り向くと、そこには学園の生徒会を総べる「アルト」が立っていた。魔方陣に集中しすぎて、彼の接近に気付かなかったようだ。リノンは苦笑いを浮かべて振り返り、アルトも彼女に倣って魔方陣を見下ろす。
「この魔方陣の上で彼が消えたのか……まだ探しているのかい?」
「……当たり前だ。仲間じゃないか」
「……仲間、か。本当に彼は僕たちの事をそう思っていたのかな」
「何?」
アルトに視線をやると、彼は神妙な表情で、
「彼は自分の事を何も話さなかった……素性を調べたら、全て偽造だったんだろ」
彼の言う通り、手がかりを追うためにレノの素性が調べられたが、すぐに学園側に提出した資料は全て偽造されており、謎が多い。調査を行った王国の騎士団は、彼は最初から「ヴァンパイア」と結託しており、連れ去られたのではなく、逃げ帰ったのではないかと言われている。
しかし、リノンにはそんな事信じられなかった。自分と共に戦ったレノの姿が思い出され、彼女は決して彼が裏切り者ではないと信じている。
立て続けに正体不明の組織「センチュリオン」と名乗る侵入者の存在を許してしまい、大勢の生徒を危険にさらした事で学園側は外部からの信用を失い、学園の多額の出資を行っている「バルトロス王国」からもこれ以上の失態は起こすなと伝えられる。この学園は全ての種族の和解と共存のために造られたが、これではあと1年も持たずに閉校してしまうだろう。
――そんな状況で、世界各地に異変が訪れる。魔物たちが「活性化」を始めているという情報が全ての種族に伝えられる。
魔物の活性化とは数百年規模で発生する現象であり、世界的に魔物が増殖、及び凶暴性を増し、前々回は「魔族侵攻大戦」の時代で発生したという。基本的にこの世界の魔物は人里から離れた場所に生息し、無闇に人前に姿を現すことは無い。
しかし、活性化の時期では理由は不明だが魔物は急速的に増殖し、人間が住む場所に自ら進んで襲い掛かるという。この現象は未だに解明されず、前回の活性化から約400年ぶりに発生した。
――各種族は一時的に種族間の争い事を休止し、この活性化の問題を共に当たることが決定された。だが、あくまでも活性化の時期のみ「同盟」を結ぶだけであり、真の和解とは程遠い。
「森人族」は同盟を結んだが、あくまでも自分達の身を守るだけに専念し、各集落の結界を強め、魔物に備える。「獣人族」と「巨人族」は本格的な魔物の討伐のために、隣国同士で何度も戦争を起こした「バルトロス王国」と共同戦線を張る。
「人魚族」に関しては特に大きな被害もなく、現状を維持すると告げて完全に他の種族からの支援を拒否し、自分たちの問題は自分たちで解決すると宣言する。元々、彼女達は海底に住んでいるため、領土という領土は存在しないのだが。
「魔人族」に関しては今回の「センチュリオン」という「組織」の存在を人間側から問いただされ、彼らは強く「センチュリオン」の存在を否定し、森人族同様に自分の領土へと孤立する。彼等が住んでいるのは大陸ではなく島国であり、あまり活性化の影響を受けない。
「人間」つまり「バルトロス王国」は今回の「鳳凰学園」の件により、魔人族との関係が悪化し、お互いに睨み合う形となる。六種族の中では最大規模の国家とはいえ、あまりにも広大な領土が仇と無し、次々と起きる魔物の問題に王国の軍隊だけでは対処できないでいた。
世界各地の魔物の被害は徐々に強まり、下手をしたらこのままでは「魔族侵攻大戦」に匹敵する最悪の事態が陥るのではないかと噂されていた。
――現在の鳳凰学園は1年前の「ヴァンパイア」の侵入以来、学園は一時的に閉鎖しており、生徒達はそれぞれの実家に帰された。学園に残る事を希望した者は学生寮で大人しく過ごしており、外部に出ないように注意されている。
一部の生徒達は「バルトロス王国」の指示に従って王国が収める領土で出現した魔物の討伐を行うため、各地へと移動できる「転移魔方陣」が存在する学園に常時勤務していた。この学園の生徒は戦闘訓練も受けており、いざという時は冒険者のように戦闘する事も出来る。
勿論、学園の指折りの実力者が揃った「生徒会」も残っており、バルトロス王国の王族の血を継ぐ「アルト」を中心に無数の人間達が学園の管理を行っていた。
「――はあっ……」
学園の2階に存在する教室で、リノンは溜息を吐く。1年前よりも身長が伸びており、胸元も膨らんでいる。彼女は1年前にここで攫われた「レノ」の姿を思いだし、溜息を吐く。
(レノ……)
リノンにとって、彼は良き友人であり、そして弟のような存在だった。何だかんだ言って、自分たちの頼みは決して断らず、いつも共に行動していた。そんな彼がまさか「ハーフエルフ」だったとは、とても信じられない。彼女が知るハーフエルフとは、歴史上でも最も罪深き存在だと言い聞かされていた。
しかし、実際にリノと出会い、彼の事を見てきたが、とても彼女が知る罪深き存在とは思えない。そもそも、どうしてハーフエルフというだけで迫害されないといけないのか分からない。
「ふうっ……」
再度、溜息を吐くと彼女は教室の木造の地面に画かれた「転移魔方陣」を見つめる。この魔方陣によって、レノは何処か見知らぬ土地に攫われたのだ。魔方陣の専門家がこの教室に残された魔方陣の跡を調べてみたが、随分と古めかしい魔法陣であり、居場所を特定することは不可能との事。
すぐに学園側はレノの行方を追ったが、少なくともこの学園都市のどこかに移動した訳ではなく、下手をしたらこの大陸外の場所にまで転移したのではないかと噂されている。
「またここに居るのかい?」
後方から声を掛けられ、振り向くと、そこには学園の生徒会を総べる「アルト」が立っていた。魔方陣に集中しすぎて、彼の接近に気付かなかったようだ。リノンは苦笑いを浮かべて振り返り、アルトも彼女に倣って魔方陣を見下ろす。
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「……当たり前だ。仲間じゃないか」
「……仲間、か。本当に彼は僕たちの事をそう思っていたのかな」
「何?」
アルトに視線をやると、彼は神妙な表情で、
「彼は自分の事を何も話さなかった……素性を調べたら、全て偽造だったんだろ」
彼の言う通り、手がかりを追うためにレノの素性が調べられたが、すぐに学園側に提出した資料は全て偽造されており、謎が多い。調査を行った王国の騎士団は、彼は最初から「ヴァンパイア」と結託しており、連れ去られたのではなく、逃げ帰ったのではないかと言われている。
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