種族統合 ~宝玉編~

カタナヅキ

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学園編

召喚失敗

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「なるほどね……ハザクラさんでいいのかな?」
「ああ、いや……大抵の人間にはリノンと呼ばれている」
「へえ……ところでハザクラさん」
「う、うん……」


彼女としてはリノンと呼んで欲しいのかもしれないが、レノは特に気にせずに彼女に問いただしたい事がある。


「異世界から来たって事は……お爺さんは何をしているんですか?」
「いや、祖父は既に他界している。元々は工場で働いていんだが、確か工場長と言ったところかな」
「工場長?それは凄いな……」


何を生産している工場なのかは分からないが、素直に感心する。もしかしたら、ここに来る前は工業関係の専門職に勤めていたのかもしれない。


「そうだろう!!祖父は凄いんだ!!何も魔法が使えないのに、お爺さんの手で様々な物が作り出されるんだ!!」
「そ、そうですか……」


祖父が褒められたことがそれほど嬉しかったのかが、リノンは満面の笑みを浮かべて、自分の父親の自慢を始める。彼女の祖父はこの都市の中でも大手の工場を勤めており、主に生活用品を開発しているらしい。驚く事に、電話も生み出しているという。

あと数十年もすれば、テレビさえも作られ、200~300年もすればレノが生きていた「時代」のの現実世界の科学にまで追いつく可能性があるかもしれない。

「ハーフエルフ」として生まれてから、つらい出来事ばかりだったが、もしもこの世界の科学がそこまで追いつくのならば、それほど長く生きられることは悪くない気がしてくる。


「お爺さんはいつ頃来たの?」
「ん……確か50年前にやってきたと言っていたな……今も生きていたとしたらだいたい80ぐらいだな」
「80か……」


この世界に召喚される「異世界人」は年齢、性別、国家などは無差別で召喚されるので、別によくある転生物の小説のように日本人だけがこちらの世界に訪れるわけではない。

また、召喚された人間とは特殊な魔法の恩恵が与えられ、この世界の「言葉」が普通に話せるのだ。レノとしては自分が必死に覚えた言語を、何の苦労もなしに話せる「異世界人」には理不尽さを感じたが。



――先ほどから「召喚」という単語が出てくるのは、基本的にこの学園では「召喚魔法」を学ぶ学科が存在する。



以前にエルフの集落で、レノが「魔獣」と契約を交わすという話が出てきたが、こちらの学園でも似たような出来事があり、レノの場合は直接「魔獣」が潜む森に挑んで「魔獣」と契約する儀式だったが、こちらの学園では「召喚術」で遠方に存在する「魔獣」や「神獣」もしくは「魔物(魔獣との違いは、「スライム」のような獣型ではない魔物の事を指す)」を呼び出すという。

この「召喚魔法」で「魔獣」などを呼び出し、上手く契約を成功させればいつでもどこでも自由に「契約獣(契約した生物)」を召喚陣(魔方陣の一種)で呼び出すことが可能であり、毎日頻繁に「召喚魔法」が行われている。


だが、時折この召喚魔法での授業中、1年に1・2回の割合で「異世界人」が召喚されるという事故が起きている。その際に、彼らは国が保護し、生活の面倒を見られる。何しろ「言葉」も違うため、彼等だけでは生きていく事が困難だ。


――中にはリノンの祖父のように優秀な人間は此方の世界の科学の発展に協力し、この学園都市は世界的に見ても大きく成長している。


当然召喚された「異世界人」の中にもまだ赤ん坊だったり、何の知識も持ち合わせていない子供や、元の世界に戻ることを熱望している人間も混じっており、彼らは特別に「異世界人」だけを収納した施設に預けられているという。

此方の世界の都合で勝手に呼び出され、元の世界に帰れないなど冗談ではないが、現在の研究では「現実世界」に戻れる方法は見つかっておらず、仕方なく彼らはこの世界で生きていく覚悟を決めるが、自力で帰還する方法を模索するしかないらしい。


「お爺さんは、その……こっちの世界で幸せ?」
「もちろんだ!!……と、言いたいところだが、時折何かを懐かしむように外の風景を見る場面をよく見かけたな……」


レノが答えにくい質問をしたにもかかわらず、リノンは嫌な顔一つせずに答えるところ、この少女は優しい女の子だと判断した。

だが、レノはこの学園で情報を掴み次第、立ち去らねばならない。呑気に友人をつくる暇はない。早急に任務を果たさない限り、クズキが何を仕出かすかは分からないのだ。



ギィイイイッ……!!



前方から音がすると思うと、巨大な鋼鉄製の門が自動的に開かれ、何時の間にかリノン以外の学生たちが通学路を歩いている姿があった。


「よし、登校時間に入ったな。それじゃあ、行こうか」
「え」


リノンはレノに手を差し出し、どうしようかと悩んでいるレノに、



「君、学園の手続きはまだなんだろう?職員室まで私が案内しよう」
「あっ……はい」


幼いながらに他人が見惚れる笑みを浮かべるリノンに、彼女の手を握ってベンチから立たせられ、レノは学園に入り込んだ――
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