種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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学園編

合成魔法

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クズキを見送ると、レノは1人だけ庭の上に寝転がり、先ほどの戦闘を思い返す。「嵐」の方は上手く扱えるようになったが、相も変わらず「反魔紋」の雷は上手く制御できない。元々、身体全体に流れる電流を操作すること自体が無茶なのだ。だが、無茶であろうが無かろうが、あのダークエルフに挑むのなら「反魔紋」の力が必要不可欠だった。

自分の「嵐」では、ダークエルフが操る「炎」とは相性が悪く、通用しない。あの時は不意を突いたからこそ、ダークエルフの身体に当てることが出来たが、今度も同じように上手くいくとは限らない。相手も一度レノが電流を操れると知った以上、迂闊に近づいてこないだろう。


「どうにかしないとな……」


現在、ダークエルフがどこに居るのかは知らないが、どちらにしろ今戦ったところで勝てる可能性は無い。あの時も、レノは出来うる限りの攻撃を行ったが、結局はダークエルフの肉体には傷一つ付くことが無かった。せいぜい、首を絞めたときに苦悶の表情を浮かべたさせたくらいだ。


「嵐と雷か……」


どちらも魔力消費量は激しいが、普通の「風」や「雷」属性の魔法よりも威力は高い。ハーフエルフとして生まれたお蔭で、元々魔力容量は大きいのが幸いした。ダークエルフとの戦いからそれほど長い時間は経っていないが、レノの魔力は確かにここ1ヶ月の間で強まっている。毎日の訓練により、上手く「嵐」も制御できている。


「…………」


ゴォオオオッ……!!


無意識に両手の掌を見ながら、レノは右腕に「嵐」を纏わせ、呪文を口にする。


バチィイイイッ……!!


「ぐあっ……!!」


瞬時に反魔紋が発動し、電流が身体に流されるが、何とかそれに耐えて左手の掌に「スタンガン」の要領で雷を放ち、消えかけている「嵐」の魔力に向けて、


「このぉっ……!!」


嵐と雷の魔力を掛け合わせるように、両手を握りしめる。特に何かの確信があったわけではないが、こうすることで2つの魔力が混じりあうと思ったからだ。レノは地面に横たわったまま、両の掌の中で激しく蠢く魔力を逃がさぬ様に握りしめ、周囲に風と電流が迸る。



「ぐぅあぁあああああっ……!!」



両手が高温を発し、まるで熱せられた鉄板に両手を押し付けている感覚に陥り、少しでも気を緩めると手放しそうになるが、意地でもレノは握力を緩めない。ダークエルフに勝つには、自分には魔力も技術も経験も足りない。ならばどう実力差を埋めるのか、答えは「小細工」しか存在しない。

同じエルフではあるが、あちらはレノの数十倍の人生を送っている可能性もある。そんな彼女に勝つには、普通の鍛錬では追いつけない。


「暴れんなぁっ!!」


両手から逃げ出そうとする魔力の本流を押さえつけ、レノは「嵐」と「雷」が完全に混ざり合うのを感じ取り、


ボウッ……!!


ついに両手が離れ、レノの掌に2つの属性が合わさった「球体」が生み出される。時折、球体から電流と風が漏れ、周囲に火花が走る。


「……これは……」


掌から感じ取れる球体の魔力に、レノは目を見開く。まるで自分が生み出したとは思えないほどの、強烈な「力」だ。レノは魔力を右手に収めながら、ゆっくりと空に向けて、


「……風雷」


単純だが、それ以外に表現できない言葉を口にした瞬間、レノの掌に掲げられた球体が発光し、



――ズガァアアアアアンッ!!



次の瞬間、学生寮全体が震えるほどの衝撃が走り、庭に雷を纏った嵐が撃ち上がった――





――一方、グラウンドでは生徒会のメンバーがいつも通りに自主練を行っており、そろそろ学生寮の方へと戻ろうとした時、寮から風雷が誕生するのを確認する。


ズガァアアアアンッ……!!


「っ!?」
「な、何ですかぁ!?」
「あれは……馬鹿な!?」
「た、台風……?」


生徒会の4人は、いつもの訓練でグラウンドに集まっており、そろそろ解散しようとした時に、学生寮の異変を目撃した。この距離からでも分かるほどに、学生寮から凄まじい「嵐」の姿が確認できた。しかも、雷も迸っている。学園に外部の「魔術師」でも侵入してきたのかと、4人は走り出す。




――同時刻、正門の方ではレノと別れたクズキも学生寮の異変に気が付き、彼は目を見開くが、すぐに「魔力感知」によって風雷を生み出した正体を悟り、頭を抑えながら苦笑を浮かべる。


「あれは……やれやれ」


学生寮から見える「風雷」がレノだと確信し、彼は仕方ないとばかりに首を振りながら、レノがいる学生寮に向かおうとした時、


「……見つけたぞ」


その声を後ろから聞いた瞬間、彼は目を見開き、咄嗟に上空に跳躍する。


(まさか……!!)


上に飛び上がりながら、彼は振り返って声をかけてきた人間の確認をしようとした時、


「遅い」


ズドォンッ!!


「ぐはっ……!?」


頭上から衝撃が走り、そのままクズキは地面に落下するが、何とか彼は両腕と両足に魔力を流し込み、そのまま地面に着地する。


ズガァンッ……!!


「ぐうっ……!!」


地面に亀裂が入り、クズキの両腕が埋まるが、何とか「肉体強化(身体能力強化魔法)」によって骨は折れていない。すぐに彼は自分の袖の裏に隠した白色に光る魔石を取り出し、小声で呪文を唱える。


「ヒール……」


ボウッ……!


両手と両足に白色の光が灯り、すぐに傷が癒える。基本的に「魔法」とは、自分の魔力で生み出したものは自分の肉体に対しては効果は無い(例えるなら、レノが「嵐」の魔法を自分の肉体に放っても傷つくことは無い)。しかし、魔石を媒介として治癒魔法を自分に使用した場合は別であり、彼は自分の両足と両腕を確認して前に向き直る。


「くっ……貴女ですか」
「久しぶりだな……クズキ」


治療を終え、顔を見上げた瞬間に、クズキの視界に「ダークエルフ」の女性の姿が映し出された――
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