33 / 1,095
学園編
鳳凰学園生徒会
しおりを挟む
教科書を読み終えると、クズキは頷きながら拍手し、レノは椅子に座り込むと彼は教科書を片手に黒板に書き込みを始める。
「ダークエルフ君の朗読通り、かつては6つの宝玉が存在しました。ですが、現存が確認されている宝玉は「人間」「森人族」「獣人族」「人魚族」「魔人族」の5つのみですねぇ」
黒板に「巨人族」という文字の下に掛かれた「宝玉」に×マークを書き込み、クズキは教科書に目を向け、
「魔王も「宝玉」を奪った後、流石に無茶をし過ぎたのかそれ以降は表舞台に出てこなくなりましたねぇ。また、宝玉は種族によって色が大きく違います。人間の場合は「白」森人族は「緑」獣人族は「黄」人魚族は「青」魔族は「紫」既に消失していますが巨人族は「赤」ですねぇ」
クズキの説明を聞き終えると、1人の生徒が手を上げて質問を行う。
「あの……宝玉は種族が管理していると言いますけど、本当に実在するんですか?」
「ほう?どうしてそう思うんですか?」
「その……宝玉の伝説は有名ですけど、実際に宝玉が世間に晒されたことはありませんよね?ただ存在だけが知られているなんておかしくは無いかと……」
「なるほど、確かに実物を見たという方々は少ないですね。ですが、宝玉は実在しますよ?正確に言えば、面倒な手続きと莫大な費用さえ払えれば、誰であろうと宝玉を閲覧できますよ」
「えっ……!?」
彼の返答に生徒たちに動揺が走る。当然の事だろう、教科書にはそのようなことは一切乗っていないのだから。レノも宝玉の内容はここに来る前にクズキから教わっていたが、宝玉を閲覧できるというのは初耳だ。まあ、特に興味もないのだが。
「さて、授業を続けましょうか。それでは今度は――」
――その後は何事もなくクズキの授業が進み、語尾が可笑しい時はあるが、基本的に分かりやすくて好評だった。
授業の鐘が鳴り、今度は20分の休憩時間が訪れる。本来ならこの時間帯に次の授業の準備や教室に移動したり、中には雑談や魔法の訓練を行う人間も居る。
「レノ、君も4年生だったな?転入したばかりだから試験は免除されたんだろう?」
「いいな~……」
「うすっ……羨ましい」
「えっと……ははっ」
丁度、レノが入学したこの時期は学園全体で「試験」が終わったばかりであり、全員の気が緩んでいる。そのため、最初の授業だけを受けて帰る生徒も多い。この学園は単位制ではなく、年に二回行われる「試験」で成績を残せれば授業を受けなくても問題ない(授業を受けた方が先生方の印象は良いが)。
レノも今日は1限目だけを受けて、学生寮の庭でもグラウンドでも移動して昨日の魔法の訓練を行うつもりだったが、リノンに肩を掴まれ、
「君に付いてきてほしい所があるんだが……いいかな」
「……か、金は持ってないですよ」
「いや、恐喝じゃないですよ!?」
「俺達、怖くない」
強面の顔を近づけてくるゴンゾウに、レノは教室を出ていこうとするクズキに助けを求める視線を送るが、
「…………(ぐっ!)」
彼は黙って親指を上げて、教室を立ち去る。レノはそんな彼に「裏切り者め……」と口にしている間にも、リノンとポチ子に左右の手を握られ、
「こっちだ。君もきっと気に入るよ」
「く~んっ……楽しい場所ですよ」
「レノ、行く」
「弁護士を呼んでくれ……」
そのまま3人に拘束され、レノは学園内を歩かされた。
――10分後、レノは学園の1階にある「生徒会室」というプレートが掛けられた部屋の前に移動し、リノンがノックをする。
コンコンッ……
「どうぞ?」
中から昨夜に聞いたことがある男の声が聞こえ、リノンが扉を開くと、中には1人の少年が一番奥の豪勢な机に座り込んでいた。彼は間違いなく昨夜に見かけた少年であり、彼以外にも複数の生徒の姿が見える。ほとんどが上級生のリボンを付けており、リノンたちと同じく白を基調とした制服を着こんでいる。
少年以外の人間は事務作業を行っており、数多くの資料を机に置いて確認している。思ったよりも室内の人間は数が多い。
どうやら、リノンたちが着ている白い制服は「生徒会」が着用するものらしい。
「リノン?授業が終わったのか……ん?」
彼女の後ろに居る「レノ」に気が付き、少年は椅子から立ち上がり、4人の元に向かう。すぐに彼は皆を廊下に連れ出し、扉を閉める。
「その子が……リノンが昨日言っていたダークエルフの子かい?なるほど、確かに髪の毛が黒いな」
レノの瞳を真っ直ぐ見つめながら尋ねる少年に、リノンは頷き、
「レノ、この人はこの学園の生徒会長の「アルト」だ。彼は私達よりも1つ学年が上で、一応は学園一の秀才と言われいている」
「一応って……まあいい、僕は「アルト」よろしくね」
アルトはレノに握手を求め、すぐに握り返すと彼は笑みを浮かべながら、
「こんな場所じゃ何だから、食堂に移動しようか」
「食堂か……そうだな、この時間なら空いてるはずだから丁度いい」
「わぅんっ……ドックフードありますかね」
「俺も、腹減った」
「はあ……」
レノ以外の全員が賛成し、そのまま食堂に移動を始めた。
「ダークエルフ君の朗読通り、かつては6つの宝玉が存在しました。ですが、現存が確認されている宝玉は「人間」「森人族」「獣人族」「人魚族」「魔人族」の5つのみですねぇ」
黒板に「巨人族」という文字の下に掛かれた「宝玉」に×マークを書き込み、クズキは教科書に目を向け、
「魔王も「宝玉」を奪った後、流石に無茶をし過ぎたのかそれ以降は表舞台に出てこなくなりましたねぇ。また、宝玉は種族によって色が大きく違います。人間の場合は「白」森人族は「緑」獣人族は「黄」人魚族は「青」魔族は「紫」既に消失していますが巨人族は「赤」ですねぇ」
クズキの説明を聞き終えると、1人の生徒が手を上げて質問を行う。
「あの……宝玉は種族が管理していると言いますけど、本当に実在するんですか?」
「ほう?どうしてそう思うんですか?」
「その……宝玉の伝説は有名ですけど、実際に宝玉が世間に晒されたことはありませんよね?ただ存在だけが知られているなんておかしくは無いかと……」
「なるほど、確かに実物を見たという方々は少ないですね。ですが、宝玉は実在しますよ?正確に言えば、面倒な手続きと莫大な費用さえ払えれば、誰であろうと宝玉を閲覧できますよ」
「えっ……!?」
彼の返答に生徒たちに動揺が走る。当然の事だろう、教科書にはそのようなことは一切乗っていないのだから。レノも宝玉の内容はここに来る前にクズキから教わっていたが、宝玉を閲覧できるというのは初耳だ。まあ、特に興味もないのだが。
「さて、授業を続けましょうか。それでは今度は――」
――その後は何事もなくクズキの授業が進み、語尾が可笑しい時はあるが、基本的に分かりやすくて好評だった。
授業の鐘が鳴り、今度は20分の休憩時間が訪れる。本来ならこの時間帯に次の授業の準備や教室に移動したり、中には雑談や魔法の訓練を行う人間も居る。
「レノ、君も4年生だったな?転入したばかりだから試験は免除されたんだろう?」
「いいな~……」
「うすっ……羨ましい」
「えっと……ははっ」
丁度、レノが入学したこの時期は学園全体で「試験」が終わったばかりであり、全員の気が緩んでいる。そのため、最初の授業だけを受けて帰る生徒も多い。この学園は単位制ではなく、年に二回行われる「試験」で成績を残せれば授業を受けなくても問題ない(授業を受けた方が先生方の印象は良いが)。
レノも今日は1限目だけを受けて、学生寮の庭でもグラウンドでも移動して昨日の魔法の訓練を行うつもりだったが、リノンに肩を掴まれ、
「君に付いてきてほしい所があるんだが……いいかな」
「……か、金は持ってないですよ」
「いや、恐喝じゃないですよ!?」
「俺達、怖くない」
強面の顔を近づけてくるゴンゾウに、レノは教室を出ていこうとするクズキに助けを求める視線を送るが、
「…………(ぐっ!)」
彼は黙って親指を上げて、教室を立ち去る。レノはそんな彼に「裏切り者め……」と口にしている間にも、リノンとポチ子に左右の手を握られ、
「こっちだ。君もきっと気に入るよ」
「く~んっ……楽しい場所ですよ」
「レノ、行く」
「弁護士を呼んでくれ……」
そのまま3人に拘束され、レノは学園内を歩かされた。
――10分後、レノは学園の1階にある「生徒会室」というプレートが掛けられた部屋の前に移動し、リノンがノックをする。
コンコンッ……
「どうぞ?」
中から昨夜に聞いたことがある男の声が聞こえ、リノンが扉を開くと、中には1人の少年が一番奥の豪勢な机に座り込んでいた。彼は間違いなく昨夜に見かけた少年であり、彼以外にも複数の生徒の姿が見える。ほとんどが上級生のリボンを付けており、リノンたちと同じく白を基調とした制服を着こんでいる。
少年以外の人間は事務作業を行っており、数多くの資料を机に置いて確認している。思ったよりも室内の人間は数が多い。
どうやら、リノンたちが着ている白い制服は「生徒会」が着用するものらしい。
「リノン?授業が終わったのか……ん?」
彼女の後ろに居る「レノ」に気が付き、少年は椅子から立ち上がり、4人の元に向かう。すぐに彼は皆を廊下に連れ出し、扉を閉める。
「その子が……リノンが昨日言っていたダークエルフの子かい?なるほど、確かに髪の毛が黒いな」
レノの瞳を真っ直ぐ見つめながら尋ねる少年に、リノンは頷き、
「レノ、この人はこの学園の生徒会長の「アルト」だ。彼は私達よりも1つ学年が上で、一応は学園一の秀才と言われいている」
「一応って……まあいい、僕は「アルト」よろしくね」
アルトはレノに握手を求め、すぐに握り返すと彼は笑みを浮かべながら、
「こんな場所じゃ何だから、食堂に移動しようか」
「食堂か……そうだな、この時間なら空いてるはずだから丁度いい」
「わぅんっ……ドックフードありますかね」
「俺も、腹減った」
「はあ……」
レノ以外の全員が賛成し、そのまま食堂に移動を始めた。
0
お気に入りに追加
486
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
なりゆきで、君の体を調教中
星野しずく
恋愛
教師を目指す真が、ひょんなことからメイド喫茶で働く現役女子高生の優菜の特異体質を治す羽目に。毎夜行われるマッサージに悶える優菜と、自分の理性と戦う真面目な真の葛藤の日々が続く。やがて二人の心境には、徐々に変化が訪れ…。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
虐げられた令嬢、ペネロペの場合
キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。
幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。
父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。
まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。
可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。
1話完結のショートショートです。
虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい……
という願望から生まれたお話です。
ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。
R15は念のため。
高貴な血筋の正妻の私より、どうしてもあの子が欲しいなら、私と離婚しましょうよ!
ヘロディア
恋愛
主人公・リュエル・エルンは身分の高い貴族のエルン家の二女。そして年ごろになり、嫁いだ家の夫・ラズ・ファルセットは彼女よりも他の女性に夢中になり続けるという日々を過ごしていた。
しかし彼女にも、本当に愛する人・ジャックが現れ、夫と過ごす夜に、とうとう離婚を切り出す。
【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った
五色ひわ
恋愛
辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。
※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる